🌿 「カビのにおい」があなたの「脳」に忍び寄る?
家の中に漂うカビのにおい──。
梅雨時や換気の悪い部屋などで、一度は感じたことがあるはずです。最近、この「におい」が体の「ある機能」と関わっている可能性が研究で示されました。
カビによるアレルギーや喘息はよく知られていますが、それ以外の影響はあまり調べられてきませんでした。そこで近年は、住環境そのものが健康に及ぼす影響に注目が集まり始めています。
今回紹介するのは、その流れの中で行われた、中国の大規模調査です。室内の「カビ臭」と高齢者の「ある機能」との関係に光を当てました。
中医学でも「湿気」は体内に入り込む邪気とされ、健康を損なう要因と考えられてきました。「カビ臭」という湿気のサインが、心身のバランスに影響している──中医学的な視点とも繋がります。
果たして、この「におい」と高齢者の「ある機能」にはどのような関わりがあるのでしょうか。
これまであまり語られてこなかった、新しい視点からの研究です。
では続きを見ていきましょう。
🧓 高齢社会が直面する課題
高齢化が進む中国では、60歳以上の人口が増え続け、健康に関する課題も多様化しています。
中でも記憶力や理解力の低下といった「認知機能」の問題は、高齢者の生活の質を大きく左右する重要なテーマです。
2018年の全国調査では、約5人に1人が認知障害を抱えていると報告されました。
これまでは年齢や遺伝的要素、運動習慣や食生活などが主なリスク因子とされてきましたが、近年は住環境の「質」にも注目が集まっていますその中で「室内の空気環境」、とりわけ日常で感じる「カビ臭」が問題として浮かび上がってきました。
高齢になると感覚の変化で室内の異変に気づきにくくなるため、カビ臭は住環境の悪化を知らせるサインとして特に重要です。
今回の研究は、この身近な「カビ臭」が高齢者の認知機能とどのように関わっているのかを科学的に検証した、これまでにあまり例のない試みでした。
📋 調査はどうやって?──11,888人の高齢者から集めたデータ
この研究には、「CHARLS(中国健康・高齢化縦断研究)」という全国規模の調査データが使われました。
対象となったのは、2011〜2018年に参加した60歳以上の高齢者11,888人。そのうち、「カビ臭」に関する質問に答え、かつ認知機能テストを受けた6,959人が分析の対象になりました。
カビ臭の有無は「自宅にカビ臭がありますか?」という質問への自己申告で判断されました。認知機能は、記憶力や計算力などを調べるテストで評価されています。
さらに、年齢や性別、教育歴、運動習慣、住環境など、他の要因を考慮したうえで、カビ臭との関連が検討されました。
📈 匂いと脳の関係、本当にあった!
いよいよ本題。
今回の研究では、「カビ臭」と「認知障害」の関係を数値で評価しています。
分析の結果、室内に「カビ臭」があると答えた高齢者は、そうでない人に比べて認知障害を持つ割合が高いことがわかりました。
年齢や生活習慣などの条件を調整したうえでもこの傾向は変わらず、「カビ臭」がある人では、認知障害がみられる可能性が1.3倍ほど高いという結果が出ています。
👃 「カビ臭」が脳に悪さをするメカニズムとは?
では、なぜ「カビ臭」が脳の働きと関係しているのでしょうか。
研究では、いくつかの可能性が指摘されています。
ひとつは、カビが放つ「揮発性有機化合物(MVOCs)」の影響です。これらは空気中をただよい、呼吸を通して体に取り込まれることがあります。一部は脳へ届く経路もあるとされ、長期的に曝露されることで神経に影響を及ぼす可能性があります。
もうひとつは、カビ臭が「換気が悪い」「湿度が高い」といった住環境を反映している点です。
こうした環境は睡眠の質を下げたり、ストレスの原因となったりして、間接的に脳の健康を損なう可能性があります。
つまり、カビ臭は直接的にも間接的にも、認知機能に影響する可能性があるのです。
🧩 この研究の限界と、今後の検討課題
今回の研究は、これまであまり注目されてこなかった「室内のにおい」と「認知機能」の関係に光を当てた点で大きな意義があります。全国規模の高齢者データを用いたことで、結果の信頼性も高いといえます。
ただし、「カビ臭」の有無は参加者自身の感覚によるもので、実際の空気中の成分を測定したわけではありません。また、認知機能も医学的診断ではなく簡易なテストによる評価でした。さらに観察研究のため、因果関係までは断定できません。
それでも、「におい」という身近なサインが健康の指標になり得るという発見は重要です。今後は時間を追って調べる前向き研究や、動物・ヒトを対象とした実験的検証が進むことが期待されます。
🌿 中医学の視点で見ると、どう解釈できる?
中医学では、カビ臭のような湿った空気を「湿邪(しつじゃ)」と呼びます。
これは外から入り込む悪い影響のひとつで、体の巡りを重く停滞させてしまいます。高齢者はもともと体の働きが弱まりやすいため、「湿邪」の影響を受けやすいとされます。
また、中医学では「神(しん)」という概念があり、心の働きや脳のはたらきと深く関わっています。「湿邪」によって「神」の働きが乱れると、集中力が続かない、物忘れが増えるといった不調につながると説明されます。
さらに、「湿邪」は「脾(ひ)」という消化や栄養の吸収を担う臓腑にも負担をかけます。「脾」の力が弱まるとエネルギーや血を作り出す力が不足し、脳に十分な栄養が届かなくなると考えられています。これが「髄海(ずいかい=脳)」の不足につながり、認知機能の低下と関係すると理解されます。
今回の研究は、「におい」を手がかりに住環境と認知機能の関わりを示しましたが、中医学の考え方とも通じる部分があります。
「湿気」を減らし、「脾」を元気に保つことは、体の健康だけでなく脳の働きを守るうえでも大切だといえるでしょう。
🧠 「脳」の健康を守る工夫
今回の研究は、日常で見過ごされがちな「カビ臭」が、高齢者の脳の健康に関わっている可能性を示した点で大きな意味があります。においをきっかけに住まいの環境を見直すことが、認知機能を守る取り組みにつながるかもしれません。
実際にできることはシンプルです。こまめな換気、湿気をためない工夫、そして寝室など長く過ごす場所の空気を清潔に保つこと。こうした小さな積み重ねが、健康な暮らしの土台となります。
中医学でも、湿気を減らして体の巡りを整えることは養生の基本とされてきました。現代の研究がこの知恵を裏づける方向を示したことは、とても前向きな発見です。
住まいの空気をきれいに保つことは、心地よさだけでなく、脳の健康を支える一歩になるのです。
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