ストレスと咳と漢方

タナココ

ストレスで「咳」が出ることがありますが、とっても煩わしいです…

目次

【 心因性咳嗽 】と漢方治療

心因性咳嗽とは

心理的なストレスで「咳」が出ることがあります

「心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)」と言います

心因性咳嗽の原因

詳しいことは分かってはいませんが、不安・緊張が自律神経に影響を与え、その結果、脳にある咳中枢や気道粘膜が敏感になることで「咳」を引き起こすと考えられています

「咳」が主症状ですが、ときに、頭痛、めまい、吐き気、腹痛、発汗など、「自律神経」が乱れた時の症状も一緒に見られることもあります

心因性咳嗽による「咳」の特徴は、痰の絡まない乾いた咳ストレス時に悪化通勤や通学前に出る休日はでない、などです

この「心因性咳嗽」は、以前は子どもによく見られましたが、近年は大人で見られることが増えています

時期的には、大きく環境の変わる3月、4月年末年始に増える傾向があります

また年代としては、20代〜40代に多く、この時期は就職結婚妊娠・出産仕事での地位の変化など、人生の「節目」が重なる影響と考えられています

心因性咳嗽の治療

心因性咳嗽の治療で重要なのはストレスの原因を取り除くこと

…ですが、仕事や環境変化によるストレスの場合は、すぐに周囲の環境を変えるのが難しいこともあります

心因性咳嗽は慢性的に「咳」がでることで喉を痛めてしまうことが多く、その影響でさらに咳が出るという悪循環に陥ることがありますので、喉を守ることも悪化させないためには重要です

西洋医学的には、咳止めや吸入ステロイド、気管支拡張薬が用いられることがありますが、効果がないことが多いようです

心因性咳嗽の「漢方」治療

「心因性咳嗽」は中医学的にはストレスによって「気の巡り」を調整している「肝」という臓腑のはたらきが失調し、「気」の巡りが滞ったり、「気」が逆上して起こると考えます

気の巡りが滞る「気滞」、気の逆上する「気逆」などが起こると「咳」となって症状があらわれたり、喉や胸の辺りの詰まり感、みぞおちや脇腹が張って苦しい、頭痛、めまい、不安やイライラ、便秘なども起こりやすくなります

このような症状が見られた時は、「肝」をケアし、「気」の流れを整える処方を用います

半夏厚朴湯、柴朴湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、参蘇飲、柴胡加竜骨牡蠣湯、香蘇散などが試されます

また、処方を選択する時は、咳の症状だけでなく、咳以外に併発している症状や、「気」のトラブル以外に、「血」や「水」のトラブルがないか、「肝」以外に影響が出ている臓腑があるかどうかも参考にします

気が不足している場合は、人参や黄耆など、血が不足している場合は、当帰や鶏血藤など、水が滞っている場合は沢瀉や薏苡仁などを、「腎」の働きが弱って入れば、地黄、山薬などを使いますが、体質、体調によっても使える生薬、使いにくい生薬がありますので総合的に判断して処方を組み立てます

日常生活での注意

「心因性咳嗽」の症状が出ている時は、ストレスの原因を取り除く以外に、「体」のストレスを減らすことも重要です

体のストレスが蓄積すると、心のストレスに対する耐性も低下しやすくなります

睡眠を十分とること、生活リズムを大きく乱さないこと、胃腸に負担のかかる食事に気をつけることなどに気をつけて過ごしてください

また、体を動かすことは、ストレスを軽減することにも役立つという研究報告もあるため、無理のない範囲で、体を動かすことも「心因性咳嗽」の改善には役立ちます

中医学的にも体を動かすことは「気」の滞りなどを解消するための良い方法です

おわりに

「心因性咳嗽」は咳止めがあまり効果がないことも多く、「咳」が出ることへのストレスが、さらにストレスを悪化させ、悪循環に陥ってしまうこともしばしばです

心因性だからといって心療内科、精神科を受診して向精神薬を処方されても、原因の解決にはつながらなかったり、副作用で継続できなくなることもあります

カウンセリングや漢方では「心因性咳嗽」の原因に注目しつつ、からだ全体のバランスを整えることで、体と心への両面にアプローチし、症状の改善とともに再発を防ぐことも目標にしていきます

「心因性咳嗽」にお困りの方はカウンセリング、漢方をぜひお試しください

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