育ちの記憶はどこまで届くのか

目次

🤔 親の学歴と子どもの認知機能を読み解く4カ国研究

年齢を重ねると、思い出すのに少し時間がかかったり、名前が出てこなかったりといった変化が生まれることがあります。

日常の小さな出来事ですが、その背景にはゆっくりとした脳の変化が続いています。ただ、その変化の「源」がどこにあるのかは、まだ十分にわかっていません。

今回紹介する研究は、その「源」をたどるように、人生のかなり早い時期──特に親がどのような教育を受けていたか に注目しています。

親の学歴は、家の中でどんな言葉に触れ、どんな雰囲気で過ごしてきたかと結びつきやすいと考えられるため、研究の手がかりとして用いられています。

研究チームは、中国・アメリカ・イギリス・メキシコという4つの国のデータを集め、「親の学歴」と「その子どもが中年期以降にどんな認知機能を示すのか」という関係を丁寧に比べています。

家庭の環境が、長い時間を経てどのように脳の働きにつながるのかを探った、大規模な国際研究です。

中医学でも、幼いころに受けた刺激や環境は、体と心の基盤となる「腎精」や「脾」を育む大事な要素だとされています。

成長期の環境が、のちの心身の安定に関わるという考え方は、今回の研究にも通じるところがあります。

この研究では、人生の「はじまり」と「未来」はどのようにつながっていくのでしょうか。

続きを見ていきましょう。


📘 どんな研究?

子どものころ、家の中でどんな雰囲気の中で育ったのかは、大人になってからの行動や物事の捉え方に少しずつ影響を残します。

今回の研究は、その中でも 「親自身がどのような教育を受けていたか」 というわかりやすい指標に注目しています。

年齢とともに自然に起こる認知機能の変化には個人差があります。その違いは生活習慣だけでは説明できず、幼少期の環境も関わっている可能性があると考えられています。

親がどのような教育を受けてきたかは、子どもが日常の中でどんな言葉に触れ、どのような学びの雰囲気の中で育ったのかと関連しやすいとされています。

こうした環境の積み重ねが長い時間をかけて脳の働きに影響するかもしれない──この視点が研究の出発点です。

こうした背景をもとに、この研究では複数の国を比較しながら、親の学歴が、その子どもが中年期以降にどのような認知機能の変化を示すのか を丁寧に調べています。


🌍 どうやって調べた?

この研究では、世界の4つの国のデータを用いて、「親の学歴」と「その子どもの認知機能(中年期〜高齢期)」の関係を比べています。

対象となったのは、中国・アメリカ・イギリス・メキシコの大規模なコホート研究(長期追跡調査)に参加していた 50歳以上の人たち です。

それぞれの国で行われている調査から、例えば

  • 母親の学歴
  • 父親の学歴
  • 本人の年齢や性別
  • 認知機能のテスト結果

などを解析に用いています。

認知機能のテストは、記憶の働きや、時間や場所を把握する力などを点数化したもので、国ごとに少し内容は異なりますが、どれも「脳の働き」をとらえるためのテストです。

国ごとに点数の付け方が異なるため、比較できるように基準を合わせてから分析しています。さらに研究では、同じ人の認知機能を複数回測定し、時間とともに点数がどう変わっていくのかも追いかけました。

こうしたデータをもとに、親の学歴が子どもの認知機能の変化にどのように関わるのかを、国ごとに丁寧に調べています。


📊 どんな結果が見えた?

研究では、4つの国すべてで共通して、親の学歴が高いほど、その子ども(現在は中年〜高齢期)の認知機能の平均的な水準が高いことが確認されました。

さらに、認知機能が年齢とともにどのように変化していくのかも調べられました。国によって強さは異なりますが、親の学歴が高い人の方が、認知機能の変化が比較的ゆるやかに進む傾向がみられました。

全体として、親がどのような教育を受けていたかは、国を超えて子どもの認知機能と関係しているというのが今回の研究の大きな結果です。


🎓 本人の教育はどう関わるの?

次に、親の学歴と子どもの認知機能の関係に、子ども自身の教育がどの程度関わっているのかが検討されました。

その結果、多くの国で、親の学歴が高い → 子ども自身も教育を受けやすい → その教育が認知機能を支えているという「関係」が確認されました。

この「関係」の強さには国ごとの差があり、中国・アメリカ・イギリスでは比較的はっきり示されました。一方、メキシコではこの傾向が弱く、本人の教育を通した影響が明確ではありませんでした。

それでも、今回の分析からは、親の学歴が子どもの認知機能につながる背景に、子ども自身の教育という段階が関わっている場合があることが示されています。


🌱 中医学の視点から見えること

今回の研究で示された「幼少期の環境が、長い時間を経て認知機能に関わる」という結果には、中医学の考え方と重なるところがあります。

中医学では、人の成長や心身の発達を支える基盤として 「腎精」 が大切にされています。腎精は、生まれ持った力に加えて、幼いころの生活環境や受けた刺激によって補われていくと考えられています。

一方で、日々の学びや思考の働きを支えるのは 「脾(ひ)」 の力です。脾は飲食物から気血をつくり、集中力や思考のはたらきに関わるとされ、幼少期の生活リズムや家庭環境の影響を受けやすいとされています。

この「腎」と「脾」は別々に働くわけではなく、互いに支え合う関係にあります。脾がつくり出す気血は腎精を補い、腎精がしっかりしているほど脾の働きも安定する。こうして、幼いころの環境が少しずつ積み重なりながら、成長の土台と日々の思考の力が育っていく、というのが中医学の視点です。

今回の研究が示した、親の学歴 → 子どもが受ける日常の刺激 → 長い時間を経て現れる認知機能の違いという流れは、中医学でいう「成長の基盤は早い時期に形づくられ、その後の心身を支える」という考え方と重なる部分があります。

もちろん、中医学と疫学研究は前提も方法も異なります。しかし、幼少期の環境がゆっくりと心身に影響を残すという点では、両者に共通した視点が見えてきます。


✏️ これからの自分を育てるヒント

今回の研究が示したのは、幼いころに置かれていた環境が、長い時間をかけて大人になった自分の「考える力」や「覚える力」とつながっている可能性でした。

国によって状況は異なりますが、親がどのような教育を受けていたかが、その子どもが後の人生でどんな認知機能を示すのかと一定の関係を持つことが、複数の国で共通して確認されています。

とはいえ、研究が示したのはあくまで「傾向」です。

親の学歴だけで未来が決まるわけではなく、人生のどこか一つの段階だけで認知機能のゆくえが固定されるという意味でもありません。

むしろ、本人がどんな経験を積み、どのような学びや刺激と関わっていくかによって、その後の変化はいくらでも育てていくことができます。

中医学でも、幼少期の経験が心身の土台をつくる一方で、日々の暮らしの積み重ねによって、その力を整え直していくことができると考えられています。

「今からできること」が常に残されているという視点は、現代の研究との間に静かな共通点があります。

今回の研究が改めて教えてくれるのは、小さな環境の違いが長い時間をかけて影響を持つこと、そして同時に、今の自分を支える行動を重ねていく余地がいつでもあるということです。

生活の中で少し新しい刺激に触れてみること、人とのつながりを大切にすること、興味のあることを学び続けること──そうした習慣は、年齢に関係なく、認知機能を支える力になります。

「これから」選択が未来を形づくる──その視点を思い出させてくれる研究でした。

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