こんにちは、相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。
認知症とは
「生後、一度正常に発達した認知機能が、慢性的に減退・消失し、日常生活・社会生活に支障をきたすようになった状態で、意識障害がないもの。」
のことをいいます。
しかし、近年では、上記のような状態は、進行した場合の認知症であり、早期診断ができるようになってきている現在では、上記のような定義に従って治療しようとすると早期治療には繋がらないという意見もあります。
認知症で見られる「記憶障害」と加齢による「物忘れ」がよく混同されますが、これらの違いを端的に言うろ
「旅行に行った」という経験の後
・物忘れ → どこへ行ったか曖昧、忘れる、思い出せない(旅行という「体験」の記憶はある)
・認知症 → 旅行に行ったこと自体を思い出せない(旅行という「体験」そのものを忘れる)
という違いがあります。
認知症の症状には
・中核症状
・BPSD
があります。
中核症状は認知症による脳の細胞が担っていた役割が失われる症状のことを言います。
具体例としては以下のようなものがあります。
記憶障害(物忘れではなく、体験自体を覚えられない)
・財布を机の上に置いたが、そのこと自体を忘れ、財布を盗まれたと勘違いする
・食事をしたが、そのこと自体を忘れ、食べさせてもらえないと勘違いする
・仕事を退職したのに、朝着替えて出勤しようとする
・何度も同じ話を繰り返す
・約束を忘れる
・何を買いにきたかを忘れる
判断力の低下
・いつも着るものにこだわっていたが、突然チグハグな格好をする
・お店でお金を払わずに買い物をしようとする
・言われたことをすぐに理解できなくなる
・信号を渡るタイミングがわからなくなる
・勧められるがままに高価なものを買ってしまう
・駅の改札をどう通ればいいか分からない
・「寒いから気を付けて」と言われても、どうしたらいいか分からない
実行機能障害(段取りや計画が立てられない)
・予定外のできごとがあるとどうして良いかわからななくなる
・買い物に時間がかかったり、買おうと思ったものが売っていないとき、ほかのもので代用することや、ほかの店に行くという選択ができない
・料理ができない(手順がわからなくなる)
・今まで使っていた家電の使い方がわからなくなる
見当識障害(いつなのか、どこなのかがわからない)
・出かけても自分の家に戻ってこられない
・自分の家かどうかわからなくなり出て行こうとする
・夏なのに暖房をつけたり厚着したりする
・冬なのに半袖で外に出ようとする
・夜なのに朝だと思い、新聞を取りに行く
・家の中の場所がわからなくなり、トイレ・風呂場に行けない
・家族は認識できても、家族以外の親戚や友人と自分との関係性がわからない
・年齢がわからない
・遅刻が多くなる
・ゴミ出しの曜日がわからなくなる
・約束の日を守れなくなる(病院の受診など)
失行(服の着方がわからない、道具の使い方がわからないなど)
・服をきちんと着ることができない
・箸やハサミの使い方がわからない
・鍵穴に鍵が入れられない、鍵ではないもので鍵を開けようとする
・じゃんけんができない
・サヨナラと手を振ることができない
・簡単なパズルができない
・図形を模写できない
失認
・遠近感がなくなる
・食事で片側のものを残す
・ゴミ箱をトイレと間違える
・触られていることはわかるが、部位がわからない
・目に見えているものが何かわからななくなる
失語
・話しているが、その内容に意味がない
・相手が話していても理解できない
・相手の話は理解できても話せない
・話せる言葉が少なくなり、言葉の長さも短い
・読めても言語を理解できない
・言葉は理解できても復唱できない
・「これ」「それ」「あれ」などが多くなったり、相手の話すことをオウム返しするようになる
次にBPSDについてです。
BPSDは「行動・心理症状」 といいます。
以前は「周辺症状」と言われていましたが、BPSDは本人や家族の負担が非常に大きく認知症の「周辺」でみられる症状ではなく、表現として適当ではないと考えられるようになったため、現在は「周辺症状」とは言わずに、「BPSD」や「行動・心理症状」と表現します。
これらは中核症状によって引き起こされる二次的な症状ですが、周囲の環境や対応、本人の性格、心理状態などが相互に影響するため個人差があります。
中核症状とBPSDの違いは、
日常生活で、今までできたこと、言葉にできたことが思うようにできなくなってきた。約束をしても約束したこと自体を忘れたり、今まで使っていた家電製品の使い方がわからなくなったり、何に使うのかも思い出せなかったり、ごくごく簡単なお釣りの計算もできなくなった。
これは「中核症状」です。
その方はできない自分を責めて落ち込むことが増えたり、周囲にあたりちらしたりすることが増えた。
これは「BPSD(行動・心理症状)」です。
認知症ではまず「中核症状」があり、それに加えてその人の性格や、その人を取り巻く環境に起因する「BPSD(行動・心理症状)」があります。
BPSD(行動・心理症状)には必ず「中核症状と本人が持ち合わせた性格や環境に起因する理由」があり、その理由を理解し適切な対応をとることで本人が穏やかに生活する事が可能となります。逆に理解されない事で行動・心理症状がより悪化し介護が困難となるケースもあります。
トイレで失敗した時
● 「下着の交換しましょう」
◎ 「まだ綺麗だから大丈夫」
●「匂いがするので汚れていると思いますよ。汚いので着替えましょう!」
◎「大丈夫だって言ってるだろ!!!」
↓
自分でもわかっているが、どうしたら良いか分からずにいます。そこで指摘をすると、恥をかかされたと感じて余計かたくなになり、コミュニケーションがうまくいかなくなります。
脳の機能低下 → 中核障害・BPSD → 間違った対応 → 不快刺激 → 脳の機能低下 → 悪循環
というサイクルで PBSD が悪化してしまいます。
この場合の解決法としては、相手を嫌な気持ちにさせる言葉や、マイナスの言葉は使わないようにして、例えば何かの行動を組み合わせ、プラスの言葉を使いながら行動を促すようにします。
例えば、「これから散歩に行きますから、先にトイレに行っておくとスッキリして散歩も楽しいですよ。ついでにお着替えが必要なら置いておきます。」とマイナスの言葉を使わずに、誘導したりするとうまくいくことがあります。
脳の機能低下 → 中核障害・BPSD → 適切な対応 → 快刺激 → 脳の活性化 → 好循環
とういうサイクルを作っていくことで BPSD が軽減し脳が活性化され、好循環が形成されやすくなります。
認知症では、記憶がすっぽり抜け落ちます。「ところどころ」ではなく、「すっぽり」です。「経験」がなくなるので、全く記憶にないことが周囲にたくさん存在するわけですがそんな環境ではとても不安になりますし、もしもともと心配性などの性格があればより不安は大きいものになります。
そして、不安や混乱が続くと、BPSD(行動・心理症状)が見られるようになるわけです。
近年、BPSD に漢方が有効であるとの報告がなされるようになってきました。服用することで、介護・看護もしやすくなるようです。
認知症で使用される漢方について
よく使用される漢方についていくつか紹介します。
BPSD によく使われる漢方薬に「抑肝散」、「抑肝散加陳皮半夏」という処方があります。
これらの処方は、神経が高ぶり、必要以上に怒ってしまい、感情をコントロールできなくなってしまうというような時に使用する処方ですが、このような状態は「肝」の高ぶりがあるときにみられると中医学では考えます。
「抑肝散」や「抑肝散加陳皮半夏」は「肝」の高ぶりを抑えながら「気」と「血」を補い自律神経を安定させる働きがある処方です。
胃腸が弱い方には、抑肝散より抑肝散加陳皮半夏が使われますが、抑肝散加陳皮半夏は抑肝散に胃腸を整える生薬である「半夏」「陳皮」を加えた処方になります。
中医学では脾胃(消化器系)は湿気を嫌うと考えていますので、湿度が高い土地で生活する日本人にはよく適応する処方です。
普段おとなしい方が、なかなか思うように行動したり話したりできずに、突発的にイライラして怒りっぽくなり、周囲に当たってしまうというような症状を和らげます。
上記の2種類の処方以外に「柴胡加竜骨牡蠣湯」という処方が使われることもあります。
こちらもイライラなどに使われますが、常に交感神経が興奮していて、イライラとともに、緊張して体がかたくなり、肩こり、動機、不眠、歯の食いしばりなどがあり、のぼせ・手足の冷えなどがあれば、効果的に働くことが多いです。
このほか、より不安感が強い場合には、帰脾湯や加味帰脾湯、恐怖感を伴う場合は、桂枝加竜骨牡蠣湯、脳血管性認知症の場合は血府逐瘀湯や釣藤散などが効果的です。
黄連解毒湯は高血圧気味で、不穏、興奮、焦燥など陽性の症状が強く出ている時に組み合わせるとよく、婦人科系でよく使用される当帰芍薬散は血流改善や抗アポトーシス作用なども報告されているため使用されることもあります。不眠やせん妄がある場合は、酸棗仁湯がよいとの報告もあります。
呼吸器系に慢性疾患を抱えていたり、食欲不振があり虚弱傾向にある場合は人参養栄湯もよく使われ、体力が消耗している場合には良い適応になります。
認知症での漢方は、主に BPSD 軽減で使用されることが多いのですが、これらの処方はあくまでも代表的な処方で、一人ひとりの症状、体質、体調は異なるため、状況に合わせた処方の選択が必要です。
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