運動が脳を守る

若いころからの運動習慣が、アルツハイマー病リスクに与える影響とは?

目次

🏃‍♀️ 動き続ける人の脳に起きていたこと

70歳前後になっても、記憶や考える力を保つ人がいます。その背景にあるのは、遺伝や食事だけではありません。

今回の研究では、36歳から69歳までの30年以上にわたる「余暇の運動習慣」が、年齢を重ねた脳にどのような違いを生むのかを追いかけました。

研究では、運動の頻度やタイミングごとに4つのグループに分け、脳の画像検査と記憶力テストを組み合わせて分析しています。

研究によれば「いつ、どれくらい動くか」が想像以上に大きな意味を持つことが見えてきました。

また、中医学では、体を動かすことは「気」と「血」の巡りを整え、脳を含む全身の働きを支えると考えられています。

この研究結果は、その古くからの感覚を現代のデータが裏づける形になっており、伝統と科学が同じ方向を指す場面が垣間見えます。

では、その内容を見ていきましょう。必読です。


📈 長年の身体活動と脳の若さ

研究の参加者は、1946年に生まれたイギリスの男女。

36歳から69歳までの間に5回、余暇の時間にどれくらい体を動かしているかを記録しました。

各時点で「月1回以上運動していれば活動的」「まったくしなければ非活動」と判定し、50歳より前(36歳・43歳)と50歳以降(53歳・60〜64歳・69歳)の2つの期間で活動状況をまとめました。

その結果、

  • 50歳より前も50歳以降も活動的だった人 → 生涯活動的
  • 50歳より前だけ活動的だった人 → 50歳前のみ活動
  • 50歳以降だけ活動的だった人 → 50歳以降のみ活動
  • 両方の期間で非活動だった人 → 生涯非活動

という4つのグループに分類されました。

70歳前後になった時点で、参加者は脳の詳細な検査を受けます。

PET検査では、アルツハイマー病の原因とされるたんぱく質「アミロイドβ(Aβ)」が脳にどれくらいたまっているかを確認しました。

MRIでは、記憶をつかさどる「海馬」の大きさ、脳全体の体積、そしてアルツハイマー病で変化しやすい部分の厚さを測定しました。

さらに、複数の記憶力・判断力テストを組み合わせた総合的な認知スコアも算出しました。

こうして、何十年にわたる運動のパターンと、加齢期の脳の状態・働きの関係を、一人ひとりの生活史から読み解いていきました。


🧠 記憶の要「海馬」を守る力

分析の結果、50歳より前から運動していた人や、生涯ずっと活動的だった人は、70歳になった時点で「海馬」が大きめでした。

海馬は、日々の出来事を覚えたり、思い出したりするための脳の中枢です。この部分が小さくなると、もの忘れが増え、認知症の症状も出やすくなります。

今回見られた差は小豆1粒ほどと小さいものの、脳は年齢とともに縮んでいくため、この差でも意味があります。50歳を過ぎてから運動を始めた人にもやや同じ傾向はありましたが、明確な差とはいえず、若いうちからの運動のほうが効果は確かでした。

しかも、この傾向は学歴や子どものころの知的能力、家庭環境などを考慮しても変わらず、「もともと恵まれた生活環境だったから」という理由だけでは説明できませんでした。


🧩 認知低下を和らげる効果

今回の研究で興味深かったのは、運動が脳の形を守るだけでなく、脳に衰えがあっても記憶や判断力の低下をゆるやかにしていたことです。

通常、アミロイドβがたまっている人や、海馬・脳全体が小さくなっている人は、物忘れや思考のスピード低下が目立ちやすくなります。

ところが、生涯を通じて活動的だった人や、50歳より前から運動していた人では、この悪影響がかなり弱まっていました

こうした現象は「認知レジリエンス」と呼ばれます。

脳に変化があっても、神経回路の柔軟性や予備力が働いて機能を保つ状態で、今回の結果は、運動がこの力を高める可能性を示しています。


👩‍⚕️ 女性の脳に効きやすい理由

性別ごとの分析では、特に女性で運動の効果がはっきりと現れました。

生涯非活動だった女性は、アミロイドβが溜まっている場合に認知機能の低下が強く見られましたが、活動的だった女性ではその影響が大きく抑えられていました。

これまでの研究では、女性は男性よりもアルツハイマー病を発症しやすい傾向があることが報告されています

その一因として、閉経後のエストロゲン減少による神経保護作用の低下が指摘されています。運動は、このエストロゲンの減少を補うように、神経を保護する刺激を与える可能性があります。

また、中高年期の生活環境や社会的役割の変化も影響しているかもしれません。

今回の研究では詳しい要因までは特定できませんが、「女性こそ積極的に運動することが、将来の脳の健康を守るうえで大きな意味を持つ」ことを示す結果となっています。


🌿 中医学から見た運動と脳のつながり

中医学では、脳の働きは「腎精(じんせい)」という生命力の蓄えと深く関わるとされます。

腎精は成長・発育・生殖だけでなく、脳や骨の健康にも関わり、充実していれば記憶力や思考力も保たれると考えられます。

「気血(きけつ)」は、体を動かすエネルギー(気)と、体を養い潤す血液(血)の総称です。これらが滞りなく巡ることで「腎」が十分に養われ、その力が脳に届き、働きを支えます。

運動は呼吸を深め、血流を促し、気血の巡りを活発にします。その結果、腎精が養われやすい環境が整い、消耗を防ぐことにつながるとされます。

今回の研究で示された「長期的な運動習慣が脳を守る」という結果は、中医学の考え方とも一致しています。

特に、若いころからの運動がより効果的という点は、「早めに腎精を養い、気血を滞らせない」という中医学の「養生」の原則と一致します。

また、中医学では、性別による体質やホルモン変化も重視します。女性は閉経を境に血の巡りが変化しやすく、気血の不足や滞りが起きやすい時期に入ります。運動によってこの流れを保つことは、脳だけでなく全身の健康維持にもつながります。


🔍 若いうちからの運動が将来の脳を守る

今回の研究は、50歳より前から運動を続けている人や、生涯にわたり活動的な人が、70歳時点で脳の記憶を担う「海馬」が大きく保たれていること、そして認知機能の低下が抑えられていることを示しました

この効果は、学歴や幼少期の知的能力、生活環境などを考慮しても変わらず、単なる環境要因だけでは説明できませんでした。また、特に女性で効果が顕著に現れており、閉経後の脳保護の観点からも意義が大きいと考えられます。

さらに、脳に変化があっても機能を保つ「認知レジリエンス」を高める可能性がある点は、今後の予防医学において重要な示唆となります。

これは中医学の「腎精を養い、気血の巡りを保つ」という考え方とも一致しており、現代医学と中医学が同じ方向を指している結果ともいえます。

つまり、将来の脳の健康を守るためには、できるだけ早い時期から運動を生活の一部に取り入れ、長く続けることが大切です

その積み重ねは、年齢を重ねたとき、しっかりとした記憶としなやかな思考となって、必ず自分自身を支えてくるはずです。

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