「体によさそう」が本当にそうとは限らない

タナココ

味噌汁・漬物・干物──和食にひそむ見えにくい落とし穴

毎日の食卓に欠かせない味噌汁や漬物。日本の伝統的な食文化を支える存在として、多くの人が親しんでいます。健康によさそうなイメージも強いですが、実は「塩分が多い」という側面があることを忘れてはいけません。

今回ご紹介するのは、そんな日常的な塩分の摂取が、口腔がん・咽頭がん・食道がんといった消化管上部のがんリスクにどう関係しているかを検証した、大規模な疫学研究です。40,000人以上の日本人を14年以上追跡したこの研究は、「いつも飲んでいる味噌汁が、がんのリスクに関係するかもしれない」という驚きと、私たちの食習慣を見つめ直すきっかけを与えてくれます。

この記事では、研究結果を医学・薬学的にしっかりと解説しながら、中医学の視点も交えて、できるだけやさしく、わかりやすくお伝えしていきます。


目次

🍲 塩分とがん、関係あるの?

「塩分の摂りすぎは健康によくない」と聞いたことはあっても、それが「がん」とどう関係しているのかは、あまり知られていないかもしれません。

この研究では、日本全国の中高年42,535人を対象に、1988年から2009年までの長期にわたる追跡調査を実施しました。その中で、塩分の摂取量が多い人ほど、口腔がん・咽頭がん・食道がんの発症リスクが高まっていたことが明らかになりました。

その中で特に注目されたのが「味噌汁」です。

報告によれば、毎日3杯以上飲んでいた人は、1杯未満の人と比べて、がんリスクが2倍以上に上昇していたことがわかりました。

塩分が体に悪いことは知っていても、「味噌汁がそれほどまでに影響するとは…」と驚きです😱


🧬 なぜ塩分でがんのリスクが上がるのか?

塩分の摂りすぎががんのリスクを高める背景には、体内で起こる「慢性的な炎症」が関係しています。

とくに口の中から食道にかけての粘膜は、食べ物や飲み物が直接触れる場所です。ここに高濃度の塩分が何度も接触することで、粘膜がじわじわと傷ついていきます。

この微細な傷は、やがて体の免疫反応を引き起こします。体は傷を修復しようと炎症性の物質──たとえば「TNF-α」や「TGF-β」など──を分泌しますが、これが長く続くと細胞に酸化ストレスがかかり、DNAにダメージが蓄積していきます。

そして、こうした状態が積み重なることで、正常な細胞が異常増殖を始め、「がん化」するリスクが高まっていくのです。

つまり、塩分の摂りすぎは、体の中で「静かな炎症」を引き起こし、それが長い年月を経てがんの種になる可能性がある──これが、今回の研究が示唆している重要なポイントです。


🥢 味噌汁がリスクになる理由とは?

今回の研究では、複数の塩分を多く含む食品について、がんリスクとの関係が分析されました。

対象になったのは、味噌汁、干物、ハムやかまぼこなどの加工肉・魚、そして漬物です。その中で、明確にリスクとの関連が見られたのは「味噌汁」でした。

具体的に見ると、味噌汁を毎日3杯以上飲んでいる人のがんリスクは、1日1杯未満の人に比べて2.27倍

これは、味噌汁が日本人にとって極めて日常的で、かつ塩分濃度が高い食品であること、そして温かい状態で飲まれるため、食道や口腔に直接的な刺激が加わることが影響していると考えられます。

一方、干物や漬物、加工肉などの他の高塩食品では、摂取量が多くても有意なリスク上昇は確認されませんでした。これは、摂取頻度や摂り方に違いがあること、また味噌汁のように液体として粘膜全体に広く接触する性質がないことが関係しているかもしれません。

「毎日の習慣として何気なく続けていること」が、積み重なって将来の健康に大きな影響を与える可能性がある──そんな気づきを与えてくれる結果です。


🧩この研究からわかること、わからないこと

今回の研究は、4万人以上を14年以上にわたって追跡するという、非常に大規模で信頼性の高いデータに基づいています。だからこそ「塩分摂取ががんのリスクを高める」という結論には大きな重みがあります。

しかし、完璧な研究というものは存在しません。この研究にも、いくつかの注意点があります。

まずひとつは、塩分の摂取量が「食物摂取頻度調査票(FFQ)」という自己申告のアンケートで評価されていることです。これはあくまで推定値であり、実際の摂取量との誤差が生じる可能性があります。

また、咽頭がんの発症数が非常に少なかったため、このがんについては統計的な有意差が出ませんでした。リスクがないと断定することはできず、「はっきりとは言えない」というのが正確な理解になります。

さらに、生体の中で塩分ががんを引き起こす「実際のメカニズム」については本研究では調べられていません。この点については今後の研究に期待です。


🌿 中医学で読み解く「塩分」と「がん」

中医学の視点から見たとき、「塩」は五味のひとつである「鹹(かん)」に分類されます。この鹹味は、身体の中の硬いものや詰まりを和らげる「軟堅散結」という働きを持ち、本来はしこりや瘀血(おけつ:血の滞り)の治療に使われることもあります。

ところが、塩分を過剰に摂取すると話は変わってきます。

塩は「寒性」で、摂りすぎると体内の「陽気」(体を温め、巡らせるエネルギー)が弱まり、脾胃(ひい:消化吸収を司る)の機能が低下します。これにより、食べたものがうまく消化されず「痰湿(たんしつ)」「湿濁(しつだく)」「痰濁(たんだく)」という病的な水分が体内にたまってしまいます。

この「痰湿」は、長く体にとどまることで「癥瘕(ちょうか)」──つまり、腫瘤や腫れ物を生むとされ、これが中医学における「がん」に近い概念です。さらに、味噌汁のように熱いものを頻繁に摂ると、体内に「熱毒(ねつどく)」がたまり、炎症や潰瘍の原因になるとされています。

中医学的に言えば、塩分の過剰と熱性食品の反復摂取が「痰湿」「熱毒」「気滞(きたい:エネルギーの滞り)」を生み、これらが組み合わさって、がんの温床になりうる──という理屈です。

このように、西洋医学では炎症やDNA損傷、中医学では痰湿・熱毒・気滞といった病理が、どちらも塩分の過剰摂取とがんの関係を説明していることは非常に興味深い点です。


🔍 食卓を見直す、小さな一歩

今回の研究から見えてきたのは、「塩分の摂りすぎがじわじわと、けれど確かに、がんのリスクを高めている」という事実。特に味噌汁のように、毎日当たり前のように口にしている食品だからこそ、その影響は積み重なりやすいと考えられます。

でも、「味噌汁を飲んだらがんになる」と極端に考える必要はありません。

大切なのは、塩分との「付き合い方」。

たとえば、味噌を少なめにする、出汁を工夫する、具材に野菜を増やして抗酸化作用を補う、熱すぎる状態で飲まない──そんな小さな工夫が、長い目で見たときに大きな差を生むかもしれません。

そして、日々の体調の変化にも敏感でいたいものです。

喉が乾きやすい、口内炎がよくできる、胃もたれや便通の乱れが続く──そうした小さな不調を、体のバランスの乱れや、体質の変化として受け取り対応する。

一人で難しければ、中医学の専門家などに気軽に相談してみてください。自分の体を大切にすることは、決して一人で背負うべきものではありません。正しい知識と支えがあれば、誰でも健康を守る力を持っています。

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