不妊症の治療で問題となる病気の一つとして
「高プロラクチン血症」があります。
プロラクチン(PRL)とは?
プロラクチン(PRL)は
・乳腺の発育促進
・乳汁産生・分泌促進
・性腺機能の抑制
などに関わるホルモンで、別名「乳汁分泌ホルモン」と呼ばれ、妊娠後期から授乳時に分泌が増えて、乳汁を出す働きをします。その際、すぐに妊娠ができないように排卵を抑制する働きがあります。
きちんと赤ちゃんを育てることができるようにする体の仕組みの1つです。
しかし、このプロラクチンが何らかの原因で高い状態にあると、排卵が抑制されてしまうため、妊娠を希望する場合は大きな妨げになります。
高プロラクチン血症の原因は?
高プロラクチン血症をきたす病態や疾患はいくつかありますが、
・PRL(プロラクチン)産生下垂体腺腫(プロラクチノーマ)(約35%)
・視床下部機能障害(機能性高プロラクチン血症)(約30%)
・薬剤性(約9%)
・原発性甲状腺機能低下症(約5%)
などがあります。
プロラクチノーマ
プロラクチノーマは下垂体の中で、PRLを作る細胞が増えたもので、そのことでプロラクチンが大量に分泌されます。良性の腺腫で20~30代の女性に多いといわれています。状況により、薬物療法、手術療法、放射線療法が選択されます。
視床下部機能障害(機能性高プロラクチン血症)
原因となる腫瘍などの器質的疾患がない場合に考えられます。
ストレスなどにより自律神経やホルモン分泌が影響を受けてプロラクチンの分泌が過剰になった状態です。
また、日中はプロラクチン濃度が正常なのですが、夜に分泌が過剰となる潜在性高プロラクチン血症というものがあり、普通の検査では見つけにくいので少々やっかいです。
薬剤性
薬剤性薬の副作用でプロラクチンが上昇することがあります。
代表的なものとしてスルピリド(商品名:「ドグマチール」など)がありますが、薬を中止したり、変更することでもとに戻ります。その他にもプロラクチンを上昇させる薬がありますので、挙児希望の方で服薬している方は、必ず薬剤師に薬による影響がないか確認して下さい。
原発性甲状腺機能低下症
プロラクチンの分泌は他のホルモンと比べ分泌調節の方法が異なります。
基本的にはホルモンを出しなさいと命令(放出因子:PRF)がきて分泌するのに対し、プロラクチンは分泌を抑制する命令(抑制因子:PIF)が働くことで分泌が抑制されています。抑制因子はドパミン(DA)が担当しています。
またプロラクチンは甲状腺ホルモンと連動することが知られており、甲状腺ホルモンを分泌しなさいという甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が増えるとプロラクチンも分泌されます。
正常な甲状腺ホルモンのコントロール範囲であれば問題はないのですが、原発性甲状腺機能低下症のように甲状腺の機能が低下している場合、甲状腺に対して甲状腺ホルモンを出しなさいというい命令が過剰になるため、それに伴い不必要なプロラクチンの分泌が行われてしまいます。
薬の服用などで甲状腺ホルモンのコントロールを行うことで、プロラクチンの分泌は正常に戻ります。
高プロラクチン血症の症状は?
高プロラクチン血症の症状には
・乳汁漏出
・軽症では黄体機能不全、重症では無月経
・プロラクチノーマの場合は両耳側半盲(外側の視野が狭くなる)、頭痛などの局所圧迫症状
などがあります。
女性に多い疾患ですが、プロラクチンは男性にも存在し、高プロラクチン血症になると、男性でも乳汁漏出が見られます。また性欲低下を引き起こすことがあります。
高プロラクチン血症の治療法は?
高プロラクチン血症は不妊症の原因になりますが妊娠することは可能です。
高プロラクチン血症に対して明らかな原因がある場合はその治療を行うのが第一です。
プロラクチノーマの場合
おもに方法は以下の3つです
・薬物療法
プロラクチンの抑制因子(PIF)であるドパミン作動薬(カベルゴリン、テルグリド、ブロモクリプチンなど)を使用します。
・手術療法
腺腫うち1cm以上のマクロアデノーマで薬物治療で効果が出にくい場合や早期に妊娠を希望する場合で腺腫を小さくしたほうが良い場合などで選択されます。
*解剖学的には、直径が1cm以上のものは macro adenoma(マクロアデノーマ)、1cm未満のものを micro adenoma(ミクロアデノーマ)という。
・放射線療法
手術では取りきれなかったり、薬物療法で効果が出にくい場合などに行います。
視床下部機能障害の場合
ドパミン作動薬による治療が中心になりますが、機能障害が起こっている原因(自律神経の乱れ、ストレスなど)の解決も重要になります。
薬剤性の場合の場合
薬剤性の場合は原因になっている薬を変更したり、中止することでプロラクチンは下がります。
原発性甲状腺機能低下症の場合
甲状腺ホルモンを補充することで、過剰なTSHの分泌を抑えることができるため、プロラクチンも下がります。
東洋医学での高プロラクチン血症の治療は?
東洋医学では「肝」と「腎」と「脾」が関係すると考えます。
「肝経」のラインに乳頭があるため、特に「肝」と深く関わりがあります。
原因としては主に
・肝鬱気滞
・肝腎不足
・脾虚痰阻
に分けられます。
肝鬱気滞
ストレスなどで、「気」の流れが悪くなることで起こります。
治法は「疏肝清熱、理気調経」などで「逍遥散」をベースに調整します。
肝腎不足
腎の働きが低下し「血」が不足し、肝にも影響を及ぼし、血の流れが悪くなることで起こります。
治法は「補肝腎、調月経」などで「腎気丸」をベースに調整します。
脾虚痰阻
脾の働きが低下し「水」の代謝がうまく行かず、水の流れが悪くなることで起こります。
治法は「健脾燥湿、化痰調経」などで、「 蒼附導痰丸」をベースに調整します。
その他の方法
そのほかの対処方法としては「炒麦芽」、「鍼灸」があります
炒麦芽
炒麦芽がプロラクチンを下げる働きがあるので、合わせて使用することがあります。
鍼灸
鍼灸では、百会、気海、天枢、大赫、血海、膻中などの経穴を中心に使用します。
漢方や鍼灸をプラス
他の病気が原因で高プロラクチン血症になっている場合はその病気を治療をすることで改善しますが、それ以外で原因のはっきりしない機能性高プロラクチン血症は西洋医学でも東洋医学でも「ストレス」が大きな原因とされています。
ストレスは人間関係の中で発生するもの以外にも、生活リズムの乱れによる環境によるストレスも要因として重要です。夜型の生活などは大きなストレスになります。漢方やはり灸は高プロラクチン血症に対して効果的な治療法ですが、治療を受ける方の協力もあって効果的に作用します。
日常生活のアドバイス等も合わせてお話させていただきながら、漢方・はり灸(鍼灸)でお手伝いします。現在治療中の方も西洋医学での治療と合わせてできる漢方・はり灸(鍼灸)治療がありますので、なかなか効果がでないとお悩みの方は一度ご相談ください。
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