妊活のサポートしていると病院では「わからない」と言われて困っている方の相談を受けることが多々あります。
その1つに「POIS(Postorgasmic Illness Syndrome)」という疾患があります。日本語では、「オーガズム後症候群」と訳されます。
POISは、射精やオーガズム後に、身体的・精神的な症状が出現し、数日続く稀な疾患です。初めて系統的に記載されたのは 2002年、Waldingerら による症例で、欧米を中心に少数の研究が進んでいます。
1. POIS の定義・特徴
POIS は以下のような特徴を持つとされています:
✅ 症状の発症
射精後、数分〜数時間以内に症状が現れる。
✅ 症状の持続
通常 2〜7日程度続き、自然に軽快。
✅ 頻度と継続性
ほぼすべての射精イベント後に起こることが多い。
2. 症状の全体像 — 7つの症状群
Waldinger 論文では、POIS の特徴的な症状を7つのグループ に分けています。これは「インフルエンザ様」の全身症状から、集中力・コミュニケーションの低下、感情変動、眼・鼻の不快症状まで多彩です。
主な症状
- 全身倦怠・疲労感・集中困難
- インフルエンザ様症状(発熱感、発汗、悪寒)
- 頭部不調(頭痛、霧のような感覚)
- 眼の不快感(かゆみ、痛み、涙目)
- 鼻の不快症状(鼻づまり、鼻汁)
- 喉・口の症状(咽頭不快感、嗅覚変化)
- 筋・身体の不調(脱力、痛み)
この多彩さが、POIS を「単なる疲労や精神症状」と区別するポイントです。
3. 原因について ── まだ確定ではないが「免疫系の反応」が有力
🔍 免疫反応説
射精時に体内で特定のタンパク質が放出され、それに対して 自己免疫的反応(サイトカイン放出など) が起き、全身反応を誘発するという仮説があります。
皮膚プリックテスト(薄く希釈した自分の精液を皮下注射)でも反応が見られた例があり、免疫反応の関与が示唆されています。
ただし…
IgE(典型的なアレルギー抗体)増加は基本的に見られない — つまり「普通のアレルギー」ではない可能性が高い、という報告があります。
📋 4. POIS の診断基準
5つの暫定診断基準が提唱されています。
- 射精後に典型的な症状が出る
- 症状は射精から数分〜数時間後に現れる
- ほぼ常に起こる
- ほぼ 2〜7 日続く
- 自然に軽快する
これらを満たす場合に POIS と臨床的に診断 されます。
5. 治療の進め方と対処法
現時点では確立された治療法はありませんが、複数のアプローチが 対症療法として報告されています。
主な治療アプローチ例
- 抗ヒスタミン薬
- NSAIDs(消炎鎮痛薬)、アセトアミノフェン
- テストステロン(男性ホルモン)補充
- SSRI(抗うつ薬)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬
- α遮断薬
- 免疫調整薬(オマリズマブ)
- ナイアシン
- その他(アセタゾラミド、トリプタン系、バクロフェンなど)
- 減感作療法
- 漢方・鍼灸
- 心理的サポート
6. POIS が生活に及ぼす影響
POIS は 身体症状のみならず、心理・社会的ストレスを強く伴うことが報告されています。症状の強さと継続が仕事・学業・人間関係に影響する例もあり、生活の質(QOL)の低下が懸念されます。
またPOISは精神的な苦痛にも悩まされることも大きな問題です。
妊活・不妊治療をされている方では、身体的・精神的苦痛が非常に大きいにも関わらず、なかなか理解されないこともあり、妊活・不妊治療が進まないこともあります。
7. POIS(オーガズム後症候群)と漢方・中医学的アプローチ
漢方や中医学的視点での治療・体質改善は 補完的・統合的治療の一選択肢として考えられ得るアプローチです。これは「根治治療が確立していない疾患に対して、患者の全体状態を整える」という 中医学の本義に沿ったアプローチでもあります。
漢方は症状の「型(証)」による処方選択が基本です。POIS の全ての人に同じ漢方が効くわけではなく、
- 精神的緊張主体
- 疲労・倦怠主体
- 冷え・自律神経失調主体
など、それぞれのパターンを見極めて処方を選択します。これは中医学的な診断プロセスであり、処方の組み合わせ・量も個別に調整されます。
POIS は身体だけでなく 精神・自律神経の不調が強く出る症候群ですが、中医学ではこれを以下のように整理します。
| 症状要素 | 中医学の理解 |
|---|---|
| 倦怠・疲労 | 気血不足・腎気虚など |
| 不安・イライラ | 肝鬱・心神不安など |
| 自律神経不調 | 気の停滞・調整失調など |
| 頭重・頭痛 | 気滞・血瘀、あるいは寒熱失調など |
現現在の POIS に対する西洋医学のエビデンスは限られており、病態の理解と治療法の基盤はまだ十分に確立されていません。治療例としては先に挙げた抗ヒスタミン薬や NSAIDs、ホルモン調整療法、減感作療法などケース報告レベルの試みが報告されていますが、標準化された治療プロトコールや大規模データはまだ確立されていません。
漢方・鍼灸は全身のバランスを整える補完療法として 臨床的に検討されることのある選択肢です。ただし、POIS に対する標準的なエビデンス・大規模試験はなく、個々の症状や体質を丁寧に評価しながら西洋医学的診断・病態評価と統合的に支援計画を立てることが症状改善や患者さんの心理的負担軽減に役立つ可能性があります。
POIS は症状の性質上、身体・心理・社会生活への影響が大きいという点が複数の研究でも示されています。特に日常生活や性的関係の維持への影響、回避行動が患者さんの生活の質(QOL)を低下させることが観察されており、体と心のケアを同時に行う統合的サポートが重要です。
よくある症状ではないため、ひとりで悩まれている方もいますが、体と心のケアを合わせて行うことで症状とその負担を軽くするお手伝いができると思いますのでご相談ください。
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