酒さ(赤ら顔)とは──
病型と発症のしくみ、そして体質から整えるアプローチ
顔の赤みやほてりが続き、スキンケアや化粧品を変えても落ち着かない場合、その背景に酒さ(しゅさ)があることがあります。
酒さは飲酒が原因の病気ではなく、顔の血管の反応と皮膚の炎症が関わる慢性の皮膚疾患です。診断と治療の選択肢は整ってきており、赤みや皮疹が落ち着いた状態を目指すことができます。
西洋医学の診断・治療を土台に、中医学の視点から体の内側の熱や血の巡りの偏りを整える漢方・鍼灸を組み合わせ、タナココは一人ひとりの赤みと向き合います。
最終更新日:2026年11月1日
酒さ(赤ら顔)の理解と体質へのアプローチ
酒さ(赤ら顔)とは何か
酒さ(酒皶、英語名 rosacea)は、顔の中央部(鼻・頬・額・あご)を中心に、赤み、ほてり、毛細血管の拡張、にきびに似た赤いブツブツ(丘疹・膿疱)が繰り返し現れる慢性の炎症性皮膚疾患です。日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、主として中高年の顔面に生じる原因不明の慢性炎症性疾患とされ、紅斑・毛細血管拡張・ほてり感を主体とする「赤ら顔」が代表的な症状として示されています。
名前に「酒」の字が入っていますが、飲酒が原因で起こる病気ではありません。お酒を飲まない方にも起こり、飲酒は症状を強める誘因のひとつとして知られています。英語名のrosaceaは、「バラ色の」を意味する言葉が語源とされています。
酒さの特徴は、赤みや皮疹が強くなる時期と落ち着く時期を繰り返しながら、長く続くことです。日光、急な寒暖差、熱い飲食物、辛い食べ物、アルコール、精神的な緊張などが誘因になります。にきび、敏感肌、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎などと見分けにくく、にきび用の薬やステロイド外用薬を使って悪化する場合もあるため、まず皮膚科で診断を受けることが大切です。
酒さとは:顔の中央部に、赤み・ほてり・毛細血管の拡張・丘疹や膿疱が現れる慢性の炎症性皮膚疾患です。にきびと異なり、面皰(毛穴の詰まり)を伴いません。
病型:紅斑毛細血管拡張型(第1度)、丘疹膿疱型(第2度)、瘤腫型・鼻瘤(第3度)、眼型の4つがあり、単独でも、混在することもあります。
診断:医師が顔の症状と経過から判断します。確定のための特異的な検査所見はありません。
西洋医学の治療:遮光とスキンケアを土台に、0.75%メトロニダゾールゲル(2022年に酒さへの効能が追加承認)、内服抗菌薬、光・レーザー治療などを病型に合わせて用います。
治療の限界:毛細血管の拡張に伴う持続する赤み(紅斑毛細血管拡張型)に対して、国内のガイドライン上、一様に推奨できる外用薬・内服薬はありません。症状が落ち着いたあとの再燃もみられます。
中医学のアプローチ:顔の赤みを、体にこもった熱・血の巡り・潤いの偏りとして捉え、漢方・鍼灸で体質面から支えます。
酒さの4つの病型と診断
日本皮膚科学会のガイドライン2023は、海外で2002年以降に用いられるようになった症状別の病型分類(紅斑毛細血管拡張型・丘疹膿疱型・瘤腫型・眼型)に沿って、病型ごとの治療を提案しています。従来の「第1度〜第3度酒皶」という呼び方も併記されています。これらの病型は、単独で現れることも、混在することもあります。
1)紅斑毛細血管拡張型(第1度酒皶)
診断の目安
- 顔の中央部に、周期的に強まる持続性の赤み(紅斑)がある
- 毛細血管の拡張がみられる
- にきびと異なり、面皰を伴わない
特徴・症状
- ほてり感、ヒリヒリ・チクチクした刺激感
- 一時的な赤み(フラッシング)を繰り返す
- 化粧品や洗顔料がしみやすい
- 鼻・頬・額・あごなど、顔の出っ張った部分に出やすい
2)丘疹膿疱型(第2度酒皶)
診断の目安
- 赤みを背景に、にきびに似た赤いブツブツ(丘疹)や膿をもつ膿疱がある
- 面皰を伴わない
特徴・症状
- 顔の中央部に、丘疹・膿疱が出たり引いたりを繰り返す
- 毛包虫(ニキビダニ)がしばしば検出される
- 国内では、このタイプに0.75%メトロニダゾールゲルが推奨されている
3)瘤腫型・鼻瘤(第3度酒皶)
診断の目安
- 鼻を中心に皮膚が厚くなり、凹凸のある腫瘤状の変化がみられる
- 国際的なコンセンサスでは、この変化がある場合、それだけで酒さの診断の根拠になる
特徴・症状
- 皮膚が厚くなり、鼻の表面に凹凸が生じる
- 外科的切除や炭酸ガスレーザーなどが検討される
- 紅斑型から鼻瘤へ進行するかどうかは、専門家の間でも議論がある
4)眼型(眼合併症)
診断の目安
- まぶたの縁や結膜に、充血や炎症を伴う
- 皮膚の症状と併せて、眼科での評価が必要
特徴・症状
- 目の充血、ドライアイ、目やにの増加、異物感
- マイボーム腺(まぶたの縁にある脂腺)の機能不全が関わると考えられている
- 現時点で、コンセンサスの得られた治療方法はない
診断の考え方と鑑別
2017年の国際コンセンサス(ROSCO)では、酒さを、病型ではなく個々の症状(フェノタイプ)で診断する考え方が示されました。「周期的に強まる顔面中央部の持続性の赤み」または「鼻瘤のような皮膚の肥厚性変化」があれば診断の根拠となり、一時的な赤み(フラッシング)、毛細血管拡張、炎症性の丘疹・膿疱、眼症状は、単独では診断の決め手とされませんでした。(Tan ら、Br J Dermatol 2017年)米国酒さ協会の専門委員会も、2017年に同様の症状別の分類へ改訂し、診断の決め手となる症状がない場合でも、フラッシング・毛細血管拡張・眼症状・丘疹膿疱のうち2つ以上があれば、診断しうるとしています。(Gallo ら、J Am Acad Dermatol 2018年)
① 問診:いつから、どのようなときに赤みが強まるか、使用中の薬・化粧品、ステロイド外用薬の使用歴を確認します。
② 視診:赤みの範囲、面皰の有無、毛細血管拡張、丘疹・膿疱、鼻の皮膚の変化を確認します。
③ 鑑別:にきび、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、酒さ様皮膚炎、皮膚エリテマトーデスなど、顔に赤みが出る他の病気と見分けます。
④ 追加の検査:必要に応じて、毛包虫の検鏡などを行います。
⑤ 目の症状の確認:目の充血・乾燥・異物感がある場合は、眼科での評価を受けます。
| 比較項目 | 酒さ | 尋常性痤瘡(にきび) | 酒さ様皮膚炎 |
|---|---|---|---|
| 背景 | 主として中高年の顔面に生じる慢性の炎症性疾患。原因は完全には解明されていない | 思春期以降に発症する、毛包脂腺系の慢性炎症性疾患 | 顔へのステロイド外用薬の長期使用が原因となる例が多い |
| 主な症状 | 赤み、ほてり、毛細血管拡張、丘疹・膿疱。面皰を伴わない | 面皰(毛穴の詰まり)が最初の皮疹。紅色丘疹、膿疱、囊腫なども生じる | 酒さに似た赤み・丘疹・膿疱 |
| 対応の要点 | 遮光・スキンケア、病型に合わせた外用薬・内服薬・光治療 | 面皰や炎症性皮疹に合わせた外用薬・内服薬 | ステロイド外用薬の中止が最も重要とされる(皮膚科で行う) |
更年期のほてり、薬剤の影響、全身性の病気など、酒さ以外の原因でも顔は赤くなります。発熱、関節痛、体重減少、下痢などの全身の症状を伴う場合や、赤みの出方が突然変わった場合は、内科的な検査が必要になることがあります。台湾の皮膚科施設(1989〜2002年の109例)の報告では、他院で診断を受けていた39人のうち、酒さと診断されていたのは半数未満で、顔のアレルギー、にきび、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、エリテマトーデスなどとして治療されていた例がありました。赤みが続く場合は、皮膚科で一度診断を受けておくことが、その後の治療の土台になります。
症状:赤みだけではない、顔と心身への影響
酒さの症状は、見た目の赤みにとどまりません。ほてりや刺激感といった感覚の症状、目の症状、そして人目が気になることによる心理的な負担まで、日常生活に広く影響します。症状の程度には個人差が大きく、「頬がときどき赤くなる」程度から、「赤みと皮疹が常にある」状態まで幅があります。
皮膚の症状
一時的な赤み(フラッシング。数十分から1時間ほど続くことが多い)。持続する赤み。毛細血管の拡張。丘疹・膿疱。皮膚の肥厚や凹凸(鼻瘤)。
感覚の症状
ほてり。ヒリヒリ・チクチクする刺激感。化粧品・日焼け止め・洗顔料がしみる。皮膚の乾燥感。顔のむくみ。
目・心理・生活への影響
目の充血・乾燥・異物感・まぶたの炎症。人目が気になる。外出や仕事、人と会う場面への負担。不安感や気分の落ち込み。
心理面への影響については、酒さの患者さんを対象とした複数のメタ解析があります。2021年の解析では、酒さの患者さんにおける抑うつの有病率は19.0%、不安は15.6%と報告されました(Dai ら、Dermatol Ther 2021年)。また、コホート研究をまとめた2022年の解析では、酒さのある方は抑うつ・不安を新たに発症するリスクが高いことが示されています(Chang ら、J Affect Disord 2022年)。いずれも観察研究であり、酒さが原因と断定するものではありませんが、赤みの治療と並行して、気持ちの負担にも目を向けることが大切です。
ガイドライン2023では、紫外線、外気温の急激な変化、刺激のある食べ物、アルコールが、症状を強める要因として挙げられています。そのほか、熱い入浴、暖房の効いた室内、精神的な緊張、激しい運動などでも赤みが強まることが知られています。台湾の皮膚科施設(1989〜2002年)の109例の報告では、悪化因子として、暑い天候(71%)、日光(67%)、室内の暑さ(47%)、ストレス(43%)、辛い食べ物(41%)、アルコール(37%)の順に挙げられていました。誘因は人によって異なるため、赤みが強まった日の状況を記録し、ご自身の誘因を知ることが、対策の第一歩になります。
有病率と日本の現状
酒さは、決して珍しい病気ではありません。軽い赤みの段階では、病気として認識されないままスキンケアで対処されることも多く、実際の患者数は診断された人数より多い可能性があります。
| 項目 | 報告の内容 | 特記事項 |
|---|---|---|
| 世界の成人 | 約5.46%(95%信頼区間 4.91〜6.04%) | 32研究・41集団・約2,650万人を対象としたメタ解析(Gether ら、Br J Dermatol 2018年) |
| 診断方法による差 | 医師による診断で約5.5%、自己申告で約9.7% | 医療データベースの病名コードでは、さらに低い値になる。軽症の方が受診していない可能性も指摘されている |
| 好発年齢 | 45〜60歳に多い | 日本のガイドラインでも、主として中高年に生じる疾患とされている |
| 性別 | 女性5.41%、男性3.90% | 差は統計的に有意ではなかったと報告されている |
| 日本の治療環境 | 2022年5月に、0.75%メトロニダゾールゲル(ロゼックスゲル)が酒さの治療薬として承認 | 日本皮膚科学会が「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」で病型別の治療を提示 |
| 酒さ様皮膚炎 | 国内の大学病院皮膚科の調査(62施設回答・過去3年間)で、酒皶1,881名に対し、酒皶様皮膚炎は878名 | 酒皶の約半数にあたる人数が報告されている(2016年度の厚生労働科学研究班の調査) |
酒さは白人に多いとされますが、アジア人にも一定数みられます。日本国内でも、顔の赤みがにきびや敏感肌、湿疹と判断され、酒さとしての治療に結びつくまでに時間がかかることがあります。赤みの原因を早めに見きわめ、適切な治療と体質面のサポートを組み合わせることが、症状を長引かせないために重要です。
発症のメカニズム
酒さの原因は完全には解明されていません。現在は、外からの誘因、遺伝的な素因、免疫の調節異常、神経と血管の調節異常が互いに関わる多因子疾患と考えられています(Front Immunol 2024年、2025年の総説)。
1)自然免疫の過剰反応(TLR2・カリクレイン5・LL-37)
皮膚には、細菌などの外敵に反応して防御を始める「自然免疫」のしくみがあります。酒さの皮膚では、抗菌ペプチドのカテリシジンと、それを活性型のLL-37に変えるタンパク質分解酵素(カリクレイン5)が増えていることが報告されています(Yamasaki ら、Nat Med 2007年)。紫外線や毛包虫などの刺激が、免疫の受容体であるTLR2を介してこの経路を働かせ、炎症を強めると考えられています。近年は、この経路にmTORC1というシグナルが関わることや、肥満細胞の関与も明らかになってきました。
テトラサイクリン系の抗菌薬が酒さに用いられるのは、抗菌作用に加えて、このカリクレイン5などの酵素の活性を間接的に抑える作用が想定されているためです。
2)神経と血管の調節異常
酒さの人の顔では、熱、辛味成分(カプサイシン)、精神的な緊張などの刺激に対して、血管が広がりやすくなっています。温度や刺激を感じ取る受容体(TRPV1、TRPV4など)や、血管を広げる神経ペプチド(CGRP、PACAPなど)が関わることが示されており、持続する赤みやフラッシング、ヒリヒリした感覚と深く関係すると考えられています。
3)毛包虫・微生物・遺伝的素因
毛包虫(Demodex)は、健康な人の毛穴にも存在しますが、酒さの皮膚では増えていることがあり、TLR2を介した炎症を強める誘因として注目されています。毛包虫に伴う細菌なども研究されていますが、微生物と酒さの関係は、研究によって結果が一致しない部分もあります。また、酒さの発症には遺伝的な素因も関わると考えられています。
4)誘因・皮膚バリア・心理社会的要因
紫外線、温度変化、辛い食べ物、アルコールなどの誘因に加えて、皮膚のバリア機能の低下も酒さに関わるとされています。また、赤みが人目に触れることによる緊張やストレスが、症状の再燃を招き、さらに心理的な負担が増すという悪循環が生じることがあります。そのため、皮膚への治療と並行して、心身の状態を整えることが重要です。
① 誘因:紫外線、熱、辛味、アルコール、ストレス、毛包虫などが皮膚に刺激を与える。
② 皮膚の反応:TLR2が働き、カリクレイン5が活性化して、炎症を起こすLL-37が増える。
③ 炎症細胞の活性化:肥満細胞・マクロファージ・好中球などが活性化し、TNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症物質が放出される。
④ 神経・血管の反応:TRPチャネルやCGRPなどを介して血管が広がり、血管の新生も促される。赤み、ほてり、毛細血管の拡張が生じる。
⑤ 慢性化:炎症と血管の拡張が繰り返されることで、持続する赤みや毛細血管拡張、皮膚の肥厚へとつながる。
現在の治療とその課題
酒さの治療は、遮光とスキンケア、誘因への対処を土台に、病型に合わせて外用薬、内服薬、光・レーザー治療を組み合わせて行います。日本皮膚科学会のガイドライン2023は、推奨度(A:強く推奨、C1:選択肢の一つとして推奨、C2:十分な根拠がないため現時点では推奨しない)を病型別に示しています。
スキンケアと生活(推奨度C1)
ガイドライン2023では、適切な遮光と、低刺激性の洗顔料や保湿剤の使用についての指導が、選択肢の一つとして推奨されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 遮光 | 紫外線は症状を強める要因です。日焼け止め、帽子、日傘などで、年間を通じて紫外線を避けます。 |
| 洗顔・保湿 | 低刺激性の洗顔料と保湿剤を選び、こすらずに洗います。 |
| 温度への配慮 | 急な寒暖差、熱い入浴、サウナ、暖房の効きすぎた室内を避けます。 |
| 食事・飲酒 | 辛い食べ物、熱い飲み物、アルコールで悪化する方は、量や頻度を見直します。誘因は人によって異なります。 |
| ステロイド外用薬 | 顔の赤みに自己判断で使用しません。使用歴がある場合は、皮膚科で相談します。 |
| 誘因の記録 | 赤みが強まった日の天候、食事、睡眠、ストレスを記録し、ご自身の誘因を把握します。 |
外用薬
| 薬剤 | 国内での位置づけ | 主な対象・注意点 |
|---|---|---|
| 0.75%メトロニダゾールゲル(ロゼックスゲル) | 2022年5月に酒さへの効能が追加承認。ガイドライン2023で、丘疹膿疱型に推奨度A(強く推奨) | 国内の第III相試験(18歳以上の丘疹膿疱型130人、12週間、1日2回外用)で、72.3%の方が炎症性皮疹数の50%超の減少と紅斑重症度の改善を示し、プラセボとの間に有意差がありました(Miyachi ら、J Dermatol 2022年)。18歳未満での安全性は確認されておらず、毛細血管拡張に伴う紅斑への有効性を示すデータはありません |
| アゼライン酸 | 国内では化粧品の成分。丘疹膿疱型に推奨度C1 | 海外の試験ではメトロニダゾール外用と同等の有効性が報告されていますが、国内の酒さに対する良質な根拠は乏しいとされています |
| イオウ・カンフルローション | 酒さに保険適用があるが、推奨度C2 | 現在のガイドライン基準に沿った国内の良質な根拠がありません |
| 赤みへの外用薬 | 紅斑毛細血管拡張型に、一様に推奨できる外用薬はない(推奨度C2) | 海外では、血管を収縮させて赤みを一時的に和らげる外用薬も使われていますが、ガイドライン2023は国内未承認の薬剤を推奨の対象としていません。改善は一時的にとどまるとの指摘もあります |
内服薬
丘疹膿疱型に対して、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリンの内服が選択肢の一つ(推奨度C1)とされています。ただし、国内の酒さに対する良質な根拠は乏しく、テトラサイクリン系の抗菌薬は、妊娠中には使用すべきではなく、小児では歯の着色などの副作用から慎重な検討が必要です。長期使用による耐性菌の問題にも注意が必要です。海外で酒さに承認されている40mgの徐放製剤(ドキシサイクリンなど)は、国内では未承認で、国内の50mg錠とは異なる薬剤です。毛包虫が検出された場合のイベルメクチンやメトロニダゾールの内服については、ガイドラインとして推奨できる根拠がないとされています。
光・レーザー治療と外科的治療
紅斑毛細血管拡張型に対しては、パルス色素レーザー(595nm)、ロングパルスNd:YAGレーザー(1,064nm)、intense pulsed light(IPL)が選択肢の一つ(推奨度C1)です。毛細血管の拡張を減らすことで赤みを改善します。パルス色素レーザーは、毛細血管拡張症以外の酒さの症状には保険適用がなく、施術の多くは保険適用外です。効果に個人差があり、再発の可能性があることを理解したうえで受ける必要があります。瘤腫型・鼻瘤には、外科的切除や炭酸ガスレーザーなどが、個々の状況に応じて検討されます(推奨度C2)。眼型については、眼科での治療が必要です。
薬物療法だけでカバーしきれない部分
持続する赤みへの選択肢が限られること:国内のガイドラインでは、紅斑毛細血管拡張型に一様に推奨できる外用薬・内服薬はないとされています。光・レーザー治療の多くは保険適用外で、回数や費用の負担があります。
再燃:治療で丘疹・膿疱が改善しても、再燃することがあります。海外の試験では、改善後もメトロニダゾール外用を6か月続けた群で、再燃が少なかったことが報告されています(Dahl ら、Arch Dermatol 1998年)。症状が落ち着いたあとの維持が重要です。
抗菌薬の長期使用:内服抗菌薬は、耐性菌の問題などから、長期の連用を避けたい薬です。
反応のしやすさそのもの:のぼせやすさ、暑さや緊張で顔が赤くなりやすい体質といった「反応のしやすさ」に直接働く標準的な治療は限られています。
心理的な負担:酒さのある方は、抑うつや不安を抱えやすいことが報告されています。皮膚への治療と並行して、心身の状態にも目を向ける必要があります。
西洋医学 vs 中医学 アプローチ比較
酒さに対する西洋医学と中医学のアプローチの違いを整理します。両者は対立するものではなく、それぞれの強みを活かして組み合わせることで、より包括的なサポートができます。
| 観点 | 西洋医学的アプローチ | 中医学的アプローチ |
|---|---|---|
| 病態の捉え方 | 自然免疫の過剰反応(TLR2・カリクレイン5・LL-37)、神経と血管の調節異常、毛包虫などの微生物、誘因という生理学的な要因を、病型(紅斑・丘疹膿疱・瘤腫・眼)で評価する | 肺と胃の熱、熱毒、血熱・瘀血、肝鬱化火、湿熱、陰虚内熱といった体質の偏りとして、脈診・舌診・腹診・問診から総合的に把握する(弁証) |
| 治療の目標 | 炎症性皮疹の減少、赤みの軽減、再燃の予防、生活の質の向上 | 熱・血・巡り・潤いの偏りを整え、赤みの出やすさ、ほてりやすさ、誘因への反応のしやすさを落ち着かせる |
| 主な治療手段 | 遮光とスキンケア、0.75%メトロニダゾールゲル、内服抗菌薬、光・レーザー治療、外科的治療 | 弁証に基づく漢方処方(白虎加人参湯・黄連解毒湯・温清飲・桂枝茯苓丸・加味逍遙散など)、鍼灸(曲池・合谷・内庭・血海・太衝など)、日常の養生指導 |
| 長所 | 皮疹に対する効果の根拠が蓄積されている。診断基準と診療ガイドラインが整っている | 体質全体、胃腸、睡眠、ストレス、月経や更年期の状態まで含めて整えられる。現在の治療と併用しやすい |
| 限界・課題 | 毛細血管の拡張に伴う持続する赤みへの選択肢が国内では限られる。再燃がある。抗菌薬の長期使用に課題がある。光治療の多くは保険適用外 | 診療ガイドライン上は推奨度C2で、比較試験が限られる。効果に個人差がある。即効性は期待しにくい場合がある |
中医学からの酒さ病態分析
中医学では、酒さを「酒渣鼻(しゅさび)」「酒齄鼻」「赤鼻」といった名で捉えてきました。顔の赤みやほてりは、血管や皮膚だけの問題ではなく、体の内側にこもった熱や、血の巡りの滞り、潤いの不足といった、体質の偏りが顔に現れたものと分析します。
顔や鼻の部位は、臓腑や経絡と結びついて考えます。肺は鼻に開竅(かいきょう)し、皮膚(皮毛)を主ります。胃の経絡は、鼻の脇から頬を通って顔面を巡ります。そのため、肺や胃にこもった熱は、顔や鼻に現れやすいと捉えます。脈診・舌診・腹診・問診の総合分析(弁証〔べんしょう〕)によって体質の偏りを把握し、処方や鍼灸の方針を決定します。酒さでよく見られる証(体質のパターン)は次のとおりです。
辛味の強い食べ物、飲酒、脂っこい食事の偏りなどで胃に熱がこもり、肺にも及んで、顔や鼻へ上る状態。鮮やかな赤み、ほてり、口の渇き、冷たい飲み物を好む、便秘傾向が目立ち、辛い物やアルコールで悪化しやすい。舌は赤く、黄色い苔を伴うことが多い。枇杷清肺飲、白虎加人参湯などが検討される。
熱が強まり、毒の性質を帯びて皮膚にとどまった状態。赤みが強く、丘疹・膿疱、灼熱感が目立つ。のぼせやいらだちを伴うことがある。丘疹膿疱型で見られやすい。黄連解毒湯、清上防風湯、荊芥連翹湯、十味敗毒湯などが検討される。
血に熱がこもり、巡りが滞った状態。赤みや毛細血管の拡張が長く続き、暗めの赤色や紫がかった赤色になることがある。固定した赤み、月経痛、肩こり、唇や舌の暗い色を伴うことがある。紅斑毛細血管拡張型で見られやすい。温清飲、桂枝茯苓丸、葛根紅花湯などが検討される。
肝は、気の巡りをのびやかに保つ「疏泄(そせつ)」を司ります。ストレスや緊張で肝の疏泄が滞ると気が鬱滞し、長引くと熱(火)に変わって上に昇る。緊張する場面や月経前に赤みが強まる、いらだち、胸脇部の張り、ため息が多いといった状態を伴う。加味逍遙散などが検討される。
脾は、飲食物を気血に変えて全身に運ぶ「運化(うんか)」を司ります。脂っこい物、甘い物、飲酒などで脾胃の運化が滞ると湿が生じ、熱と結びついて皮膚に出る。皮疹に膿を持つ、皮膚が脂っぽい、胃もたれ、軟便や粘る便を伴うことがある。梔子柏皮湯などが検討される。
年齢、更年期、疲労、睡眠不足などで、体を潤す陰が不足し、相対的に熱が上る状態。午後から夕方のほてり、のぼせ、口や目の乾燥、寝汗を伴う赤みとして現れる。熱を直接さます処方だけでなく、陰を補う方針が必要になる。知柏地黄丸などが検討される。
顔はほてるのに、足先は冷える「上熱下寒(じょうねつげかん)」の状態の方がいます。このような場合は、熱をさます処方だけでは、胃腸や下半身の冷えを強めることがあるため、熱をさますことと、巡りを整えることを両立させる処方が必要です。また、黄連解毒湯のように熱をさます力の強い処方は、胃腸の弱い方には合わないことがあります。証は変化するため、経過に合わせて処方を見直します。
漢方・鍼灸に関する研究報告の現状
酒さに対する漢方・鍼灸の研究は、日本・中国・韓国で症例報告や臨床試験が蓄積されている段階です。診療ガイドライン上の位置づけと、報告されている内容を整理します。
| 報告 | 内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(日本皮膚科学会) | 紅斑毛細血管拡張型で梔子柏皮湯・黄連解毒湯・葛根紅花湯・桂枝茯苓丸・温清飲、丘疹膿疱型で荊芥連翹湯・十味敗毒湯・白虎加人参湯の症例報告があるとされた | 推奨度C2(症例報告の段階) |
| 『漢方医学』34巻4号(2010年) | 酒さ7例・酒さ様皮膚炎36例に、西洋医学的治療を続けながら白虎加人参湯・黄連解毒湯・加味逍遙散のいずれか1剤を追加。酒さ様皮膚炎で著効47.2%・有効30.6%、酒さで有効以上85.7% | 対照群のない症例集積 |
| Yu らのメタ解析(Front Pharmacol 2024年) | 13件のランダム化比較試験(1,348人)で、標準的な西洋医学の治療に中医学の治療を組み合わせた群は、臨床症状スコア、中医学症候スコア、DLQI(皮膚の生活の質)、紅斑指数、再発率が良好 | 著者らも、エビデンスの不確実性と研究の質の低さから、慎重な解釈が必要としている |
| 韓国の研究グループの系統的レビュー | 2016年〜2020年3月に報告されたランダム化比較試験18件。漢方と西洋医学の治療の併用で、有効率が高い(リスク比1.20)。重篤な有害事象は認められなかった | 対象は、併用療法と通常治療の比較。研究のバイアスリスクには懸念が残る |
| Xu らのランダム化比較試験(JAMA Dermatol 2026年) | 標準的な一次治療を受けている酒さの成人204人に、耳のツボ(耳穴)へのプレス(王不留行の種子を貼り、1日3回圧迫)を8週間追加。治療成功率は実施群56.9%、偽の部位に貼ったシャム群35.3%(リスク比1.61)。20週後も良好で、血清のLL-37、CGRP、TNF-α、IL-6がシャム群より大きく低下 | 中国の単施設試験。鍼治療そのものではなく、耳穴への圧迫 |
漢方:日本と中国での蓄積
日本では、酒さや酒さ様皮膚炎に対して、熱をさます「清熱剤」を中心とした漢方が用いられてきました。『漢方医学』に掲載された43例の報告では、白虎加人参湯が主体となり、酒さ様皮膚炎で有効以上が77.7%、酒さで85.7%でした。対照群のない小規模な報告であり、効果を確立するものではありませんが、臨床的な知見として参考になります。中国では、肺経風熱、血熱、血瘀、気陰両虚といった証に分けた治療の研究が報告されており、メタ解析では、標準的な治療との併用で症状スコアや再発率の改善が報告されています。
鍼灸・耳穴:研究が進み始めた分野
2026年に、JAMA Dermatologyで、耳のツボ(耳穴)への圧迫が、標準治療に加えた場合に酒さの治療成功率を高めたとするシャム対照のランダム化比較試験が報告されました。この試験では、迷走神経に関わる耳甲腔に刺激を与え、フラッシング時の血管の変化にも改善がみられ、神経と免疫の調節を介した作用が示唆されています。難治性の酒さを対象に、鍼治療とシャム鍼を比較するランダム化比較試験も登録されており(ClinicalTrials.gov)、鍼灸の効果を検証する研究はこれから結果が出る段階です。
酒さの研究そのものが進んでいること
2024年から2025年にかけての総説では、TLR2・LL-37・mTORC1の経路、TRPチャネル、CGRPなどの神経ペプチドといった病態の解明が進み、これらを標的とする新しい治療の開発につながると述べられています。酒さは、研究が進んでいる分野であり、治療の選択肢は今後も広がっていくと考えられます。
タナココにおける漢方・鍼灸のサポート
タナココの漢方では、顔の赤みを「熱」「血」「巡り」「潤い」の偏りとして弁証し、赤みの強さだけでなく、のぼせやすさ、足元の冷え、胃腸の状態、睡眠、月経や更年期の状態、ストレスの感じ方まで含めて処方を考えます。赤みを「そういう体質だから」とそのままにせず、背景にある偏りを一つずつ確認し、できる限りの手を尽くします。方向性の例は次のとおりです。
枇杷清肺飲(びわせいはいいん):肺と胃の熱をさます処方。鮮やかな赤みとほてり、鼻や頬の赤みが目立つタイプ(肺胃熱盛)に。
白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう):強い熱と、口の渇き・ほてりが目立つタイプに。熱をさましながら、体の潤いを補う。
黄連解毒湯(おうれんげどくとう):赤みが強く、丘疹・膿疱、のぼせ、いらだちが目立つタイプ(熱毒)に。熱をさます力が強いため、胃腸の状態を見ながら用いる。
清上防風湯(せいじょうぼうふうとう):赤ら顔でときにのぼせがあり、顔面の炎症が目立つタイプに。
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう):丘疹・膿疱を繰り返すタイプに。炎症をさまし、皮膚の状態を整える。
温清飲(うんせいいん):血の熱をさます黄連解毒湯と、血を補う四物湯を合わせた処方。赤みに加えて皮膚の乾燥がある、血熱と血の不足が重なるタイプに。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血の巡りを整える処方。毛細血管の拡張が目立ち、赤みが長く続くタイプ(瘀血)に。
加味逍遙散(かみしょうようさん):肝の気の巡りを整え、熱をさます処方。ストレスや更年期に伴うほてり、のぼせ、いらだちを伴うタイプ(肝鬱化火)に。
知柏地黄丸(ちばくじおうがん):体を潤す陰を補い、虚熱をさます処方。更年期や疲労で、午後からのほてり、口や目の乾燥、寝汗を伴うタイプ(陰虚内熱)に。
これらは単独ではなく、弁証に基づいて組み合わせます。処方の選択・用量は、年齢、体質、現在の症状、服薬状況に応じて個別に判断します。山梔子(サンシシ)を含む処方(黄連解毒湯、温清飲、荊芥連翹湯、清上防風湯、加味逍遙散など)は、数年以上の長期に用いた場合に腸間膜静脈硬化症が報告されているため、腹痛や便通の変化に注意しながら、定期的に経過を確認し、必要に応じて検査をご案内します。甘草を含む処方が重なる場合の血圧・電解質への影響や、現在の処方薬(テトラサイクリン系抗菌薬など)との飲み合わせ・服用間隔は、薬剤師が確認します。
鍼灸では、体質に合わせた経穴(けいけつ:ツボ)への刺激を通じて、のぼせやほてりを下げ、気血の巡りを整えることを目指します。赤みや炎症が強い顔面の局所は刺激を控え、手足や体幹の経穴を中心に選びます。よく用いられる経穴の例は次のとおりです。
曲池(きょくち):大腸経の経穴。熱をさます代表的なツボのひとつで、皮膚の炎症が強いときに用いる。
合谷(ごうこく):顔面の症状に用いられる代表的なツボ。のぼせや顔面の熱感に。
内庭(ないてい):胃経の経穴。胃の熱をさます目的で、肺胃熱盛のタイプに。
血海(けっかい):血の熱をさまし、血の巡りを整えるツボ。赤みが長く続くタイプに。
太衝(たいしょう):肝の気の巡りを整えるツボ。ストレスによる緊張やのぼせに。
三陰交(さんいんこう):脾・肝・腎の経絡が交わるツボ。陰血を養い、月経や更年期に伴う不調の調整に。
太渓(たいけい):腎の経穴。腎の陰を補い、虚熱によるほてりや乾燥に。
灸は熱を加える刺激のため、熱がこもるタイプの方の顔面や上半身には用いません。足元の冷えが強い「上熱下寒」の方で、必要に応じて下半身にだけ用います。初回はお体の反応を確認しながら進めますので、「鍼灸ははじめて」「顔の赤みが気になる」という場合も、まずご相談ください。
タナココでは、現在受けている医療的なサポート(皮膚科での診断・処方薬の内容)をお聞きしながら、それと組み合わせる形で漢方・鍼灸のアプローチを考えます。外用薬・内服薬を自己判断で中止することはおすすめしません。「まず皮膚科に行くべきか迷っている」という段階でも、情報収集のご相談から歓迎します。
「皮膚科の薬で皮疹は減ったが、赤みが残っている」「赤みが気になって、人と会うのがつらい」「ステロイド外用薬をやめたあとの赤みが続いている」「暑さや緊張で顔が赤くなる」——どのような状況でも、現状をお聞きすることから始めます。薬剤師・鍼灸師・認定心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学、心の面から、一人ひとりに合った提案をいたします。
よくある質問(FAQ)
酒さは治りますか?
酒さはにきびや飲酒と関係がありますか?
市販のステロイド軟膏を顔の赤みに塗っても大丈夫ですか?
酒さに漢方や鍼灸は有効ですか?
皮膚科の薬と漢方は併用できますか?
日常生活で気をつけることはありますか?
鍼灸は、顔が赤い状態でも受けられますか?
改善までどれくらいかかりますか?
酒さ──「敏感肌だから」「このまま付き合うしかない」で終わらせない選択肢があります
顔の赤みやほてりは、見た目の問題にとどまらず、外出、人と会う場面、仕事、気持ちにまで影響します。酒さは、皮膚科での診断と治療に加えて、遮光やスキンケア、誘因への対処、そして体質面からのサポートを重ねることで、落ち着いた状態を目指せる病気です。
熱の偏り、血の巡り、潤いの不足、ストレスによる気の滞りといった、赤みの背景にある体質を整えること。赤みの出やすさやほてりやすさを少しずつ落ち着かせること。そのために、漢方と鍼灸を通じてできる限りのことをしたいと考えています。
「皮膚科の薬で皮疹は減ったが赤みが残っている」「赤みが気になって人と会うのがつらい」「ステロイド外用薬をやめたあとの赤みが続いている」「暑さや緊張で顔が赤くなる」——どのような状況でも、現状をお聞きすることから始めます。薬剤師・鍼灸師・認定心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学の両面から、一人ひとりに合った提案をいたします。
変わっていくための選択肢があることを、まず知っていただければと思います。
