😢 「涙」のもう一つの顔
人が涙を流すとき、それは感情の表現であり、周囲に「今の心の状態」を伝えるサインです。
ところが近年その「涙」が、「視覚」としての情報にとどまらず、「嗅覚」を介した刺激としても、私たちの行動に影響している可能性が示され始めています。しかも、その影響は感情の理解といった穏やかな範囲にとどまらず、人の反応の強さや方向性にまで及ぶ可能性があるようです。
今回取り上げる研究は、ヒト女性の「感情的な涙」に含まれる、ごくわずかな化学成分に注目しています。
「香り」としてはほとんど感じられないにもかかわらず、嗅覚を通じて身体が反応していることが、行動実験と脳の画像解析の両面から検討されています。
中医学では、感情の動きは身体の働きと結びついていると考えられてきました。その中で「肝」は、気持ちの緊張や高ぶりと関係する臓腑とされ、「涙」はその状態と結びついて現れる体液の一つ。感情の変化に伴って流れる「涙」が、身体の内側の変化を反映しているという捉え方は、今回の研究が示す「涙が人の反応に影響しうる」という現代的な視点とも重なります。
では、その科学的な検証の中身を見ていきましょう。
💧 なぜ「涙」を調べたのか
動物の世界では、涙に含まれる成分が行動に影響を与えることが、すでに数多く報告されています。
例えばげっ歯類では、涙に含まれる特定の化学物質が、攻撃行動を抑えたり、繁殖行動を変化させたりすることが知られています。涙は単なる分泌物ではなく、「社会的な化学シグナル」として機能している、という考え方です。
一方、人間についてはどうでしょうか。
これまでの研究はで、ヒト女性の感情的な涙を嗅ぐと、男性のテストステロン値が低下することは報告されていました。ただし、その変化が実際の行動にどう結びつくのかについては、はっきりした答えがありませんでした。ホルモンが変わっても、行動が変わるとは限らないからです。
そこで研究では、「涙に含まれる化学シグナルは、人の行動そのものに影響を及ぼすのか」という点を検証することを目的としました。
主観的な感情評価だけでなく、実際の行動指標と脳の反応を組み合わせて調べている点が、この研究の大きな特徴です。
🧪 実験の方法は?
この研究では、同じ男性参加者が、別の日に「涙」と「対照液」の両方を経験し、そのときの行動を比べています。
他人同士を比べるのではなく、同じ人の変化を見ることで、人ごとの差の影響をできるだけ抑えています。
使用された涙は、22〜25歳の女性6名が、悲しい映像を見て流した「感情的な涙」です。対照液としては、同じ女性の頬に生理食塩水を垂らし、涙と同じ方法で回収した液体が用いられました。参加者にも実験者にも、どちらを使っているかは知らされていません。
まず参加者は瓶から刺激を嗅ぎ、その後、少量を含ませたパッドを鼻の下に貼った状態で実験に臨みます。そのまま、意図的に不公平な扱いを受けるゲームに取り組みました。
このゲームでは、相手から理不尽にお金を取られる場面が繰り返し用意されます。参加者は、そのまま続けることもできますし、相手に不利益を与える「やり返し」を選ぶこともできます。
ただし、このやり返しは自分の得にはならず、純粋に相手に害を与える行動です。
研究では、どれだけ挑発を受けたかに対して、どの程度やり返しを選んだかの割合を計算しました。この値が高いほど、攻撃的な反応が強いと判断されます。
つまり、この研究では「怒ったかどうか」ではなく、「実際にどう行動したか」を基準にして、攻撃性を評価しています。
📉 何が起きた?
結果は明確でした。
男性参加者は、「感情的な涙」の匂いを嗅いだあとは、対照液を嗅いだときに比べて、「やり返し」を選ぶ割合が平均で43.7%減少していました。
これは気分や印象の自己申告ではなく、実際の行動の違いとして確認された変化です。
重要なのは、「涙」と対照液のあいだで、匂いの強さや快・不快といった主観的な感覚に差がなかった点です。参加者自身は違いを意識していないにもかかわらず、行動だけが変化していました。
こうした行動の変化と同時に、脳の働きにも変化が見られました。「感情的な涙」の匂いを嗅いでいるときには、衝動的な反応や感情の処理に関わる脳の一部の活動が全体として弱まっていたのです。
さらに、行動の変化が大きかった人ほど、脳の活動の変化も大きい傾向がありました。つまり、行動の変化と脳の変化が一緒に起きていたことになります。
これらの結果から研究者たちは、涙に含まれる化学成分が、本人に意識されない形で脳に働きかけ、攻撃的な反応を抑える方向に影響している可能性を示しています。
🌿 中医学の視点―科学と重なり合う ―
中医学では、感情の動きは身体の働きと切り離せないものと考えられてきました。その中で「肝」は、気持ちの緊張や高ぶりと関係する臓腑とされ、涙はその状態と結びついて現れる体液の一つとされています。
今回の研究が示したように、感情に伴って流れる涙が、相手の反応や行動に影響しうるという視点は、感情と身体反応が連動するという中医学の考え方と重なります。もちろん理論は異なりますが、人の反応を「心だけ」「体だけ」で分けずに捉えようとする点に、共通する発想を見ることができます。
📝 「涙」は行動を変える「見えないシグナル」
この研究は、「涙」が感情のサインであるだけでなく、人の行動や脳の働きに影響しうることを示しました。
言葉や表情だけでは伝わらない情報が、嗅覚を通じてやり取りされている可能性がある──その視点は、人とのやり取りの中で起きる反応には、「性格」や「感情」だけでは説明しきれない要素がある可能性を示しています。
感情が高ぶった場面で流れる涙は、衝突を和らげる方向に働く仕組みの一部なのかもしれません。
この研究は、人と人とのあいだで交わされている情報が、言葉や表情だけでなく、本人も気づかないかたちの生理的なシグナルに支えられている可能性を示しています。
涙をどう受け取るか、どう捉えるか──その見方一つで、人間関係の理解も少し変わってくるのかもしれません。
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