コロナの後遺症(Long COVID)と漢方・鍼灸

こんにちは、相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。

 

感染者が増えるに従い、コロナの後遺症(Long COVID) についての漢方相談・鍼灸相談も増えています。

 

コロナの後遺症(Long COVID)

コロナの後遺症(Long COVID)には何が効果的なのか。

これをすれば改善するという決定的な方法がなく、とても難しい問題です。

 

コロナの後遺症(Long COVID)では、様々な症状が問題になりますが、「倦怠感」について訴えが多く、日常生活に影響を与えるほどの症状が出ている方も少なくありません。加えて「倦怠感」への対処は誤ると症状が悪化することも多くとてもデリケートですので注意が必要です。

 

コロナの後遺症(Long COVID)としての、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)やブレインフォグ(集中力・思考力の低下)への対応は漢方と鍼灸を併用することで効果があることも少なくありません。

西洋医学的には、慢性上咽頭炎が見られる場合、上咽頭擦過療法(EAT、Bスポット療法)が効果があるとして積極的に行なっているクリニックもありますが、決定的な治療法とまではいえないのが現状です。

現時点では、一人ひとりの症状や活動可能な程度を考慮しながら、西洋医学的な治療と漢方・鍼灸の併用などを組み合わせながら、時間をかけて回復を促す方法しか治療方法がありません。

 

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)では、これまでは健康に問題なく生活していた人が、急に強い倦怠感に襲われ、それが休んでも改善しない状況が続き、さらには強い倦怠感だけでなく、微熱や、頭痛、筋肉痛、関節痛、思考力の低下、抑うつ症状などもみられ、日常生活が立ち行かなくなります。

通常の「疲労」であれば、しっかり寝て、バランスよく食べて、休養することで回復しますが、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)ではいくら休んでも疲労は回復しません。
このような症状が新型コロナウイルスに感染後見られることがありますが、同様にワクチン接種後でも同様の症状を訴える方もいらっしゃいます。

 

「気のせい」で済ませられる状況ではなくなっています。

 

感染後にこれらの症状が見られる状況を把握するために、厚生労働省も

「遷延する症状を訴える方に対応する診療体制の構築について」(厚労省 健健発 0324 第 11 号 令和4年3月24日)

と通知を出し、新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応を疑う症状に対して対策を取れるよう動いています。

一方で、これらの症状を訴えているひとの受け皿が十分かといえば現場レベルでは不十分です。

 

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の症状

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)では症状が多彩です。感染様症状、膠原病様症状、自律神経失調症様症状、精神・神経症様症状が見られます。

□ 微熱ないし悪寒がある
□ のどが痛い
□ リンパ節が腫れている
□ 原因不明の筋力低下
□ 筋肉や関節が痛い
□ ちょっとした動作でもすぐに疲れる(労作後24時間以上続く全身倦怠感)
□ 頭痛がする、頭が重い感じがする
□ 不眠、過眠がある
□ 思考力や集中力が低下している
□ 意欲がわかない
□ 憂うつである

上記の症状が長期間持続したり、再発を繰り返したりするときに筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)が疑われます。

 

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の原因

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の原因については、コロナウイルス感染症ではウイルス感染が、新型コロナウイルスワクチン接種後では免疫システムへの影響が、ストレスと重なることで相互に作用し、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)が引き起こされる可能性があるのではないかと考えられています。


コロナ後遺症、ワクチン接種後長期副反応で気をつけること

特に運動したり、体を動かしたりしたあと、数時間〜1、2日後に急激に疲労感が襲ってくる場合です。

これを「労作後倦怠感(PEM:Post-exertional malaise)」といい、数日身動きが取れなくなるほどの状況を「クラッシュ」と言いますが、倦怠感が軽度の方でも何度もPEMを繰り返すと、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)に移行してしまうケースもあります。

PEMやクラッシュが起きるということは、その行動が負担であったというサインです。PEMやクラッシュが起こった時は、いかに負担を減らし、倦怠感を起こさない様にするかが重要です。

体を動かさないことによるリスクはありますが、現在自分自身がどこまでなら体を動かしても大丈夫かの判断をできるだけ正確に行い、時間をかけて回復させていくかが重要です。

悪くなる時は一瞬ですが、回復にはとても時間がかかります。

 

PS(performance status)による疲労・倦怠の程度

現在、疲労・倦怠の程度の指標として、PS(performance status)があります。

 

0:倦怠感がなく平常の生活ができ、制限を受けることなく行動できる。

1:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、 倦怠感を感ずるときがしばしばある。

* PS0やPS1では、疲労感を感じない程度に体を動かすことが必要です。

 

2:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、 全身倦怠の為、しばしば休息が必要である。

* PS2では、無理をすれば頑張れますが、それをしてしまうと悪化させてしまいます。ウォーキング程度でしたらなんとかできるので、運動をしたくなりますが、無理をすると悪化しますのでもうしばらく無理をせずに軽いストレッチなどで体をほぐす程度にとどめておくことが必要な状態です。


3:全身倦怠の為、月に数日は社会生活や労働ができず、 自宅にて休息が必要である。(社会生活や労働ができない「月に数日」には、土日や祭日などの休日は含まない。また、労働時間の短縮など明らかな勤務制限が必要な状態を含む。)

* PS3では、在宅や通勤時間が極めて短い場合であれば、1日3〜4時間程度の勤務が可能な状態ですが、30分毎の休憩が必要な状態です。

 

4:全身倦怠の為、週に数日は社会生活や労働ができず、 自宅にて休息が必要である。(健康であれば週5日の勤務を希望しているのに対して、それ以下の日数しかフルタイムの勤務ができない状態。半日勤務などの場合は、週5日の勤務でも該当する。)

* PS4では在宅での仕事が可能ではありますが、10〜20分毎に休憩が必要な状態です。運動はウォーキングも難しく、日当たりの良い場所で日光浴程度でしたら問題ありません。入浴についても少し大変になってきますので、状態によってはサポートが必要です。

 

5:通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、 週のうち数日は自宅にて休息が必要である。(フルタイムの勤務は全くできない状態。ここに書かれている「軽労働」とは、数時間程度の事務作業などの身体的負担の軽い労働を意味しており、身の回りの作業ではない。)

* PS5では在宅での仕事も難しくなります。家の中での簡単な作業(自分の食器を片付ける、自分の部屋の簡単な掃除、自分の分の洗濯物をたたむ)は可能ですが、家の全体の掃除、家族の分の洗濯などは難しい状態です。複雑なことを考えることも難しく、入浴もシャワーを浴びる程度でもつらさを感じる人もいます。特別なことをしていなくても、日々の生活が「つらい」と感じる状態です。

 

6:調子のよい日は軽作業は可能であるが、 週のうち50%以上は自宅にて休息している。

* PS6では調子が良い時は少しの簡単な家事ができる状態です。力が必要なことはできません。集中して何かをすることはできず、座っていることにも疲労を感じます。家事もちょっと手伝う程度はできますが、力を使う様なものは負担になります。入浴も状況によっては一部介助が必要なこともあります。病院の受診自体も負担になる状態です。

 

7:身の回りのことはでき、介助も不要ではあるが、 通常の社会生活や軽作業は不可能である。(1日中、ほとんど自宅にて生活をしている状態。収益につながるような短時間のアルバイトなどは全くできない。ここでの介助とは、入浴、食事摂取、調理、排泄、移動、衣服の着脱などの基本的な生活に対するものをいう。)

* PS7では自分自身の生活がなんとか維持できている状態です。調子が良いと感じる日であっても、簡単な家事でもすると悪化してしまうことがあります。調子が悪ければトイレに行くことすらつらさを感じてしまいます。少しでも力を入れて何かをすることで悪化してしまいます。

 

8:身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、 日中の50%以上は就床している。(外出は困難で、自宅にて生活をしている状態。日中の50%以上は就床していることが重要。)

* PS8ではトイレに行くことはできますがそれ以外の動作は難しくなってきます。食事する時でも、箸や自分の腕が重く感じてつらさを感じます。ペットボトルの蓋をあけることは困難です。入浴は介助がないと難しくなります。寝ていることが多いので、関節の拘縮予防のリハビリが必要になります。

 

9:身の回りのことはできず、常に介助がいり、 終日就床を必要としている。

* PS9ではトイレに行くことも困難な状態となります。体を動かすことが困難な状況ですので、PS8と同様に関節拘縮を予防するためのリハビリが必須ですが、他動運動であっても疲労を感じることがあるので注意が必要です。食事の通常の食事は噛むことすらつらい状況もしばしばで、流動食が精一杯ということもあります。積極的な医療の介入が必要です。


PSのレベルごとにどの程度の運動強度が大丈夫かを確かめながら、問題が起こらない安全な活動量で生活して回復を図ることが重要です。

少しずつ手立ては増えていますが治療法は未だ見つかっていません。

 

漢方と鍼灸の併用

決め手になる治療法がない中であっても、漢方と鍼灸の併用は効果的なことも多く、病院から漢方や鍼灸を試してみたらとすすめられてくるケースもありますが、一人ひとり症状は多彩なため対応は異なります。

症状としては、倦怠感を中心として、メンタル不調、ブレインフォグも多く、そのほか体の痛み、頭痛、不眠、動悸、食欲不振、味覚・嗅覚異常、咳、脱毛など様々です。

漢方で内側からアプローチし、鍼灸で外側からアプローチすることで様々な症状に対応できる様になりますが、どの様な症状に対してもできるだけ早い段階で対処する必要があります。

コロナの後遺症(Long COVID)では、身体的な問題だけではなく、社会的な問題(孤立など)、経済的な問題(離職など)、生活での問題(食事や運動など)も生じます。

そしてこれらの状況はさらに症状にもまた影響を与えます。

「後遺症」としてだけでなく、全人的かつ多臓器にわたる配慮をした対応が必要で、治療に迷い、様々な科や治療院を受診したり、次々と病院、治療院を渡り歩くことがない様にしなければいけません。

コロナの後遺症(Long COVID)のような多彩な症状には早期からの総合的な対応が必要です。もし感染時からコロナの後遺症(Long COVID)で取り上げられている症状があり、感染から回復した後も症状が継続している場合は、日常生活での注意点も含めできるだけ早く回復のためのケアを始める必要があります。

体への負担をできるだけ軽減しつつ、早期からの漢方と鍼灸の併用によるケアを、PSレベルに合わせて行うことで回復の手助けになります。

コロナの後遺症(Long COVID)だけでなく、ワクチン接種後の体調不良に対しても、コロナの後遺症(Long COVID)と同様の対応で回復できることも多いので、我慢したり、様子を見たりせずにすみやかに対応するようにしましょう。

 

ご相談に来られる方の中には、症状が良くならないつらさや不安から「検索」のために1日に何時間も使ってしまい、良さそうな方法を見つけては試してを繰り返したり、幾つもの科や後遺症外来を掛け持ちしたり、漢方も何種類も飲みきれないほど処方されているケースが非常に多いです。

少しずつわかってきていることもありますが、全容の解明にはまだまだ時間がかかりそうです。現在はできることを一人ひとりの状態に合わせて続けることが回復への近道です。丁寧に対応してくれるところを信じてじっくりと取り組むようにして下さい。

 

 

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