食卓は心の処方箋?

目次

🕐 栄養だけじゃない──心を満たす食事の時間

「食事」と聞いて思い浮かべるものは、人によってさまざまです。
カロリー計算や栄養バランス、あるいは美味しさそのものかもしれません。

もちろん、体を作る材料として食事は欠かせません。しかし、医学の世界では今、「食事の環境」が心に与える影響について、非常に興味深い事実が明らかになりつつあります。

今回ご紹介するのは、ニュージーランドで行われた大規模な調査です。8,500人もの学生を対象に、「家族と一緒に食事をすること」が、彼らの心の健康にどう関わっているのかを調べた貴重な研究です。

家族の仲の良し悪しの話ではありません。そこには、メンタルヘルスの不調を防ぐかもしれない、ある明確なデータが隠されていました。

中医学では「脾(ひ)」は消化機能をつかさどるだけでなく、私たちの「思い」や「思考」と深くつながっていると考えます。お腹を「満たす」ことが、なぜ心まで「満たす」ことにつながるのか──今回の現代医学のデータと中医学が重なり合う部分が見えてきます。

さらに「ある特定の人たち」にとって、その効果が顕著であるという結果も示されています。

食卓に隠された、意外な「心の処方箋」について、続きを見ていきましょう。


🍱 食卓という名の調査現場──8,500人の声

今回の研究では、ニュージーランド全国規模の健康・福祉調査「Youth '12」のデータが用いられました。

対象となったのは、中学校・高校に通う8,500名の生徒たち。これだけ大規模な調査であれば、偶然の偏りというより、社会全体の傾向として捉えることができます。

調査方法にも工夫があります。生徒たちはタブレット端末とヘッドフォンを使い、プライバシーが保たれた環境で回答しました。思春期の繊細な悩みや家庭の事情など、周囲を気にせず答えられるよう配慮されています。

思春期は、心が揺れやすく、家族との関わり方も変化する時期です。この年代を対象にする意義はとても大きいといえます。

また、この研究では、食事と心の状態をただ並べて比較しただけではありません。家庭の経済状況(貧困度)や、もともとの家族関係(家族とのつながり)など、結果に影響を与えそうな要因を統計的に調整して分析している点も特徴です。

つまり

「裕福だから心が安定している」
「もともと仲がいいから一緒に食べるだけ」

といった単純な背景を取り除き、「食卓を共にすることそのもの」の影響を浮き彫りにしようとした研究です。


📊 家族食の実態──「週5回以上」が分かれ道?

では、「思春期の子どもたち」はどれくらい家族と食卓を囲んでいるのでしょうか。

調査によると、全体の約60%が「週5回以上」家族と食事をしているという結果でした。学校や部活で忙しい年代とはいえ、多くの家庭で食卓の時間が保たれていることがわかります。

一方で、「週2回以内」しか家族と食事をしない生徒も22%いました。家族の生活リズムが揃いにくい現代らしい数字と言えます。

このように「家族で食べる頻度」には大きな幅があり、この違いが心の状態にどのように反映されるのかが研究の焦点となりました。


💗 心の健康はどう評価する?

心の状態といっても、単に「元気かどうか」を尋ねただけではありません。
この研究では、思春期のメンタルヘルスを多面的に把握するため、複数の評価方法が使われています。

WHOウェルビーイング指数(気分の明るさや活力を数値化)
抑うつ症状尺度(RADS)(落ち込み・気分の重さなど)
SDQ(情緒面や行動面の困難さ、友人関係などを評価)

これらを組み合わせることで、「心の状態」をより丁寧に捉えようとしています。


🔍 結果は?

「家族と食事をすること」と「心の状態」とはどのような関係が見られたのでしょうか。

まず、家族と一緒に食事をする回数が多いほど、落ち込みや気分の重さが少ないという傾向が確認されました。

さらに、感情の揺れやすさ、行動面での困りごと(情緒的な難しさ)も少ないことが分かっています。学校生活や友人関係にも影響しそうな部分まで、家族食の頻度が関係していたことになります。

加えて、ウェルビーイング(気分の明るさや活力)も高いという結果が出ており、家族で食卓を囲む機会が多いほど、気持ちの安定や前向きさにつながりやすいという傾向も示されました。

そしてこれらの関係は 女性においてより強く表れていた こともわかっています。

思春期の女性にとって、家族で食卓を囲む時間は特に大きな意味を持つ可能性があります。


🌿 中医学の視点から見える「家族食」の意味

現代医学の研究が示す「家族で食卓を囲むほど心が安定しやすい」という傾向を、中医学の視点で見ると、日常の食事が持つ意味が少し違った表情で浮かび上がってきます。

中医学では、安心できる環境で食事をとることは、精神のはたらきを示す「心神(しんしん)」を整えやすいとされます。心が落ち着いていると、体の消化や吸収を担う「脾(ひ)」も本来の働きを発揮しやすくなります。

不安や心配があると食欲が落ちてしまったり、気持ちが前向きな日は食欲があったり──こうした経験は多くの人が共通して持っているものだと思います。中医学では、この心と消化のつながりを古くから大切にしてきました。

脾がしっかり働くことで、食べ物から生まれる「気血」にもゆとりが生まれ、「心」も安定しやすくなります。「心」と「脾」が互いに支え合いながら整っていく、というのが中医学の特徴的な捉え方です。

家族で囲む食卓のように、落ち着いた空気の中で食事ができる時間は、気持ちを和らげ、体の内側のリズムを整える「日常の養生」として大切にされてきました。

今回の研究が示した「家族での食卓の頻度」と「心の状態」の関係は、中医学の視点とも響き合う部分があり、毎日の暮らしに潜む小さな時間の意味を改めて感じられる内容です。


🍽️ 「いただきます」から始める心のケア

今回のニュージーランドの研究は、家族で食卓を囲む時間が、若者たちの心を守る「実効性のある手段」であることを科学的に示しました。

特に、週に5回以上の頻度で食事を共有している家庭では、そうでない家庭に比べて、抑うつ症状や情緒的な困難が有意に少ないという結果は、私たちに大きな希望を与えてくれます。

とはいえ、毎日全員が揃ってちゃんと夕食をとることが難しい──現代の生活は忙しく、時間のすれ違いも多いのが現実です。

研究の結果も、「頻度が多いほど良い」という傾向を示していますが、それは「毎日でなければ意味がない」ということではありません。

中医学の視点でも、無理をしてストレスを溜めることは、かえって「気」の巡りを悪くしてしまいます。

まずは、今よりも「週に1回だけ」家族で食べる機会を増やしてみる。あるいは、夕食が難しければ、朝食や週末のランチでも構いません。重要なのは、「食事の時間」を誰かと共有し、「お腹」だけでなく「心」を同時に満たすその過程そのものです。

家族と囲む食卓は、毎日の暮らしの中で何気なく過ぎていく時間かもしれません。

けれども、誰かと同じ料理を分け合い、安心できる空気の中でのひとときは、思っている以上に心を支えてくれることがあります。

「今日はごはんを一緒に食べよう」

その一言が、思春期の揺れ動く心にとって、どんな薬よりも優しい処方箋になるかもしれません。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ご覧いただきありがとうございます

「なんか生きづらいな」
「なんか体の調子が良くないな」
  と感じている方へ

漢方と鍼灸、心理学的アプローチを合わせた心身のケアで
日々の生活に彩りを添えるお手伝いをいたします

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

漢方薬局・鍼灸接骨院

吸い玉(カッピング)
足ツボ(リフレクソロジー)
ヘッドスパ・美容鍼
よもぎ蒸しサロン
《タナココ》

目次