休んでも回復しない疲労。
慢性疲労症候群(
ME/CFS
)の正しい理解と、できることから始めるアプローチ
慢性疲労症候群(ME/CFS)は、強い疲労感・労作後倦怠感・ブレインフォグが6か月以上続く、免疫・神経・内分泌の多系統が関与する疾患です。
「気のせい」「精神的なもの」として見過ごされやすいこの疾患ですが、近年の研究では免疫異常・エネルギー産生障害・自律神経の乱れといった客観的な異常が次々と明らかになっています。
タナココでは、西洋医学の研究知見と漢方・鍼灸を組み合わせた多角的なアプローチで、一人ひとりの回復をサポートします。
最終更新日:2026年5月20日
「何度検査を受けても異常なし、と言われる」「少し動いただけで翌日動けなくなる」「病院をいくつ回っても、原因がわからないまま」—— そのつらさは、決して気のせいではありません。 ME/CFSは、今まさに世界規模で研究が進んでいる身体疾患です。「どこへ行けばいいかわからない」「どうしたら良いか相談したい」という状況でも結構です。どうぞ気軽にご相談ください。
慢性疲労症候群(ME/CFS)について
慢性疲労症候群とはどんな病気?
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(Myalgic Encephalomyelitis / Chronic Fatigue Syndrome:ME/CFS)は、免疫系・神経系・内分泌系の複数が同時に関与する多系統の疾患です。WHOの国際疾病分類では、ICD-10(コード G93.3)・ICD-11(コード 8E49)いずれにおいても 神経疾患 に分類されており、精神疾患ではありません。
「疲れ」という言葉がつくために、日常的な疲労感と混同されがちです。しかし、通常の疲れと決定的に違うのは 「十分に休んでも回復しない」 という点と、 「少し動いただけで翌日以降に症状が悪化する」 という点。これは単なる体力不足や根性の問題ではなく、体の中のエネルギー産生・免疫・自律神経のシステム自体に異常が生じている状態です。
近年は「検査では異常なし」と言われても、実際には免疫異常やエネルギー産生障害が起きていることが研究で示されており、「気のせい」「心の問題」として片付けることのできない身体疾患という認識が国際的に定着してきています。
日本における推定患者数は 数十万人規模 (厚生労働省研究班の調査では人口の0.1〜0.3%、約10万〜30万人以上という推計があります)。発症は20〜50代に多く、男性に比べて女性に多い傾向があります(約3〜4倍)。COVID-19パンデミック以降、感染後に同様の症状が持続する「長期後遺症(Long COVID)」との関連が注目され、世界規模での研究が急速に進んでいます。
ME/CFSは、一般的な血液検査・画像検査では捉えにくい種類の異常が多いことが特徴です。「怠けている」「うつ病と区別がつかない」という誤解から、診断や適切なケアにたどり着くまでに長い時間を要するケースが多く存在します。タナココでの相談では、「どこへ行っても原因がわからなかった」「相談できる窓口がなかった」という内容のお話をよくお聞きします。。
診断基準と主な症状
1)国際的な診断基準(2015年)
現在、国際的に広く参照されているのは、2015年に米国医学研究所(IOM、現:全米アカデミーズ)が発表した診断基準です。以下の 3つの中核症状すべて と、追加症状のいずれか1つを、 6か月以上 満たすことが求められます。
- ①休息では回復しない疲労(6か月以上): 発症前と比べて活動レベルが著しく低下。「寝ても治らない」「何か月経っても楽にならない」という状態が続く。
- ②労作後倦怠感(PEM): 少し動いた後に症状が大きく悪化し、24時間以上続く。ME/CFSをもっとも特徴づける症状。
- ③眠っても疲れが取れない睡眠: 十分な時間眠っても、翌朝すっきりしない。不眠と過眠が入り混じることもある。
-
④【追加:どちらか1つ以上】
- 認知機能の低下(ブレインフォグ): 頭に霧がかかったような感覚。思考・集中・記憶が著しく低下する。
- 起立不耐性: 立つと症状が悪化する(めまい・動悸・頭痛など)。
健康な人が「疲れたら休めばよくなる」という感覚なのに対して、PEMのある人は「昨日少し外出しただけで、今日は一日起き上がれない」という状態です。頑張れば回復するのではなく、頑張ることで大きく悪化してしまう——この逆転が、ME/CFSの管理を難しくしています。そのため治療においては、まず「ペーシング(活動と休息の丁寧な管理)」が最優先されます。
2)症状の分類
症状は多岐にわたり、日や時間帯によって波があります。「波があるから仮病では?」と思われることもありますが、これもME/CFSの特徴の一つです。
全身・身体症状
- 強い倦怠感・疲労感(回復しない)
- 微熱(37〜38℃台)、発熱感
- 筋肉痛・関節痛
- 喉の痛み、頸部リンパ節腫脹
- 体重変動
神経・認知症状
- ブレインフォグ(思考力・集中力・記憶力の低下)
- 頭痛・頭重感
- 言葉が出にくい、処理速度の低下
- 光・音・化学物質への過敏
- 過度の眠気・嗜眠
睡眠・自律神経症状
- 眠っても疲れが取れない(回復感のない睡眠)
- 不眠・過眠の混在
- 起立不耐性、体位性頻拍(POTS)
- 動悸・血圧変動
- 起床時の強い倦怠感
精神・感情症状
- 抑うつ状態・気分の落ち込み
- 不安感・焦燥感
- 活力・意欲の消失
- 易怒性(ME/CFS自体は精神疾患ではなく、二次的に生じるもの)
体の中で何が起きているのか——最新研究
ME/CFSの原因は完全には解明されていませんが、2020年代に入って研究が急速に進んでいます。COVID-19後遺症との関連が注目されたことが大きな転換点となりました。現在有力とされるメカニズムを、なるべくわかりやすく整理します。
1)免疫異常・自己抗体
ME/CFS患者では、体内の炎症を引き起こす物質(IL-6・TNF-αなどの炎症性サイトカイン)の産生に異常が多く報告されています。
また、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の研究グループは、ME/CFS患者の30%以上に 自律神経の受容体(β2アドレナリン受容体など)に対する自己抗体 が検出されることを確認しています。つまり、自分の免疫が自分の自律神経を攻撃してしまうという、自己免疫的なメカニズムが働いている可能性が示されています。さらにこの自己抗体は、脳内の神経ネットワーク異常とも関連することが証明されています。
EBウイルス・COVID-19などのウイルス感染がきっかけで免疫が過剰反応し、その後も慢性的な炎症・自己免疫反応が続く「感染後症候群」としての側面も注目されています。
2)エネルギー産生の障害
細胞の「発電所」にあたるミトコンドリアの機能低下が、多くの患者で報告されています。簡単に言うと、 体がエネルギーを十分に作り出せない状態 になっているため、少し動いただけでも燃料切れになりやすい——これがPEM(労作後倦怠感)の発生と深く関わっていると考えられています。
血液中のアセチルカルニチン(エネルギー代謝に関わる物質)の低下が疲労感・認知機能低下と関連する可能性も研究されており、一部の治療でL-カルニチン補充が試みられています。
3)腸内細菌叢の変化
NIH(米国立衛生研究所)の助成を受けたコロンビア大学などの研究グループにより、ME/CFS患者では腸内細菌のバランスに特徴的な変化が見られることが報告されています。腸の免疫バリアを守る短鎖脂肪酸(酪酸など)を作る菌が減少しており、腸・脳・免疫系を結ぶ「腸-脳-免疫軸」の乱れがME/CFSの重要な背景として研究が続いています。
4)自律神経の乱れ
多くの患者で自律神経の機能異常が確認されています。「立つと症状が悪化する(起立不耐性)」は、体位性起立性頻拍症候群(POTS)・神経介在性低血圧(NMH)の合併によるものです。自律神経の中枢的な乱れが、ME/CFSの多様な症状の共通基盤になっていると考えられています。
POISとME/CFSの関連性
POIS(Post-Orgasmic Illness Syndrome:オーガズム後疾患症候群)は、オーガズムの直後から数時間以内に、強い疲労感・ブレインフォグ・筋肉痛・インフルエンザ様症状が現れ、数日間続く疾患です。2002年にオランダの神経精神科医・性機能専門医マルセル・ヴァルディンガー博士らによって初めて正式に報告されました(J Sex Marital Ther 2002;28:251-5)。近年の研究では、POISを単なるアレルギー反応としてではなく、ME/CFSと共通する神経免疫系のエラーとして捉える視点が強まっています。
1)共通するメカニズム
両疾患には、以下のような共通した病態が複数の研究から示唆されています。
- 免疫系の慢性活性化・サイトカイン異常
- 自律神経機能不全(POTS・NMH)
- 労作後倦怠感(PEM)
- ブレインフォグ・認知機能障害
- HPA軸(視床下部–脳下垂体–副腎)の機能異常
- ミトコンドリア機能の低下・エネルギー産生障害
- 腸内細菌叢の変化
- 炎症性サイトカインの急激な放出(病気行動仮説)
- 自律神経機能の一過性の急激な乱れ
- オーガズムという「労作」後の急激な機能低下(PEM様)
- 集中力・記憶力の低下(ブレインフォグ様症状)
- 神経内分泌応答(オピオイド、プロラクチン等)の調節不全
- 中枢性過敏化(脳の過剰反応)
- 交感神経過緊張の遷延
2)神経免疫疾患スペクトラムとしての理解
Ashby & Goldmeier(2010年, Int J STD AIDS)の「スペクトラム仮説(一連の疾患として捉える考え方)」を発展させる形で、現代の研究者はPOISをME/CFSやLong Covidと並ぶ 神経免疫疾患スペクトラムの一形態 として位置づけるようになっています。
ME/CFSの重要な病態として研究されている「中枢性過敏化(脳・神経系が過剰に反応しやすくなった状態)」がPOIS患者にも関与している場合、オーガズムという強烈な自律神経刺激が引き金となって過剰な脳内炎症反応が起き、ME/CFSのPEMと構造的に同等の症状が生じる——というのが現在の有力な仮説です。
西洋医学的アプローチの現状
ME/CFSには現時点で確立した根治療法はなく、症状を緩和しながら生活の質を保つ 対症療法 が中心です。
- ペーシング: 活動量と休息を丁寧に管理し、PEMの悪化を防ぐ。ME/CFSの最も重要な自己管理法。「頑張れば回復する」という考え方を一度手放すことが出発点です。
- 薬物療法: 抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬などを症状に応じて使用。
- 起立不耐性への対応: 水分・塩分摂取の調整、弾性ストッキングなど。
- 栄養補助: CoQ10・L-カルニチン・ビタミンDの補充が一部で研究・活用されている。
- 漢方薬(エキス剤): 補中益気湯などが西洋医学の医療機関でも処方されることがある。
- 低用量ナルトレキソン(LDN): 脳内神経炎症を抑える作用に着目した研究が進んでいる。
AMED(日本医療研究開発機構)の研究班でも漢方薬・L-カルニチンなどを対象とした臨床研究が継続されており、免疫異常(B細胞・自己抗体)を標的とした治療法についても世界各地で研究が進んでいます。
ただし現状では、これらの治療で「体の仕組み全体を立て直す」ことは難しいケースが多いのが正直なところです。体のシステムそのものの「底上げ」を多角的に行う選択肢として、中医学の漢方・鍼灸が注目されています。
中医学から見たME/CFS
中医学の視点では、ME/CFSを単なる「疲れやすい体質」ではなく、 「気血を生み出し・循環させ・根本から支える各システムが複合的に機能不全に陥った状態」 と分析します。主に以下の4つの「証(体質の偏り)」が密接に絡み合っています。
生体の防御・代謝・活動を担う「気(エネルギー)」の根本的な不足。ME/CFSの慢性疲労・倦怠感・ブレインフォグのベースとなります。現代医学の「ミトコンドリア機能低下・エネルギー産生障害」と概念的に重なります。気が十分に産生されないため、少し動いただけでPEMが起こりやすくなります。消化・吸収の機能(脾)の弱りが主な原因となることが多いです。
全身の臓器・筋肉・神経・脳を潤し栄養する「血(けつ)」の不足。筋肉痛・関節痛、睡眠の質の低下、ブレインフォグ、抑うつ傾向の表れとして捉えます。気虚が長期化すると血を生み出す力も低下するため、多くの患者では気虚と血虚が同時に存在します(気血両虚)。
成長・免疫・生命活動の根本を司る「腎」のエネルギーが消耗した状態。ME/CFSが長期化・重症化するにつれ腎精(根本的な生命エネルギー)が消耗する傾向があります。慢性的な腰の重さ・冷え・著しい免疫力の低下はこの表れです。現代医学の「HPA軸(視床下部–脳下垂体–副腎)の機能異常」と概念的に重なります。
自律神経の乱れで気の巡りが滞った状態(気滞)と、それが慢性化して血流が滞る状態(瘀血)。不眠・易怒性・光や音への過敏は気滞の表れです。長引くと全身の慢性的な痛みや熱感が増します。現代医学の「交感神経過緊張」「慢性炎症」と概念的に対応しています。
実際の臨床では、これらが複雑に絡み合っているケースがほとんどです。長期罹患者では気虚・血虚・腎虚を底として、気滞・瘀血がその上に重なる「虚実混在」の複雑な状態が多く見られます。だからこそ、その人の状態が抱えている揺らぎを見極め、その人だけのアプローチを選ぶことが大切です。
タナココでのサポートについて
「症状を無理に抑え込む」のではなく、「不調を起こしにくい心身の代謝基盤を育てること」が目標です。最新医学が示す「ミトコンドリア機能のサポート」「自律神経の保護」「免疫の調整」という目的に対し、中医学の補気・補血・補腎・疎肝・活血の考え方を用いて多角的にアプローチします。
ME/CFSへの漢方治療としては、AMEDの研究班でも臨床研究が行われている 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) をはじめ、気血を補う 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) 、自律神経を整える 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう) や 四逆散(しぎゃくさん) 、消化吸収の基盤を整える 六君子湯(りっくんしとう) 、腎を補う 八味地黄丸(はちみじおうがん) なども、証に応じて選択します。
※漢方薬は証(体質・症状のパターン)によって選び方が大きく異なります。合わない漢方薬を長期服用すると体の負担になることもあるため、必ず専門家に相談のうえご使用ください。タナココの漢方相談は、中国の中医薬大学で中医学を学び、大学附属病院、中医病院での臨床研修を修了した薬剤師が担当します。エキス剤(粉薬)のほか、煎じ薬での対応も可能です。
鍼灸施術は、乱れた自律神経のバランスを整え、中医学でいう「肝の疎泄(気の流れを調整する機能)」をサポートする役割を担います。現代医学的には「交感神経の過剰な緊張を抑制し、副交感神経・迷走神経とのバランスを整える」作用があります。
脾・腎・肝の経絡を刺激することで全身の微小血流を促進し、過剰な免疫応答や慢性炎症による疲弊を体質レベルから和らげるアプローチを行います。疲労感の改善・睡眠の質の向上・炎症性サイトカインへの影響を示す研究報告もあり、補完療法として活用しやすい選択肢です。
大切なこと: ME/CFS患者は外部刺激に非常に敏感なことがあります。過剰な鍼灸刺激がかえってPEMを誘発する場合があるため、最初はごく弱い刺激から始め、お体の反応を見ながら段階的に進めます。施術前に現在の状態を丁寧にお聞きしてから対応しますので、ご安心ください。
タナココでは、現在の症状や罹患期間に加え、日々の生活習慣や西洋医学での治療内容まで丁寧にお伺いします。「まだ診断がついていない段階」「治療と並行して別の視点も取り入れたい」「自分の状態をもう少し立体的に把握したい」——そのようなご相談にも対応しています。薬剤師・鍼灸師の資格を持つ専門家が、西洋医学と中医学の双方の視点から状況を整理し、適切な選択肢をご提案します。
よくある質問(FAQ)
ME/CFSは「精神的なもの」「怠けている」ではないのですか?
ME/CFSと診断されていなくても相談できますか?
漢方・鍼灸でME/CFSは改善しますか?
病院の治療と並行して利用できますか?
POISの症状も合わせて相談できますか?
外出が難しいほど体調が悪い場合でも相談できますか?
「どこへ行けばいいかわからない」「なかなか体調がよくならない」 ──そんな時は、一度タナココにご相談ください。
ME/CFSは「検査では異常なし」と言われ続け、たどり着く場所がなかなか見つからないという方が多い疾患です。「病名がついていない」「診断されていても改善の糸口が見えない」——そうした段階からでも、ご相談いただけます。
タナココでは薬剤師・鍼灸師の国家資格を持つ専門家が、西洋医学の知見と中医学の視点の両方から状態を整理し、お一人おひとりにあった進め方を一緒に考えていきます。「まずは話を聞いてみたい」──そのくらいのお気持ちでも大丈夫です。お気軽にどうぞ。LINEのチャットでのご相談から始めていただくことも可能です。
参考文献
- National Academy of Medicine(旧IOM), Beyond Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome, 2015
- World Health Organization, ICD-10 G93.3 / ICD-11 8E49(神経疾患分類)
- 大塚文男ら(岡山大学), コロナ後遺症とME/CFS関連研究, PLOS ONE, 2024年12月
- 国立精神・神経医療研究センター(NCNP), ME/CFS免疫・自律神経研究(自律神経受容体抗体・脳内ネットワーク異常、2020年;B細胞標的治験、2024年)
- Columbia University / NIH, 腸内細菌叢とME/CFSの研究(NIH助成)
- AMED 障害者対策総合研究事業 ME/CFS研究班
- 盛克己・宮崎瑞明, 漢方の臨床, 2008
- Ashby B & Goldmeier D, Postorgasm illness syndrome - a spectrum of illnesses, Int J STD AIDS, 2010
- Waldinger MD & Schweitzer DH, Postorgasmic illness syndrome: two cases, J Sex Marital Ther, 2002;28:251-5
- Waldinger MD et al., Postorgasmic illness syndrome (POIS) in 45 Dutch Caucasian males, J Sex Med, 2011;8(4):1164-70
