月経困難症(生理痛)とは──
診断・原因・治療の全体像と、体質から整えるアプローチ
毎月の生理痛で鎮痛薬が手放せない。仕事や学校を休むことがある。「生理痛は誰にでもあるもの」と言われ、我慢を続けている。このような状態は、治療の対象になる「月経困難症」の可能性があります。
月経困難症は、西洋医学の診断と治療で痛みを抑えられる方が多い一方で、薬が合わない方、妊娠を希望される方、薬を減らしたい方など、選択肢を広げたい方もいます。
タナココは、西洋医学の診断をもとに、中医学の体質分析にもとづく漢方・鍼灸で、痛みの出にくい月経周期を目指します。毎月の痛みを減らすことを目標に、経過を確認しながら最後まで取り組みます。
最終更新日:2026年11月3日
月経困難症の理解と体質へのアプローチ
月経困難症(生理痛)とは何か
・月経困難症とは、月経期間中に月経に伴って起こる病的症状で、日常生活に支障が出る場合に治療の対象となります。
・原因疾患のない「機能性」と、子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫などによる「器質性」に分けられ、まず婦人科での鑑別が大切です。
・痛みには、子宮内膜で増えるプロスタグランジンが深く関わります。
・治療の中心は鎮痛薬(NSAIDs)とホルモン療法です。一方で、効果が不十分な方、副作用や妊娠希望のために使いにくい方もいます。
・中医学では、気血の巡りの滞りや不足、冷えなどの体質の偏りとして捉え、漢方・鍼灸で整えます。研究は増えていますが、質の高い試験はまだ限られています。
月経困難症とは、月経期間中に月経に伴って起こる病的症状の総称です。産婦人科領域では「月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状」と定義されています。下腹部痛や腰痛が中心ですが、頭痛・吐き気・下痢・疲労感・気分の落ち込みなど、症状は多岐にわたります。
月経に伴う多少の痛みは、多くの女性にみられます。その痛みのために鎮痛薬が必要になる、仕事や学校を休む、日常の活動が制限されるといった状態になれば、「月経困難症」として治療の対象になります(日本女性心身医学会)。「生理痛は我慢するもの」と考えられがちですが、診断と対処ができる状態です。
月経困難症は、経血量が多い「過多月経」や、月経前に症状が出る「月経前症候群(PMS)」とは区別されますが、これらを併せ持つ方もいます。
月経困難症の分類と診断基準
月経困難症は、原因となる疾患の有無によって2つに分けられます。診断では、症状の問診と、原因疾患の除外が中心になります。
1)機能性(原発性)月経困難症
特徴・経過
- 子宮や卵巣に、原因となる病変がない
- 初経から2〜3年ほどして始まることが多く、10〜20代に多い
- 月経の1日目〜2日目(経血量が多い時期)に痛みが強く、1日程度で軽くなることが多い
- 排卵が起きている周期にみられ、無排卵性の月経では通常みられない
原因・見通し
- 子宮内膜で作られるプロスタグランジンによる、子宮筋の過剰な収縮
- 月経血の通り道である子宮頸管が狭いことも一因
- 加齢や出産とともに軽くなる傾向があり、分娩を経験すると軽くなる方が多い
2)器質性(続発性)月経困難症
原因となる疾患
- 子宮内膜症
- 子宮腺筋症
- 子宮筋腫
- 骨盤内炎症性疾患
- 子宮の形態異常
- 原因疾患として多いのは子宮内膜症と子宮腺筋症
特徴・経過
- 30歳以降に生じる月経困難症は、器質性であることが多い
- 月経の数日前から始まり、月経後も続く鈍い痛みが多い
- 年齢とともに悪化しやすい
- 過多月経・貧血・性交時痛・月経期間以外の下腹部痛を伴うことがある
診断の流れ
① 問診:初経の時期、痛みの出る時期・場所・強さ・続く期間、経血量、日常生活への支障、鎮痛薬の効き方などを確認します。
② 内診・超音波検査:子宮や卵巣の病変(子宮内膜症、筋腫、腺筋症など)の有無を調べます。
③ 必要に応じた追加検査:MRI検査や血液検査(腫瘍マーカーなど)を行うことがあります。
④ 診断:器質性疾患が認められない場合(認められても症状の原因とは考えにくい場合を含む)は機能性月経困難症と診断します。原因疾患が見つかった場合は器質性月経困難症として、その疾患の治療を行います。
月経困難症は、血圧や血糖値のように、検査の数値だけで診断が決まる病気ではありません。症状の内容、日常生活への支障の程度、器質的疾患の有無を総合して診断します。痛みの強さは、0〜10の数値で表すVAS・NRSなどの尺度で記録されることがあります。
市販の鎮痛薬を使っても日常生活に支障がある/年々痛みが強くなっている/月経期間以外にも下腹部痛がある/性交時や排便時に痛みがある/経血量が多い、または貧血を指摘された/30歳以降に初めて強い月経痛が出た。これらに当てはまる場合は、器質性月経困難症の可能性があるため、婦人科での診察をおすすめします。
症状:痛みだけでなく、全身と生活に及ぶ影響
月経困難症の症状は下腹部痛に限りません。症状の重さは個人差が大きく、「鎮痛薬で何とか過ごせる」程度から「月経中は動けない」という状態まで幅があります。
痛みの症状
下腹部の痙攣するような痛み、腰痛。痛みが腰や太ももの前面に広がることもあります。月経の1日目〜2日目に強く出る方が多くいます。
全身・消化器の症状
吐き気・嘔吐・下痢、頭痛、疲労感・脱力感、食欲不振、めまい、動悸、腹部の張り。
精神・生活への影響
イライラ、気分の落ち込み、不安感。学校や仕事を休む、予定を月経に合わせて調整するなど、生活の制限につながります。
月経に伴う吐き気・下痢・頭痛は、プロスタグランジンが子宮以外の平滑筋(消化管など)にも作用して起こると考えられています。
有病率と日本の現状
月経困難症は、きわめて身近な不調です。一方で、症状があっても医療機関を受診していない方が多いことが課題とされています。
| 対象・指標 | 目安 | 特記事項 |
|---|---|---|
| 月経のある女性(月経困難症・PMSを含む) | 約70〜80%(統計により差がある) | 厚生労働科学研究の報告書が引用する報告(Takeda, 2010) |
| 機能性月経困難症(世界の報告) | 対象女性の45〜95% | 重い痛みを訴える方は2〜29%。患者の70〜90%は24歳未満(Itaniら, 2022のレビュー) |
| 日常生活に支障が出る重さ | 機能性月経困難症の約5〜15% | 学校や仕事を休むことがある(MSDマニュアル) |
| 医療機関の受診 | 受診率は低いと指摘されている | 羞恥心や「婦人科にかかりたくない」という意識が背景にあるとされる(厚生労働科学研究の報告書) |
| 経済的な影響 | 月経随伴症全体で年間約0.6兆円 | 経済産業省が2024年2月に公表した試算。女性特有の健康課題4項目(月経随伴症・更年期症状・婦人科がん・不妊治療)の合計は年間約3.4兆円 |
月経痛は「周囲も同じ」「毎月のこと」と受け止められやすく、治療につながるまでに時間がかかる傾向があります。症状に気づいた段階で、診断と対処を始めることが大切です。
発症のメカニズム
1)プロスタグランジンによる子宮筋の収縮と血流低下
機能性月経困難症の中心的な原因は、子宮内膜で作られるプロスタグランジン(PGF2α・PGE2)の増加です。妊娠が成立せず、月経に向けて黄体のプロゲステロンが低下すると、子宮内膜でのPG産生が増えます。PGF2αは子宮筋を強く収縮させ、血管も収縮させるため、子宮筋が一時的に酸素不足(虚血)の状態になり、痛みが生じます。子宮内膜のPG濃度は、痛みの程度と関連することが報告されています。
2)バソプレシン・ロイコトリエン・炎症性物質の関与
PG以外にも、下垂体後葉ホルモンのバソプレシンが子宮筋の過敏性や子宮血流の低下に関わり、PGF2αと併せて痛みを強めると考えられています。ロイコトリエンは、痛みを感じる神経の感受性を高めるとされ、NSAIDsが効きにくい月経困難症の子宮内膜に多く認められたと報告されています。IL-6やTNF-αなどの炎症性物質の関与も検討されています。
3)子宮頸管の狭さ・体質的な要因
月経血の通り道である子宮頸管が狭いことも一因とされています。家族歴やストレスも関連する要因として挙げられています。
4)中枢感作と痛みの慢性化
重症の月経困難症では、脊髄や脳での痛みの伝わり方が敏感になる「中枢感作」が生じ、痛みを感じやすくなる可能性が指摘されています。月経困難症に伴う疼痛感受性が、のちの慢性的な痛みに対する感受性を高める可能性もあるとされています(MSDマニュアル)。毎月の痛みをその都度抑えるだけでなく、痛みが出にくい状態を目指して早めに対処する意義は、この点にもあると考えられます。
5)器質性の場合
子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫などの病変が痛みの原因となります。この場合は原因疾患の治療が原則で、薬物療法は痛みの軽減や病気の進行を抑える目的で行われます。
① 排卵後:黄体から分泌されるプロゲステロンの影響下で、子宮内膜が月経に向けて準備されます。
② 黄体の退縮:妊娠が成立しないと、プロゲステロンが低下します。
③ PGの産生増加:子宮内膜でPGF2α・PGE2の産生が増えます。
④ 子宮筋の収縮と虚血:PGにより子宮筋が強く収縮し、血管の収縮で子宮筋への血流が低下します。
⑤ 症状の発現:下腹部痛・腰痛が生じます。PGが血中に移行し、消化管など他の臓器の平滑筋も収縮すると、吐き気・下痢・頭痛なども生じます。
現在の治療とその課題
非薬物療法(セルフケア)
温熱(入浴、腹部・腰部への貼るカイロ)、適度な運動、睡眠、月経への不安の軽減などが行われます。非薬物療法のネットワーク・メタ解析(Liら, BMJ Evidence-Based Medicine 2024)では、運動・鍼・局所の温熱が短期的な痛みの軽減に役立つ可能性が示されていますが、質の高い研究が必要とされています。
薬物療法・手術療法
| 治療 | 位置づけ・仕組み | 課題・留意点 |
|---|---|---|
| NSAIDs(イブプロフェン・ジクロフェナクなど) | 第一選択として用いられる。PGの合成を抑えて痛みを和らげる。痛みが出てからの頓用で不十分な場合は、月経開始時または直前から定時で内服する | 従来の治療でも十分な痛みの軽減が得られない方が20〜25%いるとされる(Cochrane 2016)。胃腸障害(消化性潰瘍など)に注意が必要 |
| 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(OC/LEP) | NSAIDsで不十分な場合や内服が難しい場合に用いる。排卵を抑え、子宮内膜が厚くならないためPG産生が減る。周期投与と連続投与がある。ガイドラインによっては、NSAIDsと並ぶ第一選択肢とされる | 血栓症のリスクがあり(非内服の2〜3倍とされる)、事前の問診が必要。不正出血が起こることがある。妊娠を希望する時期は使えない。効果は服用中に現れる |
| プロゲスチン製剤(ジエノゲストなど)・LNG-IUS | 子宮内膜症・子宮腺筋症などの器質性月経困難症の痛みにも用いる | 不正出血が起こりやすい。長期使用時の骨密度への影響などが検討されている。妊娠を希望する時期は原則として使えない |
| 手術療法 | 器質性で、薬物療法では症状を抑えられない場合に検討する | 方法は、将来の妊娠希望の有無によって異なる |
| 漢方薬 | 当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・芍薬甘草湯などが、保険診療の産婦人科でも用いられる | 体質(証)に合わせた選択が必要で、効果の現れ方に個人差がある |
薬物療法だけでカバーしきれない部分
毎月の対症療法になりやすいこと:NSAIDsはPGを抑えて痛みを和らげる治療のため、毎月の服用が続きやすくなります。
効果が不十分な方がいること:従来の治療でも十分な痛みの軽減が得られない方が、20〜25%いるとされています(Cochrane 2016)。
ホルモン療法が使いにくい方がいること:妊娠を希望する時期、血栓症のリスク要因がある場合、不正出血や気分の変化がある場合、「ピルに抵抗がある」場合などです。
服用中に効果が現れる治療であること:ホルモン療法は服用している間に効果が現れる治療で、中止すると月経痛が再び現れる可能性があります。
痛み以外の不調への対応:冷え・頭痛・むくみ・疲れ・気分の波・胃腸症状には、別の視点での対応が必要になる場合があります。
受診のしにくさ:受診率が低いとされ、症状があっても相談に至らないまま経過している方が多くいます。
西洋医学 vs 中医学 アプローチ比較
月経困難症に対する西洋医学と中医学のアプローチの違いを整理します。両者は対立するものではなく、それぞれの強みを活かして組み合わせることで、より包括的なサポートが可能です。
| 観点 | 西洋医学的アプローチ | 中医学的アプローチ |
|---|---|---|
| 病態の捉え方 | 子宮内膜でのPG増加、子宮筋の過収縮と虚血。原因疾患の有無で機能性・器質性に分類する | 子宮と月経を支える衝脈・任脈の気血の巡りが滞る「不通則痛」、気血が不足して子宮が養われない「不栄則痛」として把握する |
| 治療の目標 | 痛みの抑制、原因疾患の治療、月経の管理 | 気血の巡り・冷え・ストレス・消耗などの体質の偏りを整え、痛みが出にくい月経周期を目指す |
| 主な手段 | NSAIDs、OC/LEP、プロゲスチン製剤、手術 | 弁証にもとづく漢方処方、鍼灸(三陰交・関元・次髎など)、温め・食養生 |
| 強み | 痛みを速やかに和らげる。器質性疾患を診断し、治療できる | 痛み以外の冷え・頭痛・むくみ・疲れ・気分の波もあわせて診る。ホルモン療法を使いにくい方の選択肢になる。薬との併用で補完できる |
| 留意点 | 副作用や、妊娠希望時の使用制限がある | 器質性疾患を見逃さないため、婦人科での診断が前提。研究の質には限りがある |
中医学からの月経困難症の分析
中医学では、月経痛を「痛経(つうけい)」または「経行腹痛」と呼びます。基本の考え方は2つあります。気血の巡りが滞って起こる「不通則痛(通ぜざれば則ち痛む)」と、気血や腎の精気が不足して子宮が養われずに起こる「不栄則痛(栄えざれば則ち痛む)」です。病位は胞宮(子宮)と衝脈・任脈で、肝・脾・腎の働きと深く関わります。
脈診・舌診・腹診・問診の総合分析(弁証)によって体質の偏りを把握し、処方や鍼灸の方針を決めます。月経困難症でよく見られる証は次のとおりです。流派や文献によって分類は異なります。
ストレスや精神的な緊張で気の巡りが滞り、血の流れも滞った状態。月経前から月経初期に、下腹部が張るように痛み、押すと痛みが強い。経血に暗い色や塊が混じる、乳房や脇腹の張り、イライラがみられる。舌は暗紫色、脈は弦(張った脈)になりやすい。体力が中等度以上で臍の周囲に圧痛があれば桂枝茯苓丸、気分の波が強ければ加味逍遙散などが検討される。
冷えにより血の巡りが滞った状態。下腹部が冷えて痛み、温めると和らぐ。経血の色が暗く、塊を伴う。手足や腰の冷えがある。当帰四逆加呉茱萸生姜湯・温経湯などが検討され、鍼灸では温灸を用いる。中国では温経湯と鍼の併用が研究されている。
骨盤内に余分な水分と熱がこもり、血の巡りを妨げた状態。月経前から月経中に、灼熱感のある痛みや重だるい痛みがある。おりものが黄色く多い、口の苦み、便秘などを伴う。炎症性の疾患が隠れている場合もあるため、まず婦人科での確認を優先する。
気と血が不足し、子宮が十分に養われない状態(不栄則痛)。月経の終わりごろから月経後にシクシクと続く痛みで、押さえると和らぐ。経血は量が少なく薄い色。疲れやすい、顔色が白い、動悸、立ちくらみがある。細身で冷えやむくみがあれば当帰芍薬散、気血の不足が目立てば十全大補湯などが検討される。
肝血や腎の精気が不足し、子宮を養う力が弱まった状態。月経後に鈍い痛みが続き、腰や膝のだるさ、耳鳴り、夜間の頻尿を伴う。長く続く月経痛や、慢性的な疲労がある場合にみられる。六味丸・八味地黄丸など腎を補う処方、補腎を目的とした鍼灸が検討される。
この2つは、日本で月経困難症に用いられる代表的な処方で、どちらもプラセボ対照のランダム化比較試験が報告されています。慶應義塾大学病院漢方クリニックの168名を対象とした観察研究(Yoshinoら, 2016)では、当帰芍薬散が選ばれた群で、ふらつき・BMI 18.5未満・腹力の弱さが多く、桂枝茯苓丸が選ばれた群では、汗をかきやすい・暑がり・下肢のしびれ・腰の冷え・腹力の強さ・臍の周囲の圧痛が多いと報告されました。体型・体力・腹部所見の違いが、処方の選択に反映されていることを示す報告です。
漢方・鍼灸に関する研究報告の現状
月経困難症に対する鍼灸・漢方は、近年、系統的レビューやネットワーク・メタ解析が相次いで報告されています。
個々の試験の質が高くないもの(バイアスのリスクが高い、盲検化が難しい、評価方法や治療内容が試験ごとに異なる)が多く、「確実に効く」と言い切れる決定的な証拠は現時点でありません。一方で、痛みを軽減する可能性を示す報告が複数あります。重篤な有害事象は検討された範囲では目立たないと報告されていますが、有害事象のデータが十分でない試験も多くあります。
鍼灸に関する研究
Cochraneレビュー(Smithら, 2016)は、鍼・指圧のランダム化比較試験42件(4,640名)を検討し、証拠の質が低〜非常に低いため、有効性を判断するには不十分と結論しました。その後の報告では、Journal of Pain Research 2025年掲載のメタ解析(Wangら)が、経穴刺激は副作用を増やさずに痛みを軽減する可能性があるとしています(証拠の確実性は低〜中)。同誌2025年掲載のメタ解析(Shenら、14試験・970名)は、鍼の効果が治療終了後も最大3周期にわたって続く可能性を示しましたが、偽鍼との差は3周期後には認められず、バイアスのリスクが高く確実性は低いとされています。
非薬物療法のネットワーク・メタ解析(Liら, BMJ Evidence-Based Medicine 2024、33試験)では、運動・鍼・局所の温熱が短期的な痛みの軽減に役立つ可能性が示されました。経絡理論にもとづく中医学的介入のネットワーク・メタ解析(Chenら, Frontiers in Medicine 2024)では、経口避妊薬に加え、電気鍼・指圧・温鍼が有効性の高い介入として上位に位置づけられています。三陰交(SP6)への鍼・指圧のメタ解析(Raviら, Medical Acupuncture 2024)では、痛みの軽減が報告された一方、異質性が大きく、鍼が無関係な経穴より優れるとは示されなかった報告(Chenら, 2013)もあり、経穴ごとの違いについては議論が続いています。
中西医結合の臨床エビデンスを整理した報告(Integrative Medicine Research 2026)では、鍼と従来の西洋医学的治療を比較した39件のランダム化比較試験のうち、29件(74.4%)が複数の評価項目で鍼の優位を報告しています。ただし、同報告が同定した219件の文献等の79.9%が中国語文献で、質の評価には注意が必要です。単施設の後ろ向きコホート研究(Journal of Pain Research 2026)では、従来の治療に鍼を併用した群で3か月まで子宮血流の改善と痛みの軽減がみられ、6か月後には上乗せ効果が小さくなっており、継続した施術の重要性を示唆しています。
漢方に関する研究
Cochraneレビュー(Zhuら, 2008)は、中薬がNSAIDsや経口避妊薬などの従来治療と比べて痛みの軽減に有望な結果を示したものの、試験の質が低いと報告しました。54件のランダム化比較試験(5,345名)を対象としたネットワーク・メタ解析(European Journal of Integrative Medicine 2023)では、検討された7種類の漢方のうち四物湯と温経湯が痛みや症状の軽減で最も有効で、重篤な有害事象は認められませんでした。
日本では、当帰芍薬散について月経困難症の女性40名を対象としたプラセボ対照のランダム化比較試験(Kotaniら, 1997)が報告されています。温経湯と鍼の併用を、寒凝血瘀型の原発性月経困難症で西洋薬単独と比較したメタ解析(Zhaoら, Frontiers in Medicine 2025、11試験・1,024名)では、併用群でPGF2αの低下などが優れていたと報告されています。なお、温経湯は出典によって構成生薬が異なり、中国の研究で用いられる温経湯と、日本の保険診療で用いられる温経湯は同一とは限りません。
子宮内膜症に伴う痛みに対する漢方のランダム化比較試験のメタ解析(2025年7月までの文献)でも、月経困難症と性交時痛の軽減が報告されています。いずれも研究の質には限りがあり、器質性疾患に対する医療機関での治療に代わるものではありません。
タナココにおける漢方・鍼灸のサポート
弁証で把握した体質に合わせて処方を選びます。月経周期に合わせて、内容や飲むタイミングを調整します。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血の滞り(瘀血)をさばく処方。体力が中等度以上で、下腹部痛・肩こり・のぼせがあり、臍の周囲に圧痛がある方に。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):血を補い、水分の滞りをさばく処方。体力が弱めで、冷え・むくみ・立ちくらみ・疲れやすさを伴う月経痛に。
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう):筋肉のけいれん性の痛みを和らげる処方。痛みが強い時の頓服や、月経前後の期間に用いる。甘草を含むため、ほかの甘草含有処方との重複や長期連用による血圧・電解質への影響を、薬剤師が確認します。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう):手足の冷えが強く、冷えで下腹部痛が悪化する体質に。
温経湯(うんけいとう):冷えと血の不足が背景にあり、月経不順を伴う場合に。
加味逍遙散(かみしょうようさん):気の滞りによるイライラ・のぼせ・不安感が目立つ月経痛に。
これらは単独ではなく、弁証にもとづいて組み合わせます。処方の選択・用量は、年齢・体質・月経の状態・現在の症状・服薬状況に応じて個別に判断します。現在の処方薬との相互作用は、薬剤師が確認します。
気・血の巡りと、冷えに対応する経穴(けいけつ:ツボ)への刺激を通じて、下腹部・骨盤まわりの血流と自律神経のバランスを整えることを目指します。月経困難症でよく用いられる経穴の例は次のとおりです。
三陰交(さんいんこう):脾・肝・腎の3つの経絡が交わる経穴。月経・冷え・下腹部の調整に用いる代表的なツボで、鍼・指圧の研究が多い経穴のひとつ。
関元(かんげん)・気海(きかい):下腹部にあり、体の根本的なエネルギーを補う経穴。冷えが強い場合は温灸を併用する。
次髎(じりょう):仙骨部にある経穴。骨盤内の血流と、腰から下腹部にかけての痛みに用いる。
血海(けっかい):血の巡りを整える経穴。経血に塊が混じる、痛みが固定する体質に。
太衝(たいしょう):気の巡りを整える経穴。ストレスで悪化する月経痛・イライラに。
施術は、体質・証・現在の症状に合わせて経穴を選択します。月経前から整える考え方をとり、最初の3か月(3周期)を一つの目安に、月経のたびに痛みの強さ・鎮痛薬を飲む回数・日常生活への支障を確認しながら調整します。初回は体の反応を確認しながら丁寧に進めますので、「鍼灸ははじめて」という方もまずご相談ください。
下腹部・腰を温める(入浴、貼るカイロ)、冷たい飲食を控える、軽い運動を続ける、睡眠時間を確保する、経血量が多い方は食事で鉄分を意識する、といった方法があります。温熱と運動は、短期的な痛みの軽減に役立つ可能性が報告されています(Liら, 2024)。体質に合わせたセルフケアも、施術時にお伝えします。
タナココでは、現在受けている医療(婦人科での診断・処方薬の内容)をお聞きしながら、それと組み合わせる形で漢方・鍼灸のアプローチを考えます。「まず病院に行くべきか迷っている」という段階でも、ご相談から歓迎します。
「鎮痛薬が効かなくなってきた」「ピルに抵抗がある、または合わなかった」「妊娠の予定があり、ホルモン薬を使いにくい」「薬の量を減らしたい」「検査では異常がないと言われたが、毎月つらい」——どのような状況でも、現状をお聞きすることから始めます。薬剤師・鍼灸師・心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学の両面から、一人ひとりに合った提案をいたします。
よくある質問(FAQ)
生理痛と月経困難症は何が違いますか?
月経困難症は、年齢を重ねたり出産したりすると自然に軽くなりますか?
月経困難症に漢方・鍼灸は有効ですか?
ピルや鎮痛薬を使っていますが、漢方・鍼灸と併用できますか?
子宮内膜症や子宮筋腫が原因の月経困難症でも、漢方・鍼灸は受けられますか?
妊娠を希望していて、ホルモン薬を使いにくい場合でも相談できますか?
鍼灸はどのくらいの頻度・期間で受けるとよいですか?
どのような場合に婦人科を受診すべきですか?
月経困難症──「毎月のことだから」と我慢し続けなくてよい選択肢があります
毎月の痛みのために、予定を調整し、鎮痛薬の残りを気にしながら過ごす。その状態を、当たり前のものとは考えていません。
月経痛の背景には、気血の巡りの滞り、冷え、ストレス、消耗といった体質の偏りが関わっていることが多くあります。漢方と鍼灸でその偏りを一つずつ整え、鎮痛薬を飲む日や、痛みで動けない日を減らしていくことを目標に、責任を持って取り組みます。
「ピルや鎮痛薬で十分に抑えられない」「副作用が心配」「妊娠の予定があり、ホルモン薬を使いにくい」「薬の量を減らしたい」「検査では異常がないと言われた」——どのような状況でも、現状をお聞きすることから始めます。薬剤師・鍼灸師・心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学の両面から、一人ひとりに合った提案をいたします。
初回は、痛みの出方・月経周期・体質を丁寧にうかがい、3か月後の月経で変化を確認できるよう計画を立てます。まずは、現在の状態をお聞かせください。
