身体症状症(SSD)と漢方・鍼灸

身体症状症(SSD)とは|診断基準・原因・治療の全体像と漢方・鍼灸によるサポート|相模原 タナココ
身体症状症・SSD × 漢方・鍼灸 / 相模原 タナココ

身体症状症(SSD)とは──
検査で異常がなくても続く症状と、体質から整えるアプローチ

検査で大きな異常が見つからないのに、つらい症状が続いている。その症状は実際に感じられている苦痛であり、気のせいや仮病ではありません。

身体症状症は、痛み・疲労・めまい・動悸・胃腸の不調などの身体症状と、それに伴う不安や心配が結びつき、日常生活に影響が出ている状態です。診断基準、症状、発症のメカニズム、現在の治療とその限界までを、最新の研究を踏まえて整理しました。

西洋医学の診断と治療を土台に、漢方・鍼灸を通じて気・血・水の巡りと臓腑の働きを整えるアプローチで、タナココは回復に向けて一人ひとりに向き合います。

最終更新日:2026年10月31日

身体症状症(SSD)の理解と体質へのアプローチ

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身体症状症(SSD)とは何か

身体症状症(Somatic Symptom Disorder、以下SSD)とは、痛み・疲労感・めまい・動悸・胃腸の不調などの身体症状が続き、その症状や健康についての考え・感情・行動が過剰になることで、日常生活に支障が出ている状態です。アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5(2013年)で導入された診断名で、従来の「身体表現性障害」を再編して設けられました。

大きな特徴は、「医学的に説明できない症状であること」を診断の条件にしていない点です。DSM-5以降は、症状が何によって生じているかよりも、症状に伴う苦痛と、それに対する思考・感情・行動のあり方を重視します。2022年のDSM-5-TRでは、「心因性」「転換性障害」といった概念から離れ、身体の苦痛と心の苦痛が密接に関わるという考え方がより明確になりました(関口、精神医学、2023年)。身体の病気が見つかっている場合でも、症状への反応が不釣り合いに強く、生活に支障が出ていれば、SSDと診断されることがあります。

症状は、本人が実際に感じている苦痛です。意図的に装っているものではなく、気のせいや性格の問題として片づけられるものでもありません。一方で、検査で異常が見つからないまま受診を重ねる、症状の原因探しに多くの時間と気力を使うなど、本人も周囲も消耗しやすい状態です。必要なのは原因を一つに絞ることではなく、身体・心・生活の複数の面から整えていくことです。

この記事の要点:

SSDは、検査で異常が見つからない場合だけでなく、身体の病気があっても診断され得る疾患です。有病率は一般人口で約3.5〜7%とされ、調査方法によって幅があります。治療は、定期的な診察・症状についての説明・認知行動療法などの心理療法が中心ですが、効果は小〜中程度とされており、身体面を整える選択肢も求められています。中医学(漢方・鍼灸)は、複数の症状を気・血・水の巡りと臓腑の働きの偏りとしてまとめて捉え、体質から整える視点を持っています。SSDを対象にした漢方・鍼灸の大規模な比較試験は限られていますが、2025年のメタ解析では、抗うつ薬に鍼治療を併用すると不安の症状に追加の効果が得られる可能性が示されました。
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診断基準と分類(DSM-5-TR・ICD-11)

SSDの診断は、DSM-5-TR(2022年)の基準に基づいて、精神科・心療内科などで行われます。診断には、症状の聞き取りと、身体の病気の評価の両方が必要です。

1)DSM-5-TRの診断基準

診断基準(A〜Cのすべてを満たす)

  • A:苦痛を伴う、または日常生活に大きな支障をもたらす身体症状が1つ以上ある
  • B:身体症状やそれに伴う健康への懸念について、過剰な思考・感情・行動がある(基準Bの3つの項目のうち少なくとも1つ)
  • C:個々の症状は続いていなくても、症状のある状態が持続している(通常6か月以上)

基準Bの3つの項目(1つ以上)

  • 症状の深刻さについて、釣り合わない考えが持続する
  • 健康や症状について、持続的に強い不安がある
  • 症状や健康への懸念に、過剰な時間とエネルギーを費やしている

2)特定用語と重症度

疼痛が主体の場合は「疼痛が主体のもの」、症状が重く、著しい障害を伴い、6か月を超えて続く場合は「持続性」という特定用語が付されます。重症度は、基準Bのうち満たす項目が1つであれば軽度、2つ以上であれば中等度、2つ以上に加えて複数の身体症状(または非常に重い身体症状が1つ)があれば重度とされます(Kurlansik & Maffei、American Family Physician、2016年)。

3)ICD-11の「身体的苦痛症」

WHOのICD-11では、SSDに近い診断として「身体的苦痛症(Bodily distress disorder、コード6C20)」が設けられています。苦痛を伴う身体症状と、その症状への過剰な注意があること、適切な診察・検査・説明を受けても過剰な注意が和らがないこと、症状がほとんどの日に少なくとも数か月続いていることが特徴です。軽度・中等度・重度に分けられ、症状へのとらわれの程度(1日1時間未満か、1時間を超えるか)と、生活機能の障害の程度によって判断されます。

DSM-5のSSDとICD-11の身体的苦痛症は、基準の設け方が異なります。両者は完全には重ならず、一方にのみ当てはまる方もいます。

4)似た診断との違い

診断名特徴SSDとの違い
病気不安症身体症状がないか、あっても軽く、重い病気にかかっている(かかる)ことへの不安が中心SSDは身体症状が前面に出て、多様かつ持続的である
機能性神経症状症(転換性障害)運動機能や感覚機能の変化(脱力、感覚の異常、発作のような症状など)が中心SSDは痛み・疲労・胃腸症状など多様な症状が対象で、過剰な思考・感情・行動を伴う
全般不安症・うつ病不安や気分の落ち込みが中心で、身体症状を伴うことがあるSSDは身体症状が前面に出る。ただし、SSDと併存することも多い
作為症・詐病症状を意図的に作り出す(作為症は外的な報酬がない場合、詐病は外的な報酬を目的とする場合)SSDの症状は意図的に作り出されたものではない

5)診断の進め方

まず、治療可能な身体疾患がないかを評価します。治療可能な身体疾患があれば、その治療が優先されます。神経疾患や内分泌疾患は見落とされやすいとされ、身体面の評価は欠かせません。そのうえで、症状に対する思考・感情・行動のあり方を確認し、DSM-5-TRの基準に照らして診断します。

症状の重さの評価にはPHQ-15(身体症状の自己評価尺度)やその短縮版SSS-8、基準Bの心理的な側面の評価にはSSD-12(Somatic Symptom Disorder–B Criteria Scale)などの質問票が使われます。

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症状:身体・思考・生活への影響

SSDで見られる症状は多様で、特定の臓器に限られません。症状の強さは軽いものから重いものまで幅があり、時期によって別の症状に移り変わることもあります。ICD-11の定義でも、身体的苦痛症は通常、時間とともに変化する複数の身体症状を伴うとされています。

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身体症状(体の感覚)

痛み(頭痛・腰痛・腹痛・胸の痛みなど)。疲労感・だるさ。めまい・ふらつき。動悸・息苦しさ。胃腸の不調(吐き気・腹部の張り・下痢・便秘)。しびれや感覚の違和感。複数の症状が重なったり、時期によって移り変わったりします。

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思考・感情・行動の特徴

症状の深刻さについて強く考える。重い病気ではないかという不安が続く。症状について調べたり、受診したりする時間が多い。検査で異常がなくても不安が和らぎにくい。症状が出そうな場面を避ける。

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生活への影響

仕事や学業の効率の低下、欠勤・欠席。家事・外出・趣味の減少。家族や周囲との関係の緊張。睡眠の乱れ。気分の落ち込みや不安の併存。症状が生活の中心になっていくこともあります。

症状が複数の系統にまたがることが多い:

SSDの患者を対象にした前向きコホート研究(SOMA.SSD)のベースラインデータの解析(Smakowskiら、Journal of Psychosomatic Research、2026年)では、約87%の方が、複数の身体系統にまたがる機能性身体症状の基準を満たしていました。こうした方では、健康不安や身体感覚への敏感さ(身体感覚増幅)、抑うつ症状などが高い傾向がありました。横断的な解析のため、因果関係までは示されていませんが、SSDの症状を一つの臓器の問題として捉えにくい理由を示す結果です。
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有病率と現状

SSDは、診断基準が新しいこともあり、有病率は調査の方法や対象によって幅があります。医療機関を受診する方の中では、決して珍しくない状態です。

対象・調査数値の目安特記事項
一般人口(DSM-5の推計)約5〜7%DSM-5に記載された推計値
一般人口(構造化面接)SSD 3.5%、身体的苦痛症(ICD-11)2.0%、いずれか4.1%香港・フィリピン・カタールの調査(Gurejeら、World Psychiatry、2025年)。香港で最も高く、文化・社会的要因の関与が示唆された
一般人口(質問票を用いた研究の平均)約12.9%Löweら、Psychological Medicine、2022年のスコーピングレビュー。質問票による結果のため、診断に至る方に加えて「リスクのある群」を含む数字と考察されている
ドイツの一般人口4.5%Häuserら、2020年
プライマリケア(かかりつけ医)の受診者約17%Kurlansik & Maffei、American Family Physician、2016年
中国の総合病院外来33.8%Caoら、2020年
慢性咳嗽の患者(中国)13.8%(難治性では27.7%、非難治性では7.8%)Zhangら、BMC Pulmonary Medicine、2026年。特定の症状で受診している集団ではSSDの割合が高くなり得ることを示している

女性に多い傾向が報告されており、幼少期・思春期・成人期のいずれでも発症し得ます。上記には海外の調査が含まれ、診断基準や調査方法によって数値が異なります。

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発症のメカニズム

SSDで身体症状が生じるメカニズムは、現時点では完全には解明されていません。ただし、発症のリスク因子や、症状を長引かせる要因は少しずつ明らかになっており、複数の要因が重なって成り立つ状態と考えられています。

1)脳が「予測」で身体感覚をつくる仕組み

近年有力な考え方のひとつが「予測処理モデル」です。脳は身体からの信号を受け取るだけでなく、過去の経験や期待をもとに「次はこういう感覚が来るはずだ」と予測し、予測と実際の信号を照らし合わせながら感覚をつくっているという考え方です。Henningsenら(Psychosomatic Medicine、2018年)は、この枠組みで持続する身体症状を「知覚の調節の乱れ」として説明しました。症状への期待は、症状が増幅される段階だけでなく、症状の知覚の土台にも関わるとされています。

身体の信号をどれだけ正確に感じ取れるかを調べた研究のメタ解析(Woltersら、PLOS ONE、2022年)では、機能性症候群では正確性の低下が中程度に認められた一方、SSDと病気不安症では明確な差が見られませんでした。その代わりに、感じ取った信号を「症状」として答えやすい傾向(反応バイアス)に、小さな差が認められました。信号そのものよりも、その受け止め方や解釈が関わる可能性を示す結果です。

2)注意・不安・行動の循環

SSDでは、症状への注意の向き方、症状の解釈、それに伴う行動が、症状を維持する方向に働くことが知られています。認知行動療法では、次のような循環として整理されます。

症状が維持される循環(一般的なモデル)

① 身体感覚の発生:疲労・緊張・睡眠不足・食事・天候などによって、誰にでも起こる身体感覚が生じる。

② 注意と解釈:その感覚に注意が向き、「重い病気ではないか」「悪化するのではないか」と解釈する。

③ 不安・緊張の高まり:不安によって自律神経が反応し、動悸・筋肉の緊張・胃腸の動きの変化などが生じ、感覚がさらに強まる。

④ 行動の変化:検査や受診の繰り返し、情報収集、活動の回避、休息の増加などが起こる。

⑤ 症状の維持:活動量の低下・睡眠の乱れ・体力の低下によって症状が出やすくなり、不安もさらに強まる。

3)自律神経・痛みの処理と脳の研究

身体症状の中でも疼痛は、認知や感情によって脳の中で引き起こされ得ることが示唆されています。ストレスに対する自律神経の反応が、動悸・筋緊張・胃腸症状などとして現れることも、日常的によく見られる現象です。

脳画像を用いた研究も進められています。2026年には、胸痛を主症状とするSSD患者56名と健常者46名を比較した安静時fMRI研究(Dingら、Scientific Reports)や、慢性咳嗽を伴うSSD患者の画像解析(Zhangら、BMC Pulmonary Medicine)で、局所の脳活動に差が報告されています。いずれも小規模・探索的な研究であり、診断や治療に直結する段階ではありませんが、SSDを「気のせい」ではなく、脳と身体の働き方の違いとして捉える研究が積み重ねられています。

4)背景にある要因

Löwe & Gerloff(2018年)は、過去の逆境的な出来事、症状についての非機能的な認知、期待、ネガティブな感情、不適応的な行動などが、身体症状の知覚・持続・悪化に影響すると整理しています。不安や抑うつの併存、慢性の身体疾患との関連も指摘されています。

青年期(14〜21歳、172名)の横断研究(Eichhornら、BMC Psychology、2025年)では、神経質傾向(r=0.39)と完璧主義(r=0.23)が、身体症状の多さと関連していました。横断研究のため、因果関係までは示せませんが、感情の感じ方や完璧を求める傾向が、身体症状の訴えと関わる可能性が示されています。

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現在の治療とその課題

SSDの治療は、定期的な診察による信頼関係づくり、症状についての説明(心理教育)、心理療法を柱として、併存する不安・抑うつに対する薬物療法を組み合わせて行われます。国際的に統一されたガイドラインはまだなく、SSDそのものを対象に承認された薬もないとされています(Zhaoら、Frontiers in Medicine、2025年)。

診察と心理教育

特定の医師が定期的に診察を行うこと、症状を現実の苦痛として受け止めること、不要な検査や専門科への紹介を重ねないことが、基本とされています(Kurlansik & Maffei、2016年)。症状が出たときだけ受診するのではなく、あらかじめ決めた間隔で短い診察を続けることで、症状が悪化したときの受診を減らし得るという考え方もあります。

心理療法

MSDマニュアル(プロフェッショナル版)は、SSDの一次的な介入として精神療法(特に認知行動療法)を挙げています。認知行動療法やマインドフルネスに基づく療法の有効性が報告されています(Kurlansik & Maffei、2016年)。一方、心理療法の群間効果量は、メタ解析でおおむね小〜中程度(Cohenのd=0.11〜0.40程度)にとどまります。発症から早い段階での心理的介入を調べた30件の試験の解析(Berezowskiら、Psychosomatic Medicine、2022年)では、追跡時点で身体症状の重さ(g=0.25)と医療機関の利用(g=0.31)に改善が認められました。著者らは、効果が中程度にとどまる背景として、症状の慢性化の可能性を挙げています。

薬物療法

併存する不安や抑うつがある場合を中心に、新世代抗うつ薬(SSRI・SNRIなど)が検討されます。Cochraneレビュー(Kleinstäuberら、2014年)では、26件のRCT(2,159名)を解析し、新世代抗うつ薬は身体症状の重さを軽減する結果でしたが、エビデンスの質は「非常に低い」と評価されました。三環系抗うつ薬では、プラセボとの明確な差は示されませんでした。副作用による脱落が0〜32%と幅があり、薬の副作用が身体感覚を増幅し得ること、追跡期間が最長12週であることも指摘されています。

現在の治療だけではカバーしきれない部分

西洋医学的治療を補う視点が求められる点

心理療法を受けにくい場合があること:心理療法は、実施できる治療者が限られ、費用や通院の負担があります。「心の問題と言われた」と受け止められて、受け入れにくいと感じる方もいます(Zhaoら、2025年)。

効果が小〜中程度にとどまること:心理療法・薬物療法ともに、効果は小〜中程度とされ、慢性化している場合は時間がかかります。

薬の副作用への配慮:抗うつ薬では、副作用が症状への注意を強めたり、継続を難しくしたりすることがあります。

身体面の不調そのものへの手当:睡眠・胃腸・冷え・肩こり・疲労・痛みといった身体の不調そのものを和らげる手段は、心理療法や薬だけでは限られる場合があります。

症状が理解されにくいこと:検査で異常が見つからないことで、症状を理解されていないと感じやすく、受診の繰り返しや周囲との行き違いにつながることがあります。

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近年の研究動向(2025〜2026年)

SSDに関する研究は、診断基準の導入後に増えています。ここでは、2025〜2026年に報告された主な研究を整理します。

研究(発表年)内容位置づけ
Gurejeら(2025年)World Psychiatry香港・フィリピン・カタールの一般成人を対象に、ICD-11の身体的苦痛症とDSM-5のSSDの有病率を調査点有病率はSSD 3.5%、身体的苦痛症2.0%、いずれか4.1%。香港で最も高く、文化・社会的要因の関与が示唆された
Zhaoら(2025年)Frontiers in MedicineSSDに対する鍼治療のRCTを対象としたメタ解析(5件・376名、すべて中国)抗うつ薬への鍼治療の併用で、4週時点の不安症状に追加の効果が示唆された。痛みへの効果は一貫せず、エビデンスの確実性は低い
Hallbergら(2025年)Frontiers in Psychiatryインターネットで提供される「感情の気づきと表現療法」の1年後の追跡長期的に良好な効果が示唆された。対照群を置いた比較や他の治療との比較が必要
Eichhornら(2025年)BMC Psychology青年期172名で、神経質傾向・完璧主義・内受容感覚と身体症状の関係を検討神経質傾向と完璧主義は身体症状と関連。横断研究のため因果関係は不明
Smakowskiら(2026年)Journal of Psychosomatic ResearchSOMA.SSDコホートのベースライン解析約87%が複数の身体系統にまたがる機能性身体症状の基準を満たし、健康不安や身体感覚増幅が高い傾向
Zhangら(2026年)BMC Pulmonary Medicine慢性咳嗽463名でSSDの割合と脳画像を検討SSDは13.8%(難治性27.7%)。24名の画像解析で、症状への固執に自己モニタリングの低下が関わる可能性が考察された(探索的)
Dingら(2026年)Scientific Reports胸痛を主症状とするSSD患者56名と健常者46名の安静時fMRI複数の脳領域で局所脳活動に差。治療標的の探索につながる可能性があるが、診断や治療に直結する段階ではない
研究の読み方:

これらの多くは、横断研究・小規模研究・探索的研究です。SSDの原因や治療法が確立したことを示すものではありません。ただし、SSDを「気のせい」ではなく、脳・身体・心理・社会の複数の要因が関わる状態として捉え、検証していく研究が着実に進んでいます。
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西洋医学 vs 中医学 アプローチ比較

SSDに対する西洋医学と中医学のアプローチの違いを整理します。両者は対立するものではなく、それぞれの強みを活かして組み合わせることで、より包括的なサポートが可能です。

観点西洋医学的アプローチ中医学的アプローチ
病態の捉え方身体症状と、それに対する過剰な思考・感情・行動。予測・注意・不安の循環など、心理・行動・神経の観点から評価する複数の症状を、気・血・水の巡りと、肝・脾・心などの働きの偏りとしてまとめ、一つの体質(証)として捉える
治療の目標症状による苦痛と生活の支障を軽減し、症状へのとらわれを和らげ、機能を回復させる気・血・水の巡りと臓腑の働きを整え、睡眠・食欲・胃腸・痛み・疲労といった体の土台から、症状の出にくい状態を目指す
主な治療手段定期的な診察、心理教育、認知行動療法などの心理療法、併存する不安・抑うつへの薬物療法弁証に基づく漢方処方(半夏厚朴湯・加味逍遙散・四逆散・柴胡加竜骨牡蛎湯・帰脾湯など)、鍼灸(神門・内関・太衝・足三里など)、養生指導
長所診断基準が明確。心理療法の科学的根拠が蓄積されている。身体疾患の除外ができる検査値に表れにくい不調も含めて全体を診る。複数の症状を一つの体質として扱える。時間をかけて話を聞き、体に触れて確認する。日常の養生と組み合わせやすい
限界・課題効果は小〜中程度。心理療法を受けられる場が限られる。身体の不調そのものへの手当は限られるSSDを対象にした質の高い比較試験が少ない。効果の出方に個人差がある。心理療法の代わりにはならない
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中医学からのSSD病態分析

中医学には「身体症状症」という病名はありません。しかし、気持ちの停滞による不調を指す「郁証(うつしょう)」、のどに異物があるような感覚を指す「梅核気(ばいかくき)」、不眠・動悸・胸苦しさなど、SSDで見られる症状に対応する考え方が古くからあり、症状の組み合わせと体質を見分けて対応してきました。

中医学では、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の「七情」が過度に、あるいは長く続くことが、臓腑の働きに影響すると考えます(七情内傷)。怒りの抑え込みや緊張の持続は、肝の疏泄(気の巡りを調える働き)を乱します。思い悩みの持続は、脾の運化(飲食物を消化し、気血を生み出す働き)を弱めます。不安・驚き・恐れが続くと、心や腎に影響すると考えます。

脈診・舌診・腹診・問診の総合分析(弁証〔べんしょう〕)によって体質の偏りを把握し、処方や鍼灸の方針を決めます。同じSSDでも、証が違えば方針が変わります(同病異治)。SSDでよく見られる証(体質のパターン)は次のとおりです。

かんきうっけつ
肝気鬱結(ストレス・緊張型)

ストレスや緊張の持続によって、肝の疏泄が滞り、気の巡りが停滞した状態。ため息が多い、胸や脇腹の張り、いらだち、のどのつかえ、頭痛、肩こりが目立ち、症状がストレスで悪化する。逍遙散・加味逍遙散・四逆散・柴胡加竜骨牡蛎湯などが検討される。

かんぴふわ
肝脾不和(緊張が胃腸に出る型)

肝の気の滞りが、脾の運化に影響した状態(肝→脾)。緊張やストレスで腹痛・下痢・便秘・腹部の張り・食欲の波が出る。四逆散・逍遙散などが検討され、脾の弱りが強い場合は、六君子湯など脾を補う処方を組み合わせる。

たんきうっけつ
痰気鬱結(のどの異物感型)

気の滞りに、体内の余分な水分が変化した痰が絡み、のどや胸に詰まったような感覚が生じる状態(梅核気)。のどのつかえ、胸苦しさ、吐き気、不安感を伴う。半夏厚朴湯が代表的な処方。

しんぴりょうきょ
心脾両虚(思い悩みと疲労型)

思い悩みの持続や疲労で脾の運化が弱り、気血の生成が不足して、心を養えなくなった状態。不眠、動悸、不安、倦怠感、食欲不振、物忘れが重なる。帰脾湯・加味帰脾湯が検討される。

けっきょ・いんきょ
血虚・陰虚(消耗と不眠の型)

血や陰液(体を潤す物質)が不足して、心神が安定しない状態。疲れているのに眠れない、眠りが浅い、動悸、ほてり、口の渇きが目立つ。酸棗仁湯が検討される。血虚を背景に、いらだち・筋肉の緊張・寝つきの悪さが強い場合は抑肝散が検討される。

きたいけつお
気滞血瘀(痛みが固定する型)

気の滞りが長引き、血の巡りも滞った状態。刺すような痛み、場所の決まった痛み、慢性の肩こりや頭痛、唇や舌の色が暗いといった所見が見られる。桂枝茯苓丸・疎経活血湯などが検討され、鍼灸で局所と全身の巡りを整える。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)がSSDで用いられる理由:

半夏厚朴湯は、半夏・茯苓・厚朴・蘇葉・生姜の5つの生薬からなる漢方処方です。中医学的には「理気化痰(気を巡らせ、痰をさばく)」の働きを持つとされます。古典『金匱要略』の婦人雑病の項に、のどに焼いた肉片が貼りついたような感覚(梅核気)に半夏厚朴湯を用いるという記載があります。日本では、気分がふさぎ、のどや食道に異物感があり、動悸・めまい・吐き気などを伴うものに用いられ、不安神経症や不眠症などが効能・効果に挙げられています。心療内科医の岡孝和氏(日本医事新報、2022年)は、いろいろな身体症状を次々に訴える身体症状症の患者で、訴えの中にのどの狭窄感が含まれる場合は、半夏厚朴湯がよい適応であると述べています。
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漢方・鍼灸に関する研究報告の現状

SSDを主な対象とした漢方・鍼灸の大規模なランダム化比較試験(RCT)は、現時点では限られています。一方で、鍼治療については、SSDを対象としたメタ解析が2025年に報告されました。関連する慢性痛の研究と合わせて、現状を整理します。

研究の現状と限界:

SSDを直接の対象とした漢方・鍼灸の質の高い大規模RCTは少なく、「確実に効く」と言い切れる段階ではありません。参加者数の少なさ、鍼灸では盲検化が難しいこと、評価の物差しの多様性などの課題があります。ただし、抗うつ薬との併用を検討した試験が積み重なりつつあり、補完的な選択肢として検証が続けられています。

鍼治療:SSDを対象とした2025年のメタ解析

Zhaoら(Frontiers in Medicine、2025年)は、DSM-5またはICD-11の基準でSSD・身体的苦痛症と診断された方に対する鍼治療のRCTを、8つのデータベースから検索し、条件を満たした5件(合計376名、すべて中国の研究)を解析しました。4件は、鍼治療に抗うつ薬(パロキセチンまたはデュロキセチン)を併用した群と、抗うつ薬のみの群を比較したものです。

その結果、不安の評価(ハミルトン不安尺度)の改善幅は、併用群で4週時点に有意に大きく(平均差−1.94点)、6〜8週時点では境界域の差(p=0.05)でした。痛みの数値評価尺度(NRS)には、有意な差が見られませんでした。有害事象の発生率は、併用群と抗うつ薬のみの群で同程度でした。一方で、すべての研究にバイアスのリスクがあり、エビデンスの確実性は「低い」から「非常に低い」と評価されています。著者らは、鍼治療と抗うつ薬の併用が不安に追加の効果をもたらす可能性を示しつつ、質の高い大規模RCTが必要と結論づけています。

鍼治療:慢性痛に関する大規模解析

SSDを対象とした研究ではありませんが、Vickersら(Journal of Pain、2018年)は、39件の質の高いRCT・20,827名の個別患者データを解析しました。慢性の筋骨格系の痛み、変形性関節症、慢性頭痛、肩の痛みで、鍼治療は無治療に対しておよそ0.5標準偏差、偽鍼(シャム)に対しておよそ0.2標準偏差、痛みを大きく軽減しました。効果は1年後も持続していました(約15%の減少にとどまる)。SSDにそのまま当てはめられる結果ではありませんが、痛みを主な症状とする方が鍼灸を検討する際の参考になります。

鍼灸が影響し得る体の仕組み

うつ病に関する総説(Liら、Chinese Medicine、2024年)では、鍼治療が脳の機能ネットワーク、神経伝達物質、神経内分泌系、神経可塑性などに働く可能性が整理されています。SSDにおける作用の仕組みについては、今後の研究の蓄積が待たれる分野です。

漢方薬について

SSDを主な対象とした漢方薬の質の高い比較試験は限られています。一方で、国内の心療内科・漢方外来では、気分のふさぎ、不安感、神経過敏、いらだちなどに対して、体力や随伴症状に応じて、半夏厚朴湯・加味逍遙散・柴胡加竜骨牡蛎湯・加味帰脾湯などを使い分ける考え方が、臨床で受け継がれてきました。岡孝和氏(日本医事新報、2022年)の解説のように、SSDの診療経験をもとにした報告もあります。これらは臨床経験や症例の蓄積にもとづくもので、効果を確立するものではありませんが、体質に合わせた処方を、経過を見ながら調整していく参考になります。

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タナココにおける漢方・鍼灸のサポート

漢方薬による体質へのアプローチ

タナココの漢方では、「気・血・水の巡りと、肝・脾・心の働きを整えることで、症状が出にくい体の土台をつくる」ことを目的とします。同じSSDでも体質は一人ひとり異なるため、弁証に基づいて処方を選びます。主な方向性は次のとおりです。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):のどのつかえ、胸苦しさ、不安感、吐き気が重なるタイプ(痰気鬱結)に。気を巡らせ、痰をさばく。

加味逍遙散(かみしょうようさん):いらだち・不安・のぼせ・肩こり・疲れやすさが重なり、ストレスで悪化するタイプ(肝気鬱結に血虚を伴う)に。

四逆散(しぎゃくさん):緊張しやすく、みぞおちや脇腹が張り、手足が冷えやすいタイプ(肝気鬱結・肝脾不和)に。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):不安感・動悸・不眠・驚きやすさが強く、気の滞りが目立つ場合に。

抑肝散(よくかんさん):血虚を背景に、いらだち・筋肉の緊張・寝つきの悪さが強い場合に。

帰脾湯(きひとう)・加味帰脾湯(かみきひとう):思い悩みと疲労が続き、不眠・動悸・食欲不振・倦怠感が重なるタイプ(心脾両虚)に。

酸棗仁湯(さんそうにんとう):疲れているのに眠れない、眠りが浅いタイプ(血虚・陰虚)に。

六君子湯(りっくんしとう):食欲不振・胃もたれ・吐き気など、脾の弱りが目立つ場合に。

これらは単独ではなく、弁証に基づいて組み合わせます。処方の選択・用量は、年齢・体格・体質・現在の症状・服薬状況に応じて個別に判断します。抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬などを服用している場合は、薬剤師の資格を持つ担当者が相互作用を確認します。甘草を含む処方が重なる場合の血圧・電解質への影響や、山梔子を含む処方を長く続ける場合の経過確認も行います。

鍼灸施術による体の緊張・循環・自律神経へのアプローチ

鍼灸では、気・血・水の巡りと臓腑の働きに対応する経穴(けいけつ:ツボ)への刺激を通じて、体の緊張や末梢循環、自律神経の働きを整えることを目指します。SSDでよく用いられる経穴の例は次のとおりです。

神門(しんもん):手首の小指側にある心経のツボ。心神を安定させ、不安感・動悸・不眠に。

内関(ないかん):前腕の内側にある心包経のツボ。胸苦しさ・動悸・吐き気・不安感に。気の巡りを整える。

太衝(たいしょう)・合谷(ごうこく):足の甲(肝経)と手の甲(大腸経)のツボ。組み合わせて気の巡りを整え、いらだち・緊張・頭痛・肩こりに。

百会(ひゃくえ)・印堂(いんどう):頭頂部と眉間のツボ。心神を落ち着け、頭の重さ・不眠に。

足三里(あしさんり)・中脘(ちゅうかん):脾胃の働きを助けるツボ。食欲不振・胃もたれ・疲れやすさに。胃腸が弱い方にはお灸も用います。

三陰交(さんいんこう):脾・肝・腎を整えるツボ。冷え・不眠・月経の不調に。

肝兪(かんゆ)・脾兪(ひゆ)・心兪(しんゆ):背中にある背部兪穴。それぞれ肝・脾・心の働きを整える。

施術は、体質・証・現在の症状に合わせて経穴を選びます。初回はお体の反応を確認しながら進めます。刺激に敏感な方や、鍼灸がはじめての方には、細い鍼・浅い刺激・お灸を中心とした施術から始めることもできます。

診察と通院の進め方

初回は、症状の経過、これまでの検査と治療、服薬、睡眠・食欲・便通・生活リズムをお聞きし、脈診・舌診・腹診で体質を確認して方針を決めます。その後は、状態に応じた間隔で、同じ担当者が経過を確認します。睡眠・食欲・胃腸・痛み・疲れの変化を一緒に振り返りながら、処方・施術の内容を調整します。

SSDの回復に向けては、症状の感じ方、不安、行動の循環のどこからでも、働きかけの入り口があります。タナココでは、体の側から整える部分を担当し、医療機関での診断・心理療法・薬物療法と組み合わせる形を基本とします。

タナココでは、現在受けている医療的なサポート(内科・心療内科・精神科での診断・処方薬・心理療法)をお聞きしながら、それと組み合わせる形で漢方・鍼灸のアプローチを考えます。現在の薬を自己判断で中止することは勧められません。「まず病院に行くべきか迷っている」という段階でも、情報収集のご相談から歓迎します。

「検査では異常がないと言われたが症状が続いている」「いくつもの診療科を回ったが、納得できる説明が得られていない」「心療内科の薬だけでは体の不調が残っている」「体質そのものを立て直したい」——どのような状況でも、現状をお聞きすることから始めます。薬剤師・鍼灸師・心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学、心理的な側面から一人ひとりに合った提案をいたします。

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よくある質問(FAQ)

身体症状症(SSD)とはどのような病気ですか?検査で異常がなくても診断されますか?
身体症状症(SSD)は、痛み・疲労・めまい・動悸・胃腸の不調などの身体症状が続き、その症状や健康への不安・考え・行動が過剰になって、日常生活に支障が出ている状態です。DSM-5-TR(2022年)では、「医学的に説明できないこと」は診断の条件ではなく、身体の病気があっても診断されることがあります。診断は、症状の聞き取りと身体疾患の評価をもとに、精神科・心療内科などで行われます。
身体症状症は気のせい・思い込み・仮病ではないのですか?
気のせいや仮病ではありません。SSDの症状は、本人が実際に感じている苦痛であり、意図的に装っているものではありません。症状を意図的に作り出す作為症や、外的な利益を目的とする詐病とは区別されます。脳が身体の感覚をつくる過程(予測処理)や、注意・不安・行動の影響など、複数の要因が関わると考えられており、意志や性格の弱さの問題ではありません。
身体症状症は治りますか?
経過には個人差があり、一概には言えません。治療では、定期的な診察、症状についての説明、認知行動療法などの心理療法、併存する不安・抑うつへの薬物療法が組み合わされ、症状の軽減や生活の支障の改善が期待できます。一方で、心理療法の効果は小〜中程度とされ、慢性化している場合は時間がかかることもあります。発症から早い段階での心理的介入を調べた解析では、追跡時点で身体症状と医療機関の利用に小さな改善が見られました(Berezowskiら、2022年)。体質面を支える漢方・鍼灸を併せて取り入れながら、回復を目指していくことができます。
身体症状症が疑われる場合、何科を受診すればよいですか?
まず、かかりつけ医や内科で、症状の原因となる身体の病気がないかを確認します。そのうえで、心療内科や精神科で、SSDの評価と治療を受ける流れが一般的です。身体症状が前面に出ている場合は、心身医学(心療内科)の視点を持つ医療機関が適していることがあります。受診先に迷う場合は、タナココでも状況を伺い、どのような順序で相談するとよいかをお伝えします。
漢方・鍼灸は身体症状症に有効ですか?
SSDを主な対象とした漢方・鍼灸の大規模な比較試験は限られており、「確実に効く」と言い切れる段階ではありません。鍼治療については、2025年のメタ解析(Zhaoら、Frontiers in Medicine)で、抗うつ薬に鍼治療を併用すると、4週時点で不安症状の改善に追加の効果が見られる可能性が示されました。ただし、対象は5件(376名、すべて中国)で、エビデンスの確実性は低いと評価されています。漢方薬は、半夏厚朴湯・加味逍遙散・柴胡加竜骨牡蛎湯などが心療内科や漢方外来で用いられており、体質(証)に合わせた選択が重要です。タナココでは、弁証に基づいて、症状・体質・服薬状況に合わせた処方・施術をご提案します。
抗うつ薬や心理療法を受けています。漢方・鍼灸と併用できますか?
併用できる場合が多く、前述のメタ解析も、抗うつ薬と鍼治療の併用を調べたものです。ただし、現在の薬を自己判断で中止・減量することは勧められません。漢方薬は、現在の処方薬との重なりや相互作用(甘草を含む処方の重複など)を、薬剤師の資格を持つ担当者が確認したうえでご提案します。主治医には、漢方・鍼灸を併用していることをお伝えください。心理療法も、継続しながら体質面のサポートを加える形で取り入れられます。
病気不安症・うつ病・自律神経失調症との違いは何ですか?
病気不安症は、身体症状がないか軽く、重い病気にかかっているという不安が中心です。SSDは、実際の身体症状が前面にあり、それに対する過剰な思考・感情・行動を伴います。うつ病や不安症は、気分の落ち込みや不安が中心ですが、SSDと併存することも多くあります。「自律神経失調症」は、DSM-5-TRやICD-11には診断名として設けられていない呼び名で、自律神経の乱れによると考えられる多様な症状に使われます。SSDの方が、この名前で呼ばれていることもあります。
改善までどれくらいかかりますか?
個人差が大きく、一概には言えません。SSDは慢性化している方も多く、症状の変化を数か月単位で見ながら進めるのが基本です。漢方・鍼灸でも、睡眠・食欲・胃腸・痛み・疲れなどの変化を、数か月単位で確認します。早い段階で変化を感じ始める方もいれば、半年以上かけて整えていく方もいます。即効性よりも継続性が大切なため、定期的に経過を確認し、体質の変化に応じて処方・施術の内容を調整しながら、無理のないペースで取り組めるようサポートします。
家族は、どのように関わればよいですか?
症状を「気のせい」と否定せず、実際の苦痛として受け止めることが基本です。そのうえで、症状や検査・受診の話題が生活の中心になりすぎないよう、症状以外の会話や活動の時間も保つことが助けになります。受診や治療の継続を一緒に考えること、睡眠・食欲・活動量の記録を一緒に見ることも役立ちます。ご家族からのご相談も受け付けています。

身体症状症──「異常なし」で終わらせず、体質と生活の両面から整えていく選択肢があります

検査で異常が見つからなくても、症状は実際に感じられているものです。気のせいでも、意志の弱さでもなく、体・心・生活の複数の要因が関わる状態であり、医療的な支えに加えて、体質の側からも整えていける不調です。

気・血・水の巡りを整えること。肝・脾・心の働きを支えること。睡眠・食欲・胃腸・痛み・疲労といった具体的な不調を、一つずつ軽くしていくこと。症状に向け続けてきた緊張を、体の側から和らげていくこと。そのために、漢方と鍼灸でできることを、最後まで考え抜きたいと思っています。

「検査では異常がないと言われたが症状が続いている」「いくつもの診療科を回ったが納得できる説明がない」「心療内科の薬だけでは体の不調が残っている」「体質そのものを立て直したい」——どのような状況でも、現状をお聞きすることから始めます。薬剤師・鍼灸師・心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学の両面から、一人ひとりに合った提案をいたします。

一歩ずつでいい。回復に向けて取れる選択肢があることを、まず知っていただければと思います。

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