「抱っこ」が脳を育てる?

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🧺 NICUでのふれあい

早く生まれた赤ちゃんは、多くの場合NICU(新生児集中治療室)での入院が必要になります。

そこで受ける医療は命を守るためのものであり、なくてはならないものです。ただその環境は、音や光、装置の動きなど、赤ちゃんにとっては刺激の多い空間でもあります。

そんな中で、親と直接ふれあう時間はどうしても限られがちです。抱きしめたり、肌を寄せ合ったりすることは、ごく自然な親子の関わりですが、NICUではそれすらも慎重に調整される必要があります。そうした環境下で生まれた赤ちゃんにとって、「親とふれあう時間」にはどんな意味があるのでしょうか。

これまでの研究でも、親とのふれあいが呼吸や心拍の安定につながることは知られてきました。けれど、それだけではなく「脳の発達」──特に、情報のやりとりを支える神経のネットワークにまで影響があるのではないか──。

今回ご紹介する研究は、そんな問いに対して、医学的なデータから答えを探ろうとしたものです。注目されたのは、「カンガルーケア(skin-to-skin care)」と呼ばれるケアの実施状況と、脳の白質と呼ばれる部位との関連です。特に、「1回の抱っこの時間の長さ」がどのように関係しているのかに焦点を当てています。

さらに中医学の視点からは、親子のふれあいは「心神(しんしん)」を安定させ、発育に良い影響を与えるものと考えられています。こうした考えと、現代医学による画像検査の結果とがどう重なるのか──その接点を見つけることは、ケアのあり方を考えるうえでも、貴重なヒントになるかもしれません。

では、続きをみていきましょう!


📊 脳の中に張り巡らされた「伝達ネットワーク」

この研究では、赤ちゃんの脳の「白質(はくしつ)」と呼ばれる部分に注目しています。

脳の中には「灰白質(かいはくしつ)」と「白質」という、役割の異なる2つの構造があります。灰白質は思考や記憶などを担ういわば「処理センター」。それに対して白質は、脳内の各エリアをつなぎ、情報をやりとりするための「通信経路」のような働きをしています。

情報が効率よく行き来できるようにするためには、この白質のネットワークがしっかりと整っていることが重要です。

研究チームは、特に「帯状束(たいじょうそく)」「前視床放線(ぜんししょうほうせん)」「鈎状束(こうじょうそく)」という3つの経路に注目しました。

これらは、感情の調整や他者との関わりといった心の働きに関係していることが知られています。

脳の発達の進み方によって、将来の行動や心の育ちに影響することもあります。そう考えると、早い時期のケアがどのように作用するのかを知ることは、大きな意味を持ちます。


⏱️ 肌と肌がふれる時間の「長さ」に注目

研究チームが注目したのは、「カンガルーケア(skin-to-skin care)」がどのような影響か与えるかということ、そしてそれを「どれだけ頻繁に行ったか」ではなく、「1回の抱っこの時間がどれくらい長かったか」という点です。

短時間でも何度も繰り返す方が良さそうに思えますが、実際のデータからは少し違った傾向が見えてきました。1回あたりのケアの時間が長いほど、脳の白質における「構造的な違い」が現れていたのです。

特に変化が見られたのは、「帯状束」と「前視床放線」という2つの経路です。これらは、「情緒」や「注意」の働きと関係があるとされており、発達段階の脳にとって重要なルートです。

また、「1日に何回抱っこしたか」よりも、「合計でどれくらいの時間、肌を触れ合わせていたか」という点でも一定の関連がありました。

つまり、回数よりも「1回の質」。

落ち着いてしっかりと時間をとることが、より深く脳に関わっていた可能性があります。


🌿 中医学でとらえる「ふれあい」の意義

中医学では、人の心と身体はひとつながりで働くと考えます。

体の状態が落ち着けば心も安定し、心が穏やかなら体の働きも整うという考え方です。

赤ちゃんの時期は、心も体もまだ発達の途中にあり、外の刺激に影響を受けやすいとされます。特に早産の赤ちゃんは、生命を支える力がまだ十分ではなく、安心できる環境がとても大切です。

「カンガルーケア(skin-to-skin care)」は、中医学の視点から見ると、親と子のあいだで「気(き)」を調える行為ととらえられます。肌と肌をふれあわせ、ぬくもりや呼吸のリズムを共有することで、赤ちゃんの内側に落ち着きが生まれ、心と体のバランスが整っていくのです。

この「心身一如(しんしんいちにょ)」──心と体が一体であるという中医学の基本的な考え方は、今回の研究が示す結果とも重なります。

ふれあいは、優しさの象徴であると同時に、赤ちゃんの成長を支える確かな力です。


💡 脳発達を支える抱っこの時間

赤ちゃんの脳の発達を支える要素は、これまで主に栄養や治療、環境刺激といった要因から研究されてきました。

今回の研究は、その中に「親とのふれあい」という日常的な行為を加えた点に特徴があります。

親が赤ちゃんを抱く時間──その行為が、脳の発達に関連している可能性が示されたことは、ケアのあり方を考えるうえで新しい視点をもたらします。

この結果は、因果関係を示すものではありません。

それでも、触れる時間の長さが脳の構造と関係していたという事実は、早産児の発達を支える環境を見直すきっかけになります。

親子の関わりそのものをケアの一部として捉える考え方が、今後さらに重要になってくると思います。

中医学での考え方も赤ちゃんとの「ふれあい」は生理的な安定だけでなく、内面の成長を助けるという点で同じ視点を持ちます。

今回の研究では、NICUで過ごす限られたふれあいの時間が、脳の発達に関わるひとつの要素である可能性が示されました。

この結果は、ケアのあり方を考える新しい手がかりとなります。

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