アレルギー性鼻炎(花粉症・通年性)とは──
診断・メカニズム・治療の現状と、体質から整えるアプローチ
くしゃみ、鼻水、鼻づまりが、毎年あるいは一年中続いている。薬を使うと楽になるが、やめると戻る。そのような状態が続いていませんか。
アレルギー性鼻炎は、耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした2019年の全国調査で約2人に1人にみられた、身近な病気です。一方で、薬で症状を抑えるだけでは十分でない方がいることも、わかっています。
西洋医学の診断と治療を土台に、漢方・鍼灸で体質の側から整える方法を、タナココは一人ひとりに合わせて探していきます。
最終更新日:2026年11月5日
アレルギー性鼻炎の理解と体質へのアプローチ
定義:アレルギー性鼻炎は、吸入抗原に対するⅠ型アレルギー反応が鼻粘膜に起こり、くしゃみ・水様性鼻漏・鼻閉を繰り返す病気です。
診断:3つの症状に加え、鼻汁好酸球検査・皮膚テスト(または血清特異的IgE抗体)・誘発テストのうち2つ以上が陽性であれば診断されます。
頻度:2019年の全国調査(耳鼻咽喉科医とその家族が対象)で、アレルギー性鼻炎全体は49.2%、スギ花粉症は38.8%でした。
治療:抗原の回避、薬物療法、アレルゲン免疫療法などがあります。薬だけでは症状を十分に抑えきれない方も一定数います。
漢方・鍼灸:小青竜湯には二重盲検比較試験があります。鍼灸は症状と生活の質の改善を示す報告がある一方、効果の大きさは今後の検証が必要です。
アレルギー性鼻炎とは何か
アレルギー性鼻炎とは、花粉やダニなどの吸入抗原に対するⅠ型アレルギー反応が鼻粘膜に起こり、発作性で反復するくしゃみ、水のような鼻汁(鼻漏)、鼻閉(鼻づまり)が現れる病気です。原因によって、季節性(花粉症)と通年性(ダニ・ハウスダストなど)に大別されます。
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会の「鼻アレルギー診療ガイドライン 通年性鼻炎と花粉症 2024年版(改訂第10版)」では、従来の分類に加えて、血清IgEが陰性となる局所アレルギー性鼻炎(LAR)と職業性アレルギー性鼻炎が紹介されました。
いったん発症すると自然に改善することは少なく、小児で発症した場合も多くは成人まで続くとされています。「毎年のこと」と受け止めている方も多いのですが、原因と体質の両面から対応を考えることができる病気です。
診断基準と検査・重症度
診断は、症状と鼻粘膜の所見に、アレルギー検査を組み合わせて行います。2024年版ガイドラインでは、典型的な症状と鼻粘膜所見から臨床的に診断し、早めに治療を始める考え方が示されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 3主徴 | 発作性で反復するくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉 |
| アレルギー検査 | ①鼻汁好酸球検査 ②皮膚テスト(または血清特異的IgE抗体検査) ③鼻粘膜誘発テスト。このうち2つ以上が陽性であればアレルギー性鼻炎と診断 |
| 似た病気との鑑別 | 血管運動性鼻炎(いわゆる寒暖差アレルギー)は、症状があっても上記の検査がすべて陰性。好酸球増多性鼻炎は鼻汁好酸球のみ陽性。LARは血清IgEが陰性でも鼻に局所のアレルギー反応が起こる型で、症状や治療への反応もあわせて判断 |
重症度と病型の分類
重症度は、くしゃみ発作と鼻かみの1日の平均回数(軽症:1〜5回、中等症:6〜10回、重症:11〜20回、最重症:21回以上)、鼻閉の程度、日常生活の支障度で分けられます。病型は、くしゃみ・鼻漏型、鼻閉型、両方が目立つ充全型の3つです。
症状:鼻・目・生活への影響
症状の重さには個人差があり、季節の一時期だけの方から、一年を通して続く方までいます。
鼻の症状
くしゃみの連続、水のような鼻水、鼻づまり、鼻のかゆみ。鼻の炎症では嗅覚が低下することもあります。
目・のど・全身
目のかゆみ、涙目、のどのいがらっぽさなどが現れます。
生活・合併症
睡眠や仕事の効率に影響し、生活の質が下がることがあります。アレルギー性結膜炎、気管支喘息、慢性副鼻腔炎、口腔アレルギー症候群を合併することがあります。
有病率と日本の現状
「鼻アレルギーの全国疫学調査2019」(松原篤ら、日本耳鼻咽喉科学会会報 2020年)では、前回調査から有病率が大きく増えていました。
| 区分 | 1998年 | 2008年 | 2019年 |
|---|---|---|---|
| アレルギー性鼻炎全体 | 29.8% | 39.4% | 49.2% |
| 花粉症全体 | 19.6% | 29.8% | 42.5% |
| スギ花粉症 | 16.2% | 26.5% | 38.8% |
| 通年性アレルギー性鼻炎 | 18.7% | 23.4% | 24.5% |
2019年の調査では、10代のスギ花粉症が49.5%、5〜9歳でも30.1%と、若い世代での増加も示されました。なお、この調査は耳鼻咽喉科医とその家族(19,859名)を対象としたもので、一般住民全体の数値とは異なる可能性があります。
厚生労働省の2021年の資料では、アレルギー性鼻炎の医療費は、保険診療で約3,600億円、市販薬で約400億円と推計されています。
発症のメカニズム
2024年版ガイドラインは、アレルギー性鼻炎をタイプ2炎症として整理し、「感作」と「鼻粘膜の過敏性の亢進」を重要な要素としています。
① 感作:鼻から入った抗原に対してIgE抗体がつくられ、鼻粘膜の肥満細胞に結合します。
② 即時相(抗原に触れて数分以内):再び抗原が入ると肥満細胞からヒスタミンなどが放出され、知覚神経と鼻腺が刺激されて、くしゃみと鼻汁が起こります。
③ 遅発相(数時間後):脂質メディエーターの働きで血管が広がり、炎症細胞が集まります。これが鼻閉の一因になります。
④ 上皮バリアと警報物質:最近の研究では、鼻粘膜の上皮が傷つくとTSLP・IL-33・IL-25といった警報物質(アラーミン)が放出され、ILC2やTh2細胞を活性化して、IL-4・IL-5・IL-13などの炎症性物質を増やすことが示されています(Gaoら、Allergy 2025年ほか)。
⑤ 過敏性の亢進:炎症が続くと鼻粘膜が敏感になり、少量の刺激でも症状が出やすくなります。
花粉・ダニに加え、大気汚染物質や鼻腔内の微生物環境の変化などが上皮バリアに影響する可能性も、研究が進められています。
現在の治療とその限界
治療は、患者と医師の話し合い、抗原の除去と回避、薬物療法、アレルゲン免疫療法、手術療法で構成されます。ガイドラインの解説で示されている治療目標は、「症状がないか軽度で日常生活に支障がない」「症状が安定し急な悪化がない」「抗原による誘発反応がないか軽度」という状態です。
薬物療法
| 薬剤 | 主な使われ方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 第2世代抗ヒスタミン薬 | くしゃみ・鼻漏型の中心 | 眠気や集中力の低下に個人差。緑内障・前立腺肥大がある場合は慎重に選ぶ |
| 鼻噴霧用ステロイド薬 | 軽症から重症まで広く使用 | 継続して使うことが前提 |
| 抗ロイコトリエン薬 | 鼻閉型・充全型で併用 | 病型に合わせて選択 |
| 点鼻用血管収縮薬 | 強い鼻閉を一時的に緩和 | 連用すると薬剤性鼻炎の恐れがあり、1〜2週間までの使用 |
| 抗IgE抗体(オマリズマブ) | 既存治療で効果不十分な重症・最重症の季節性アレルギー性鼻炎(12歳以上、2019年12月承認) | 高額なため、最適使用推進ガイドラインに基づいて慎重に判断 |
アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)と手術
スギ花粉やダニの舌下錠を毎日使い、アレルゲンへの反応を和らげる治療で、対象は5歳以上です(上限年齢などの条件は製剤ごとに定められています)。通常は3〜5年続けます。スギ花粉症では飛散期(おおむね1月〜ゴールデンウィーク頃)には新たに始められず、β遮断薬の使用中や不安定な気管支喘息がある方などは対象外です。鼻閉が強い場合などには、手術療法も検討されます。
症状を抑える治療が中心であること:多くの薬は、症状を和らげる働きが中心です。
続けにくさ:ガイドラインの解説では、治療アドヒアランスが不良な患者が約7割(69%)とされ、その一因として抗ヒスタミン薬の眠気などが挙げられています。
十分に抑えきれない方がいること:既存治療で症状を十分にコントロールできない方が一定数います。
免疫療法の条件:効果が出るまでに数年かかり、すべての方に効果が期待できるわけではありません。
西洋医学 vs 中医学 アプローチ比較
両者は対立するものではなく、それぞれの強みを活かして組み合わせることで、より包括的なサポートが可能です。
| 観点 | 西洋医学的アプローチ | 中医学的アプローチ |
|---|---|---|
| 病態の捉え方 | IgE・肥満細胞・タイプ2炎症など、免疫反応と鼻粘膜の炎症で評価 | 肺・脾・腎の気(エネルギー)や陽気、水の巡りの偏りとして、体質全体を把握 |
| 治療の目標 | 症状の抑制、抗原への反応の軽減 | 体表を守る力(衛気)と水の巡りを整え、症状が出にくい体質をめざす |
| 主な手段 | 抗原回避・抗ヒスタミン薬・鼻噴霧用ステロイド薬・免疫療法・抗体製剤 | 弁証に基づく漢方処方(小青竜湯・麻黄附子細辛湯・補中益気湯など)・鍼灸 |
| 長所 | 診断基準が明確で、根拠が豊富。重症例にも選択肢がある | 眠気の少ない処方を選べる場合がある。体質全体に働きかけ、日常の養生と組み合わせやすい |
| 限界・課題 | 症状を抑える治療が中心。眠気などで続けにくい方がいる | 効果の大きさや持続性は研究が限られる。個人差が大きく、時間をかけて評価する必要がある |
中医学からのアレルギー性鼻炎の病態分析
中医学では、水のような鼻汁とくしゃみを繰り返す状態を「鼻鼽(びきゅう)」と呼び、アレルギー性鼻炎に相当する病証として扱います。肺は鼻に通じ、体の表面を守る力(衛気)を巡らせると考えられています。この力は肺だけでなく、脾(消化・エネルギー生成)や腎(体を温める根本の力)にも支えられています。
脈診・舌診・腹診・問診による弁証で体質を把握し、処方と鍼灸の方針を決めます。よく見られる証は次のとおりです。
かぜをひきやすく、寒暖差でくしゃみが続く。汗をかきやすく、息切れしやすい。玉屏風散・補中益気湯などが検討される。
水のような鼻水が止まらず、くしゃみ、薄い痰を伴う咳がある。体力が中等度の方に多く、小青竜湯が代表的に用いられる。
鼻づまりと鼻汁があり、胃腸が弱く、疲れやすい。軟便や食後の眠気を伴う。六君子湯・補中益気湯などが検討される。
冷えが強く、寒い場所で鼻水・鼻づまりが出やすい。腰や足の冷え、頻尿を伴う。麻黄附子細辛湯・真武湯などが検討される。
鼻づまりが強く、黄色い鼻汁、鼻や顔の熱感、口の渇きがある。辛夷清肺湯などが検討される。
小青竜湯は、麻黄・桂皮・芍薬・半夏・細辛・乾姜・五味子・甘草の8つの生薬からなる処方で、古典『傷寒論』に記載があります。体を温めて余分な水をさばく働きがあるとされ、水様の鼻汁とくしゃみが目立つアレルギー性鼻炎に用いられます。麻黄・甘草・附子を含む処方は、動悸・血圧・電解質などへの配慮が必要です。
漢方・鍼灸に関する研究報告の現状
小青竜湯
馬場駿吉らは、通年性鼻アレルギー患者を対象に、小青竜湯とプラセボを2週間投与する二重盲検比較試験を行いました(耳鼻咽喉科臨床 1995年)。医療用医薬品の添付文書では、中等度以上の改善が小青竜湯群44.6%(92例中41例)、プラセボ群18.1%(94例中17例)、軽度以上の改善が83.7%と43.6%と記載されています。
小青竜湯の24件のランダム化比較試験(2,402名)を整理したメタ解析(Yanら、2022年)では、鼻症状スコアなどの改善が示された一方、試験の質は低いと評価されています。基礎研究では、小青竜湯がアレルギー性鼻炎モデルマウスでILC2を減らし、IL-33/ST2経路を抑えることが報告されています(Phytomedicine 2023年)。
玉屏風散
肺脾気虚タイプの患者58名を対象とした二重盲検プラセボ対照試験(Linら、Chinese Medicine 2025年)では、生活の質のスコアは4〜16週で改善しましたが、主要評価項目である鼻症状スコアは8週時点でプラセボと差がありませんでした。2025年のメタ解析(Wangら)は、通常治療との併用での上乗せ効果を示唆しつつ、報告の不備から確定的な結論は難しいとしています。
鍼灸
季節性アレルギー性鼻炎の患者422名を対象にしたドイツの試験(Brinkhausら、Annals of Internal Medicine 2013年)では、8週間・12回の鍼治療で、偽鍼や薬のみの群と比べて生活の質と抗ヒスタミン薬の使用量が統計学的に有意に改善しました。ただし、16週時点では差がなく、著者らは改善が臨床的には十分大きくない可能性にも言及しています。アレルギー性鼻炎の患者238名を対象とした多施設試験(Choiら、Allergy 2013年)では、4週間の鍼治療で鼻症状スコアが偽鍼群・待機群より低下しました。偽鍼群でも開始前より改善がみられています。
30件・4,413名を整理したメタ解析(Heら、European Journal of Medical Research 2022年)では、成人で鍼治療が無治療や偽鍼より症状と生活の質を改善する可能性が示されました。セチリジンやロラタジンとは明確な差がなく、小児のデータは不十分とされています。一方、逐次解析では結果を確認できておらず、試験の質にも課題があると報告されています。灸を含む39件の比較(Yinら、Chinese Medicine 2020年)では、灸が鼻症状やIgE値の面で上位に挙げられました。2015年の米国の診療ガイドラインでも、鍼治療は選択肢の一つに挙げられています。
タナココにおける漢方・鍼灸のサポート
タナココの漢方では、「肺・脾・腎の気と陽気、水の巡りを整え、症状が出にくい体質をめざす」ことを目的に、弁証に基づいて処方を選びます。
小青竜湯・麻黄附子細辛湯:水様の鼻汁・くしゃみが目立つ方、冷えを伴う鼻づまりと鼻水の方に。
補中益気湯・六君子湯・玉屏風散:疲れやすく、胃腸が弱く、かぜをひきやすい方に。
辛夷清肺湯:鼻づまりが強く、熱感や黄色い鼻汁のある方に。
処方の選択・用量は、年齢・体質・症状・服薬状況に応じて個別に判断します。麻黄や甘草を含む処方が他の薬と重ならないか、現在の処方薬との相互作用は、薬剤師が確認します。
鍼灸では、迎香・印堂・上迎香(鼻まわり)、合谷、肺兪・大椎(背中)、足三里などの経穴を、体質と症状に合わせて選びます。冷えが強い方には、灸も用います。細い鍼を使った軽い刺激から始めますので、はじめての方、お子さんも、まずご相談ください。
舌下免疫療法や現在使っている薬を続けながら、並行して取り入れる形を基本とします。花粉症では、飛散が始まる前から体質を整えはじめると、時間をかけて取り組めます。薬を自己判断で中止することはおすすめしません。漢方・鍼灸を併用していることは、主治医にもお伝えください。
よくある質問(FAQ)
アレルギー性鼻炎は自然に治りますか?
花粉症、通年性アレルギー性鼻炎、寒暖差アレルギーはどう違いますか?
漢方薬はアレルギー性鼻炎に有効ですか?
鍼灸は花粉症・アレルギー性鼻炎に効果がありますか?
抗アレルギー薬や舌下免疫療法と併用できますか?
子供でも漢方・鍼灸を受けられますか?
改善までどれくらいかかりますか?
アレルギー性鼻炎──「毎年のこと」「体質だから」で終わらせない選択肢があります
くしゃみ、鼻水、鼻づまりは、睡眠、仕事、勉強、人と会う場面に影響します。薬で抑えているのに戻る、眠気で続けにくい、免疫療法を考えているが不安がある。そのような状況でも、変えていける部分があります。
タナココは、西洋医学の診断と治療を土台に、漢方と鍼灸で体質の側から整えます。症状を抑えるだけで終わらせず、薬の量や回数が減り、季節や環境の変化があっても慌てずにすむ状態をめざして、最後まで一緒に取り組みます。
薬剤師・鍼灸師・心理士の資格を持つ担当者が、現在の治療内容と体質をお聞きしたうえで、一人ひとりに合った提案をいたします。まずは現状をお聞かせください。
