こんにちは、相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。
不育症については近年、不育症に対する意識が高まり、検査や治療に対してものすごい勢いで進歩していますが、まだまだこれからの発展が期待される部分も多くあります。
現時点での不育症と検査、その治療法についてまとめてみたいと思います。
不育症の概念
「不育症管理に関する提言2021」によれば不育症は「2 回以上の流死産の既往がある場合」としています。
この場合、異所性妊娠や絨毛性疾患(全胞状奇胎、部分胞状奇胎)は流産回数に含めず、生化学的妊娠も流産回数にはカウントしません。
また、すでに生児がいる場合でも、2回以上の流死産の既往があれば不育症に含めています。
なお、この場合の流死産は連続していることは必要とせず、臨床的な流死産歴が2回未満でも次回妊娠における流死産のリスクが高く、原因を調べる必要がある場合も「不育症」の概念に含めるとしています。
日本産科婦人科学会は、不育症を「生殖年齢の男女が妊娠を希望し,妊娠は成立するが流産や死産を繰り返して生児が得られない状態」(産科婦人科用語集・用語解説集 第 4版 日本産科婦人科学会編)と定義しています。
生化学的妊娠(いわゆる化学流産)を流産回数に算定するかどうかについては議論されているところですが、欧州生殖医学会(ESHRE)は、生化学的妊娠は臨床的妊娠の流産と同様に回数が増えるほど生児獲得率が低下するという報告に基づき、不育症の定義(2回以上の妊娠の失敗)に該当するとしています。
日本においては、生化学的妊娠は「血清または尿中にβ-hCGが検出され生化学的には妊娠と判定されるものの、超音波断層法などにより着床部位の確認ができない状態から月経様の出血が起こり、妊娠が自然に終結(流産)する場合を指す。 生化学的妊娠は習慣流産や不育症を診断するうえでの根拠とはしない。」と定義していることから、生化学的妊娠は流産回数には数えないことになっています。
日本では生化学的妊娠は流産回数にカウントされないため、反復する生化学的妊娠の病的意義についての研究は進んでいなかったことも問題視されています。
「不育症管理に関する提言2021」においては生化学的妊娠に対する研究の発展を促す目的で、「生化学的妊娠は不育症診断における既往流産回数には数えないが、諸報告の際に臨床的流産回数と別に生化学的妊娠◯◯回と付記する。生化学的妊娠を3回以上反復する場合を反復生化学的妊娠として不育症に準じた原因検索を行う。」と提案しています。
流産の連続性については、日本では「原因の有無にかかわらず流産の連続が 2 回の場合を反復流産、3 回以上の場合を習慣流産と呼ぶ」として「連続性」に言及していますが、一方、米国生殖医学会(ASRM)や欧州生殖医学会(ESHRE)は、連続性を不育症の条件とはしていません。
これは夫婦染色体構造異常に起因する不育症では、出産を交えて流産が不連続に起こることはしばしば起こりうるため、生児がいても、また流産が不連続に起こっていても夫婦染色体検査を行う意義はあるため、不育症の概念に含めています。
これまで日本では不育症に対しての認識が高くなく、妊活・不妊治療がうまく進まない場合に問題になることも少なくありませんでした。
不育症の患者数の正確なデータはありませんが、少なくとも30〜50万人程度と推定されています。
不育症の検査について
不育症の検査については
・推奨検査:臨床的エビデンスが十分にあり、推奨される検査。
・選択的検査:対象疾患が不育症のリスク因子である可能性はあるが、エビデンスが不十分なもの。推奨検査に準ずる、またはある条件下では検査が推奨されるもの。
・研究的検査:不育症との関連が示唆されているが、エビデンスはさらに不十分で現在 研究段階にある検査。
・非推奨検査:不育症の検査としては推奨されない検査。
に分けられます。
推奨検査
1 子宮形態検査(超音波、子宮卵管造影など)
2 抗リン脂質抗体(抗β2GPI抗体、β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピンIgG/IgM抗体、ループスアンチコアグラント)
3 夫婦染色体検査(染色体G分染法)
4 内分泌検査(甲状腺:TSH、fT4)
5 流死産胎児絨毛染色体検査(G 分染法)
選択的検査
1 子宮形態検査(MRI、子宮鏡検査)
2 血栓性素因関連検査(プロテインS、第XII因子、プロテインC、アンチトロンビン)
3 抗リン脂質抗体(抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体IgG/IgM、フォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン(PS/PT)抗体)
4 自己抗体(抗TPO抗体、抗核抗体)
研究的検査
1 抗リン脂質抗体(ネオセルフ抗体:抗β2GPI/HLA-DR抗体)
2 免疫学的検査(末梢血:NK活性、NK細胞率、制御性T細胞率、子宮内膜:CD56brightNK細胞率、KIR陽性率、制御性T細胞)
非推奨検査
1 免疫学的検査(夫婦HLA、混合リンパ球反応、ブロッキング抗体検査、抗HLA抗体、サイトカイン定量、Th1/Th2)
2 内分泌検査(LH、P4値、アンドロゲン、プロラクチン、AMH、インスリン)
不育症のリスク因子毎の治療について
1 中隔子宮では子宮鏡下中隔切除術(TCR)を選択肢として推奨するが、メリットとデメリットがあるため、慎重に実施する必要があるとしています。また双角子宮など中隔子宮以外の先天性子宮形態異常に対する外科的介入は推奨しないとしています。
2 抗リン脂質抗体症候群(APS)では低用量アスピリン(81mg〜100mg)+ヘパリンカルシウム(5000 IU×2/朝・夕皮下注)併用療法を行い、低容量アスピリンは妊娠前からの投与が推奨され、ヘパリンは妊娠判定後すぐに開始します。日本ではアスピリンの投与は妊娠27 週末までとされていますが、欧米では妊娠後期にも継続投与することが一般的であるため、必要時は患者の同意を得て継続し、妊娠 36 週前後を終了の目安とします。
3 夫婦染色体構造異常では、十分な遺伝カウンセリングを行い、染色体構造異常が見つかった場合は着床前診断(着床前胚染色体構造検査:PGT-SR)を選択肢の一つとして提案し、希望があれば臨床研究として着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)にも組み込まれていることを情報提供することとしています。
4 甲状腺機能異常では、不育症を呈する甲状腺機能亢進症、顕性甲状腺機能低下症は、甲状腺専門医のもとで適切な治療・管理を行なうとしています。
5 夫婦染色体構造異常がない原因不明不育症に対して、臨床研究として着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)が行われていることを情報提供するとしています。
6 プロテインS欠乏不育症では、流死産予防と母体血栓予防の観点から治療の選択肢の1つとして抗血栓療法を提示するとしています。
7 第 XII 因子欠乏症では、低用量アスピリン療法が流産予防に有効であるとの臨床的エビデンスには乏しいものの、多くの知見が有効性を示唆していることから、治療法の選択肢のひとつとして提示するとしています。
8 リスク因子が特定できない場合は、流産を生じやすい特別な原因が存在していて、それが検査で確認できないということではなく、胎児染色体異常の繰り返しである可能性があり、その後の妊娠では テンダー・ラビング・ケア 等の精神支援を行なった上で投薬治療なしでも妊娠継続できる可能性が高いことを説明するとしています。
9 難治症例については以下のように説明しています。
・低用量アスピリン、ヘパリン療法が有効であるエビデンスはない。
・夫リンパ球免疫、副腎皮質ステロイドは、有効性はなく副作用が多いため推奨しない。
・ピシバニールは、有効性に関するエビデンスはない。
・タクロリムスは、有効性に関するエビデンスは無く、かつ副作用の危険性があるので推奨しない。
・免疫グロブリン療法は有効性に関する結論は出ていない。
10 反復生化学的妊娠については、十分なインフォームドコンセントのもと不育症検査に準じた研究的な検査を行うことを考慮してもよいとしています。
11 着床不全については、反復着床不全と不育症とは病態が異なるため、反復着床不全に不育症に準じた検査は行 なわないとしています。
12 治療を行っても再度流死産となった場合については、胎児側に原因はなく、実施した治療の効果は十分であったが流死産となった場合、妊娠継続への有効性が報告されているものの、エビデンスが十分ではない治療の実施を検討するとしてます。また、不育症女性やそのパートナーの生活習慣の見直しやテンダー・ラビング・ケア や支持的ケアなどを行うとしています。
以上が不育症についての大まかな対策ですが、変わっていく可能性も大きいです。
不育症の領域はとても複雑であり、不育症専門医の診察が必要なことも多いです。疑われる場合は、診察をしっかりを受ける必要があります。
また不育症では、メンタルケアや体調管理も同様に重要です。これらのケアに漢方なども上手に取り入れてほしいと思います。
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