凍瘡(しもやけ)とは──
診断・メカニズム・治療の限界と、体質から整えるアプローチ
毎年、寒くなると指先やつま先が赤く腫れ、かゆみや痛みが出る。温まるとさらにかゆくなり、冬のあいだ繰り返す。凍瘡(しもやけ)は、こうした経過をたどる方が多い、身近でつらい皮膚の病気です。
凍瘡は、寒さに対する末端の血管の反応と、その後の炎症によって起こると考えられています。近年は、その仕組みを調べた研究も進んでいます。
西洋医学の知見を土台に、漢方・鍼灸で体質を整えるアプローチをご提案します。毎年のくり返しを減らし、冬を楽に過ごせる状態を目指して、最後までご一緒します。
最終更新日:2026年10月30日
凍瘡(しもやけ)の理解と体質へのアプローチ
凍瘡(しもやけ)とは何か
どんな病気か:凍結に至らない寒さと湿気で、手足の指・耳・鼻などに赤み・腫れ・かゆみ・痛みが出る炎症性の皮膚疾患です。
経過:一次性の多くは1〜3週間で自然に軽快しますが、毎年くり返す方もいます。
治療の現状:保温などの予防が基本で、薬の根拠は限られています。
漢方・鍼灸:当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、国内で「しもやけ」が効能とされる処方です。鍼灸を含め、凍瘡を対象とした質の高い比較試験は少なく、体質に合わせた個別の対応が中心になります。
凍瘡(とうそう、英語では chilblains または pernio)とは、凍結に至らない寒さと湿気によって、手足の指・耳・鼻・頬などの末端に、赤み・腫れ・かゆみ・痛みが生じる炎症性の皮膚疾患です。一般には「しもやけ」と呼ばれます。
学童・思春期の方や女性に多く、晩秋から初冬、終冬から早春のように、朝晩と日中の気温差が大きい時期に起こりやすいとされています。
基礎疾患のない一次性(特発性)の凍瘡は、寒さにさらされてから12〜24時間ほどで症状が出て、多くは1〜3週間で自然に軽快します。一方で、毎年同じ時期にくり返す方や、長引く方もいます。
凍傷は組織が凍結して起こる損傷で、凍瘡は凍結に至らない寒冷刺激による炎症です。また、しもやけに似た症状が、膠原病や血液の病気などに伴って現れることもあります(二次性)。夏になっても消えない、発熱や関節痛を伴う場合は、皮膚科での確認をおすすめします。
診断基準と、見分けるべき病気
凍瘡は、症状の見た目と経過から判断する臨床診断が基本です。血液検査や皮膚生検は、診断に迷う場合、症状が長引く場合、全身の病気が疑われる場合に行われます。
参考になる診断基準案として、米国メイヨー・クリニックの104例の検討(2014年)で提案された基準があります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 大基準(必須) | 手足などの末端に、限局した赤みと腫れが24時間を超えて続く |
| 小基準(1つ以上) | ①寒い季節に発症・悪化する ②皮膚生検で真皮の浮腫と血管周囲のリンパ球浸潤があり、エリテマトーデスの所見がない ③保温・乾燥などの保存的な対応で改善する |
| 診断 | 大基準に加えて、小基準を1つ以上満たす |
見分けが必要な状態
基礎疾患の確認が必要なもの
- 凍瘡状エリテマトーデス(皮膚エリテマトーデスの一型で、全身性エリテマトーデスを伴うこともあり、寒い季節が過ぎても残りやすい)
- クリオグロブリン血症、血液の病気など
- 血液検査(血算・炎症反応・抗核抗体など)が検討される
症状が似ているもの
- レイノー現象(指先が白・青紫・赤と色調変化する)
- 先端チアノーゼ、血管炎、寒冷じんましん
- 凍瘡は、赤〜紫色の斑・丘疹・結節が固定してみられる点で区別される
症状:かゆみ・痛み・腫れ、そして日常への影響
典型的には、手足の指、足の甲、耳たぶ、鼻、頬に症状が現れます。分類としては、紫がかった赤みを伴うむくみが目立つ「樽柿型」(幼小児に多く、気温差が大きいときに起こりやすい)と、境界のはっきりした赤い斑が散らばる「多形滲出性紅斑型」(年長者に多く、長時間の低温で起こりやすい)が知られています。
主な症状
- 赤〜紫色の腫れ、しこり(結節)
- かゆみ(温まると強くなる)、ひりひりした痛み
- 水ぶくれ、ただれ、潰瘍になることもある
経過の特徴
- 寒冷にさらされた後、12〜24時間ほどで出現
- 通常は1〜3週間で軽快するが、毎年くり返す方が多い
- 潰瘍や感染を起こすことがあり、注意が必要
かゆみや痛みのために日常生活に支障が出ることも少なくありません。軽く扱ってよい症状ではなく、つらさに見合った対応が必要です。
発症のメカニズム
凍瘡の仕組みは完全には解明されていません。現在は、次のような流れが考えられています。
寒さで末端の細い動脈が収縮して血流が減り、組織が低酸素になります。その後、血管が拡張して血液の成分が血管外へ漏れ出すことで、赤み・腫れ・かゆみが生じると考えられています。凍瘡のある方で、氷水に手を入れた際に血管のれん縮が確認された報告もあります(5例)。
ギリシャのテッサリア大学などの研究(Kapnia ら、Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol、2026年)では、凍瘡の既往がある成人8名とない成人8名を、22℃から10℃へ段階的に冷やして比較した非ランダム化試験です。既往のある群で、皮膚血流と指先・足先の温度が低く、酸素供給の低下を示す所見がありました。「収縮しやすく、低酸素になりやすい血管反応」が背景にある可能性が示されています。対象は16名の小規模研究で、因果関係を証明するものではありません。
COVID-19の流行期にみられた凍瘡様の病変(いわゆるCOVID toes)の研究(Saidoune ら、J Exp Med、2025年)では、形質細胞様樹状細胞(免疫細胞の一種)のTLR7を介したI型インターフェロン産生の亢進が示されました。遺伝性のI型インターフェロン異常症でも凍瘡がみられます。通常の凍瘡で同じ仕組みが主因かどうかは、確立していません。
体質(血管の反応性、冷えやすさ)、手足の汗や濡れ、締めつけのある靴や衣類、喫煙などが関係すると考えられています。気温差の大きい季節や、濡れたまま放置した手足では起こりやすくなります。
現在の治療とその限界
セルフケア・生活面
- 手袋・厚手の靴下で保温し、濡れたらすぐに乾かす
- 寒い場所から戻った後は、急に熱いお湯や暖房に当てず、ゆっくり温める
- こすらない・掻かない(皮膚が傷つくと悪化し、感染のおそれがある)
- 喫煙している場合は、禁煙が勧められる
薬物療法
- ビタミンE製剤(内服・外用):国内で広く用いられる
- ステロイド外用薬:炎症やかゆみが強い部位に、症状に応じた強さで用いる
- 保湿・血行促進を目的とした外用薬(ヘパリン類似物質など)、かゆみに対する抗ヒスタミン薬
- 海外では、カルシウム拮抗薬(ニフェジピン)やペントキシフィリンが、重症・難治例に検討される
① 凍瘡は自然に軽快しやすいため、薬の効果を見極めにくく、質の高い研究が少ない状況です。2021年の系統的レビュー(Pratt ら、11試験・計576人)では、ニフェジピンとペントキシフィリンに中等度の根拠がある一方、他の治療は根拠が不十分、または偽薬と差がないと報告されています。
② ニフェジピンは、2016年の二重盲検クロスオーバー試験(Souwer ら、32人)で偽薬に対する優位性が示されず、血圧低下とむくみが多くみられました。
③ 再発の予防を目的とした確立した治療は限られ、基本は保温などの予防策になります。
④ 慢性例・潰瘍例では、基礎疾患の評価を含めた丁寧な対応が必要です。
西洋医学 vs 中医学 アプローチ比較
両者は対立するものではなく、役割が異なります。診断と基礎疾患の確認は西洋医学(皮膚科)、体質面のサポートは中医学が得意とする部分で、組み合わせることで、より多面的な対応ができます。
| 観点 | 西洋医学的アプローチ | 中医学的アプローチ |
|---|---|---|
| 病態の捉え方 | 寒冷による血管収縮・低酸素・炎症という生理学的な反応として評価 | 寒さによって気・血の巡りが滞る(寒凝血瘀)状態に、血の不足(血虚)や温める力の不足(陽虚)が重なった体質として把握 |
| 治療の目標 | かゆみ・痛み・炎症の軽減、悪化・感染の予防 | 気血の巡りと温める力を整え、冷えに対する反応そのものを穏やかにする |
| 主な手段 | 保温指導・外用薬・ビタミンE・(海外では)カルシウム拮抗薬 | 弁証に基づく漢方(当帰四逆加呉茱萸生姜湯など)、鍼灸、季節に合わせた養生 |
| 長所 | 診断基準・基礎疾患の鑑別、急性の炎症への対応 | 体質全体に働きかける、再発しやすい方の、季節ごとの準備を組み立てやすい |
| 限界・課題 | 再発予防の手段が限られ、薬の根拠も十分とはいえない | 凍瘡を対象とした大規模な比較試験が少なく、個人差が大きい |
中医学からの凍瘡の分析
中医学では、凍瘡を「寒さによって気血の巡りが滞った状態」として捉えます。脈診・舌診・腹診・問診を総合して体質を見立てる弁証(べんしょう)を行い、同じ「しもやけ」でも、体質に応じて処方と施術を変えます。
凍瘡でよくみられる体質のパターンは次のとおりです。
寒さで血の流れが滞った状態。紫〜暗赤色の腫れ、冷えると強まる痛み、温めると楽になる。当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桂枝茯苓丸などが検討される。
血(栄養物質)が不足し、手足の先まで温かさが届かない状態。顔色が白っぽい、手足が冷える、月経量が少ない、乾燥しやすい。当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散などが検討される。
体を温める力(陽気)が不足した状態。全身の冷え、むくみ、下痢傾向、腰の冷え。真武湯などの温陽の処方が検討される。小児では体質と量を慎重に見極める。
気(エネルギー)と血が不足し、疲れやすく、症状が長引いたり、ただれが治りにくい。十全大補湯、補中益気湯などが検討される。
漢方・鍼灸に関する研究・根拠の現状
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(しもやけへの公的な位置づけ)
「傷寒論」に収載された処方で、日本では1986年から医療用エキス製剤として販売されており、効能・効果に「しもやけ」が明記されています(手足が冷え、下肢が冷えると下肢や下腹部が痛みやすい方の、しもやけ・頭痛・下腹部痛・腰痛)。一般用医薬品にも、しもやけを効能とするものがあります。
甘草を含むため、他の甘草含有製剤との重複による偽アルドステロン症(手足のだるさ・脱力感・筋肉痛・むくみなど)に注意が必要です。服用中の薬との確認は、薬剤師が行います。
根拠の現状:正直にお伝えすること
凍瘡を対象に、漢方や鍼灸を偽薬・偽鍼と比較した大規模で質の高い試験は、今回の文献調査(日本語・英語・中国語)の範囲では見当たりません。「効果が証明されている」と言い切れる段階ではありません。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、国内で長年用いられ、しもやけが公的な効能として認められている処方である、というのが現時点での位置づけです。
2026年の研究と、中医学の考え方
前述のKapnia らの研究は、凍瘡のある方の血管が「寒さで収縮しやすく、低酸素になりやすい」可能性を示しました。中医学の「温めて巡らせる」「気血を補う」という方針は、この方向と考え方が重なります。ただし、これは考え方の対応であり、漢方・鍼灸の効果を直接示すものではありません。今後、体質に着目した臨床研究が進むことを期待しています。
タナココにおける漢方・鍼灸のサポート
血の不足と冷えを背景に、体の内側から温めて巡りを支えることを基本方針とし、弁証に基づいて処方を選びます。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯:手足の冷えが強く、冷えると痛む、しもやけをくり返す方に。血を補い、冷えを散らして、巡りを整えます。
当帰芍薬散:血の不足に水の滞り(むくみ・めまい)が重なる女性に。
桂枝茯苓丸:暗赤色・紫色が目立ち、血の滞り(瘀血)の傾向がある場合に。
真武湯:全身の冷えが強く、むくみや下痢傾向がある方に。
十全大補湯・補中益気湯:疲れやすく、ただれが治りにくい気血両虚の方に。
処方の組み合わせ・量は、年齢・体格・体質・現在の症状・服薬状況に応じて決めます。甘草や附子を含む処方の重複、他の薬との相互作用は、薬剤師が確認します。
気血の巡りと、温める力を整えることを目的に、次のような経穴(ツボ)から体質に合わせて選びます。
足三里・三陰交・関元・気海:気血を補い、体の中心から温める。
合谷・太衝:気血の巡りを手足へ通す。
八邪・八風・湧泉:指先・足先の血行を整える(患部が強く腫れている時期は、周囲から行います)。
温灸や棒灸で、やさしく温めることもあります。びらん・潰瘍がある部位への直接の刺激は避けます。小児には、刺さない小児鍼や温灸で対応できます。
凍瘡は、寒さが本格化してからでは対応が後手になりやすい病気です。10〜11月の今の時期から、保温の習慣、足湯や入浴、睡眠、胃腸を冷やさない食事を整え、体質面のサポートを始めておくことをおすすめします。
タナココでは、季節ごとに経過を確認し、処方・施術を調整します。皮膚科での診断・治療と併せて進めていただけます。効果には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。
よくある質問(FAQ)
しもやけは自然に治りますか?▼
毎年くり返すのはなぜですか?▼
漢方・鍼灸は凍瘡に効きますか?▼
皮膚科と漢方・鍼灸は併用できますか?▼
子どもでも受けられますか?▼
いつから始めるのがよいですか?▼
凍瘡(しもやけ)──「毎年のこと」で終わらせない選択肢があります
赤み、腫れ、かゆみ、痛み。冬のたびにくり返す症状は、日常の小さな不自由として積み重なります。凍瘡は、寒さに対する体の反応として起こる病気で、保温や薬に加えて、体質の側から整える選択肢があります。
気血の巡りと温める力の土台を整えること。再発しにくい冬の過ごし方を、一緒に組み立てること。そのために、漢方と鍼灸でできることを、手を抜かずに進めます。
「薬を使っても毎年再発する」「子どもが冬のたびに足の指を痛がる」「ただれが治りにくい」「冷えそのものを見直したい」——どのような状況でも、まず現状をお聞きします。薬剤師・鍼灸師・認定心理士の資格を持つ担当者が、西洋医学と中医学の両面から、一人ひとりに合った提案をいたします。
冬が本格化する前の今の時期が、準備を始める好機です。まずは、ご相談ください。
