「音楽」と「血圧」の対話

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🎼 音の波が、からだに触れるとき

音楽を聴いていて、呼吸が深くなったり、体のこわばりがほどけるように感じることがあります。

気分の問題に思えても、実際には体の仕組みが関わっている可能性があります。

中医学では、「音」は五臓(肝・心・脾・肺・腎)と結びつけて考えられてきました。音の種類ごとに臓腑の働きと関連づけられ、心身を整える手段のひとつとして利用されてきた歴史があります。

近年では、こうした伝統的な考えと重なるような研究も増えてきています。

音楽の中にある特定の要素が、体の反応と関係しているのではないか──そんな報告も見られるようになってきました。

「音」と「体」がどのようにつながっているのか──中医学的な視点も交えて見ていきましょう。


🪇 音と体のリズムが交わる場所

音楽を聴くと気持ちがほぐれる──これは誰もが経験したことのある感覚です。でも、そこで起きていることは「気分が変わった」という以上のものかもしれません。

研究者たちは、その裏に体の仕組みが関わっているのではないかと考えました。

注目したのは、曲そのものの「つくり」です。テンポの速さや音の強弱、フレーズの切れ目といった要素が、私たちの体のリズムと重なり合っている可能性があるのです。

中でも今回取り上げられたのは「血圧」。

「血圧」は体の状態を示す大事なサインで、心臓や血管の健康に直結しています。さらに、「血圧」は自律神経の働きと深く関わっており、心身のバランスを測る指標のひとつでもあります。

もし音楽のパターンが「血圧」に影響しているなら、音を使った新しい健康サポートの方法につながるかもしれません。

今回の研究は、そんな疑問に迫るものです。


🔬 どんなふうに調べた?

研究に参加したのは、40歳前後を中心とした男女あわせて92人。みなさんにはピアノの曲を聴いてもらいました。選ばれたのは30曲で、そのうち9曲を無作為に体験してもらうかたちです。

ただ聴くだけではありません。研究チームは音楽の途中にある「強弱の変化」や「フレーズの区切れ目」をコンピュータでしっかり分析しました。そして同時に、参加者の血圧の変化をリアルタイムで記録し、音楽の動きと体の反応がどう重なるのかを調べたのです。

つまり、「音楽の波」と「血圧の波」を並べて見比べ、同じリズムで揺れているかどうかを探った、というわけです。


🎶 血圧は「抑揚」に反応する?

研究の分析から、血圧は音楽のテンポ(速さ)そのものよりも、音の強さの変化、つまり「抑揚」に敏感に反応していることが明らかになりました。曲の中で音が緩やかに強くなったり弱くなったりする部分に合わせて、「血圧」も自然と変化していたのです。

さらに、メロディーのフレーズに明確な区切りがあり、次の展開が予測しやすい曲ほど、その傾向は強く見られました。音楽の流れに体のリズムが引き込まれるように、「血圧」もその動きに寄り添って変化していったのです。

特に、クラシック音楽のなかでもフレーズ構造と抑揚がはっきりしている曲では、音楽と「血圧」の同調が最も顕著に現れていました。

まるで音楽と体のリズムが対話しているかのように、深く結びついていたのです。


👬 「体」が「音」に寄り添う?

研究チームは、この結果を「同期(エントレインメント)」と呼ばれる現象で説明しています。

人の体には、外から与えられたリズムや刺激に、自分のリズムを合わせていく性質があります。友人と歩くときに自然と歩幅や速さがそろったり、合唱で声を合わせやすいのも同じ仕組みです。

今回の研究では、音楽の「抑揚」や予測しやすいフレーズが、その「きっかけ」になっていたと考えられます。次に来る展開を体が先取りし、「血圧」がそれに合わせて変化していった、というわけです。

実はこれはとても自然な反応で、誰もが持っている性質です。

昔から人は、歌や楽器に合わせて体を動かし、仲間と呼吸をそろえてきました。外のリズムに自分を重ねる行動は、文化や時代を超えて受け継がれてきた、人間らしい「営み」と言えます。


🌿 中医学の視点から見た「音」と「体」

中医学では、音は五臓(肝・心・脾・肺・腎)と関係があるとされ、それぞれの臓に対応する音の種類があります。

これは「五音(ごおん)」という考え方で、音楽の音階のような五つの音(角・徴・宮・商・羽)が、それぞれの臓の働きに結びつけられてきました。

たとえば、「角(かく)」は「肝」に、「徴(ち)」は「心」に対応するとされます。「角」は少し鋭くのびやかな響きで、気を巡らせる「肝」と関わりがあるとされ、「徴」はやわらかく感情に響く音で、精神の安定に関わる「心」とつながると考えられています。

こうした音と体のつながりは、音楽を使って気や血の巡りを整える「五音療法」としても使われてきました。

今回紹介した研究は西洋医学の視点から行われたものですが、音の構造が体に影響するという点では、中医学の考え方と通じるところがあります。

音と体の関係についての理解が深まれば、現代医学と中医学の両方から、より豊かな視点が得られるかもしれません。


🎹 音が「体」をととのえる──新しいからだとの付き合い方

この研究では、「音楽」の「抑揚」やフレーズの流れが、体の反応と関係していることがわかりました。とくに、音の変化がわかりやすい曲では、血圧もその動きに合わせるように変化していたのです。

こうした現象は、これまでなんとなく体で感じていたことが、科学的に確かめられた例だと言えます。中医学でも、音は体の働きと関係があると考えられてきたので、今回の研究はその考え方とも重なるところがあります。

もちろん、音楽を聴くだけで健康がすぐに変わるというわけではありません。ただ、どんな音が体にどう働くのかが少しずつわかってきたことで、今後は音楽をもっと上手に使って、体をととのえる方法が見つかるかもしれません。

音を楽しむことが、気分転換だけでなく、体の調子を整えるひとつの方法になる。そんな日常が、これから少しずつ広がっていくかもしれません。

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