体位性頻脈症候群(POTS)と漢方・鍼灸

体位性頻脈症候群(POTS)とは|診断基準・原因・治療の限界と漢方・鍼灸によるサポート|相模原 タナココ
体位性頻脈症候群・POTS × 漢方・鍼灸 / 相模原 タナココ

体位性頻脈症候群(POTS)とは──
診断基準・原因・治療の現状と、体質から整えるアプローチ

立ち上がるたびに動悸がする。立っているだけで疲れ果てる。検査で「異常なし」と言われ、理解されないまま過ごしてきた方は少なくありません。

POTSは、起立時に心拍数が過剰に増える自律神経の病気です。気持ちや根性の問題ではなく、体の中で実際に起きている変化です。

このページでは、最新の研究に基づく病気の理解と、現在の治療の限界、そして中医学(漢方・鍼灸)で体質から支える方法を、できるだけ正確にお伝えします。

最終更新日:2026年10月30日

体位性頻脈症候群(POTS)の理解と体質へのアプローチ

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体位性頻脈症候群(POTS)とは何か

体位性頻脈症候群(Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome、以下POTS)とは、横になった状態から立ち上がると、血圧は大きく下がらないまま心拍数が過剰に増え、立っていることがつらくなる慢性の自律神経障害です。立位でめまい・動悸・強い疲労・頭がぼんやりする感覚(ブレインフォグ)などが続き、横になると楽になるのが特徴です。

日本では、小児の起立性調節障害(OD)の4つのサブタイプのひとつとして知られています。一方、海外では年齢を問わない独立した病気として扱われ、成人にも多く見られます。思春期から20代の女性に多く、新型コロナウイルス感染後に発症する方も報告されています。

POTSは、血圧が保たれているため「低血圧ではないから大丈夫」と見過ごされやすく、パニック症や「気の持ちよう」と誤解されることもあります。しかし、立位での心拍数の上昇は測定で確認でき、起きている変化は体の側にあります。

POTSと起立性調節障害(OD)の関係:

ODは、起立時の循環調節がうまく働かない状態の総称で、日本小児心身医学会のガイドラインでは起立直後性低血圧・体位性頻脈症候群・血管迷走神経性失神・遷延性起立性低血圧に分類されます。POTSはそのひとつです。本ページでは、POTSに絞って、診断から治療、中医学的な考え方までを説明します。ODの全体像については「起立性調節障害(OD)とは」のページをご覧ください。
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診断基準と検査

POTSの診断は、症状の確認、起立時の心拍数と血圧の測定、他の病気の除外によって行います。診察室で行える検査で評価できます。

1)国際的な診断基準

診断に必要な条件

  • 立位またはヘッドアップチルト試験の10分以内に、心拍数が30回/分以上増加する(12〜19歳は40回/分以上)
  • 起立性低血圧がない(収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上、持続して低下しない)
  • 起立時の不調が3か月以上続いている
  • 立位での症状が、横になると改善する
  • 頻脈を起こす他の原因が除外されている

診断の補足

  • 診断は、安静時からの心拍数の増加幅で判断する。立位の心拍数が持続して120回/分を超える場合は、不適切洞性頻脈との鑑別が必要になる
  • 起立後しばらくして血圧が下がる場合でも、頻脈が持続していれば、POTSは必ずしも否定されない
  • 2026年に発表された国際専門家コンセンサスでは、心拍数の基準に届かなくても、意味のある自律神経の不調が存在しうることに、専門家の意見が一致した

2)日本の小児ODでの基準

日本小児心身医学会のガイドラインで用いられる新起立試験では、起立後3分以降に、立位の心拍数が115回/分以上、または心拍数の増加が35回/分以上で、起立直後の血圧の急な低下を伴わない場合に、体位性頻脈症候群と判定します。国際基準と測定の考え方が異なるため、受診先でどの基準で評価されたかを確認しておくと、結果を正しく理解できます。

3)除外すべき病気と診断の注意点

初期評価で確認される主な項目

POTSと似た頻脈を起こす病気として、甲状腺機能の異常、貧血、脱水、副腎の病気、褐色細胞腫、心筋症・弁膜症・先天性心疾患、慢性の肺疾患、不整脈などがあります。また、刺激薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、利尿薬などの服用中の薬が頻脈の原因になることもあります。

心拍数や血圧の測定、血液検査、心電図などで確認します。症状が続く場合は、まず循環器内科・小児科・神経内科・自律神経外来などの医療機関で診断を受けることをお勧めします。

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症状:起立時の動悸から全身の不調まで

POTSの症状は、立位に関連するものと、立位に直接関係しない全身のものに分けられます。個人差が大きく、日常生活がほぼ保てる方から、学校や仕事が難しい方までいます。

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起立時の症状

動悸・心拍数の増加。立ちくらみ・めまい・目の前が暗くなる感覚。立っていると気分が悪くなる。息切れ。震え。視界のかすみ。脱力感。

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全身の症状

強い疲労感・倦怠感。運動後に回復しにくい。頭痛・片頭痛。吐き気・腹痛・便通の乱れ。胸の痛み・息苦しさ。

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認知・生活への影響

集中力・記憶力の低下(ブレインフォグ)。不安感や気分の落ち込み(症状に伴う二次的なもの)。学校・仕事・家事の継続が難しくなる。

「パニック症に似ている」と言われることがあります:

動悸・震え・不安感・息苦しさは、パニック症とも共通する症状です。ただしPOTSでは、起立すると症状が強まり、横になると軽くなるという姿勢との関係が目立ちます。「立っているときに悪化し、座る・横になると和らぐ」という変化があれば、受診時にその点を伝えてください。
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患者数と経過の見通し

項目報告されている内容特記事項
患者数米国で人口の約0.1〜1%と推計(2026年JAMA総説)国内でもODの一部として診断される。成人を含めた全体像の把握は進行中
好発年齢・性別13〜29歳に多く、約9割が女性新型コロナ感染後に発症する男性も増えているとされる
日本の小児OD体位性頻脈症候群は小児ODの約12〜13%との報告OD全体では中学生の約10%と推計される。割合は診断基準や報告により異なる
発症のきっかけ約3〜4割が、感染症(新型コロナ、EBウイルス、インフルエンザなど)の後に始まる手術などの後に始まる方もいる
経過青年期発症の方を追跡した米国の調査では、約5年後に19%が症状消失、51%が症状は残るが改善、16%が間欠的な症状回答率は34%で、結果には偏りの可能性がある
1年後の変化前向き研究では、1年後に37%が診断基準を満たさなくなり、多くの方で症状が改善58人の小規模研究

これらの報告から、多くの方が時間をかけて症状の改善を経験している一方、完全に症状が消える方は一部であり、成人後も症状が続く方がいることもわかります。POTSは「何もしなくても治る」病気とも、「一生変わらない」病気ともいえません。適切な評価と対策を重ねることで、日常生活の質を高めていける病気です。

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発症のメカニズム

POTSは単一の原因ではなく、複数の仕組みが重なって起こると考えられています。研究では、神経障害性・高アドレナリン性・循環血液量減少性などの型が提案されており、一人の中で複数が重なる場合もあります。

1)血液の貯留と循環血液量

立ち上がると、重力により血液が下半身や腹部の静脈にたまります。健康な方では血管がすぐに収縮してこれを補いますが、POTSでは心臓に戻る血液が減り、脳や心臓へ送る血液を保つために、心拍数が過剰に上がると説明されています。一部の方では循環血液量そのものが少ないことも報告されています。

2)自律神経(交感神経)の働きの偏り

下肢の血管を支配する交感神経の働きが部分的に弱い「神経障害性」、ノルアドレナリンの反応が強すぎる「高アドレナリン性」などが知られています。血圧を調節するホルモン系の反応が血液量の状態と合わない所見や、体力低下による心臓の小ささも、関与する因子として挙げられています。

3)感染後の変化と免疫の関与

約3〜4割の方が、感染症の数週間後に発症します。新型コロナ後の症状(ロングCOVID)でもPOTSが注目されており、2025年の総説でも、POTSの発症メカニズムとして自己免疫・循環血液量の減少・高アドレナリン状態・脳血流低下・小径線維ニューロパチーなどが挙げられています。自律神経に作用する受容体に対する自己抗体が一部の方で見つかっていますが、小規模な研究が中心で、原因との因果関係は証明されていません。

4)併存しやすい不調

POTSの方の多くは、他の不調を併せ持ちます。2026年のJAMA総説では、慢性的な片頭痛が約40%、過敏性腸症候群が約30%、過可動性型エーラス・ダンロス症候群が約25%、ME/CFS(慢性疲労症候群)が約2割、線維筋痛症が約2割と報告されています。これらが互いに影響し合い、症状を複雑にしていることがあります。

起立時に心拍数が上がり続けるプロセス(POTSの場合)

① 起立:重力により、下半身・腹部の静脈に血液が移動する。

② 心臓に戻る血液量の減少:静脈への貯留と血液量の少なさにより、心臓へ戻る血液が減る。

③ 交感神経の代償:脳や臓器への血流を保つため、交感神経が働いて心拍数が上がる。

④ POTSでの問題:血管の収縮が十分でないまま心拍数だけが過剰に上がり続け、血圧は保たれる。

⑤ 症状の発現:動悸・めまい・脱力感・ブレインフォグ・強い疲労などが起こり、横になると軽くなる。

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現在の治療とその限界

治療は、非薬物療法を土台に、症状に合わせて薬物療法を加える段階的な方法が推奨されています。

非薬物療法(第一選択)

  • 水分・塩分の摂取:水分は1日2〜3L、塩分は1日10〜12gが目安とされます。高血圧・腎疾患・心疾患のある方は、必ず主治医に相談してください。
  • 圧迫着衣:下半身や腹部の弾性ストッキング・腹帯で、血液の貯留を抑える。
  • 段階的な運動療法:横になった姿勢や座位でできる運動から始め、徐々に立位の運動へ進める。
  • ゆっくり起き上がる:横になる→座る→立つ、と段階を踏む。足踏みや足首の運動で血液を心臓に戻す。
  • 症状を悪化させる薬の見直し:刺激薬、SNRI、スピロノラクトン、α1遮断薬、血管拡張薬などは、主治医と相談して見直すことがある。

これらのうち、ランダム化比較試験の裏づけがあるのは、水分・塩分、圧迫着衣、段階的な運動療法です。圧迫着衣では、起立時の心拍数の増加が39回/分から23回/分に減った試験があり、12週間の運動プログラムで最大酸素摂取量が改善した試験があります。

薬物療法

米国ではPOTSに対する薬はすべて適応外使用であり、症状に合わせて選択します。日本でも、既存の薬を症状に応じて使い分けるのが実情です。

薬剤・分類主なねらい主な対象・注意点
プロプラノロール(β遮断薬)心拍数の過剰な上昇を抑える喘息・徐脈では使えない
イバブラジン洞結節に作用して心拍数を下げるPOTSでは適応外使用になる
ミドドリン末梢血管を収縮させ、血液の貯留を抑える臥位高血圧に注意。就寝前の服用は避ける
フルドロコルチゾン・デスモプレシン体内の水分・血液量を増やすむくみ・電解質への影響などに注意
クロニジン・グアンファシン過剰な交感神経の働きを抑える(高アドレナリン型)眠気・血圧低下に注意

治療だけでカバーしきれない部分

現在の治療の限界として挙げられる点

薬の効果には個人差があります:POTSの原因が複数あるため、同じ薬でも反応が大きく異なります。長期の大規模試験は少なく、症状の一部しか改善しないこともあります。

心拍数が下がっても、疲労やブレインフォグが残ることがあります:心拍数を抑える薬は頻脈に作用しますが、強い倦怠感、頭のぼんやり感、胃腸の不調などは別の対応が必要です。

運動療法は、始めること自体が難しい場合があります:有効性が高い一方、立位での症状や強い疲労のために、継続できない方がいます。

副作用への配慮:薬の種類によって、疲労感・血圧の変動・むくみなどの副作用があります。

診断までに時間がかかりやすい:検査で異常が出にくく、診断までに時間がかかることがあります。

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西洋医学 vs 中医学 アプローチ比較

両者は対立するものではなく、それぞれの強みを活かして組み合わせることで、より幅広いサポートが可能になります。

観点西洋医学的アプローチ中医学的アプローチ
病態の捉え方起立時の心拍数・血圧・循環血液量・神経機能・免疫などの指標で評価する気(エネルギー)・血(栄養物質)・陰(潤い)・陽気(温める力)の不足や偏り、水の滞り(痰飲)として、体質を全体から把握する
治療の目標心拍数の安定化、起立時症状の軽減気血の土台を整え、自律神経の調整力と日常の活動の幅を広げる
主な手段水分・塩分、圧迫着衣、運動療法、β遮断薬・ミドドリンなど弁証に基づく漢方処方、鍼灸、食事・睡眠・運動の養生指導
長所診断基準が明確で、頻脈や起立時症状への対応力がある倦怠感・胃腸・冷え・睡眠・気分など、全身の不調をまとめて診られる。薬が合わない方でも選択肢になりうる
限界・課題全身の疲労や胃腸症状への対応が限られ、薬の反応に個人差があるPOTSを対象とした大規模な比較試験は少なく、効果の現れ方には個人差がある
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中医学からのPOTS病態分析

中医学では、POTSを「心拍数や血圧の数値」だけでなく、「心悸(動悸)」「眩暈(めまい)」「虚労(慢性的な消耗)」といった症状のまとまりと、その背景にある体質の偏りとして分析します。脈診・舌診・腹診・問診を総合する弁証(べんしょう)によって、一人ひとりのパターンを把握し、処方と施術の方針を決めます。POTSで見られやすいパターンは次のとおりです。

きいんりょうきょ
気陰両虚(動悸・ほてりが目立つ型)

気(エネルギー)と陰(体を潤す物質)がともに不足した状態。動悸・息切れ・口の渇き・ほてり・寝汗・疲労感が重なる。炙甘草湯、生脈散(人参・麦門冬・五味子)などが検討される。

ひききょ / たんいん
脾気虚+痰飲(めまい・頭重の型)

消化とエネルギー産生を担う脾の働きが弱く、余分な水(痰飲)が滞り、頭へ気が昇りにくい状態。立ちくらみ・頭重感・胃腸の弱さ・朝の不調が目立つ。苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、補中益気湯などが検討される。

しんぴりょうきょ
心脾両虚(疲れ・不眠・不安の型)

脾の弱りで気血が作られず、心の働きも弱まった状態。動悸・不安感・不眠・食欲不振・疲れやすさが重なる。長く続いた消耗が背景にあることが多い。帰脾湯などが検討される。

かんきうっけつ
肝気鬱結(緊張・ストレスの型)

緊張やストレスで気の流れが滞った状態。いらいら・胸の圧迫感・頭痛・お腹の張り・症状の波が目立つ。柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、加味逍遙散などが検討される。

けっきょ
血虚(女性に多い型)

血(栄養物質)が不足した状態。顔色が白い・立ちくらみ・動悸・皮膚や髪の乾燥・月経の乱れ。当帰芍薬散、四物湯系、人参養栄湯などが検討される。

ひじんようきょ
脾腎陽虚(冷えが強い型)

体を温める力(陽気)が低下した状態。手足の冷え・むくみ・下痢傾向・強い倦怠感が目立つ。真武湯などの温める処方が、体質と年齢を見極めて検討される。

POTSで漢方を選ぶときの注意点(薬剤師の視点):

麻黄(まおう)を含む処方は、心拍数や血圧を上げる作用があり、動悸が強いPOTSでは慎重に判断します。甘草(かんぞう)を含む処方が重なると、血圧・むくみ・血清カリウム値に影響するため、複数の処方を併用する場合は量を確認します。現在の処方薬(β遮断薬・ミドドリン・フルドロコルチゾンなど)との組み合わせも、薬剤師が確認したうえで提案します。
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漢方・鍼灸に関する研究の現状

研究の現状と限界: POTSを直接の対象とした漢方・鍼灸の大規模なランダム化比較試験(RCT)は、現時点では確認できていません。「確実に効く」と言い切れる段階ではありませんが、関連する臨床報告と基礎研究は蓄積されています。

起立性調節障害・起立時のめまいに対する漢方の報告

日本の研究では、苓桂朮甘湯が起立性調節障害のめまい・動悸に用いられています。2020年には、起立性調節障害と診断された4人の女性に苓桂朮甘湯を用いた症例報告があり、全員が治療の継続を希望し、副作用はなかったと報告されました。2024年の前向き観察研究(8人、うちPOTS 3人)では、主要な評価項目に有意な改善は示されなかった一方、40歳未満の方は、それ以上の方よりも、めまい症状の評価点の改善が大きいという結果でした。人数が少なく、効果が確立しているとはいえませんが、年齢や体質によって反応が異なる可能性を示す結果として、参考になります。

鍼灸と自律神経に関する基礎研究

鍼灸と自律神経の関係は、基礎研究が進んでいる分野です。2021年にNature誌に掲載されたマウスの研究では、後肢の足三里(ST36)への低強度の電気鍼刺激が、迷走神経と副腎を介した経路を働かせ、腹部の天枢(ST25)では同じ反応が得られないことが示されました。ツボの部位によって、駆動される自律神経の経路が異なる可能性を示す研究です。マウスの炎症反応を対象としており、POTSでの効果を示すものではありませんが、ツボの選択に意味がある可能性を裏づける知見です。

自律神経に働きかける非薬物療法の研究

POTSに対しては、非侵襲的な迷走神経刺激が、見せかけの刺激(シャム)を対照にしたランダム化比較試験で検討されています。2か月後の起立時の心拍数の増加が、刺激群で17.6回/分、対照群で31.7回/分と、刺激群のほうが小さいことが報告されました。これは鍼灸そのものの試験ではなく、小規模な研究ですが、自律神経に穏やかに働きかけるアプローチがPOTSで検討されていることを示しています。

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タナココにおける漢方・鍼灸のサポート

漢方薬による体質へのアプローチ

タナココの漢方は、気・血・陰・陽気という体の土台を整え、自律神経の調整力と日常の活動の幅を広げることを目的とします。POTSでは、弁証に基づき、次のような方向性で処方を検討します。

炙甘草湯(しゃかんぞうとう)・生脈散(しょうみゃくさん):動悸・息切れ・ほてり・口の渇きを伴い、気と陰がともに不足するタイプに。


苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):立ちくらみ・動悸・頭重感があり、余分な水が滞るタイプに。起立時のめまいを表す古典の記載とも重なる処方です。


半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう):胃腸が弱く、めまい・頭重感・手足の冷えが重なるタイプに。


補中益気湯(ほちゅうえっきとう)・帰脾湯(きひとう):疲れやすく、胃腸が弱い。不安や不眠を伴うタイプに。


柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)・桂枝加竜骨牡蛎湯:緊張・不安・動悸・不眠が強く関わるタイプに。


当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):血虚の傾向があり、立ちくらみ・冷え・月経の乱れを伴う女性に。


これらは単独ではなく、弁証に基づいて組み合わせます。年齢・体格・体質・現在の症状・服薬状況に応じて、処方と量を個別に判断します。

鍼灸施術による自律神経・循環系へのアプローチ

鍼灸では、気・血・陽気に対応するツボへの刺激を通じて、自律神経の調整、末梢の循環、全身の消耗の回復を目指します。POTSでよく用いるツボの例は次のとおりです。

内関(ないかん)・神門(しんもん):動悸・不安感・不眠など、心の働きに関わる症状に。

足三里(あしさんり):脾胃を補い、全身の気血を増やす代表的なツボ。倦怠感や胃腸の不調に。

百会(ひゃくえ):頭頂部にあり、立ちくらみ・頭重感・頭のぼんやり感に。

三陰交(さんいんこう):脾・肝・腎を整えるツボ。冷え・月経の乱れ・睡眠に。

関元(かんげん)・気海(きかい):下腹部にあり、体を温めて根本のエネルギーを補う。灸と組み合わせることが多い。

施術は体質・証・その日の状態に合わせてツボを選びます。立位がつらい方には、横になった状態での施術も可能です。初回はお体の反応を確認しながら丁寧に進めますので、「鍼灸ははじめて」という方も、まずご相談ください。

タナココでは、現在受けている医療(診断の内容、処方薬、運動療法など)をお聞きしながら、それを土台に、体質の側から支える形で漢方・鍼灸を組み合わせます。通院先での診断が済んでいない段階でも、情報整理のご相談から受け付けています。

「薬を飲んでも疲労感が残る」「診断はついたが、他にできることを知りたい」「学校や仕事に戻る体力をつけたい」「ロングCOVIDの後から、立つのがつらい」——どのような状況でも、まず現状をお聞きします。薬剤師・鍼灸師・認定心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学、心理面の三つの視点から、一人ひとりに合った方針をご提案します。

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よくある質問(FAQ)

体位性頻脈症候群(POTS)は治りますか?
経過には個人差があります。青年期に発症した方を約5年追跡した米国の調査では、19%が症状消失、51%が症状は残るものの改善、16%が間欠的な症状でした。成人後も症状が続く方がいる一方、多くの方で改善がみられます。診断と生活面の対策を土台にしながら、体質面を支える漢方・鍼灸を組み合わせて、症状の軽減と活動の幅を広げることを目指します。
POTSと起立性調節障害(OD)の違いは何ですか?
日本では、POTSは小児の起立性調節障害の4つのサブタイプのひとつに位置づけられます。ODは主に思春期の診断名で、POTSは年齢を問わず使われます。診断基準も、国際基準(起立10分以内の心拍数増加30回/分以上、12〜19歳は40回/分以上)と、日本の小児ODの基準(起立3分以降の心拍数115回/分以上、または増加35回/分以上)で異なります。
POTSの診断は、何科で受けられますか?
循環器内科・神経内科・小児科(小児心身医学)・自律神経外来などで、起立試験やヘッドアップチルト試験を受けられます。受診前に、起立時に症状が出る場面、横になると楽になるか、服用中の薬、発症のきっかけ(感染症など)をメモしておくと診断の助けになります。
運動はしてもよいですか?
段階的な運動療法は、効果が示されている治療のひとつです。ただし、立位の運動から始めると症状が強まることがあるため、横になってできる運動から始め、少しずつ立位に移すのが一般的です。運動の強度は主治医と相談して決めてください。体力が落ちている方には、漢方や鍼灸で体の土台を整えながら、無理のない範囲で進めることも一つの方法です。
β遮断薬やミドドリンを使っていますが、漢方・鍼灸と併用できますか?
併用されることは多くあります。タナココでは、薬剤師資格を持つ担当者が、現在の処方薬との相互作用を確認したうえで提案します。たとえば、麻黄を含む処方は心拍数や血圧を上げることがあり、甘草を含む処方が重なると血圧・むくみ・カリウム値に影響するため、慎重に選びます。服用中の薬を自己判断で中止することは推奨しません。漢方・鍼灸を併用していることは、主治医にもお伝えください。
新型コロナ感染後から、立つと動悸がします。POTSでしょうか?
新型コロナ感染後の症状(ロングCOVID)では、POTSを含む自律神経の不調が注目されています。ただし、動悸や立ちくらみには、貧血・甲状腺の病気・不整脈などが関わることもあるため、まず医療機関で起立時の心拍数・血圧の測定を受け、他の原因を確認することが大切です。そのうえで、体質面のサポートとして漢方・鍼灸をご相談ください。
漢方・鍼灸で、改善までどれくらいかかりますか?
個人差が大きく、一概にはいえません。POTSの症状は数か月から年単位で変化する病気です。漢方・鍼灸でも、朝の調子、立っていられる時間、疲れの残り方といった変化を数か月単位で見守りながら進めるのが基本です。早い段階で変化を感じる方も、時間をかけて整えていく方もいます。タナココでは定期的に経過を確認し、体質の変化に応じて処方・施術を調整します。

体位性頻脈症候群(POTS)──立ち上がるたびの動悸と消耗を、体質の側からも支えます

立っているだけで動悸がする。午前中は動けない。診断はついたものの、薬だけでは疲れやブレインフォグが残る。そうしたつらさは、意志や性格の問題ではなく、自律神経と循環の調節に起きている変化によるものです。

気・血・陰・陽気という体の土台を整えること。自律神経の調整力を高めること。立って過ごせる時間と、できることを少しずつ増やしていくこと。そのために、漢方と鍼灸でできることを、最後まで一緒に考えます。

POTSは、時間をかけて改善していく方が多い病気です。症状に合わせた医療と、体質を支える中医学を組み合わせることで、回復への道筋をより確かなものにできると考えています。まずは現在の状況をお聞かせください。診断の内容、服用中の薬、一番つらい場面、これまでに試したこと。そこから、一人ひとりに合った方針をご提案します。

一歩ずつで構いません。ご相談をお待ちしています。

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