50万人を追った研究が示す「脳」と「酒」の関係

目次

🍶 お酒と記憶──「ほどほど」の境目を探して

お酒は「少しなら体に良い」とよく言われます。けれど、本当にそうなのでしょうか。

近年、お酒と健康に関する研究報告が増えています。

アメリカとイギリスで行われた大規模研究では、50万人以上を長期間にわたって追跡し、「認知症」と飲酒の量や習慣、そして体質に関わる遺伝的な要素まで詳しく調べました。

そこから見えてきたのは、これまでの考え方を見直すような結果です。

中医学では、酒は血のめぐりを助ける一方で、摂りすぎると体内に「熱」をこもらせ、体の働きを乱すとされています。

これが積み重なると、思考や記憶に関わる部分にも影響が及ぶと考えられています。

そんな古くからの教えと、現代の科学が導き出したデータ──両者が交わるところに、私たちの脳とお酒の関係を見直すヒントが隠れていそうです。

では、続きを見ていきましょう。


🧪 どんな研究?

お酒と認知症の関係をめぐっては、これまで多くの研究がありました。

「少量ならむしろ脳に良い」とする報告もあれば、「飲まない方が安全」とする結果もあり、結論は揺れていました。

今回の研究では、こうした「ほどほど神話」を改めて検証するため、アメリカとイギリスの二つの大規模データを用いて分析が行われました。

調査の対象は、50万人を超える中高年の男女。生活習慣や病歴だけでなく、遺伝的な情報も組み合わせて解析されています。

研究チームは、単に「どのくらい飲むか」を見るだけではなく、飲酒の量と認知症の発症リスクの関係を、時間の経過や遺伝の影響まで含めて丁寧に追跡しました。

つまり、「お酒と記憶のつながり」を、観察研究と遺伝学という二つの角度から検証したのです。


📊 研究で見えた意外な傾向

最初に行われたのは、日常の飲酒習慣と認知症の発症率を比べる観察研究です。

この分析では、まったく飲まない人よりも、少しだけ飲む人の方が認知症の発症が少ないという傾向が見られました。

一見すると「少量なら脳に良い」という解釈ができそうです。でも研究チームは、そこで立ち止まりました。

なぜなら、もともと健康状態が良い人が「たまたま飲んでいるだけ」の可能性や、逆に体調を崩して飲まなくなった人が「非飲酒者」に含まれていることなど、結果に影響を与える要因が多く考えられたからです。

さらに詳しく調べると、認知症を発症した人の多くは、その前の段階で徐々に飲酒量を減らしていたことも分かりました。

つまり、「よく飲む人が発症しにくい」のではなく、「発症が近づくと自然に飲めなくなっていた」可能性が示唆されたのです。


🧬 遺伝の力を借りて「本当の因果関係」を探る

観察研究では、生活習慣や健康状態など、どうしても避けられないさまざまな要因が影響します。

そこで研究チームは、遺伝の情報を使って、より純粋に「お酒がどの程度、認知症のリスクに関係しているのか」を確かめました。

この方法は「メンデルランダム化」と呼ばれます。

もともと体質的にお酒を飲みやすい人と、そうでない人の違いを利用し、生まれつきの「自然な実験」として比較するのです。

この手法なら、環境や生活習慣による影響を減らし、因果関係をより確かな形で推定できます。

分析の結果、遺伝的にお酒を多く飲む傾向がある人ほど、認知症のリスクが着実に高いことがわかりました。

しかもその関係は、「少しだけ飲むと安全」という形ではなく、飲む量が増えるほどリスクも高まるという、緩やかな上昇カーブを描いていました。


🧠 「ほどほど」の正体──私たちの思い込みを見直す

長いあいだ、「ほどほどにお酒を嗜む方が健康に良い」といった考えが広く信じられてきました。

しかし、今回の研究からは、そうした印象の多くが統計上の「錯覚」のような効果によって生じていた可能性が浮かび上がりました。

たとえば、健康意識が高く、社会活動も活発な人が少量の飲酒を続けている場合、もともとの健康状態が良いこと自体が「飲む人の方が元気」という結果につながってしまいます。

また、認知症の発症が近づくと、自然と食欲や飲酒量が減っていく傾向もあります。

そうした変化が、あたかも「お酒をやめたから認知症になった」ように見えてしまうのです。

つまり、軽い飲酒が「予防」に見えるのは、実際には健康状態の違いや発症前の変化を反映していた可能性が高いということです。

研究チームは、ここにこそ「ほどほど神話」の正体があると指摘しています。


🌿中医学から見た「酒」と「脳」の関係

中医学の考えでは、酒は少量であれば血の巡りをよくし、冷えによって滞った気や血の流れを整えるとされています。

一方で、飲みすぎると体の内側に「熱」がこもりやすくなり、全体のバランスを乱す原因にもなります。

この「熱」は、体の中にこもって蓄積すると、頭がぼんやりしたり、集中しづらくなったり、記憶があいまいになることがあります。

今回の研究で示された「飲む量が増えるほどリスクが高まる」という結果は、この中医学的な視点とも通じるものがあります。

「ほどほど」という感覚は、古くから人が経験の中で積み重ねてきた知恵といえます。


💡 お酒とつき合う未来のヒント

お酒は、人と人をつなげ、日々の楽しみを彩る存在でもあります。

けれど、その心地よさの裏には、体が少しずつ受け取っている負担もあります。

今回の研究から見えてきたのは、「ほどほど」を意識することの大切さでした。中医学の考え方でも、体に無理のない範囲で「巡り」を保つことが健康の基本とされています。

お酒と上手に付き合うというのは、単に量を減らすことではなく、自分の体の声を丁寧に聞くことかもしれません。

疲れやすい日、頭が重い日、眠りが浅い日──そんな変化は体からのメッセージです。

科学のデータと古くからの知恵、どちらも向かう先は同じ。「ほどほど」──その一歩が、脳にも体にもやさしい未来につながっていきます。

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