血清エストラジオールが高すぎると流産リスクが上がる?

目次

⚖️ 移植では「ちょうどいい」ホルモンバランスを目指す

不妊治療で行われるホルモン補充による移植(凍結融解胚移植)では、エストラジオール(E2)やプロゲステロン(P)といったホルモンを補う必要があります。

しかし、どのくらいの量を、どのような方法で補充するのが最適なのかについては、いまだに明確な基準が定まっていないのが現状です。

経皮エストロゲン製剤を使用した移植周期において、移植当日のエストラジオール(E2)値がその後の妊娠経過にどのように影響するのかを調べた報告があります。


🌱  ホルモンと妊娠の関係

妊娠は、奇跡が重なり合って初めて成立します。中でも「女性ホルモン」は、その奇跡を支える重要な役割をはたします。

今回紹介する研究では、妊娠を助けるために使われる女性ホルモンの1つである「エストラジオール(E2)」が、実は「多すぎる」と赤ちゃんが育つチャンスを減らしてしまう可能性があると報告しています。

この研究はフランスのパリ大学チームによって行われ、凍結した胚盤胞(受精卵が成長した状態のもの)を子宮に戻すときのホルモン環境について詳しく調べたものです。


💡 内膜を育てる「エストラジオール」

妊娠に欠かせないのが、子宮の内膜が「ふかふかのベッド」のように整うこと。その準備に大きな役割を果たすのが「エストラジオール(E2)」というホルモンです。

通常体内では、排卵周期に合わせてホルモンバランスが調整されていますが、体外受精などの治療では、胚移植を行う際、人工的にエストラジオール(E2)とプロゲステロン(P)を補う「ホルモン補充周期」という方法がスケジュールの立てやすさからよく用いられています。

今回の研究では、経皮(皮膚に貼る)タイプのエストラジオールを使った患者さん2364人を対象に調査しました。この数は、単一施設のデータとしてはとても大きく、信頼度の高い分析が可能になっています。


🔎 エストラジオールが「多すぎる」とどうなる?

研究で注目したのは、移植当日の血中エストラジオール(E2)の濃度です。
エストラジオールは、ある程度高い方が子宮内膜が整いやすいと考えられてきました。しかし今回の結果から、「高すぎると逆に妊娠の維持に悪影響を及ぼす可能性がある」ことが示されました。

具体的には、エストラジオール(E2)が313pg/mL以上だったグループでは、早期流産率が30.3%と、他のグループ(25%前後)より高い割合となっています。

「313pg/mL」という数値は、これまで医療現場でも特別高すぎるとは考えられていなかった範囲です。

それでもこの濃度を超えるとリスクが上がることが明らかになったのは、臨床現場にとっても重要な知見です。ホルモンは、必要な分だけ補うことが大切で、ホルモンが多すぎると「ふかふかのベッド」ではなくなる可能性を示しています。


🐣 出産率には大きな差はなかった

一方、興味深いことに、血中エストラジオールが高いグループでは早期流産率が高かったものの、最終的に赤ちゃんが無事に生まれる「出産率」には大きな違いは見られませんでした。

一見すると、「E2が高くても最終的な出生率(赤ちゃんが生まれる割合)が変わらないなら、特に問題はないのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、現実はもう少し複雑です。

この研究では、E2が高いグループでは早期流産率が高くなっていました。つまり、「妊娠できた!」と喜んだあと、流産を経験する方が増えるということです。流産は、身体的・精神的な負担がとても大きく、治療への意欲や体調にも影響することがあります。また、治療を何度も繰り返す必要が生じる場合は、費用や時間の負担も増えていきます。

今回の研究は1回の移植ごとの出産率を見ていますが、もし流産を繰り返すと、次の移植まで期間があいたり、新たな治療が必要になることもあります。「最終的な出生率」は変わらなくても、その過程で何度も流産や治療のやり直しが起きれば、患者さんご自身の負担は確実に大きくなるのです。

ですので、「最終的な数字だけでなく、そこに至るまでの過程をできるだけスムーズに、リスクを減らすことが大切」と言えます。

E2が高すぎない方が、妊娠を維持しやすく、心身の負担も減る可能性がある──それが今回の研究から読み取れる重要なポイントです。


🧐 これまでの研究と今回の研究の意味

今回の研究では、移植時に「エストラジオール(E2)」というホルモンが、必要以上に高いと、妊娠初期の流産リスクが高まるかもしれないという結果が示されました。

実はこのテーマは、実は多くの国や施設でこれまで何度も調べられてきました。

複数の研究が、「エストラジオールの量が多すぎると、子宮の内膜がうまく整わなかったり、受精卵が着床しにくくなったりする場合がある」と報告しています。

つまり、ホルモンは妊娠にとって大切な「栄養」や「土台作り」の役割を持っていますが、バランスが崩れると逆に環境が不安定になってしまうことがある、ということです。

一方「ホルモンが高めでも無事に出産までたどり着ける人も少なくない」という研究結果もあり、必ずしも全員に悪い影響が出るわけではないことも分かっています。

治療を受けている方の体質や、もともとのホルモンバランス、使用する薬の種類や投与方法、さらには胚や内膜の状態など、さまざまな要因が重なり合うためだと考えられ、単にエストラジオール(E2)の濃度だけが妊娠に必要な要素ではないことがわかります。

また、ホルモン治療をしていると、「多ければ安心」「高いほど良い」と思いがちですが、実際は「ちょうどいい加減」がとても大切だと分かってきています。

今回の研究やこれまでの研究から言えることは、エストラジオール(E2)は多すぎても少なすぎても「ふかふかのベッド」ができないことがあるため、一人ひとりに合わせて最適な量を見つけていくことが今後ますます重要になるということです。

特に、妊娠初期の段階で流産を防ぐには、ホルモン補充の量や方法を主治医とよく相談しながら進めることが重要になります。

今回の研究結果は、ホルモンはただ多ければ良いというわけではないという視点を示してくれています。

妊娠を望む人や、治療を考えている人にとっても、自分に合った方法やペースを大事にすることがとても重要です。


🌟 量よりバランス

不妊治療でのホルモン補充は、子宮の状態を整え赤ちゃんの着床を助ける大切な治療です。ただ、「多ければ安心」といった単純なものではありません。

今回の研究は、移植当日のエストラジオール(E2)が高すぎると、かえって流産のリスクが高まる可能性を示してくれました。

これは、ホルモン治療が「量よりもバランスが大事」ということ。今後は、医療の現場でも「ひとりひとりに合ったホルモン補充」を目指す取り組みがさらに重要視されていくのだと思います。

治療を受ける方にとっても、ご自身に最適な方法やペースについて主治医としっかり話し合うことが、より安心で前向きな妊活につながります。

もし病院での治療で悩むことがあれば、不妊カウンセラーにご相談ください。

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