📺 画面の向こうで起きている「違和感」の正体
SNSを見ていると、日常ではあまり出会わないような強い意見や、どこか極端に感じる投稿が続けて流れてくることがあります。
現実のまわりで人と話しているときの落ち着いた感覚と比べると、画面の中だけ少し温度が違うように思える場面もあります。
この「なんだかいつもと違う」という小さな違和感は、実は私たちの心理の働きと、SNSそのものの仕組みが重なって生まれるものだと、この研究は伝えています。
少数の目立つ投稿が広がりやすいこと、強い表現ほど反応を集めやすいこと、アルゴリズムがその流れをさらに後押しすること──複数の要因が積み重なることで、私たちの目に触れる情報は現実よりも偏って見えることがあります。
中医学でも、外から受ける刺激が偏ると「心神」が揺れやすくなるとされており、情報の偏りが心のバランスに影響するという点では、どこか共通する視点があります。
ここから先では、なぜその「小さな違和感」が生まれるのか。数字と具体的な例をもとに、その正体を少しずつ紐解いていきます。
🪞 SNSはなぜ「ゆがんだ鏡」になるのか?
研究では、SNSが現実そのものではなく、私たちの「当たり前」をゆがめて映し出す鏡のように働くと説明されています。
現実の社会では、穏やかな意見や普通の感覚を持つ人が大多数を占めていますが、SNSではその中心にいる人々の声がほとんど見えません。実際に投稿しているのは、全体の中でもごく一部の人に偏っていることが多く、しかもその人たちは強い意見やはっきりした主張を発信する傾向があります。
さらに、SNSの設計そのものが、人の注意を引きつける投稿を優先的に広げる仕組みになっています。
驚きを誘う内容や怒りを引き起こす言葉は、どうしても反応が集まりやすく、その反応がまた拡散を後押しします。
この流れが積み重なることで、静かな声や中間的な意見は届きにくくなり、極端な内容ばかりが強調されて目に入りやすくなります。
このように、現実にはそこまで多くないはずの強い意見が、SNSの中ではまるで主流のように見えることがあります。私たちが画面の向こうで感じる「違和感」の源には、こうした仕組みが関わっています。
📊 実際にはどれくらい「偏って」見えているのか?
SNSが「ゆがん」で見える理由を、研究は具体的な数字で示しています。
まず、オンライン上で強い意見が目立つ背景には、誰がどれだけ投稿しているのかという大きな偏りがあります。
たとえば、全体の中でごく一部にあたる「3%のアクティブなアカウント」が、「投稿全体の33%を発信している」と報告されています。つまり、ほんの一握りの人の声が、SNS全体の空気感を大きく作ってしまっている状況です。
さらに、対立が生まれる場面にも偏りがあります。
オンラインで起こる「衝突の74%」が、わずか「1%のコミュニティから始まっている」とされ、目立つ騒動の多くが特定の小さな集団に集中していることがわかります。
そして、偽情報の広がりを調べた研究では、「0.1%のユーザー」だけで「全体の80%もの偽情報を拡散」していたという結果も示されています。
こうした数字を並べると、SNSで見えている「多数派のような声」の多くが、実はごく少数の人たちによって作られていることが浮かび上がります。
穏やかな意見や控えめな声が届きにくくなるのは、このように極端な投稿が目立つ構造が背景にあるためです。
⚠️ なぜ極端な投稿ほど強調されるのか?
SNSでは、強い言葉や刺激の大きい投稿が特に目立ちやすい特徴があります。
その理由のひとつが、「反応が集まる投稿ほど、より多くの人の画面に表示される」 という仕組みです。
怒り・驚き・敵意など、感情を大きく揺らす内容は、人の注意を引きつけやすく、コメントや共有が増えやすくなります。その結果、アルゴリズムが「多くの人が関心を示している内容」と判断し、さらに拡散しやすくなります。
研究の中には、政治的な敵対感情を含むニュースは、そうでないニュースに比べて67%多く共有されるという報告もあります。つまり、強い感情を生む投稿は、自然と人目に触れる機会が増える構造になっているのです。
また、SNSのデザイン自体が「注目を集める投稿」を促すようにつくられており、ユーザーも知らず知らずのうちに、より刺激のある表現を選びやすくなります。
さらに、SNSは日常の会話とは異なり、相手の反応が直接返ってこない環境です。そのため、普段なら言いにくいような極端な表現を投稿しやすくなる側面もあります。
こうした要素が重なることで、目立つ喧騒や極端な意見が、SNSの中心にあるかのように映りやすくなります。
⚖️ 「平均をとりたがる脳」がオンラインでゆがむ?
私たちは、多くの情報に触れるとき、一つひとつを丁寧に覚えるのではなく、全体としてどんな印象だったかを「平均して捉える」 傾向があります。
これは専門的には「ensemble encoding」と呼ばれ、膨大な情報を処理する際の負担を減らすために、脳が自然に行っている処理方法の1つです。日常生活では役に立つこの働き、SNSという環境では思わぬかたちでゆがむことがあります。
というのも、SNSではすでに偏った情報が目につきやすい構造があるため、私たちが「平均」として受け取る材料そのものが偏ってしまうのです。控えめな投稿や中間的な意見は目立ちにくく、一方で強い意見や極端な表現が何度も流れてきます。この偏った材料をもとに平均を取ると、現実よりもずっと強い意見が広がっているように感じられる状況が生まれます。
さらにSNSには、見栄えのよい部分だけを切り取る文化もあります。
インスタでは華やかな写真が並び、リンクトインでは成功した出来事ばかりが投稿されることが多く、どちらも「極端に良い部分だけ」が目立つ傾向にあります。
こうしたバランスの偏った情報を見続けると、脳が作る「平均像」も当然ながら偏り、実際よりも極端な世界が広がっているように受け取ってしまいます。
💥 特に政治の話題は「極端」になる
SNSの中でも、政治に関する話題はとくに極端な意見が目立ちやすい領域です。
研究では、政治について語っているユーザーの多くが実は少数であり、その少数が膨大な量の投稿を行っていることが示されています。
具体的には、政治に関する投稿の97%が、全体のわずか10%の最も活発なユーザーによって発信されていたという調査があります。
つまり、普段は政治に強い関心を持っていない大多数の人の声が、ほとんどSNS上には姿を見せていないということになります。
また、政治の話題に限らず、極端な意見を持つ人ほど投稿量が多く、議論に積極的に参加する傾向があります。逆に、ほどよい距離感で社会問題を考えている人や、中間的な立場の人は、そもそも投稿を控えることが多く、たとえ投稿しても批判に巻き込まれやすいため声が埋もれやすい構造があります。
このため、SNSではいつも激しい議論が起きているかのように見える状況が生まれます。
さらに、政治的な敵意や強い主張は拡散されやすく、アルゴリズムもその広がりを後押しします。
少数の極端な投稿が何度も表示されることで、あたかも社会全体が大きく分断しているように見えることがあります。
現実世界では多くの人が穏やかで中庸な考えを持っていても、SNSの中ではその「静かな多数派」がほとんど見えなくなってしまうのです。
🌿 中医学から見た「偏り」がもたらす心の揺らぎ
中医学では、外から入ってくる刺激に偏りが続くと、心の働きを支える「心神」が影響を受けると考えられています。
「心神」は、気持ちの安定や思考のまとまりを保つ役割があり、日々の刺激が強かったり大きな偏りがあると、そのバランスが乱れやすくなります。
SNSで強い表現に繰り返し触れると「気」が乱れ、心神の落ち着きが保ちにくくなります。必要以上に緊張したり、不安が強くなるのは、この「気」の乱れによる影響として理解できます。
現実のまわりが穏やかであっても、画面の向こうに極端な意見が続けて流れてくるだけで、「心」が揺れやすくなることがあります。
SNSの情報の偏りは、単なる「情報の歪み」ではなく、心のバランスに作用する刺激として働く側面があると言えます。
どんな情報を日々取り込むかという積み重ねが心神の安定に関わるという点では、中医学の考え方は、現代のSNS環境とも深くつながっています。
🌍 ゆがんだ世界に触れるとき、私たちは何を受け取っているのか
SNSには、日常とは違う速度で言葉が流れ、強い意見や刺激的な表現ほど目につきやすくなる特徴があります。
そこには私たちの心を揺らしやすい要素が重なっていて、気づかないうちに「世の中はこうなのかもしれない」と感じてしまうことがあります。
でも、それはSNS特有の見え方であって、社会のすべてを映しているわけではありません。
こうしたSNS特有の見え方を知っておくだけで、画面の向こうの強い言葉を必要以上に重く受け取らずにすみますし、自分の感覚が揺れたときに「これはSNS特有の見え方かもしれない」と気づく手がかりにもなります。
中医学では、日々取り込む刺激が心の状態に影響すると考えます。SNSでの偏った情報に触れたときに心がざわつきやすいのも、こうした考え方と通じるところがあります。
だからこそ、どんな情報にどれだけ触れるかも、心を整えるうえで大切な選択になります。
「現実」では、穏やかで静かな多数派が存在し、その声はSNSにはあまり多く映りませんが、その存在を忘れないことが、心を守る助けになります。
SNSが映す「ゆがんだ鏡」を知ることは、世界を疑うためではなく、自分の感覚を守るための手がかりになります。
画面に映る強い言葉の奥で、現実の社会はもっとゆるやかに広がっている──その事実を思い出せるだけで、心は穏やかさを取り戻していけるのだと思います。
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