片頭痛と漢方・鍼灸

片頭痛とは|診断基準・発症メカニズム・最新の治療と限界、漢方・鍼灸によるサポート|相模原 タナココ
片頭痛 × 漢方・鍼灸 / 相模原 タナココ

片頭痛とは──
診断基準・発症メカニズムから、体質を整えるアプローチまで

月に何度も頭痛で予定をあきらめる。薬の効く日と効かない日がある。片頭痛は、そのような繰り返しの中で、生活に大きく影響する病気です。

片頭痛は、脳の神経ネットワークの働きが関わる神経疾患であり、意志や我慢の問題ではありません。近年は治療薬も大きく進歩し、頭痛の回数を減らすことが現実的な目標になっています。

西洋医学の診断・治療を土台に、漢方・鍼灸を通じて気・血の巡りと体質を整え、頭痛の起こりにくい状態を目指すアプローチを、タナココは一人ひとりに合わせてご提案します。

最終更新日:2026年11月2日

片頭痛の理解と体質へのアプローチ

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片頭痛とは何か

片頭痛(Migraine)は、頭痛発作を繰り返す一次性頭痛の代表的な疾患です。一次性頭痛とは、脳腫瘍や脳出血などほかの病気が原因ではなく、頭痛そのものが病気である頭痛を指します。ズキズキと脈打つような痛みが数時間から数日続き、吐き気や、光・音への過敏を伴うことが特徴です。歩く、階段を上るといった日常の動作で痛みが強まるため、発作中は仕事・家事・学業を続けることが難しくなる方も少なくありません。

世界では約10億人が片頭痛をもつとされ(Ashinaら、New England Journal of Medicine 2024年)、日本では15歳以上の約8.4%、約840万人と推定されています(Sakai&Igarashi、1997年)。片頭痛は「ただの頭痛」でも「我慢や気合で乗り切るもの」でもなく、脳の神経ネットワークの働きが関わる神経疾患です。

診断は国際頭痛分類第3版(ICHD-3、2018年)に基づいて行われ、日本では日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会が監修する「頭痛の診療ガイドライン2021」が診療の指針になっています。このガイドラインにはCGRP関連薬(後述)が収載され、国内でも片頭痛治療の選択肢は大きく広がっています。

片頭痛と緊張型頭痛の違い:

緊張型頭痛は、頭全体が締めつけられるような痛みが多く、動いても悪化しにくいのが一般的です。片頭痛は拍動性の痛みで、動くと悪化し、吐き気や光・音への過敏を伴いやすい点が異なります。両方が併存することもあり、頭痛のタイプによって対応が変わるため、頭痛の特徴を記録して医療機関に伝えることが診断の助けになります。
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片頭痛の診断基準(ICHD-3)

片頭痛の診断は、問診による頭痛の特徴の確認が中心です。血液検査や画像検査で片頭痛そのものを確定できるわけではなく、画像検査は、ほかの病気(二次性頭痛)が隠れていないかを確認する目的で行われます。

1)前兆のない片頭痛

ICHD-3 診断基準の要点(1.1 前兆のない片頭痛)

A.B〜Dを満たす発作が5回以上ある。

B.頭痛発作が4〜72時間持続する(未治療、または治療が奏効しない場合)。

C.次の4つのうち2項目以上を満たす:①片側性 ②拍動性 ③中等度〜重度の痛み ④日常的な動作(歩行や階段昇降など)により増悪する、あるいはそれを避ける。

D.頭痛発作中に、①悪心または嘔吐、②光過敏および音過敏、の少なくとも一方がある。

E.ほかのICHD-3の診断に、よりよく合致しない。

2)前兆のある片頭痛

頭痛に先行して、あるいは頭痛とともに、数分〜1時間ほど続く「前兆」が現れるタイプです。前兆は完全に消える(可逆性の)神経症状で、最も多いのは、ギザギザした光が視野に広がる閃輝暗点(せんきあんてん)などの視覚症状です。ほかに、しびれなどの感覚症状、言葉が出にくい言語症状などがあります。診断には、前兆の現れ方(5分以上かけて徐々に広がる、複数の症状が順に現れる、各症状が5〜60分続く、など6項目のうち3項目以上)が用いられます。日本人の片頭痛では、前兆のない型が約5.8%、前兆のある型が約2.6%と報告されています(Sakai&Igarashi、1997年)。

3)慢性片頭痛

頭痛が月に15日以上、3か月を超えて続き、そのうち月8日以上が片頭痛の特徴を満たすものを慢性片頭痛とします。ICHD-3では片頭痛のサブタイプとして位置づけられ、CGRP関連薬の有効性が示されたことから、診断の意義が高まっています。

4)早めに医療機関を受診すべき頭痛のサイン

次のような頭痛は、片頭痛以外の病気の可能性があるため、早めの受診が必要です:

これまで経験したことのない激しい頭痛/突然始まり数分以内に最大になる頭痛/手足の麻痺・ろれつが回らない・意識がもうろうとするなどの神経症状を伴う頭痛/発熱や首の硬直を伴う頭痛/頭部を打撲した後の頭痛/徐々に悪化し続ける頭痛/50歳以降に初めて起こった頭痛。これらに当てはまる場合は、救急受診または脳神経内科・脳神経外科の受診をご検討ください。
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症状:発作の前後を含めた全体像

片頭痛は「頭痛の時間」だけの病気ではありません。発作の前から後まで、いくつかの段階に分けて捉えられており、全体を把握することが、誘因の特定や治療のタイミングの検討に役立ちます。

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予兆期・前兆期

頭痛の数時間〜2日前に、あくび・疲労感・首や肩のこわばり・気分の変化・食欲の変化・光や音への敏感さなどが現れることがあります(予兆)。前兆のある方では、頭痛の前に閃輝暗点やしびれなどが現れます。

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頭痛期

片側(両側のこともあります)のズキズキする拍動性の痛み。吐き気・嘔吐、光・音・においへの過敏、頭皮の触れた痛み。動くと悪化するため、暗く静かな場所で横になりたくなります。

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回復期・発作の合間

痛みが引いた後も、だるさ・集中しにくさ・気分の落ち込みが残ることがあります。次の発作への不安から、予定を入れにくい、薬を手放せないなど、発作の合間の生活にも影響が及びます。

頭痛以外の症状も片頭痛の一部です:

めまい、肩こり、首のこわばり、冷え、胃腸の不調、月経周期との連動、睡眠の乱れ、天候(気圧)の変化での悪化などを併せもつ方は多くいます。これらは受診時に見落とされやすい一方で、中医学では体質を把握する重要な手がかりになります。
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有病率と日本の現状

日本の片頭痛に関する主な調査

全国調査(Sakai&Igarashi、Cephalalgia 1997年):15歳以上の1年間の片頭痛有病率は8.4%。片頭痛の人の69.4%が頭痛で医療機関を受診したことがなく、74.2%が日常活動の支障を感じていました。自分の頭痛を片頭痛と認識していたのは11.6%にとどまりました。

大山研究(Takeshima、Headache 2004年):成人の有病率は6.0%。女性9.1%、男性2.3%で、女性は男性の約5.9倍でした。

実態調査(Journal of Headache and Pain 2022年):医療費請求データとオンライン調査を組み合わせた調査では、有病率は3.2%(疑い例を含む)、30代で最も高く、女性は男性の約4.4倍、片頭痛の人の81.0%が医療機関を受診していませんでした。調査方法により数値は異なりますが、「受診していない人が多い」「女性、特に働き盛りの世代に多い」という傾向は共通しています。

片頭痛は、仕事・家事・育児・学業の中心を担う世代に多く、頭痛による生産性の低下や活動の制限が大きな課題です。一方で、鎮痛薬で我慢を続けている方が多く、適切な診断と治療につながっていない現状があります。

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発症のメカニズム

片頭痛の原因は一つに特定されていませんが、近年の研究で、脳・神経・血管が関わる複数の仕組みが明らかになってきました。現在は、以前考えられていた「血管が拡張して痛む」という説明だけでは不十分で、神経の活動が中心にあると理解されています。

1)三叉神経血管系とCGRP

脳を包む硬膜や脳血管の周囲には三叉神経が分布しています。発作時にはこの神経からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が放出され、血管の拡張、神経の炎症反応、痛み信号の伝達が起こると考えられています。CGRPやその受容体を標的とした薬が高い効果を示したことが、この仕組みの重要性を裏づけました。

2)皮質拡延性抑制(CSD)と前兆

前兆は、大脳皮質で神経活動の抑制が波のようにゆっくり広がる「皮質拡延性抑制」が背景にあるとされます。頭痛の発生には、三叉神経の関与が考えられています(頭痛の診療ガイドライン2021の解説)。

3)視床下部・脳幹と予兆

あくびや食欲の変化、気分の変化といった予兆は、発作が始まる前から脳が変化していることを示します。ニトログリセリンで誘発した片頭痛発作の予兆期に、視床下部・中脳・橋などの活動が高まったとするPET研究(8例、Maniyarら、Brain 2014年)が報告されています。睡眠・ホルモン・自律神経の調整に関わる領域であり、睡眠不足や月経、ストレスが発作の誘因になりやすいことと関連すると考えられています。

4)新たな標的:PACAP

CGRPに加えて、PACAP(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド)も片頭痛に関わる神経ペプチドとして注目されています。PACAPに対する抗体薬Lu AG09222の第2相試験(Ashinaら、New England Journal of Medicine 2024年、237例)では、既存の予防薬が2〜4種類無効だった方において、1回の点滴で月あたりの片頭痛日数がプラセボより2.0日多く減少しました(-6.2日と-4.2日)。まだ研究段階ですが、片頭痛の仕組みの理解が進んでいることを示しています。

5)遺伝要因と誘発因子

片頭痛は家族内で発症することが多く、遺伝要因に環境要因が加わって起こる多因子疾患と考えられています。2022年のゲノムワイド関連解析(Hautakangasら、Nature Genetics)では、123の関連領域が報告されました。発作の誘因は人によって異なり、月経周期(エストロゲンの低下)、睡眠不足や寝すぎ、空腹、ストレスの最中や解放された後、天候や気圧の変化、強い光やにおい、アルコールなどが知られています。複数が重なったときに発作が起こりやすくなる方が多くいます。

片頭痛発作が起こるまでの流れ(現在の理解)

① 睡眠・ホルモン・ストレスなどの誘因が重なる ② 視床下部・脳幹などの活動が変化し、予兆が現れる ③ (前兆のある方では)皮質拡延性抑制が起こる ④ 三叉神経からCGRPなどが放出され、痛み信号が伝わる ⑤ 脳が痛みを強く感じる状態となり、吐き気・過敏症状が加わる

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現在の治療とその課題

片頭痛の治療は、痛みを止める「急性期治療」、発作の頻度と程度を減らす「予防療法」、生活面の「非薬物療法」の3つで構成されます。近年の進歩は大きく、2021年以降に国内で使える薬が次々に増えています。

急性期治療

基本は、アセトアミノフェンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、トリプタン系薬剤です。頭痛の診療ガイドライン2021では、日常生活に支障をきたす片頭痛発作に対しては、NSAIDsよりもトリプタンを使用することが推奨されています。トリプタンは血管収縮作用をもつため、虚血性心疾患や脳血管障害がある方などには使えません。近年は、血管収縮作用をもたない選択的5-HT1F受容体作動薬ラスミジタン(2022年承認)や、急性期治療と発症抑制の両方に使える経口CGRP受容体拮抗薬リメゲパント(2025年9月承認)も使えるようになりました。

予防療法

ガイドライン2021では、発作が月に2回以上、または生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合に、予防療法の対象となります。従来の予防薬(プロプラノロール、ロメリジン、バルプロ酸、アミトリプチリンなど)に加え、2021年にCGRPやその受容体に対する抗体薬(ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ)が使えるようになり、ガイドラインでも強い推奨とされています。2026年2月には、1日1回内服の経口CGRP受容体拮抗薬アトゲパントが承認されました。

非薬物療法と生活面の対応

ガイドライン2021には、片頭痛予防の非薬物療法として、ニューロモデュレーション、認知行動療法、鍼治療を考慮してもよいと記載されています(弱い推奨、エビデンスの確実性B)。あわせて、睡眠・食事の規則性、適度な有酸素運動、誘因の把握(頭痛ダイアリー)が基本となります。

薬剤の使用過多による頭痛(MOH)

急性期治療薬の使いすぎが、かえって頭痛の頻度を増やすことがあります。ICHD-3では、トリプタンや複合鎮痛薬などを月10日以上、単一成分の鎮痛薬を月15日以上、3か月を超えて使用している場合に薬剤の使用過多による頭痛を疑います。鎮痛薬を飲む日が増えてきた場合は、予防療法を含めた見直しの目安になります。

現在の治療の限界と、補う視点が求められる点

西洋医学的治療を補う視点が求められる点

効果の個人差:どの薬にも、効く方と十分に効かない方がいます。予防薬は眠気・ふらつき・体重変化などの副作用で続けにくい場合があり、バルプロ酸は妊娠可能な年齢の方では慎重な検討が必要です。

使えない・合わない場合:トリプタンは心血管系の病気がある方に使えず、妊娠・授乳中は選択できる薬が限られます。

CGRP関連薬の課題:使用には適正使用の条件が定められ、費用や定期的な通院・注射を要する薬もあります。国内の頭痛外来からの実臨床報告(日本頭痛学会誌)では、ガルカネズマブにより月あたりの片頭痛日数が平均8.0日減少したとされています。一方、別の報告では、CGRP関連抗体で改善して中止した61例のうち22例が、平均約8か月で再開を要しました。

体質・生活面の背景:月経周期、睡眠、肩頸部のこわばり、冷えや胃腸の弱さ、自律神経の乱れといった、発作の起こりやすさにかかわる背景そのものを、薬だけで整えることには限りがあります。

これらは、現在の治療が有効でないという意味ではありません。薬物療法を土台にしながら、発作の起こりにくい体の状態を整える視点を加えることで、薬の量や回数を見直せる可能性があります。

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西洋医学 vs 中医学 アプローチ比較

片頭痛に対する西洋医学と中医学のアプローチを整理します。両者は対立するものではなく、それぞれの強みを活かして組み合わせることができます。

観点西洋医学的アプローチ中医学的アプローチ
病態の捉え方三叉神経血管系・CGRPなどの神経ペプチド・皮質拡延性抑制・視床下部の活動変化という神経生理学的な仕組みで評価気・血の巡りの滞り(不通則痛〔通じざれば則ち痛む〕)、風・痰・瘀血(おけつ)、肝の失調、冷えや虚(不足)として体質の偏りを総合的に把握
治療の目標発作時の痛みの速やかな緩和、発作頻度・日数の減少気血の巡りと体質の土台を整え、発作の起こりにくい状態をつくる。随伴する肩こり・冷え・胃腸の不調・睡眠も同時に整える
主な手段トリプタン・ラスミジタン・ゲパント・NSAIDs(急性期)、CGRP関連薬・従来の予防薬(予防)、認知行動療法弁証に基づく漢方処方(呉茱萸湯・五苓散・釣藤散・半夏白朮天麻湯・当帰芍薬散など)、鍼灸(百会・風池・太陽・合谷・太衝など)
長所急性期への即効性、大規模試験による根拠、診断基準の明確さ体質全体への働きかけ、薬の副作用が気になる方や薬が合わない方への選択肢、肩こり・冷え・月経などを合わせて整えられる
限界・課題効果に個人差がある、副作用や禁忌がある、中止後の再発がある、体質面への働きかけが限られる強い痛みの発作を即座に止める力は限られる、個人差が大きい、漢方は大規模比較試験が少ない
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中医学からの片頭痛の分析

中医学では、片頭痛は「偏頭痛」「頭風」に相当し、頭痛の中でも体質や臓腑の失調を背景とする「内傷頭痛」が多いと考えられています。特に「肝」(気の巡りと自律神経的な調節にかかわる)との関連が重視され、気血の巡りの滞り、風、痰、瘀血、冷え、気血の不足などが絡み合って頭痛が起こるとされます。

脈診・舌診・腹診・問診による総合的な分析(弁証〔べんしょう〕)で、その方の体質のパターンを把握し、処方と鍼灸の方針を決めます。片頭痛でよく見られる証(体質のパターン)は次のとおりです。

かんようじょうこう
肝陽上亢(ストレス・のぼせ型)

肝の気が高ぶり、上に突き上げる状態。こめかみ付近の拍動性の痛み、いらだち、目の充血、のぼせ、肩こりが目立ちます。釣藤散などが検討されます。

かんきうっけつ
肝気鬱結(緊張・月経前型)

ストレスや緊張で気の巡りが滞る状態。緊張が続いたときや月経前に発作が出やすく、張るような痛み、胸脇部の張り、ため息が多いなどを伴います。柴胡桂枝湯・加味逍遙散・四逆散などが検討されます。

ふうたんじょうじょう
痰濁(水の滞り)・天候変化型

体内の余分な水分(痰飲)が巡りを妨げる状態。頭重感、めまい、吐き気、むくみ、胃もたれ、雨の日や気圧の低下で悪化しやすい傾向がみられます。半夏白朮天麻湯・五苓散などが検討されます。

おけつそくらく
瘀血阻絡(血の滞り型)

血の巡りが滞り、経絡(気血の通り道)が詰まる状態。刺すような痛みが固定してある、発作を長く繰り返す、月経痛、肩・首のこわばり、舌の暗紫色などがみられます。桂枝茯苓丸・当帰芍薬散などが検討されます。

かんかん
肝寒(冷え・吐き気型)

体内の冷えと水の乱れが、頭部に突き上げる状態。頭のてっぺんや側頭部の痛み、吐き気や唾液がこみ上げる、冷え、胃腸の弱さを伴います。呉茱萸湯が代表的で、手足の冷えが強く血の不足を伴う場合は当帰四逆加呉茱萸生姜湯が検討されます。

きけつりょうきょ
気血両虚(疲労・不足型)

気や血が不足し、頭を養えない状態。疲れると悪化する鈍い痛み、めまい、立ちくらみ、顔色が優れない、月経後や産後に悪化するなどの特徴があります。補中益気湯・当帰芍薬散・十全大補湯などが検討されます。

呉茱萸湯(ごしゅゆとう)が頭痛で用いられる理由:

呉茱萸湯は、呉茱萸(ごしゅゆ)・人参(にんじん)・生姜(しょうきょう)・大棗(たいそう)の4生薬からなる処方です。中医学的には「温中降逆・散寒止痛」(体の中を温め、突き上げる気を下げ、冷えによる痛みを和らげる)という働きを持つとされます。古典『傷寒論』には「乾嘔(からえずき)、涎沫(よだれ)を吐し、頭痛する者」に用いるとの記載があり、冷えと吐き気を伴う頭痛と重なります。現代の日本でも、片頭痛をはじめとする頭痛の代表的な漢方薬として使われています。ただし、すべての片頭痛に合うわけではなく、体質(証)に合う方で効果が期待できる処方です。
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漢方・鍼灸に関する研究報告の現状

エビデンスの現状について:

鍼灸は、片頭痛予防に対する比較試験が比較的多く蓄積されています。漢方は、体質(証)によって処方が異なる特性から、大規模な比較試験の実施が難しく、報告は限られています。以下では、成果と限界の両方をそのまま記載します。

鍼灸:予防効果に関する報告

Cochrane 2016年(Lindeら):反復性片頭痛の予防に関する22試験・4,985人の統合解析です。鍼治療を加えた群では、頭痛の頻度が半分以下になった人の割合が41%で、通常の治療のみの群の17%を上回りました。偽鍼(本物ではない鍼)との比較でも、50%と41%で、差は小さいものの有意でした。予防薬との比較では、治療終了時は鍼が上回り、6か月後には有意差がありませんでした。有害事象は薬より少ない結果でした。著者らは、6回以上の鍼治療が片頭痛の人にとって有用な選択肢となりうると結論しています。

2025年の報告:鍼治療と薬物療法を比較した19試験・2,296人のメタ解析(Liuら、Journal of Pain Research 2025年)では、鍼治療群のほうが、薬物療法群より発作頻度・痛みの強さ・有効率の改善が大きい結果でした。ただし、研究間のばらつきが大きく、エビデンスの質は中等度〜低いため、確実性には限界があると著者らも述べています。一方、前兆のない片頭痛198人を対象とした無作為化試験(Sunら、Journal of Evidence-Based Medicine 2025年)では、16週時点の発作回数の減少は、刺入する鍼が刺入しない偽鍼を0.6回上回りましたが、統計学的な有意差には至りませんでした(p=0.069)。鍼の刺し方や刺激の方法が、長期的な効果を左右する可能性が指摘されています。

国内の報告:頭痛の診療ガイドライン2021では鍼治療が非薬物療法として記載されています。埼玉医科大学東洋医学科からは、難治性の片頭痛70例で、2か月間の鍼治療により中等度以上の頭痛日数が6.4日から1.8日に減少し、頸肩部の筋肉の圧痛の改善と相関したという報告があります(対照群のない観察研究)。また、片頭痛の方への鍼治療で、視床・視床下部などの脳血流が増加し、左右差が改善したとする脳血流画像(ASL-MRI)による検討も報告されています(いずれも同科の報告)。

漢方:呉茱萸湯を中心とした報告

Odaguchiら、Current Medical Research and Opinion 2006年:慢性頭痛の患者91人に呉茱萸湯を4週間投与し、効果のあった60人(レスポンダー)のうち53人で、呉茱萸湯とプラセボを比較する二重盲検試験を12週間行いました。頭痛の起こった日数の減少は、呉茱萸湯群2.6日、プラセボ群0.3日で、呉茱萸湯群が有意に大きい結果でした(p=0.034)。一方、鎮痛薬を使う頻度には差がありませんでした。漢方の特性に合わせた「レスポンダー限定デザイン」を用いた研究であり、対象は片頭痛に限らない慢性頭痛です。

日本東洋医学会EBM委員会の整理によると、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」では、頭痛に対する漢方薬は弱い推奨(エビデンスの確実性B)とされ、質の高い研究が呉茱萸湯に限られることも記載されています。慢性連日性頭痛や薬剤使用過多による頭痛に対する漢方薬の経験を後方視的にまとめた単群研究(Cureus 2022年)も報告されていますが、比較対照のない研究であり、効果を確定する水準ではありません。

新しい薬の時代における鍼灸・漢方の位置づけ

CGRP関連薬の登場後も、副作用や適応・費用の面で薬が選びにくい方は残っています。2025年の鍼治療と標準的な薬物療法を比較したメタ解析(Pistoiaら、European Journal of Neurology)の論文でも、新しい薬がすべての方に適するわけではないことから、鍼治療などが追加的・補完的な治療になりうるという問題意識が示されています。薬物療法を置き換えるのではなく、薬を土台にしながら体質面を整える形が現実的だと考えています。

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タナココにおける漢方・鍼灸のサポート

漢方薬による体質へのアプローチ

片頭痛では、頭痛そのものだけでなく、発作の起こりやすい体質を整えることを目標に、次のような処方を弁証に基づいて検討します。

呉茱萸湯(ごしゅゆとう):冷えと吐き気を伴い、頭のてっぺんや側頭部が痛む体質に。片頭痛で代表的に用いられる処方です。


五苓散(ごれいさん):水分の巡りを整える処方。雨の日や気圧の低下で悪化する、むくみ・めまい・吐き気を伴う頭痛に。


釣藤散(ちょうとうさん):肝陽上亢の傾向がある、慢性的な頭痛・頭重・肩こり・のぼせを伴う場合に。


半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう):胃腸が弱く、めまい・頭重・吐き気を伴う体質に。


当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):血の不足と水の滞りがあり、冷え・立ちくらみ・月経に関連した不調を伴う場合に。


当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう):手足の冷えが強く、冷えると頭痛が起こりやすい体質に。


柴胡桂枝湯・加味逍遙散など:ストレスや緊張、月経前の悪化が目立つ肝気鬱結の傾向がある場合に。


処方は単独ではなく、弁証に基づいて組み合わせ、年齢・体質・症状・服薬状況に応じて個別に決めます。甘草を含む処方が重なった場合の血圧・電解質への影響(偽アルドステロン症など)や、現在服用中のトリプタン・予防薬・CGRP関連薬との相互作用は、薬剤師が確認します。

鍼灸施術による神経・循環・筋緊張へのアプローチ

鍼灸では、気血の巡りを整える経穴(けいけつ:ツボ)への刺激を通じて、頭痛の起こりにくい状態を目指します。片頭痛でよく用いられる経穴の例は次のとおりです。

百会(ひゃくえ)・太陽(たいよう)・率谷(そっこく):頭部の経穴。頭の痛みや重さ、こめかみ付近の痛みに。

風池(ふうち)・天柱(てんちゅう)など頸肩部:首肩のこわばりの緩和に。片頭痛では頸肩部の筋緊張を併せもつ方が多く、国内の報告でも、頸肩部の圧痛の改善と頭痛日数の減少が関連していました。

合谷(ごうこく)・太衝(たいしょう):気の巡りを整え、ストレスや緊張にかかわる肝の働きを調える代表的な組み合わせ。

足三里(あしさんり)・三陰交(さんいんこう):胃腸の働きを助け、気血を養う。冷え・疲労・月経に関連した不調に。

内関(ないかん):吐き気を伴う場合に。

予防を目的とする鍼灸は、発作の合間に、一定の回数を重ねて体の変化をみていく形が基本です。Cochraneのレビューで6回以上の鍼治療が有用な選択肢とされていることを踏まえ、数か月単位の計画をご相談しながら決めます。ご希望や体の反応に合わせ、細い鍼による刺激の弱い施術から始めることもできます。強い頭痛の発作中や、これまでにない頭痛が起きたときは、施術より先に医療機関の受診を優先してください。

タナココでは、現在受けている医療(脳神経内科・内科などでの診断、急性期薬・予防薬・CGRP関連薬の内容)をお聞きしながら、それと組み合わせる形で漢方・鍼灸のアプローチを考えます。服用中の薬を自己判断で中止することは推奨しません。「頭痛ダイアリー」をつけていただくと、誘因や体質との関係が分かりやすくなり、施術と処方の見直しにも役立ちます。

「薬を飲む回数が増えてきた」「予防薬の副作用が気になる」「CGRP関連薬の対象にならなかった」「薬の中止後の再発が心配」「月経や天気のたびに頭痛が出る」——どのような状況でも、現状をお聞きすることから始めます。薬剤師・鍼灸師・心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学、心理的な側面から一人ひとりに合った提案をいたします。

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よくある質問(FAQ)

片頭痛は治りますか?
片頭痛は、現時点で「一度で完全に治る」と言い切れる病気ではありませんが、治療によって発作の回数と程度を大きく減らせる病気です。予防療法や生活面の調整で、頭痛日数が減り、薬を飲む回数が少なくなる方は多くいます。タナココでは、頭痛日数や鎮痛薬を使う日数が少なくなることを目標に、体質面から整える漢方・鍼灸を、現在の治療と組み合わせてご提案します。
片頭痛に漢方や鍼灸は効きますか?
鍼治療は、Cochraneレビュー(2016年)で、通常の治療のみの場合より頭痛の頻度を減らす可能性が示され、頭痛の診療ガイドライン2021でも非薬物療法として記載されています。漢方では、呉茱萸湯が慢性頭痛の頭痛日数を減らしたとする二重盲検試験(2006年)があります。一方で、研究間のばらつきや試験の規模の限界があり、「必ず効く」とは言えません。体質(証)に合わせた処方と施術で、効果を確認しながら進めます。
CGRP関連薬やトリプタンを使っていますが、漢方・鍼灸と併用できますか?
併用は可能です。漢方・鍼灸は現在の薬物療法を置き換えるものではなく、体質面を整えて発作の起こりにくい状態をつくる位置づけです。タナココでは薬剤師資格をもつ担当者が、服用中の薬との相互作用(甘草を含む処方の重複など)を確認したうえで処方します。薬の変更や中止は、自己判断せず主治医に相談してください。漢方・鍼灸を併用していることも主治医にお伝えください。
鎮痛薬を飲む日が増えています。このままで大丈夫でしょうか?
鎮痛薬やトリプタンの使用が多くなると、かえって頭痛が増える「薬剤の使用過多による頭痛」になることがあります。ICHD-3では、トリプタンや複合鎮痛薬を月10日以上、単一成分の鎮痛薬を月15日以上、3か月を超えて使う場合が目安とされています。この基準に近づいている場合は、頭痛専門医・脳神経内科での予防療法の検討をお勧めします。漢方・鍼灸は、その過程で薬に頼りすぎない体づくりを支える選択肢として利用できます。
雨の日や気圧が下がると頭痛がします。漢方で対応できますか?
気圧や天候の変化は、片頭痛の誘因としてよく知られています。中医学では、水の巡りの滞り(痰飲・水滞)が背景にあると捉えることがあり、五苓散や半夏白朮天麻湯などを体質に応じて検討します。天気の変化に伴う頭痛では、めまい・むくみ・吐き気・だるさを併せもつ方が多く、その症状も含めて体質を整えていきます。
月経の前後に頭痛がひどくなります。
月経周期に伴うエストロゲンの低下は、片頭痛の発作の誘因として知られています。中医学では、気血の巡りや血の不足、肝の気の滞りと関連づけて捉え、当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸などを体質に応じて検討します。月経に関連した片頭痛は、治療薬の選び方にも専門的な判断が必要なため、頭痛や婦人科の医療機関とも連携しながら進めます。
どのような頭痛のときに、すぐ受診すべきですか?
突然始まる激しい頭痛、これまでにない頭痛、手足の麻痺・ろれつが回らない・意識がもうろうとするなどの症状、発熱や首の硬直を伴う頭痛、頭部外傷後の頭痛、50歳以降に初めて起きた頭痛は、片頭痛以外の病気の可能性があり、早急な医療機関の受診が必要です。このような場合は、漢方・鍼灸より先に、救急または脳神経内科・脳神経外科を受診してください。
鍼灸はどのくらいの期間・回数で変化を感じますか?
個人差が大きく、一概には言えません。予防を目的とした鍼治療の臨床試験は、数週間〜数か月にわたって複数回行われており、Cochraneレビューでは6回以上の鍼治療が有用な選択肢とされています。タナココでは、頭痛ダイアリーで頭痛日数や鎮痛薬を使う日数を確認しながら、数か月単位で経過を見守り、体の変化に応じて処方・施術の内容を調整します。

片頭痛──「頭痛とつきあうしかない」で終わらせない選択肢があります

「また頭痛で予定をあきらめた」「薬を飲む回数が増えている」「天気や月経のたびに怖くなる」——その繰り返しには、体の側にも理由があります。片頭痛は、意志や我慢の問題ではなく、神経・血管・自律神経・体質が関わる病気であり、医療的な治療に加えて、体質の側からもサポートできる病気です。

気血の巡りを整えること。冷えや水の滞り、ストレスによる緊張、首肩のこわばりといった発作の背景を、一つずつ確認して整えること。頭痛の日が少なくなり、薬に頼る回数が減っていくこと。そのために、漢方と鍼灸を通じてできる限りのことをしたいと考えています。頭痛の日が少なくなるまで、体質の変化を確認しながら、処方と施術を調整し続けます。

「予防薬を使っていても頭痛が減らない」「CGRP関連薬の中止後の再発が心配」「薬の副作用が気になって続けにくい」「体質そのものを変えていきたい」——どのような状況でも、現状をお聞きすることから始めます。薬剤師・鍼灸師・心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学の両面から、一人ひとりに合った提案をいたします。

一歩ずつで構いません。頭痛を減らしていくための選択肢があることを、まず知っていただければと思います。

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