「卵」は正義か悪か

目次

🍳 「卵」を見直す時期がやってきた

卵はとても身近な食材のひとつ。

朝食に焼いて、昼にサンドイッチで食べ、夜には炒め物に加える──気づいたら1日に何個も食べていることがあるようなとても日常的な食材です。

一方で、健康との関係がこれほどまでに議論されてきた食材も他にはあまりないように思います。

特に「コレステロールが多いから控えたほうがいい」という見方は、長年根強く信じられてきました。

ですが、「卵=悪者」という見方は、現代の研究ではすでに再検討の対象になっています。

今回の研究は、30年以上にわたる調査と、世界各国から集めた過去の調査をもとに、「卵」と「心血管疾患」の関係が丁寧に検証されています。

そしてこのテーマ、中医学の視点から見ても興味深い示唆を含んでいます。

卵は薬膳的には「補血」作用があるとされ、虚弱体質や安胎、産後の回復などに用いられてきました。その「補う」力と、心血管への影響がどう関係するのか──。この研究を読み解くことで、現代と伝統、両方の観点から「卵」という食材を新しく捉え直すことができそうです。

では、続きを見ていきましょう。


🧪 どんな研究?

この研究では、アメリカの3つの大規模なコホート(継続的追跡調査)データが用いられました。

対象となったのは、医療従事者を中心とした約21万人の男女で、最大で32年にわたって、生活習慣や食事内容、病気の発症が定期的に記録されています。

さらに、世界各国の33の前向き研究を統合したメタアナリシスも実施されました。その規模は、対象者約172万人、心血管疾患の発症例は13万件以上にのぼります。

いずれのデータも、調査開始時点で心血管疾患やがん、糖尿病の診断がない人々を対象としており、アンケートでの食事調査をもとに「普段卵をどのくらい食べているか」が把握されています。

つまり、「長期間にわたって、健康な人がどんな食生活をしてきたか」と「その後の健康状態」との関係を、かなり正確に捉えることができる設計になっているわけです。


🔬 何を調べた?

この研究で調べられたのは、「卵をよく食べる人」と「ほとんど食べない人」とで、心臓や血管に関わる病気の発症に違いがあるかどうか、という点です。

具体的には、心筋梗塞や脳卒中、冠動脈疾患などの「心血管疾患」が対象で、これらを発症したかどうかが「結果」として評価されました。

解析にあたっては、単に卵の摂取頻度だけを見るのではなく、喫煙、運動習慣、アルコール摂取、他の食事内容など、心血管リスクに関わる多くの要因が同時に考慮されています。

たとえば、卵を多く食べていても、その人が普段どんなものを一緒に食べているか、どんな生活を送っているかによって結果が変わりうるからです。

また、評価の対象となった卵は「全卵(黄身つき)」であり、ケーキやパンなど加工食品に含まれるものは除かれています。

これは、できる限り卵そのものの影響を明らかにするための工夫といえます。


🌍 国によって異なる結果が──なぜ?

今回の研究では、国や地域によって卵と心血管疾患の関係に違いがあることもわかりました。

アメリカやヨーロッパのデータでは、卵をよく食べても心臓病などのリスクが高まるとは言えませんでしたが、アジアの研究では、むしろ「卵を食べる量が多い人ほどリスクが低い」という傾向が見られたのです。

では、この違いはどこからくるのでしょうか。

一つの理由として考えられているのが、「卵と一緒に何を食べるか」という文化の違いです。欧米では、卵がベーコンやバターをたっぷり使った食事とセットで登場することが多く、脂質が多くなりがちです。

一方で、アジアではスープや雑炊、炒め物に卵を使うことが多く、全体として脂肪が少なく、野菜も多く取れる組み合わせが一般的です。

また、中国を中心としたアジアの研究では、卵をよく食べる人ほど都市部に住み、教育水準や収入が高い傾向もあることが報告されています。

つまり、「卵の量」だけを見ても答えは出ず、どんな環境で、どんな食べ方をしているかという背景まで考える必要があるということです。


🩺 糖尿病の人はちょっと注意

今回の研究では、卵をよく食べる人とそうでない人で、心臓や血管の病気にどれくらい違いがあるかが調べられました。全体としては、卵を食べても特にリスクが高くなることはありませんでした。

ただし、糖尿病を持っている人に限って見ると、少し違う結果も出ています。いくつかの研究では、卵をたくさん食べる人ほど心臓の病気になるリスクが高い傾向が見られたのです。

とはいえ、すべての研究でそうだったわけではありません。「リスクが高まる」とした研究もあれば、「特に関係は見られなかった」というものもあり、結果にはばらつきがあります。

糖尿病の人は、血糖値だけでなく、脂肪やコレステロールのバランスも崩れやすい傾向があります。

だからこそ、体の状態によっては、卵の食べ方に少し気をつけた方がいい場合もある、ということです。自分の体質や健康状態を考えながら、量や食べ合わせを調整することが大切です。


🔄 卵を別の食材に置き換えたら?

この研究では、「卵そのものが悪いかどうか」だけでなく、「卵を何と置き換えたらどうなるか」という視点でも分析が行われています。これは私たちが日常でよく直面する、「何を食べるか迷ったときの選択」に関係する重要な視点です。この研究、かなり凝っています。

例えば、1日1個食べていた卵をやめて、その代わりにベーコンやソーセージなどの加工肉を食べた場合、心臓や血管の病気のリスクは高くなる傾向が見られました。脂肪分の多い乳製品と置き換えたときにも、リスクは上がる可能性がありました。

一方で、卵の代わりに魚や豆製品、全粒穀物、ナッツ類などを取り入れた場合は、リスクが変わらなかったり、やや下がる傾向が見られました。

この結果が教えてくれるのは、「卵を食べるかどうか」だけにこだわるよりも、「ほかに何を食べているか」を含めて考えることが大切だということです。

食事はいつも全体のバランスで成り立っているという、当たり前だけど見落としがちな視点を、改めて意識させてくれる結果です。


🌿 中医学の視点で見直す「卵」

中医学では体を内側から潤し、養う働きをもつ食材とされています。特に陰分(体内の潤いや冷やす力)が不足しがちなときに、乾きを和らげ、全身に必要な栄養を巡らせるために使われます。

卵はまた、血を補って体力を養う「補血」の力があるとされ、疲れやすい体質の改善などのケアにも応用されてきました。さらに、「安胎(あんたい)」の働きがあるとされ、妊娠中の栄養補給や、産後の回復期にも取り入れられてきた歴史があります。

今回の研究では、「卵を極端に避ける必要はない」という結果が示されていましたが、これは中医学での捉え方とも重なる部分があります。もちろん、すべての人にとって同じように良いわけではなく、体質や体調に合わせた取り入れ方が大切です。

卵は、量ではなく「どう食べるか」が大事な食材。

体を整えたいとき、元気を取り戻したいときに、無理なく取り入れる価値のある食材です。


✨「食べること」をもっと自由に

卵に対する見方は、これまで長いあいだ「コレステロール=悪」という印象に偏っていました。でも、最新の研究や伝統的な食の知恵は、「一律に避けるべきものではない」という新しい見方を示しています。

食事の中で、何を選び、どう組み合わせて食べるか。

その選択肢は、思っている以上に柔軟で、状況に応じて調整できるものです。自分の体に合った食べ方を、日々の暮らしの中で少しずつ見つけていければ、それが自然で続けやすい形になっていきます。

「卵」体のケアに役立つ食材の1つです。

これまで控えていた人にとっても、見直しながらうまく取り入れていくことで、体と心のバランスが整いやすくなるかもしれません。

「健康のために何かを制限する」という考え方から、「調和を意識して取り入れる」という発想へ。

そうやって、「食べること」がもっと自由で、自分らしくあるための手段になっていく──この研究は、そんな見方への道筋を照らしてくれています。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ご覧いただきありがとうございます

「なんか生きづらいな」
「なんか体の調子が良くないな」
  と感じている方へ

漢方と鍼灸、心理学的アプローチを合わせた心身のケアで
日々の生活に彩りを添えるお手伝いをいたします

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

漢方薬局・鍼灸接骨院

吸い玉(カッピング)
足ツボ(リフレクソロジー)
ヘッドスパ・美容鍼
よもぎ蒸しサロン
《タナココ》

目次