嗅覚障害と新型コロナウイルス感染症

こんにちは、相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。

 

少し前からコロナ関連の問い合わせて急激に増えています。

 

デルタ株の流行時に問題になった後遺症の1つに「嗅覚障害」があります。

しかし、臨床像や発症機序、治療法について十分に解明されていないのが現状です。


嗅覚障害は感染初期の重要なサインで、20~40歳代の女性に多く、地域としては、アジア圏に比べ欧米で高いと言われています。現在の流行株であるオミクロン株の流行期なってからは全体的に低下傾向にあります。

 

嗅覚障害の、変異株毎の頻度を比較した内容についての報告を見てみると、

最初の株の流行期 52.6%
ガンマ株流行期 27.5%
デルタ株流行期 42.1%
オミクロン株流行期 5.8%

と確かにオミクロン株では極端に低くなっています。

 

十分に解明されていない嗅覚障害ですが、もちろんわかっていることもあります。

感染により嗅覚障害が発症する機序や発症部位についてですが、新型コロナウイルスが侵入する際には、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)やニューロピリン1(NRP1)などが発現していることが重要と考えられています。

ACE2やNRP1は、嗅粘膜に含まれる嗅神経細胞をはじめとした種々の細胞に広範に発現しているため、嗅覚障害は感染により嗅粘膜の血管内皮細胞や嗅神経自体を傷害されたことにより起こっていると考えられます。

そして、時にその感染は嗅神経上皮から上行性に脳や延髄にまで及ぶことも示されています。

 

新型コロナウイルス感染症による嗅覚障害は、自然治癒することも多いのですが、約5〜20%では半年以上続くことも報告されています。

オミクロン株の流行期では嗅覚障害の発症率は低くなっているものの、感染が拡大すれば後遺症としての嗅覚障害も増えてくると考えられます。

確立された治療はないものの、感染による炎症を抑えたり、線毛機能の改善薬の使用だったり、ステロイド点鼻薬と合わせて嗅覚刺激療法が試されています。

 

また、漢方での治療も試みられています。

漢方では感冒後嗅覚障害に有効である「当帰芍薬散」が嗅神経、嗅細胞の再生増強の目的で用いられています。感冒後嗅覚障害は感冒後も嗅覚障害が持続する症状で、これは嗅細胞の変性、脱落によるものと推測されています。

感冒後嗅覚障害は女性3:男性1の割合で見られ、40歳代以上の女性に多く、60歳代でピークが見られます。症状は自然回復する例もありますが、数ヶ月持続することもあります。

感冒後嗅覚障害の治療で用いられる「当帰芍薬散」は、後方視的研究ではあるものの、ステロイド点鼻に比べて高い改善率を示したとする報告があります。

これらのことから、新型コロナウイルス感染症においても「当帰芍薬散」が用いられるケースが多いようです。

目的としては、傷ついた細胞を回復させることですので、当帰芍薬散以外でも応用ができる処方はいろいろあります。当帰芍薬散にこだわらず、状態・症状に合わせて選ぶことで回復に役立つ可能性があります。

 

このほかの治療法としては「嗅覚刺激療法」が用いられることがあります。嗅覚刺激療法はドイツで開発された治療法で嗅覚回復の手助けになっています。

具体的には、朝食前と就寝前に、合成のレモン、ユーカリ、バラ、丁子の匂いを10秒嗅いで10秒休息するという治療法です。嗅覚刺激療法を行うことで自然治癒率と比較して有効であったとする報告があり、また12週ごとににおいの種類を変えトレーニングすることで、より改善が見られたとしています。

 

嗅覚は、直接「生命」に関わる機能ではありませんが、 臭いで腐った食べ物を区別したり、危険なガスの気づいたり重要な働きをするととともに、 人として生きていくうえでの生活の質を向上に密接に関係し、日々の生活をより豊かなものにしてくれる重要な感覚です。

自然治癒することも多い嗅覚障害ですが、「においが判らなくなった」「においの感じ方が今までと変わった」と感じた場合は、早めに対応するようにしましょう。

 

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