アトピー性皮膚炎と漢方・鍼灸

アトピー性皮膚炎とは|診断基準・発症のしくみ・最新の治療と、漢方・鍼灸による体質面のサポート|相模原 タナココ
アトピー性皮膚炎 × 漢方・鍼灸 / 相模原 タナココ

アトピー性皮膚炎とは──
診断・発症のしくみ・現在の治療と、体質から整えるアプローチ

保湿も外用薬も続けているのに、かゆみと皮疹を繰り返す。アトピー性皮膚炎では、そのような経過をたどる方が少なくありません。

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下と免疫の偏りが重なって起こる慢性の炎症性皮膚疾患です。皮膚科の標準治療は近年大きく進歩し、症状をコントロールできる選択肢が増えています。

このページでは、診断基準と最新の研究を整理したうえで、標準治療を土台に、漢方・鍼灸で体質面を整えていく考え方をご説明します。タナココは、症状が落ち着いた状態を目指し、一人ひとりに最後まで丁寧に向き合います。

最終更新日:2026年11月5日

アトピー性皮膚炎の理解と体質へのアプローチ

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アトピー性皮膚炎とは何か

アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis、以下AD)は、かゆみを伴う湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患です。日本皮膚科学会・日本アレルギー学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」では、皮膚のバリア機能の異常と、アレルギー炎症(2型炎症)を中心とした免疫の異常が、病態の中心にあるとされています。

乳児期に発症する方が多く、乳幼児期の累積発症率は3歳までに約30%とされています。一方で、小児期から症状が続く方、成人になってから再燃・発症する方もおり、年齢を問わず見られる疾患です。

ADの負担は、皮膚の症状だけではありません。強いかゆみによる睡眠不足、集中力の低下、見た目への不安、外用薬を塗り続ける手間など、睡眠・学業・仕事・気持ちの面にも影響します。

この記事の要点

・診断は「かゆみ」「特徴的な皮疹と分布」「慢性・反復性の経過」の3項目で行います(診療ガイドライン)。

・原因は、皮膚のバリア機能の低下、2型炎症、かゆみと掻破の悪循環などが重なったものです。

・標準治療(保湿・外用薬・内服薬・注射薬)の進歩は大きく、まず皮膚科での診断と治療が土台になります。

・再燃のしやすさ、体質、睡眠、ストレスといった課題に対して、中医学(漢方・鍼灸)が補完的に役立つ可能性があります。

・漢方・鍼灸は標準治療の代わりではなく、併用して体質面を整える選択肢です。

「アトピー素因」とは:

診断基準で用いられる「アトピー素因」とは、①家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちのいずれか、あるいは複数の疾患)、または②IgE抗体を産生しやすい素因のことです。
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診断基準:3つの基本項目

ADは血液検査の数値だけで診断するものではありません。診療ガイドラインでは、次の3項目をすべて満たすものを、症状の軽重を問わずADと診断します。

基本項目内容
1.かゆみかゆみがあることが診断の前提になります。
2.特徴的な皮疹と分布皮疹は湿疹病変です。急性病変は紅斑・湿潤性紅斑・丘疹・漿液性丘疹・鱗屑・痂皮、慢性病変は浸潤性紅斑・苔癬化病変・痒疹・鱗屑・痂皮が見られます。分布は左右対称性で、好発部位は前額・眼囲・口囲や口唇・耳介周囲・頸部・四肢の関節部・体幹です。
3.慢性・反復性の経過新旧の皮疹が混在しながら、よくなったり悪くなったりを繰り返します。乳児では2か月以上、それ以外では6か月以上続く場合を慢性とします。

年齢による皮疹の特徴

乳児期は頭や顔から始まり、体幹や四肢へ広がる傾向があります。幼小児期は首や肘・膝の内側などの関節部に、思春期・成人期は頭・首・胸・背といった上半身に皮疹が強く出る傾向があります。

重症度の評価と他の皮膚疾患との鑑別

診療では、皮疹の範囲と程度(EASI、SCORADなどの指標)に加え、かゆみの強さ、睡眠や日常生活への影響を合わせて評価します。接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、乾癬、疥癬など、似た症状を示す疾患との区別も必要なため、診断は皮膚科(乳幼児では小児科・アレルギー科を含む)で受けることが大切です。

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症状:皮膚・睡眠・生活への影響

ADの症状は、皮膚の症状、かゆみによる睡眠への影響、合併しやすい状態の3つに分けて整理できます。重さには個人差が大きく、季節や環境、体調によっても変動します。

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皮膚の症状

乾燥、赤み、ぶつぶつ(丘疹)、ジュクジュクした湿潤、かさぶた、皮膚が厚く硬くなる苔癬化、皮むけ、掻き壊しによる傷が見られます。

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かゆみと睡眠

夜間や寝つくときにかゆみが強くなり、睡眠不足、日中の眠気、集中力の低下につながります。無意識に掻くことで皮疹が悪化することもあります。

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合併しやすい状態

とびひ(伝染性膿痂疹)やみずいぼ、カポジ水痘様発疹症などの皮膚感染症。アレルギー性結膜炎、白内障、網膜剥離などの眼の症状。気管支喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなど。

早めに医療機関を受診していただきたい症状:

発熱を伴って水ぶくれやただれが急に広がる場合、強い痛みがある場合、目の周りの症状が続く場合は、感染症や眼の合併症の可能性があります。漢方・鍼灸よりも先に、皮膚科・眼科などを受診してください。
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経過と見通し:目標とする状態

ADは、年齢とともに経過が変わる疾患です。乳幼児期に発症した方の経過について、次のような目安が示されています。

対象目安特記事項
乳幼児期の発症3歳までの累積発症率 約30%ADは乳幼児期に多く見られます。
1歳6か月までに発症寛解率 約70%成長とともに症状が落ち着く方が多いとされます。
1歳6か月〜3歳で発症寛解率 約50%寛解の定義や追跡年齢は出典によって異なります。
学童期以降・成人個人差が大きい小児期から続く場合と、成人期に再燃・発症する場合があります。

(出典:和歌山県立医科大学の公開資料、2024年。乳幼児期に発症した方の目安であり、すべての方に当てはまるわけではありません。)

日本皮膚科学会のガイドラインで示されてきた治療の目標は、概ね次のとおりです。

① 症状がない、あってもごく軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態。

② 軽微〜軽度の症状は続いても、急に悪化することはまれで、悪化しても長引かない状態。

この「症状が安定し、薬をあまり必要としない状態」を現実的な目標として、治療を組み立てていきます。

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発症のメカニズム

ADは、遺伝的な体質と環境の影響が重なって起こる疾患で、次の4つの要素が互いに影響し合っています。

1)皮膚バリア機能の低下

皮膚の一番外側にある角層では、セラミドなどの保湿成分が減り、水分を保つ力が低下しています。皮膚のバリアを支えるフィラグリンというタンパク質の遺伝子の異常も関与し、乾燥しやすく、外からの刺激やアレルゲンが入り込みやすい状態になります。

2)免疫の偏り(2型炎症)

バリアの壊れた皮膚から刺激が入ると、TSLPなどの物質が放出され、Th2細胞を中心とした2型炎症が強まります。IL-4・IL-13といったサイトカインが働き、IgE抗体の産生や好酸球の増加が起こります。現在使われている生物学的製剤の多くは、この経路を標的にしています。

3)かゆみと掻破の悪循環

IL-31というサイトカインが、かゆみを脳に伝える重要な役割を担っています。かゆくて掻くと皮膚が傷つき、さらに炎症とかゆみが強まる「かゆみ—掻破サイクル」が生じます。

4)環境・体質・心理的な要因

悪化因子には、食物やダニ・花粉などのアレルギー的要因と、乾燥・掻破・発汗といった非アレルギー的要因があります。睡眠不足や心理的ストレスも、かゆみと症状の悪化に影響します。

これらが互いに影響し合うため、一つの要素を抑えるだけでは症状が安定しにくいことがあります。

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現在の治療とその課題

治療の基本:3つの柱

ADの治療は、①スキンケア(保湿)、②薬物療法、③悪化因子の対策、の3つを組み合わせて行います。炎症をしっかり抑える薬物療法を行い、症状が落ち着いた後も保湿を続けることが基本です。

主な薬物療法

治療作用・位置づけ主な注意点
ステロイド外用薬炎症を抑える中心的な外用薬。皮疹の強さに合わせて強さを選び、症状が落ち着いた後も間隔をあけて塗る「プロアクティブ療法」が行われます。使う部位・量・期間は医師の指示に従います。自己判断の中止や減量は、再燃の原因になります。
タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏ステロイド以外の抗炎症外用薬です。塗り始めに刺激感が出ることがあります。
抗ヒスタミン薬(内服)かゆみに対する補助的な使用です。皮膚の炎症そのものを抑える薬ではありません。眠気などの副作用があるため、症状に合わせて医師が選びます。
シクロスポリン(内服)最重症の成人に用いられます。国内の二重盲検試験では、8週間で皮疹の重症度スコアが63.0%改善し、プラセボ群の32.6%を上回りました。腎機能や血圧の確認が必要です。
生物学的製剤(注射)デュピルマブ(抗IL-4受容体α抗体)、ネモリズマブ(抗IL-31受容体A抗体)などがあり、このほかIL-13を標的とする抗体薬もあります。製剤により結膜炎などの眼症状が見られることがあり、費用・通院の負担も含めて検討します。
JAK阻害薬(内服)バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブ。ウパダシチニブとステロイド外用薬の併用を調べたAD Up試験(Lancet、2021年)では、プラセボ併用より高い効果が示されました。ざ瘡、口唇ヘルペス、感染症などに注意し、定期的な検査が必要です。

現在の治療の限界

標準治療の進歩により、多くの方が症状を安定させられるようになりました。一方で、次のような課題が残ります。

・多くの治療は、炎症とかゆみを抑えて良い状態を保つものであり、治療を減らすと再燃することがあります。

・外用薬を塗り続ける手間や、通院、費用の負担が長く続きます。

・中等症〜重症では注射薬や内服薬を選べますが、副作用の確認、定期検査、薬剤費の面で調整が必要です。

・十分に治療をしても、かゆみ、睡眠の質、疲れやすさ、ストレスなどが残る方がいます。

最新の研究動向(2026年)

新しい治療の研究は続いています。2026年のアメリカ皮膚科学会(AAD)では、OX40リガンドを標的とする抗体薬amlitelimabの第3相試験(COAST-1、COAST-2、SHORE)が報告されました。COAST-1(601例)では、皮疹がほぼ消失した状態(vIGA-AD 0/1)に達した割合が21.1〜22.5%で、プラセボの9.2%を上回りました。ただし、現時点では承認前の薬剤であり、長期の安全性を調べる延長試験(ESTUARY)の結果も、2026年3月の発表時点では2026年後半の報告予定とされていました。新薬の位置づけは、今後の長期データを見て判断されていきます。

ステロイド外用薬について不安がある場合:

「ステロイドを使い続けることに不安がある」という声は少なくありません。自己判断で中止すると、かえって悪化して強い薬が必要になることがあります。不安な点は主治医に具体的に伝え、塗る量・期間・減らし方を一緒に確認してください。

標準治療が土台であることは変わりません。そのうえで、再燃しやすさ、体質、睡眠、ストレスといった「治療後に残る課題」に対して、中医学のアプローチを組み合わせることを提案しています。

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西洋医学 vs 中医学 アプローチ比較

ADに対する西洋医学と中医学の違いを整理します。両者は対立するものではなく、役割を分担して組み合わせることで、より多面的なサポートができます。

観点西洋医学的アプローチ中医学的アプローチ
病態の捉え方皮膚バリア機能の低下、2型炎症、かゆみ—掻破サイクルとして評価する皮疹を、体内の熱・湿・風・血の不足・気の巡りといった体質の偏りの表れとして捉える
診かた皮疹の範囲・重症度スコア・検査値皮疹の色や性状に加え、舌・脈・腹部・便通・睡眠・冷えやほてりを総合的に診る(弁証)
治療の目標炎症とかゆみを抑え、症状の再燃を防ぐ体質の偏りを整え、症状が安定しやすい状態をつくる
主な手段保湿、外用薬、内服薬、注射薬、光線療法漢方薬、鍼灸、生活・食養生の助言
強み炎症を速やかに抑える。効果と安全性の根拠が豊富一人ひとりの体質に合わせた調整ができる。睡眠・消化・ストレスなど全身の状態も同時に見られる
留意点再燃しやすさや、かゆみ・睡眠の課題が残ることがある質の高い大規模試験はまだ限られる。標準治療の代わりにはならない
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中医学からのAD病態分析

中医学は、2000年以上にわたる臨床の積み重ねから生まれた医学体系です。皮膚は体の内側の状態が表れる場所と考え、皮疹そのものだけでなく、舌・脈・腹部・便通・睡眠・冷えやほてりなどを総合して体質を見極めます。これを弁証(べんしょう)と呼び、その人に合った処方と鍼灸の方針を決めます。ADでよく見られる証の例は次のとおりです。

ふうねつ / けつねつ
風熱・血熱(赤みと強いかゆみの型)

赤み、熱感、強いかゆみが目立ち、ほてりや口の渇きを伴う状態。炎症の勢いが強い時期に見られます。消風散、白虎加人参湯、黄連解毒湯、温清飲などが検討されます。

しつねつ
湿熱(ジュクジュクした型)

体内の余分な水分と熱が重なった状態。ただれ、滲出液、黄色いかさぶたが目立ち、夏や湿度の高い時期に悪化しやすい傾向があります。消風散、越婢加朮湯、黄連解毒湯などが検討されます。

ひきょしつせい
脾虚湿盛(胃腸が弱くじめじめした型)

脾(消化・エネルギー生成の機能)が弱く、水分の代謝が滞った状態。食欲不振、軟便、疲れやすさを伴い、皮疹は淡い赤みで湿りが残ります。補中益気湯、六君子湯、参苓白朮散などが検討されます。

けっきょふうそう
血虚風燥(乾燥・粉ふきの型)

血(栄養物質)が不足し、皮膚が潤いを保てない状態。乾燥、落屑、皮膚の肥厚、夜間のかゆみが目立ちます。当帰飲子、温清飲、四物湯を基本とする処方などが検討されます。

いんきょけつそう
陰虚血燥(慢性・ほてりの型)

体の潤い(陰液)が不足した状態。慢性に経過し、午後のほてり、口の渇き、寝汗、皮膚の乾燥が重なります。六味丸などの滋陰の処方が検討されます。

かんきうっけつ
肝気鬱結(ストレスで悪化する型)

緊張やストレスで気の巡りが滞る状態。ストレスで皮疹とかゆみが強まり、いらいら、寝つきの悪さを伴います。加味逍遙散、柴胡清肝湯、抑肝散などが検討されます。

消風散と補中益気湯について:

消風散は、皮膚の「風」「熱」「湿」を除き、血を養う生薬を組み合わせた処方で、かゆみが強く、分泌物が多い皮疹や、夏に悪化する皮疹に用いられます。補中益気湯は、気を補い、疲れやすさや体力の低下を支える処方です。この2処方は、いずれも二重盲検試験が行われており、診療ガイドラインでも取り上げられています。なお、証は一人ひとり異なり、複数の型が重なることも多いため、処方は個別に判断します。
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漢方・鍼灸に関する研究報告の現状

研究の現状と限界:

ADに対する漢方・鍼灸の研究は近年増えていますが、質の高い大規模な比較試験は限られており、「確実に治る」と言える段階ではありません。標準治療と併用する補完的な選択肢として、効果と安全性を確認しながら用いるものです。

補中益気湯の二重盲検試験(Kobayashi ら、2010年)

体力が低く疲れやすい「気虚(Kikyo)」体質のAD患者91例を対象に、補中益気湯とプラセボを24週間比較した多施設二重盲検試験です(eCAM誌)。通常の治療(外用薬・保湿剤・抗ヒスタミン薬)は継続されました。24週を完了した77例(補中益気湯37例、プラセボ40例)で、ステロイド・タクロリムス外用薬の総使用量は補中益気湯群で有意に少なく、皮疹の重症度スコアの全体的な差は有意ではありませんでした。症状が悪化した人の割合は、補中益気湯群3%、プラセボ群18%でした。副作用は軽度で、両群に差はありませんでした。この試験は製薬企業の資金提供を受けています。

診療ガイドライン2024における漢方の位置づけ

診療ガイドライン2024は、補中益気湯と消風散の二重盲検試験を取り上げたうえで、漢方薬を、経験のある医師のもとで標準治療に併用する選択肢として位置づけています。甘草による偽アルドステロン症など、副作用の確認も必要とされています。

漢方薬・中薬の系統的レビュー(2024〜2026年)

Anheyer ら(Dermatitis誌、2024年オンライン公開・2025年掲載)は、ADに対するハーブ療法のランダム化比較試験51件(3,763例)を解析しました。内服の月見草油(13試験)はプラセボと差がありませんでしたが、個々のハーブ製剤では有望な結果が報告されています。Coyle ら(Dermatologic Therapy誌、2025年)は、登録された7試験(862例)を解析し、通常治療に中薬を併用した場合にEASIが改善した一方、かゆみの強さと生活の質には有意な差がなく、有害事象は中薬群でやや多かったと報告し、エビデンスはまだ十分でないと結論づけています。2026年に発表された中西医結合のエビデンスマップでも、通常治療に内服の中薬を併用する方法や外用の中薬に、有益な可能性が示唆される一方、研究の質にばらつきがあるとされています。

鍼灸に関する臨床研究

Park ら(BMC Complementary Medicine and Therapies誌、2021年)は、軽症〜中等症のAD患者36例を対象に、偽鍼を対照とした参加者・評価者盲検のランダム化比較試験を行いました。4週間・計8回の施術で、SCORADは鍼群で11.83低下し、偽鍼群ではほぼ変化がなく、重篤な有害事象はありませんでした。単施設・小規模の試験です。

Jwo ら(Acta Dermato-Venereologica誌、2022年)は、アトピー性皮膚炎と慢性湿疹を対象とした14試験874例のメタアナリシスで、偽鍼・プラセボ対照の3試験においてSCORADの有意な改善を報告しました(エビデンスの質は中程度)。Zhang ら(BMJ Open誌、2024年)の系統的レビューでは、SCORAD(平均差−10.61)、かゆみのVAS(−14.71)、DLQI(−2.37)が改善し、重篤な有害事象の報告はなく、鍼が有効かつ安全な治療となりうるとされています。

一方、診療ガイドライン2024は、鍼によるかゆみの改善報告はあるが、症例数が少なく研究の質も高くないとしています。また、電気鍼(かゆみの軽減)や生分解性マイクロニードル鍼(症状の緩和)について、多施設・偽鍼対照の試験計画が公表されており、今後の結果が待たれます。

安全性と注意点

漢方薬では、甘草を含む処方による血圧上昇・むくみ・低カリウム血症、まれに肝機能障害などが報告されています。服用中は、体調の変化を確認しながら調整します。鍼灸では、皮疹や感染のある部位を避け、使い捨ての鍼を用います。灸は、炎症が強い時期は控えます。

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タナココにおける漢方・鍼灸のサポート

漢方薬による体質へのアプローチ

タナココの漢方では、皮膚科での治療を土台に、炎症の熱、水の滞り、血の不足、胃腸や自律神経の状態といった体質面を整え、症状が安定する期間を延ばしていくことを目的とします。弁証に基づき、次のような方向性で処方を選びます。

赤み・強いかゆみが目立つ場合:消風散、白虎加人参湯、温清飲など。熱を冷まし、かゆみに対応します。


ジュクジュクしやすい場合:越婢加朮湯、黄連解毒湯、消風散など。余分な水と熱をさばきます。


疲れやすく胃腸が弱い場合:補中益気湯、六君子湯など。気を補い、消化機能を支えます。


乾燥が強く、夜にかゆみが増す場合:当帰飲子、温清飲など。血を養い、皮膚を潤します。


ストレスで悪化する場合:加味逍遙散、柴胡清肝湯、抑肝散など。気の巡りを整え、睡眠を支えます。


処方は単独ではなく、弁証に基づいて組み合わせます。年齢・体格・症状・服薬状況に応じて個別に判断し、現在の処方薬との相互作用や、甘草を含む処方が重なる場合の影響は、薬剤師が確認します。

鍼灸施術によるアプローチ

鍼灸では、かゆみの軽減、睡眠の質の向上、自律神経と消化機能の調整、冷えやほてりの改善を目的に、経穴(ツボ)を選びます。かゆみや湿疹に対して、中医学で一般的に用いられる経穴の例は次のとおりです。

曲池(きょくち)・血海(けっかい):熱をさばき、血の巡りを整える代表的なツボ。かゆみや赤みが強いときに用います。

三陰交(さんいんこう):脾・肝・腎を補い、血を養うツボ。乾燥や冷えを伴う場合に用います。

足三里(あしさんり):脾胃の働きを助け、体力を支えるツボ。疲れやすさや胃腸の弱さに用います。

合谷(ごうこく)・百会(ひゃくえ):自律神経を整え、緊張や睡眠の問題に用います。

皮疹や感染のある部位には施術を行わず、体の離れたツボを中心に選びます。細い鍼で刺激の弱いものから始め、お体の反応を確認しながら進めます。「鍼灸ははじめて」「お子さんが怖がっている」という場合も、まずご相談ください。

サポートの進め方

1.現状の確認:診断の有無、使用中の外用薬・内服薬・注射薬、皮疹の状態、睡眠、生活を詳しくお聞きします。

2.弁証:問診、舌・脈・腹部の診察から、体質の偏りを分析します。

3.方針と目標の共有:かゆみ、睡眠、外用薬の量、再燃の頻度など、どこを目標にするかを一緒に決めます。

4.経過の確認と調整:数か月単位で変化を確認し、処方と施術を調整します。

タナココでは、ステロイド外用薬や生物学的製剤などの治療を中断することは提案しません。皮膚科での治療を続けていただきながら、その上で漢方・鍼灸を組み合わせます。薬の量や種類を見直す判断は、主治医と相談のうえで行ってください。

「新しい薬を使っても、かゆみや再燃が残る」「ステロイドを使い続けることに不安がある」「子どもの肌を少しでも楽にしてあげたい」「体質そのものを見直したい」——どのような状況でも、現状をお聞きすることから始めます。

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よくある質問(FAQ)

アトピー性皮膚炎は治りますか?
ADは体質が関わる慢性疾患のため、「一度の治療で完全に治る」とは言い切れません。一方で、乳幼児期に発症した方では、1歳6か月までの発症で約70%、1歳6か月〜3歳での発症で約50%が寛解するとされています(和歌山県立医科大学の公開資料による目安)。また、成人でも、適切な治療により「症状が軽微で、薬をあまり必要としない状態」を目指すことができます。標準治療を土台に、漢方・鍼灸で体質面を整えながら、症状が安定した状態を長く保つことを目標にします。
アトピー性皮膚炎は何科で診てもらえますか?
診断と標準治療は、皮膚科で受けられます。乳幼児では小児科やアレルギー科でも診療しています。診断を受けたうえで、漢方・鍼灸のご相談をいただくのが基本です。
ステロイドを使いたくありません。漢方だけで治せますか?
漢方薬だけで標準治療の代わりになるという十分な根拠は、現時点ではありません。補中益気湯の試験でも、通常の外用治療を続けたうえで外用薬の使用量が少なくなったという結果でした。自己判断でステロイドを中止すると悪化し、かえって強い治療が必要になることがあります。不安な点は主治医に伝え、塗る量や期間、減らし方を相談してください。タナココでは、その治療を続けながら、体質面を整える形でサポートします。
漢方薬は、どのくらいで効果が出ますか?
個人差が大きく、一概には言えません。補中益気湯の試験は24週間の評価でした。かゆみや睡眠、皮疹の状態、外用薬の量などを数か月単位で見守りながら進めるのが基本で、早い段階で変化を感じる方もいれば、半年以上かけて整えていく方もいます。定期的に経過を確認し、体質の変化に応じて処方を調整します。
鍼灸はアトピー性皮膚炎のかゆみに有効ですか?
小規模な偽鍼対照試験や、2022年・2024年のメタアナリシスで、かゆみや重症度スコアの改善が報告されています。一方で、診療ガイドライン2024は、研究の質が高くないとも指摘しており、現時点で確実に有効と言える段階ではありません。重篤な有害事象の報告は見られないため、標準治療と併用して、かゆみや睡眠の面を支える選択肢として取り入れられます。
子どものアトピー性皮膚炎にも漢方・鍼灸は使えますか?
年齢・体重に応じた漢方薬の使用や、刺激の少ない鍼灸で対応できます。乳幼児の湿疹は、診断と標準治療を先に皮膚科・小児科で受けていただくことが大切です。そのうえで、体質面のサポートとして併用をご相談ください。
食事制限は必要ですか?
食物アレルギーが医師の検査・診断で確認されている場合を除き、自己判断での食物除去は勧められません。特に成長期のお子さんでは、栄養面への影響も考える必要があります。中医学では、冷たいものや甘いもの、脂っこいものの摂り過ぎが胃腸の負担になるという視点から、体質に合わせた食事の助言を行います。
大人になってから再発・悪化しました。相談できますか?
成人期にADが再燃したり、新たに発症したりする方はいます。仕事や生活の環境、睡眠不足、ストレスが影響することも多く、体質面の見直しが役立つ場合があります。まず皮膚科で現在の状態を確認していただき、そのうえでご相談ください。

アトピー性皮膚炎──「体質だから」「よくなったり悪くなったりを繰り返すだけ」で終わらせない選択肢があります

かゆみで眠れない夜が続く。薬を減らすとすぐに戻る。見た目や周囲の目が気になる。アトピー性皮膚炎の負担は、決して小さくありません。皮膚の症状は、皮膚だけの問題ではなく、体質、睡眠、消化、ストレスの状態とも関わっています。

皮膚科の標準治療を土台に、中医学の視点から、炎症の勢い、水の滞り、血の不足、胃腸や自律神経の状態を整えていく。そのために、漢方と鍼灸でできることを、一つずつ丁寧に取り組みます。

「新しい薬を使っても、かゆみや再燃が残る」「ステロイドを使い続けることに不安がある」「子どもの肌を少しでも楽にしてあげたい」「体質そのものを見直したい」——どのような状況でも、現在の治療と皮膚の状態を詳しくお聞きすることから始めます。薬剤師・鍼灸師・心理士の資格を持つ担当者が、症状の改善に向けて、責任をもって一人ひとりに向き合います。

症状が軽くなる方法は、一つではありません。まずは、現在の状態をお聞かせください。

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