持続性特発性顔面痛(PIFP)と漢方・鍼灸

持続性特発性顔面痛(PIFP)とは|診断基準・症状・治療の限界と漢方・鍼灸によるサポート|相模原 タナココ
持続性特発性顔面痛・PIFP・非定型顔面痛 × 漢方・鍼灸 / 相模原 タナココ

持続性特発性顔面痛(PIFP)とは──
診断基準・原因・治療の限界と、体質から整えるアプローチ

歯や顎を調べても異常がない。それでも、顔や歯の痛みが毎日続く。そのような状態に、持続性特発性顔面痛(PIFP)という診断名が付くことがあります。以前は「非定型顔面痛」と呼ばれていました。

「特発性」は、現在の検査で原因が見つからないという意味で、気のせいという意味ではありません。顔の痛みを処理する脳幹の働きに変化があることが、近年の脳画像の研究で示唆されています。

西洋医学の診断と治療を土台に、漢方・鍼灸で体質と緊張の面から支える方法を、タナココは一人ひとりにご提案します。痛みが軽くなり、普段の生活に近づく方向を、最後まで一緒に探します。

最終更新日:2026年10月30日

持続性特発性顔面痛(PIFP)の理解と体質へのアプローチ

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持続性特発性顔面痛(PIFP)とは何か

持続性特発性顔面痛(Persistent Idiopathic Facial Pain、以下PIFP)は、顔や口の中の痛みがほぼ毎日、長い時間続くにもかかわらず、歯・顎・神経・脳などを調べても痛みを説明できる原因が見つからない状態に付けられる診断名です。国際頭痛分類第3版(ICHD-3)では「13.12」に分類され、以前は「非定型顔面痛」と呼ばれていました。

「非定型」という呼び名は、1924年に、発作的で電撃のような痛みが特徴の典型的な三叉神経痛と区別するために使われ始めました(Dtsch Arztebl Int 2021)。2020年に発表された国際口腔顔面痛分類(ICOP)でも、PIFPは「特発性口腔顔面痛」のひとつに位置づけられています。

「特発性」は、現在の検査では原因が見つからないという意味です。痛みがないという意味でも、気のせいという意味でもありません。血液検査やレントゲン、MRIに写らない種類の痛みであることが、診断を難しくしています。検査で異常がないと説明されたあとも痛みが続き、周囲に理解されにくい状況にある方は少なくありません。

診断名の「persistent(持続性)」について、口腔顔面痛の専門家であるZakrzewska氏は、「chronic(慢性)」ではなく「persistent」が選ばれたのは、痛みの軽減があり得ることを含むためだと説明しています。

三叉神経痛・持続性特発性歯槽痛(PIDAP)との違い:

三叉神経痛は、数秒から2分以内の電気が走るような激しい痛みが発作的に起こり、触れる・食べる・飲むなどで誘発されるのが特徴です。PIFPは、鈍い・うずく・重苦しい痛みが続くのが基本で、発作的な激痛や誘発点は伴いません。ただし、三叉神経痛の患者さんの約半数には発作の合間にも続く痛みがあると報告されており、見分けには専門医の診察が必要です(Dtsch Arztebl Int 2021)。

歯や歯ぐきの特定の部位に限られる持続痛は、ICOPでは「持続性特発性歯槽痛(PIDAP、旧称:非定型歯痛)」としてPIFPとは別に分類されます。ICHD-3では、PIFPのサブタイプとして扱われています。
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診断基準と、先に除外すべき病気

PIFPの診断は、他の病気を除外したうえで、痛みの特徴が診断基準に合うかを確認して行います。画像検査や血液検査だけで確定できる病気ではありません。

1)ICHD-3(国際頭痛分類第3版)の診断基準

診断基準(A〜F)

  • A.顔面または口腔の痛みで、BとCを満たす
  • B.1日2時間を超える痛みが、3か月を超えて毎日繰り返す
  • C.痛みが次の2つをともに満たす:①局在がはっきりせず、末梢神経の走行に一致しない ②鈍い・うずく・しつこい(nagging)性質
  • D.神経学的診察が正常
  • E.歯の原因が、適切な検査で除外されている
  • F.他のICHD-3診断で説明できない

ICHD-3の注記(診断を考えるうえでの特徴)

  • 痛みは深部にも表層にも感じられ、鋭い痛みが一時的に強まることがある
  • ストレスで悪化しやすい
  • 時間とともに、頭頸部のより広い範囲に広がることがある
  • 女性に多い
  • 慢性広範囲痛や過敏性腸症候群などの痛みの併存があり、精神面の併存症や生活上の困難も多い
  • 小さな手術や外傷を契機に始まり、傷が治ったあとも痛みが残ることがある

2)ICOP(国際口腔顔面痛分類)の基準とPIDAPとの違い

2020年に発表されたICOPでは、診断基準のD項目が「臨床的検査と画像検査で異常がなく、局所の原因が除外されていること」とされています。ICHD-3が「歯の原因の除外」を求めるのに対し、ICOPは画像検査も含めた局所原因の除外を求めています。

ICOPでは、痛む部位の感覚検査の結果により、体性感覚の変化を伴わないPIFP、体性感覚の変化を伴うPIFP、PIFP疑い(probable)に分けます。歯や歯槽部に限られる場合は、PIFPではなく「持続性特発性歯槽痛(PIDAP)」に分類されます。2025年に発表された国際的な専門家16名による合意研究(Cephalalgia 2025)では、専門家は診断にあたってICOPを基準にしていたと報告されています。

3)先に除外すべき病気

上記の合意研究は、PIFPと診断する前に除外すべき主な5つの病気を次のようにまとめています。

除外すべき病気 見分けるときの視点 主な確認方法・診療科
歯・歯周組織の病気 歯髄炎や根尖病巣など、痛みを説明できる局所の病変があるか 歯科の診察、歯科X線、CT/CBCT
顎関節症・咀嚼筋の痛み(首からの関連痛を含む) 口を開ける・噛むときの痛み、筋肉の圧痛があるか 口腔顔面痛に詳しい歯科での顎関節・筋肉の診察
一次性頭痛(片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛など) 顔面だけに症状が出る型があり、発作性か、随伴症状があるか 神経内科・頭痛外来
神経障害性の痛み(三叉神経痛、外傷後の三叉神経ニューロパチーなど) 発作性の電撃痛、感覚の低下や異常があるか(神経損傷を示す所見はPIFPと合わない) 神経内科・ペインクリニック、MRI
悪性腫瘍など 症状だけでは判断できず、画像検査が必要 CT/CBCT、症状に応じて頭部MRI

そのほか、耳鼻咽喉科の病気(副鼻腔炎など)、側頭動脈炎、顎骨の骨髄炎、慢性広範囲痛なども鑑別に挙げられています。

診断までの一般的な流れ

① 問診: 痛みの性質・経過・きっかけ(歯科処置や外傷)、ストレスや気分の状態、ほかに続く痛みがないかを確認します。

② 歯科での診察: 歯に原因がないかを確認する歯科の診察は、専門家の合意で「必須」とされています。口腔顔面痛に詳しい歯科医師による顎関節・咀嚼筋の確認も勧められています。

③ 神経学的診察: 脳神経の診察と、痛む部位の感覚の確認を行います。

④ 画像検査: CTまたはCBCTで局所の病変を確認し、症状に応じて頭部MRIで腫瘍や頭蓋内の病気がないかを確認します。

⑤ 診断と多職種での連携: ほかの病気を除外したうえでPIFPと診断します。神経内科、歯科、心療内科・精神科、ペインクリニック、耳鼻咽喉科など、複数の専門家が関わることが勧められています。

診断を医療機関で受けていただく理由:

顔の痛みの背景には、歯の病気、顎関節症、頭痛、神経の病気、腫瘍など、治療が異なる病気があります。顔の感覚が鈍い、発熱や腫れがある、物が二重に見える、こめかみの痛みや視力の変化がある、痛みが急に強くなったといった場合は、PIFPと決める前に、医療機関で原因の確認が必要です。PIFPの診断は、そうした病気を確認したあとに初めて検討されます。
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症状:痛みの特徴と、生活への影響

PIFPの痛みの現れ方には個人差がありますが、ドイツの専門施設の総説(Dtsch Arztebl Int 2021)を中心に、共通して報告されている特徴を整理します。

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痛みの性質と部位

鈍い、うずく、重苦しい、しつこい痛み。ほぼ一日じゅう続き、強さは1日のなかで変動します。強さは中程度のことが多く、頬と上顎で最も強いと感じる方が多いと報告されています。深いところにも表面にも感じます。

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経過・広がり方

最初は顔の片側だけのことが多く、のちに両側に広がる方もいます。下顎、後頭部、耳、肩、腕に広がることもあります(まれ)。夜は眠れる方が多く、起床直後に短い痛みのない時間がある方もいます。ストレスや疲れで悪化しやすい傾向があります。

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生活・心理面への影響

食事、会話、仕事、家事に影響します。顔の腫れぼったさを訴える方もいます。抑うつ、不安、睡眠の問題を伴う方が多く、慢性広範囲痛や過敏性腸症候群を併せ持つ方もいます。複数の医療機関を受診している方が多くいます。

PIFPでは通常みられない症状:

涙や鼻水などの自律神経症状、数秒〜数分の電撃のような発作痛、顔の感覚の鈍さ(感覚の低下)は、PIFPでは通常みられないとされています。これらがある場合は、別の病気が関わっている可能性があるため、医療機関での再評価が必要です(Dtsch Arztebl Int 2021)。
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有病率と、受診までの実情

PIFPは、まれな病気です。まれであることが、診断までに時間がかかる一因になっています。

項目 目安 特記事項
生涯有病率 約0.03% ドイツの人口調査(Cephalalgia 2011)。三叉神経痛(約0.16〜0.3%)より少ない
年間発生率 人口10万人あたり約4.4人 オランダの一般人口を対象とした研究(Pain 2009)
性別 女性が約75〜90% ICHD-3にも「女性に多い」と記載
診断時の年齢 30〜60歳が多い 初診時の年齢の報告。若年や高齢での発症もある
最初に受診する科 歯科が大半 ハンブルクの専門外来のPIFP患者150名中149名(99.3%)が、最初に歯科を受診(Headache 2021)
日本国内の統計 確認できた範囲では見当たりません 日本の有病率は今後の調査が待たれる

診断の遅れや、不適切な治療が起きていることは、複数の研究が報告しています(Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol 2019、J Pain Res 2020)。顔の痛みは歯の痛みと感じやすく、歯科の受診から始まる方が大半です。そのため、歯科処置を繰り返しても痛みが変わらない、という経過をたどる方がいます。

歯科処置の連鎖について:

PIFPでは、歯の痛みと感じて抜歯や根管治療を受けても痛みが変わらず、別の歯や元の部位に痛みが移るという経過が報告されています(Dtsch Arztebl Int 2021)。2025年の国際的な専門家の合意(Cephalalgia 2025)でも、明確な適応がないまま行う不可逆的な歯科・外科処置は、痛みを増やすおそれがあるため避けることが推奨されました(合意率100%)。

ただし、PIFPとは別に、根尖性歯周炎など治療が必要な病気が見つかった場合は、その治療は適応になります。歯科治療を受けるかどうかは、必ず歯科医師とご相談ください。
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発症のメカニズム

PIFPの発症メカニズムは、現時点では解明されていません。ただし、近年の研究から、いくつかの有力な見方が整理されてきました。以下は「確定した事実」ではなく、研究で示唆されている仮説を含みます。

1)痛みを処理する中枢側の変化(中枢感作・痛覚変調性疼痛)

PIFPでは、痛む部位の神経に明らかな損傷が見つからないのに、痛みが続きます。この点から、末梢の組織の異常ではなく、痛みの信号を受け取って処理する脳幹や脳の働きの変化が関わると考えられています。

ドイツ・ハンブルク大学のグループは、PIFPの患者25名と健常者25名に、鼻から三叉神経を刺激する痛み刺激を与え、脳幹の機能的MRI(fMRI)を撮影しました。PIFPの群では、顔の痛みの信号を中継する「脊髄三叉神経核」の反応が、痛み刺激に対して健常者より強いことが示されました(Pain 2021)。2025年には同グループが、神経障害性顔面痛でも同様に脊髄三叉神経核などの反応が強いことを示し、すでにあるPIFPのデータと合わせて、PIFPにも中枢での痛み処理の変化が関わり、痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)を示唆する変化だと考察しています(J Headache Pain 2025)。

痛覚変調性疼痛とは、組織や神経の損傷が明らかでなくても、痛みの感じ方そのものが変化して生じる痛みを指す概念です。

2)きっかけとなる末梢の刺激

PIFPは、歯科処置や、顔・顎・歯ぐきの軽い外傷・手術のあとに始まることがあります。傷が治ったあとも痛みだけが残り、痛みの原因となる局所の異常は見つかりません(ICHD-3)。小さな刺激に対して、不釣り合いに大きな反応が起きる状態と考える見方があります。ICHD-3は、軽い外傷で始まるPIFPから、明らかな神経損傷による外傷後三叉神経ニューロパチーまで、連続的につながる可能性を述べています。また、感覚の精密な検査では、一部の患者さんに異常が示されることがあります。

なお、発症の前に歯科処置があった場合、その処置が痛みのきっかけだったのか、すでにあった痛みのために行った処置だったのかは、はっきりしないことが多いと報告されています(Dtsch Arztebl Int 2021)。

3)MRIで見つかる血管と神経の接触

MRIで三叉神経と血管の接触が見つかることがあります。2026年に口腔外科の専門誌(J Oral Maxillofac Surg)に掲載された論考は、痛覚変調性疼痛では、こうした接触が偶然に見つかる所見であることが多く、末梢の機械的な圧迫ではなく、中枢の感作や神経炎症が病態の中心にあるという見方を示しています。画像の所見だけで原因を決めず、症状の特徴と合わせて判断することが必要です。

4)ストレス・心理社会的要因と悪循環

ICHD-3は、PIFPがストレスで悪化しやすく、精神面の併存症や生活上の困難が多いと記載しています。痛みが続くこと自体が、睡眠・気分・活動量に影響し、それがさらに痛みの感じやすさに影響する、という悪循環が慢性の痛み全般で知られています。2026年の症例対照研究(Brain Behav 2026)では、PIFPを含む慢性口腔顔面痛の患者さんで、痛みが社会生活に及ぼす影響の大きさが、心理面・認知面の不調と関連していたと報告されています。

これは、心理的な問題が痛みの原因だと決めつけるものではありません。痛みの仕組みと、痛みによる生活への影響の両方に目を向ける必要がある、という意味です。

痛みが続く流れの整理(現時点の仮説)

① 小さな刺激: 歯科処置、軽い外傷、手術などが、きっかけになることがある(きっかけが不明な場合もある)。

② 信号の入力: 顔の末梢から、痛みの信号が三叉神経を通って脳幹に入る。

③ 中枢での処理の変化: 脊髄三叉神経核を含む中枢で、痛みの信号に対する反応が強くなる(中枢感作)。

④ 痛みの持続と広がり: 傷が治っても痛みが残り、部位や強さが変動し、範囲が広がることがある。

⑤ 生活への影響: 睡眠・気分・活動量が低下し、痛みを感じやすくなる状態が続く。ここに、不要な処置による痛みの増強が加わることがある。

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現在の治療とその限界

PIFPには、確立された標準治療がまだありません。2025年に発表された国際的な専門家(16名)の合意研究(Cephalalgia 2025)は、42項目のうち35項目(83%)で意見が一致し、多職種での評価と治療、不可逆的な処置を避けること、薬物療法と心理的アプローチの併用を勧めています。ただし、この合意は専門家の経験に基づくもので、今後、より具体的な推奨のための研究が必要だと著者らも述べています。

まず行うこと:診断の確定と、痛みの説明

ほかの病気を除外し、PIFPという診断と、痛みの仕組みの説明を受けることが出発点です。専門家の合意では、慢性の痛みについての患者教育と、認知行動療法などの行動療法が重要な介入とされました(合意率100%)。睡眠や運動といった生活全般の調整も重視されています(94%)。

避けたほうがよい処置

明確な適応がない限り、抜髄・根管治療、根尖切除、抜歯、咬合調整や補綴治療、顎矯正手術、試験的な手術は避けるべきとされました(合意率100%)。痛みが増すおそれがあるためです。

薬物療法

PIFPそのものを対象に開発・承認された薬ではなく、神経障害性疼痛などで使われる薬を転用する形で用いられます。国内での適応は薬ごとに異なるため、処方する医師にご確認ください。

薬の種類 専門家の合意(2025年)での位置づけ 主な注意点
三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、ノルトリプチリン) 第一選択として挙げられた(16名中11名が賛成。合意基準の80%には届かず、多数意見) 口の渇き・眠気・便秘などの副作用の頻度が高いと報告されている
SNRI(デュロキセチン、ベンラファキシン) 三環系抗うつ薬が合わない場合に検討(合意率81%) 吐き気、血圧上昇などに注意
ガバペンチノイド(ガバペンチン、プレガバリン) 上記で効果が不十分なとき、切り替えまたは併用を検討(合意率81%) 眠気・ふらつきなどに注意
オピオイド 原則として避ける(合意率94%) 副作用や依存のリスクがある
ボツリヌス毒素A注射・神経ブロック 専門家の間で合意も多数意見も得られなかった 蝶口蓋神経節へのボツリヌス毒素注射の無作為化試験(Cephalalgia 2023)では、短期的な痛みの軽減はプラセボと比べて認められなかった

多職種での治療に関する報告

ドイツ・フライブルク大学の疼痛センターで、5週間の通院型の多職種疼痛治療(医学的治療・理学療法・心理療法)を受けたPIFPの患者さん25名を、平均3.5年後に調べた後ろ向きの研究があります。痛みの強さは有意に低下し、抑うつと不安の指標も改善していました。0〜10の目盛りでの痛みの低下は、平均で約1.4ポイントでした。患者さんが最も効果的と評価したのは理学療法(ストレッチ、トリガーポイントの治療、運動療法)で、72%が他の患者さんにもこの治療を勧めると答えています(BioPsychoSocial Medicine 2022)。小規模で対照群のない研究のため、効果を確定するものではありませんが、PIFPで多職種のアプローチが有望な選択肢であることを示す報告です。

治療の限界

現在の治療で課題となっている点

確かな証拠が少ないこと: 2021年のドイツの総説は、PIFPの薬物療法を検証した無作為化比較試験はまだ行われていないと記しています。2025年のシステマティックレビュー(Annals of Medicine)は、非定型顔面痛に対する薬物療法の無作為化試験10件を検討し、薬ごとに効果が一貫しないとまとめました。

ガイドラインに沿っても効果が乏しい方がいること: ハンブルクの専門外来で10年にわたり調べた研究(Headache 2021)では、PIFPの患者さんは、ガイドラインに沿った薬物療法を受けても、効果が乏しいと感じている方が多いことが報告されました。

副作用: 三環系抗うつ薬は副作用の頻度が高く、続けにくい方がいます。副作用のために、十分な量まで増やせない場合があります。

診断の遅れと、不要な処置: 診断までに時間がかかり、その間に不可逆的な歯科処置を受けてしまう例が報告されています。

痛みの消失だけを目標にしにくいこと: 専門家の合意では、治療成功の最も重要な指標は、生活の質の向上と日常活動への復帰とされました。痛みが残る場合でも、受容と対処の工夫で生活の質を高められるという点で、意見が一致しています。

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西洋医学 vs 中医学 アプローチ比較

PIFPに対する西洋医学と中医学のアプローチの違いを整理します。両者は対立するものではなく、診断と除外は西洋医学が、体質面の支えは中医学が得意とする領域です。役割を分けて組み合わせることで、より包括的なサポートになります。

観点 西洋医学的アプローチ 中医学的アプローチ
病態の捉え方 痛みの処理の変化(中枢感作・痛覚変調性疼痛)として捉え、ほかの病気の除外を重視する 気・血・水の巡りの滞り、気血の不足、ストレスによる気の滞り、冷え、湿といった体質の偏りとして、全身から捉える
治療の目標 痛みを受け入れられる程度まで軽くし、生活の質と日常活動を取り戻す 痛みの背景にある緊張・疲労・睡眠・冷え・胃腸の状態を整え、痛みの感じやすさと生活の質を支える
主な治療手段 患者教育、認知行動療法、三環系抗うつ薬・SNRI・ガバペンチノイド、睡眠と運動の調整、多職種治療 弁証に基づく漢方処方(加味逍遙散・補中益気湯・立効散など)、鍼灸(顔面局所と手足・首肩の経穴)、養生の指導、お話を伺う時間
長所 ほかの病気を除外できる、診断基準がある、薬による治療選択肢がある 痛み以外の不調(睡眠・胃腸・冷え・疲労)も同時に見る、薬との併用を相談しやすい、お体の反応に合わせて刺激量を調整できる
限界・課題 標準治療が確立していない、効果に個人差がある、副作用で続けにくい場合がある PIFPを対象にした質の高い比較試験がない、個人差が大きい、診断や画像検査は医療機関で行う必要がある
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中医学からのPIFP病態分析

中医学には、「通じざれば則ち痛む(不通則痛)」「栄えざれば則ち痛む(不栄則痛)」という考え方があります。痛みは、気・血・水の巡りが滞っている場合と、気・血が不足して組織が養われていない場合に分けて考えます。PIFPのように長く続く顔の痛みも、痛む場所だけでなく、その背景にある体質の偏りとして分析します。

顔は、足陽明胃経(頬・上顎・下顎)、手陽明大腸経(鼻の脇)、手太陽小腸経(頬骨の下)、足少陽胆経(こめかみ)など、複数の経絡が通る部位です。脈診・舌診・腹診・問診の総合分析(弁証〔べんしょう〕)で、体質の偏りと、痛みが強まる条件を把握し、処方と鍼灸の方針を決めます。PIFPで見られることのある証は、次のとおりです。

かんきうっけつ
肝気鬱結(ストレスで悪化する型)

ストレスや緊張で「肝」の気の流れが滞った状態。ICHD-3が記載する「ストレスで悪化する」特徴と重なる。痛みが緊張・疲れで強まり、いらいら、ため息、胸や脇の張り、肩や首のこりを伴う。女性では月経前に悪化することもある。加味逍遙散・四逆散・柴胡桂枝湯・抑肝散などが検討される。

きけつりょうきょ
気血両虚・脾気虚(疲れで悪化する型)

気・血が不足し、顔面部が養われにくい状態(不栄則痛)。重だるい鈍痛が続き、疲労や睡眠不足で強まる。倦怠感、食欲低下、顔色の乏しさ、立ちくらみを伴う。補中益気湯・帰脾湯・十全大補湯などが検討される。

おけつ
瘀血(処置・外傷のあとに長引く型)

血の巡りが滞った状態。歯科処置や外傷のあとから痛みが続き、同じ場所の重苦しさや圧迫感がある。舌が暗紫色、肩や首の固いこり、女性では月経痛や経血の塊を伴うことがある。桂枝茯苓丸・疎経活血湯などが検討される。血虚を伴う場合は当帰芍薬散が検討される。

たんしつ・すいたい
痰湿・水滞(重だるさと天気の影響を受ける型)

余分な水分が滞り、顔面や頭部への栄養とエネルギー(清陽)の巡りを妨げる状態。頬や頭が重い、むくみ感があり、雨の日や湿度の高い日に悪化する。胃腸が弱く、舌に歯形や厚い苔がつく。五苓散・半夏白朮天麻湯・苓桂朮甘湯などが検討される。

かんしつ・ようきょ
寒湿・陽虚(冷えで悪化する型)

体を温める力が不足し、寒さと湿気が滞った状態。冷え、冷房、寒風で痛みが強まり、温めると楽になる。手足の冷え、下痢傾向を伴う。桂枝加朮附湯・真武湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯などが検討される。

けっきょ・じんいんきょ
血虚・腎陰虚(女性・中年期に見られる型)

血や陰液(体の潤い)、腎の働きが消耗した状態。のぼせ、ほてり、口の乾き、寝汗、不眠、肌や髪の乾燥、月経の変化を伴う。PIFPが女性に多く、診断時の年齢が30〜60歳に多いという特徴を、中医学では血と腎の消耗、肝の気の乱れという観点から検討する。六味丸・知柏地黄丸・加味逍遙散・当帰芍薬散・温経湯などが検討される。※疫学的な特徴と証の関係を検証した研究はなく、中医学の理論に基づく見方である。

立効散(りっこうさん)が口腔顔面痛で用いられる理由:

立効散は、細辛(さいしん)・升麻(しょうま)・防風(ぼうふう)・竜胆(りゅうたん)・甘草(かんぞう)の5つの生薬からなる漢方処方で、医療用エキス製剤の効能・効果は「抜歯後の疼痛、歯痛」です。歯痛のための処方として古くから用いられ、日本では、歯や口の中の痛みから、顔面痛・舌痛症・三叉神経痛などの口腔顔面領域の痛み全般にも応用されてきました。細辛には、局所麻酔のような作用があると指摘されています(漢方の専門家による解説)。

PIFPそのものへの保険適用はなく、効果を確立した研究もありません。特発性歯痛や非定型顔面痛に用いた症例報告がある、という位置づけです。甘草を含むため、長期に使う場合は血圧と血清カリウム値に留意します。
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漢方・鍼灸に関する研究報告の現状

研究の現状と限界: PIFPを主な対象とした漢方・鍼灸の無作為化比較試験は、今回確認できた範囲では見当たりません。「PIFPに漢方・鍼灸が効く」という確かな根拠は、現時点ではありません。判断の材料になるのは、症例報告、近い痛み(顎関節症・三叉神経痛・慢性の痛み全般)の研究、そして中医学の理論に基づく臨床の考え方です。

立効散などの漢方に関する報告

日本口腔顔面痛学会雑誌(2010年)には、歯科治療をきっかけに生じた非定型顔面痛の症例報告があります。心理的な支持療法で日中の痛みが軽くなり、夜間の痛みに立効散を用いたところ眠れるようになり、中断していた歯科治療を再開できたという内容です。また、「痛みと漢方」誌には、特発性歯痛と診断し、支持的精神療法に立効散を併用して経過を見たところ症状が軽くなり、減量・休薬後に管理を終了した症例が報告されています。いずれも対照群のない症例報告で、効果を確立するものではありません。加味逍遙散や抑肝散など、そのほかの処方をPIFPで検証した比較試験は、確認できた範囲では見当たりません。

鍼灸に関する研究

慢性の痛み全般:39件の無作為化試験・20,827名のデータを統合した解析(J Pain 2018)では、非特異的な筋骨格系の痛み、変形性関節症、慢性頭痛、肩の痛みのいずれでも、鍼治療は無治療より痛みが少なく(効果量は約0.5)、偽鍼(シャム)と比べても小さいながら有意な差がありました(効果量は約0.2)。ただし、これらの試験は顔面痛を対象としたものではありません。

口腔顔面痛:2024年のシステマティックレビュー(Disability and Rehabilitation)は、口腔顔面痛への鍼治療の52研究を検討しました。86.5%に高い偏りのリスクがあり、エビデンスの確実性は「非常に低い」と評価されています。対象の中心は顎関節症で、合谷・頬車・下関がよく用いられていました。

三叉神経痛:2023年のシステマティックレビュー(30件の無作為化試験・2,295名)では、カルバマゼピンとの比較で鍼治療群の痛みの改善が示されましたが、エビデンスの確実性は低いと評価されています。2026年の更新レビューも、質の高い多施設試験が必要としています。

これらはPIFPへの有効性を示すものではありません。慢性の痛みの全般で鍼治療の効果が報告されていること、口腔顔面痛では研究の質がまだ十分でないこと。この両方が、現状です。

体を動かす・緩める介入と、中医学の接点

前述のフライブルク大学の研究では、ストレッチやトリガーポイントの治療などを含む理学療法が、患者さんに最も効果的と評価されました。2025年の専門家の合意でも、頭頸部の痛みに詳しい理学療法士の関与が望ましいとされています(16名中12名が賛成)。咀嚼筋や首・肩の緊張を緩めるという方向性は、鍼灸や手技療法で筋緊張にアプローチする中医学の臨床と重なる部分があります。ただし、鍼灸そのもののPIFPへの効果を示した研究ではありません。

最新の研究の動き

PIFPの研究は、「原因不明」の段階から、仕組みが少しずつ見えてきた段階に入っています。2025年には、国際的な専門家によるPIFPの管理に関する合意(Cephalalgia 2025)が発表され、脳幹のfMRI研究(J Headache Pain 2025)が、中枢での痛み処理の変化を示唆しました。2026年には、PIFPを含む慢性口腔顔面痛の心理・認知面の特徴を調べた研究(Brain Behav 2026)も報告されています。治療に関する質の高い研究は、これから積み上がっていく分野です。

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タナココにおける漢方・鍼灸のサポート

タナココでは、PIFPの診断と、ほかの病気の除外は、医療機関(歯科・口腔外科・神経内科・ペインクリニックなど)で受けていただくことを前提にしています。そのうえで、漢方・鍼灸は、痛みの背景にある緊張・疲労・睡眠・冷えなどの体質面を支える役割を担います。中医学は、痛みを顔だけの問題とせず、胃腸、睡眠、冷え、疲労、気持ちの状態も含めて、全身を一つのつながりとして見る体系です。現在受けている治療を続けながら、並行して取り入れていただけます。

漢方薬による体質へのアプローチ

タナココの漢方では、「気・血・水の巡りと、緊張・疲労・冷えといった体質の偏りを整えることで、痛みの感じやすさと生活の質を支える」ことを目的とします。PIFPの体質面のサポートでは、次の方向性を中心に、弁証に基づいて処方を選択します。

加味逍遙散・四逆散・柴胡桂枝湯・抑肝散: ストレスや緊張で痛みが強まり、いらいら、肩や首のこり、眠りの浅さを伴うタイプに。気の巡りと緊張を整える。


補中益気湯・帰脾湯: 疲労や睡眠不足で痛みが強まり、倦怠感や食欲低下を伴うタイプに。気と血を補い、胃腸の働きを助ける。


桂枝茯苓丸・疎経活血湯: 歯科処置や外傷のあとから長引き、同じ場所の重苦しさが続くタイプに。血の巡りを整える。


半夏白朮天麻湯・五苓散・苓桂朮甘湯: 頬や頭の重だるさがあり、雨の日や湿度の高い日に悪化するタイプに。余分な水をさばく。


桂枝加朮附湯・真武湯: 冷えや冷房で痛みが強まるタイプに。体を温める力を補う。附子を含み、体質と用量を慎重に見極めて用いる。


立効散: 歯や歯ぐき、口の中の痛みが目立つ場合に、短期の使用も含めて検討する。歯痛に特化した処方。


三環系抗うつ薬・SNRI・ガバペンチノイドなど、現在の処方薬との相互作用、甘草を含む処方の重複による血圧・電解質への影響は、薬剤師が確認します。処方の選択と用量は、年齢・体格・体質・症状・服薬状況に応じて個別に判断します。現在の薬を自己判断で中止することは推奨しません。

鍼灸施術による筋緊張・痛みの感じ方へのアプローチ

鍼灸では、気・血・水の巡りに対応する経穴(けいけつ:ツボ)への刺激を通じて、筋肉の緊張、自律神経のバランス、痛みの感じやすさの面からお体を整えることを目指します。PIFPに対してよく選ぶ経穴の例は、次のとおりです。

合谷(ごうこく): 「面口合谷収(顔面・口の症状には合谷)」と古くから言われる経穴。顔面・口の症状に用いられ、口腔顔面痛の鍼灸研究でも最も多く使われている経穴のひとつ。

頬車(きょうしゃ)・下関(げかん): 頬や顎、咀嚼筋の緊張が目立つ部位。顎関節症の研究でもよく用いられる。

四白(しはく)・迎香(げいこう): 頬と上顎の周囲。PIFPで痛みが強いと感じやすい部位に当たる。

風池(ふうち)・肩井(けんせい): 首と肩の緊張を緩める目的に。

太衝(たいしょう): 肝の気の巡りを整え、ストレスによる緊張に対応する。

足三里(あしさんり)・三陰交(さんいんこう): 気血を補い、疲労と冷えに対応する代表的な経穴。お灸も併用する。

内関(ないかん)・神門(しんもん)・百会(ひゃくえ): 不安感、不眠、頭部の緊張を整え、心を落ち着ける目的に。

経穴は、証・痛みの部位・症状の経過に合わせて選択します。PIFPでは刺激への反応が強く出る方もいるため、刺激量は少なく始め、施術後の反応を確認しながら調整します。痛みが強い時期は、顔面への刺激を少なくする、または行わず、手足や首・肩の経穴を中心に組み立てます。初回はお体の反応を確認しながら丁寧に進めますので、「鍼灸ははじめて」という場合も、まずご相談ください。

痛みの経過、これまでの歯科処置、仕事や家庭への影響を、時間をかけて伺います。認定心理士の資格を持つ担当者が、痛みと睡眠・気分の関係を一緒に整理し、必要に応じて、心療内科・精神科・ペインクリニックなどへのご相談もお勧めします。専門家の合意でも、患者さんの訴えを真剣に受け止めること、相談できる窓口を決めておくことが、治療を続けるうえで重要とされています。

歯科治療を検討している場合は、PIFPの可能性があることを歯科医師にお伝えいただき、その治療が本当に必要かをご相談ください。漢方・鍼灸を併用していることは、主治医にもお伝えください。「まず何科に行くべきか迷っている」「診断名がまだ付いていない」という段階でも、情報の整理のご相談から歓迎します。

初回は、これまでの経過、検査の結果、服薬状況を伺います。ほかの病気の可能性が残っている場合は、医療機関での再評価をお勧めします。そのうえで、薬剤師・鍼灸師・認定心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学、心理的な側面から、一人ひとりに合った方法をご提案します。

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よくある質問(FAQ)

持続性特発性顔面痛(PIFP)は治りますか?
経過には個人差があり、「必ず治る」「治らない」と言い切れる病気ではありません。2025年の国際的な専門家の合意では、治療の成功は、痛みが患者さんの受け入れられる程度まで軽くなること、そして日常の活動に戻れること(生活の質の向上)と位置づけられました。痛みが残る場合でも、痛みとの付き合い方の工夫によって生活の質を高められるという点では、専門家の意見が一致しています。5週間の多職種治療を受けたPIFPの患者さん25名で、平均3.5年後に痛みの強さが下がっていたという報告もあります。診断の確定、避けたほうがよい処置の回避、薬物療法、心理的なアプローチに、体質面を支える漢方・鍼灸を組み合わせて、痛みが軽くなる方向をご一緒に探します。
検査で「異常なし」と言われました。気のせい、またはストレスが原因なのでしょうか?
気のせいではありません。PIFPは、歯・顎・神経・脳の画像や診察で痛みを説明できる異常が見つからない状態に付けられる診断名で、痛みそのものは実際に生じています。研究では、顔の痛みを中継する脳幹の神経核で、痛み刺激への反応が強いことが示されています。ストレスで痛みが強まりやすいことは知られていますが、ストレスが原因と決めつけられる病気ではありません。痛みの仕組みと、痛みによる睡眠・気分・生活への影響の両方に目を向けることが大切です。
三叉神経痛とは、どのように違いますか?
三叉神経痛は、数秒から2分以内の電気が走るような激しい痛みが発作的に起こり、触れる・食べる・話すなどで誘発されるのが特徴です。PIFPは、鈍い・うずく・重苦しい痛みが長時間続くのが基本で、発作的な激痛や誘発点は伴いません。ただし、三叉神経痛でも発作の合間に続く痛みを伴う方が約半数いると報告されており、症状だけでの区別が難しい場合があります。神経内科や頭痛外来での診察と、MRIなどの検査で確認することをお勧めします。
歯科で異常がないのに、抜髄や抜歯を勧められました。どうすればよいですか?
歯の病気が確認されている場合は、その治療が必要です。一方で、歯や歯ぐきに異常がないのに、痛みの原因を探す目的で抜髄・抜歯などを行うと、痛みが変わらず、別の部位に痛みが移ることがあると報告されています。2025年の専門家の合意でも、明確な適応がない処置は避けることが推奨されました。治療を決める前に、口腔顔面痛や神経の痛みに詳しい歯科医師、神経内科医などのセカンドオピニオンを受けることも選択肢です。タナココでは歯科治療の要否を判断することはできないため、歯科医師や主治医とご相談ください。
漢方・鍼灸はPIFPに有効ですか?
PIFPを主な対象とした漢方・鍼灸の質の高い比較試験は、確認できた範囲では見当たらず、「確実に効く」と言い切れる段階ではありません。漢方では、立効散を用いた症例報告が日本の口腔顔面痛の分野にあります。鍼灸は、慢性の痛み全般では効果を示した大規模な統合解析がある一方、口腔顔面痛では研究の質が十分でないと評価されています。タナココでは、診断と薬物療法を医療機関で受けていただくことを前提に、痛みの背景にある緊張・疲労・睡眠・冷えなどの体質面を、弁証に基づく漢方・鍼灸で支えるご提案をしています。効果や感じ方には個人差があります。
現在、抗うつ薬や神経の痛みの薬を飲んでいます。漢方と併用できますか?
併用を前提にご相談いただけます。三環系抗うつ薬、SNRI、ガバペンチノイドなどは、PIFPの治療で専門家の合意に挙げられている薬です。タナココでは、薬剤師の資格を持つ担当者が、現在の処方内容との相互作用や、甘草を含む処方の重複(血圧上昇・低カリウム血症)などを確認したうえで、並行できる形で漢方処方をご提案します。現在の薬を自己判断で中止することは推奨しません。漢方・鍼灸を併用していることは、主治医にもお伝えください。
鍼は顔に刺しますか? 痛みが強いときでも受けられますか?
顔への施術は、必要がある場合に、細い鍼を浅く使用して行います。痛みが強い時期は、顔面の刺激を少なくする、または顔には行わず、手足や首・肩の経穴を中心に組み立てる選択もあります。PIFPでは刺激への反応が強く出る方もいるため、刺激量は少なく始め、施術後の反応を確認しながら調整します。「鍼灸ははじめて」という場合も、まずご相談ください。
何科を受診すればよいですか?
最初は、歯科(口腔外科、口腔顔面痛の外来)で、歯や顎関節に原因がないかを確認します。並行して、神経内科・頭痛外来・ペインクリニックで、神経や頭痛の病気がないかを確認する流れが一般的です。2025年の専門家の合意では、歯科の診察は必須とされ、神経内科、心療内科・精神科、耳鼻咽喉科、ペインクリニックなど、複数の専門家による評価が勧められています。どこに相談すればよいか迷う段階でも、タナココでこれまでの経過を整理するお手伝いをします。
通院のペースや、変化を見るまでの期間はどのくらいですか?
個人差が大きく、一概には言えません。PIFPは経過が長くなりやすい病気のため、痛みの強さ、痛みのある時間、睡眠、食事や仕事への影響などを、数か月単位で見守りながら進めるのが基本です。専門家の合意でも、治療の初期は診察の間隔を短くし、信頼関係をつくることが勧められています。タナココでも、初期は経過を確認する間隔を短くし、変化に応じて処方と施術を調整します。
ご利用にあたって: 本ページは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。顔の痛みの原因の確認と診断は、医療機関で受けてください。漢方・鍼灸の効果や感じ方には個人差があります。

持続性特発性顔面痛──「原因不明」「異常なし」で終わらせないための選択肢があります

「検査では異常がない」と言われても、痛みは毎日続いている。歯の治療を受けても、変わらない。その痛みは、気のせいでも、我慢が足りないせいでもありません。痛みを処理する神経系の働きの変化が関わっていることが、研究で少しずつ示されてきています。

確立された標準治療がまだないことは、事実です。だからこそ、診断の確定、避けたほうがよい処置の見きわめ、薬物療法、心理的なサポート、そして体質面を支える漢方・鍼灸を組み合わせることに意味があると、私たちは考えています。

タナココは、痛みを軽くし、食事や会話、仕事や家事を普段どおりに行える状態に近づけることを目標に、できることを一つずつ検討します。診断名が付くまでに長い時間がかかった方、複数の医療機関を回って疲れている方、歯の処置を重ねてきた方、薬を続けていても痛みが残る方。どの段階でも、これまでの経過を伺うことから始めます。薬剤師・鍼灸師・認定心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学の両面から、一人ひとりに合った提案をいたします。

この痛みを軽くする方法を、私たちは最後まで探し続けます。まずは、お話をお聞かせください。

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