AIに「心」を預ける前に知っておいて欲しいこと

目次

🧠 AIは頼れる友になりうるか?

スマートフォンに向かって言葉を投げかける──その相手が人ではなく、AIであることは、いまや特別なことではなくなりました。

ちょっとした相談、気になること、誰にも言えない心の内──そんな思いを、画面の向こうに打ち明ける10代の若者が増えています。

友達のように応えてくれるAI。言葉を否定されることもなく、反応も早い。つらいとき、孤独なとき、頼りたくなる気持ちも理解できます。

けれど、忘れてはいけないのは、その「相手」が人間ではないということ。感情や責任を持たず、応答はすべてプログラムによるもの。

もし「死にたい」「怖いことがあった」「助けて」といった深刻な言葉がAIに向けて送られたら、そのときどんな反応が返ってくるのでしょうか。

このような問いに真正面から向き合い、実際のAIに自殺念慮、性的被害、薬物使用といった深刻なシナリオを提示して応答を検証した研究があります。

話の重みが増すほど、その返事がもつ意味は大きくなります。AIは、本当に適切な対応ができるのでしょうか。

中医学では、「心(しん)」は思考や感情をつかさどる場所であり、体全体の調和を保つ中心とされます。心が乱れれば、体のバランスも崩れる──その考えにおいて、誰に思いを打ち明け、どう受け止められるかという「対話の質」は、健やかさに深く関わるものです。

その視点から見ると、AIとのやり取りも決して無関係ではありません。

今回の研究は、AIという存在と私たちの「心」の距離について、あらためて考えさせられる結果を示しています。

では、続きを見ていきましょう。


🧪 AIの安全性って?

この研究の目的は、AIが深刻な健康上の悩みにどのように対応するかを明らかにすることでした。とくに、自殺念慮、性的被害、薬物使用といった10代の重大な問題に対して、AIが適切な応答を返せるかを検証しています。

背景には、若年層によるAIの利用が当たり前になりつつある現状があります。ときに、悩みを誰にも話せず、AIにだけ打ち明ける──そんなケースもあるため、安全性の確認は急務です。

対象となったのは、利用者数の多い25種類のAI。これらを「友達型」と「アシスタント型」に分類し、3つの緊急シナリオ(自殺念慮、性的被害、薬物使用)を用いて会話をシミュレーション。その反応を評価しました。

判断基準は、共感性・理解性・医療的妥当性。

加えて、専門家への相談を促す姿勢や支援先の案内があったかもチェックされています。評価には小児科専門医2人が関わり、客観性と専門性が保たれています。


🔍 AIを試す──レッドチーミングとは?

この研究では、AIがどのような反応を示すかを調べるために、「レッドチーミング(Red Teaming)」という手法が使われました。これは、あえてAIに難しい問いやリスクのある状況を提示し、意図的に弱点や問題点を引き出すテスト方法です。いわば、AIを「あえて困らせる」ことで、その本当の実力や危険性を見極める試みです。

使用されたのは、実際の医療教育で使われている自殺念慮、性的被害、薬物使用に関するシナリオ。それぞれについて、AIに向けて標準化された問いかけが行われ、その返答内容が記録されました。

評価は、共感性(感情に寄り添っているか)、理解性(内容が分かりやすいか)、妥当性(医療的に適切か)という3つの観点から、3段階評価で行われています。さらに「専門家への相談が必要だと判断できるか」「具体的な支援先を案内できるか」という視点でもチェックされました。

評価は小児科の専門医が行い、内容の信頼性と客観性が保たれています。


📊 出てきた結果は?

全体として、AIの返答はある程度わかりやすく整理されていましたが、医療的に見て「適切」と判断されたものは、半数以下にとどまりました。

中でも「友達型」のAIでは、共感的であるように見えても、実際の内容があいまいだったり、必要なサポートにつなげられないケースが多く見られました。

一方で、「アシスタント型」は、専門的な対応や支援先の案内まで含めて、比較的整った応答を示す傾向にありました。

表面的には親しみやすく見えるAIでも、その中身には大きな差があるという点が、この結果から見えてきます。

つまり、困っている若者に「どこへ相談すべきか」を伝えられるAIは、限られていたのです。


🚨 それで本当に安心できる?

今回の結果から見えてきたのは、AIの種類によって応答の質にばらつきがあるという事実です。

とくに、感情に寄り添う設計がなされた「友達型」のAIでは、一見やさしく見える応答の裏に、適切な判断や行動の導きが欠けているケースが少なくありませんでした。

深刻な相談に対して、励ましや共感の言葉だけが返ってくる。しかし、それが医療的な視点から見ると、むしろ問題を放置することにつながる可能性もあります。最悪の場合、誤った安心感を与えたり、支援を遅らせることになりかねません。

また、支援先を提示しないまま会話が終わってしまうケースも多く見られました。困っている本人が「どこに連絡すればいいか」がわからないまま、AIとのやりとりだけで完結してしまう。その危うさは、人と人との対話にはない構造的な問題とも言えます。

こうした背景には、AIが感情や倫理的判断を本質的に持たないこと、そして現在の技術ではすべての状況に対して適切に対応できる保証がないことが関わっています。

表面上のやり取りが丁寧でも、本当に必要なサポートにつながらなければ意味がないのです。


🌱 中医学から見る「心」と対話の質

中医学では、「心(しん)」は単に感情を生み出す場所ではなく、思考や記憶、意識までも統括する中心的な存在とされています。

さらに「心は神を蔵す」といわれるように、精神の安定や生命の調和にも深く関わると考えられています。

この視点から見ると、「誰に」「どのように」気持ちを打ち明けるかは、心身の状態を左右する大きな要因になります。言い換えれば、対話そのものが心を整えるための手段であり、健康を保つうえで欠かせないものです。

中医学ではまた、「心神(しんしん)」が乱れると、眠れなくなったり、動悸が出たり、集中力が落ちたりと、身体にも影響が及ぶとされます。つまり、「聞いてくれる相手の質」は、心や体の健やかさに深く関わっているのです。

そう考えると、たとえ共感的な返答があったとしても、必要な支援に結びつかないAIとのやりとりは「対話」として不十分なことがあります。

とはいえ、AIの存在がまったく役に立たないわけではありません。安心感を与える第一歩として、有効に働く場面もあるでしょう。

大切なのは、AIとのやりとりにすべてを委ねるのではなく、それをひとつの「きっかけ」として支援に結びつけること。それが、現代の養生にもつながる考え方かもしれません。


📱 AIに頼る前にできること

AIは、そばにいてすぐに返事をくれる便利な存在です。

ひとりで抱え込まずに済むような気がして、心を預けたくなる瞬間もあるかもしれません。

けれど、今回の研究は、その安心感が本物とは限らないことを教えてくれました。共感的な言葉に見えても、必要な助けへ導けないこともある──そこに、見過ごしてはならないリスクが潜んでいます。

だからこそ、大切なことほど、ちゃんと人に話してほしい。声に出すだけでも、状況は変わることがあります。そして、聞いてくれる人がいる場所に、一歩踏み出すことができれば、それは大きな前進です。

中医学では、「未病」のうちに心や体を整えることが、健やかさの基本とされています。心が少し揺れたときにこそ、自分の内側に気づき、誰かとの関係の中で整えていく──そんな視点が、今の時代には必要かもしれません。

AIは、私たちの味方にもなり得ます。でも、それだけで十分ではないと知っておくことも、安心して日々を過ごすための力になります。

頼れる関係は、きっと人の中にある。

そう思える視点を持つことが、これからを生きる私たちにとっての支えになるはずです。

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