こんにちは、相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。
胚盤胞にならない理由は染色体異常・・・ではない?
「胚移植」は、ここ10年くらいは、「胚盤胞」の単一胚を移植する傾向にあります。これは「胚盤胞」での移植の方が、着床率が高いと言う結果に基づくものです。
しかし、採卵後「胚盤胞」を目指しても、途中で成長が止まってしまうことがあります。その理由として「染色体異常」があり「卵の質」が悪かったからだと言われることあります。
はたしてそれは本当でしょうか。
このことについて調べた研究があります。イスラエルからの報告です。
2021年5月〜2021年9月までPGT治療を受けた10人の女性(31.7±3.4歳、27〜39歳)から提供を受けた30個の胚を培養して調べました。
その結果…
30個の初期胚のうち12個が胚盤胞になり、18個は胚盤胞まで発育しませんでした。
胚盤胞到達率は40.0%(12/30)です。
そして、30個の初期胚を調べたところ19個が正常胚で、そのうち12個が発育を停止しました。
初期胚 19個が正常胚(正常胚率63.3%)
↓
胚盤胞 7個が正常胚(正常胚率58.3%)
→胚盤胞到達率は36.8%(7/19)
初期胚と胚盤胞では、正常胚率に違いはありませんでした。
異常胚について見てみると
初期胚 11個
↓
胚盤胞 5個
→胚盤胞到達率は45.4%(5/11)
となり、胚盤胞到達率を見ても差がありません。
染色体に異常があってもなくても、同様の割合で胚盤胞になっており、このことから、胚盤胞にならないのは、染色体異常ではないことが考えられます。
胚の成長が停止するメカニズムは胚の染色体異常なのか、ほかの要因によるものなのか、また、体外で初期胚から胚盤胞の間に発育が停止した胚は、初期胚で移植しても体内では発育するのかどうなのか。これらの問題は重要です。
今回の報告は、胚盤胞にならないのは、染色体異常によるものではない可能性を示しています。
正常胚率が初期胚と胚盤胞で変わらないとするのであれば、そもそも胚盤胞移植は適切なのか、初期胚移植の方法を見直す必要があるのではないか、培養環境や刺激法は正しいのか、さまざまな問題が考えられます。初期胚移植よりも胚盤胞移植の方が成績が良いとするデータが増えてきたため、一般的に胚盤胞移植を目指す傾向にありますが、これが本当に正しいのか考えさせられる報告です。
胚盤胞を目指すことが、本来なら体内で成長していたはずの胚の成長を妨げるものであるのであれば、初期胚移植の研究をより進めていくことが求められます。初期胚移植の問題点が改善されれば周期あたりの累積出生率の向上にもつながります。
もっとも、症例数が少ないため、今後のさらなる研究が必要ではありますが、深刻に受け止めるべき報告であるように感じました。
この報告を読んで、体内環境を整える漢方の役割はより重要になるのではないかと考えます。日々進歩している不妊治療の世界ですが、まだまだ不明な点も多く、うまくいかない、成果が出ないケースでは漢方の使用がブレークスルーになるケースも多々あります。
もちろん初めから漢方を併用することで良い結果に結びつきやすくなりますので、なかなかうまくいかない方だけでなく、これから妊活する場合は漢方も一緒にはじめて欲しいと思います。
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