🚪 食と病の関係に、少し耳を澄ませてみる
日々の食事は、健康をつくる基本です。
何を食べているかは、気づかないうちに体の内側に変化を積み重ねています。けれども、「肉を控えた方がいい」と聞けば少し不安になり、「魚は体にいい」と言われてもどこまで信じていいのか迷ってしまうこともあります。
実際、食習慣が長期的に健康にどんな影響を与えるのかは、まだはっきりしない部分もあります。だからこそ、多くの人を長い期間にわたって追いかける調査は、とても価値があります。
今回紹介するのは、まさにそのような研究。18年にわたって、イギリスの何万人もの人たちの食生活と病気の発症を記録し続けた大規模な追跡調査です。
参加者たちは、「肉を食べる人」「魚は食べるけれど肉は食べない人」「完全に植物性の食事を選んでいる人」に分かれていました。それぞれのグループが、どれくらい心臓病や脳卒中を経験したのか──その違いが丁寧に調べられました。
ただ、結果は単純ではありませんでした。「ヘルシーなはず」と思われる食スタイルに、思いがけない落とし穴が見つかったのです。
中医学では、「食」は単なる栄養源ではなく、「五臓」を補い、「気」や「血」の流れを整える大切な手段とされています。食べ物の性質や組み合わせが体調にどう影響するのかを深く考える伝統の中では、この研究の結果もまた、興味深い気づきを与えてくれます。
では、この18年の追跡から見えてきた、食事と病気のリアルな関係とはどのようなものだったのでしょうか。ここからは、ひとつずつ丁寧に見ていきましょう。
🧪 研究の設計と、集められた人たちの背景
この研究が行われたのは、イギリスの「EPIC-Oxford(エピック・オックスフォード)」と呼ばれる大規模な健康調査の一環です。
EPICは「欧州がん・栄養前向き研究」の略で、ヨーロッパ全体で何十万人もの生活習慣を追いかける大きなプロジェクト。その中でもこのオックスフォード支部は、特に食生活に多様性のある人たちを集めていたのが特徴です。
今回の解析では、合計約4万8,000人が対象になっています。彼らはすべて、研究開始時点で重大な病歴がない成人で、食事スタイルによって3つのグループに分けられました。「肉を食べる人」「魚は食べるが肉は食べない人」「肉も魚も食べず、植物性食品のみを取る人(菜食主義者)」です。
それぞれのグループに偏りが出ないように、年齢や性別、生活環境などをバランスよく含んでおり、比較がしやすく設計されています。また、食事だけでなく、喫煙や運動、サプリメントの使用、さらには教育レベルや地域の経済状況といった幅広い情報も同時に記録されていました。
つまりこの研究は、「食事の違いだけが健康にどう影響するのか」を丁寧に見極めようとした、非常に緻密な設計だったということです。
📊 どんな病気が、どうやって記録されたのか──追跡方法と評価のしかた
研究では、参加者が心臓病や脳卒中を発症したかどうかを、最大18年間にわたって追跡しています。その確認には、イギリス国内の医療記録が使われました。つまり、自己申告ではなく、診断データに基づいた客観的な方法です。
対象となったのは、「虚血性心疾患(心臓の血管が詰まるタイプ)」と「脳卒中」。脳卒中については、さらに「虚血性(血管が詰まるタイプ)」と「出血性(血管が破れるタイプ)」の2種類に分けて記録されました。
また、加齢にともなう自然なリスク変化を考慮し、すべての人を「実年齢」を基準にして追跡。運動、喫煙、サプリの使用といった食事以外の影響も統計的に調整されています。
こうした工夫によって、肉や魚を食べるかどうかといった食習慣が、どのように病気のリスクに関わっているのかを、より正確に比較できるようになっていました。
📉 数字の裏にある意味──心臓と脳、それぞれに異なる影響
18年間の追跡調査の中で、心臓病と脳卒中の発症率に明確な違いが見えてきました。
まず心臓病については、肉を食べている人よりも、魚を食べる人や菜食主義の人の方が、発症率が低い傾向がありました。特に菜食のグループでは、心臓病のリスクが約2割ほど低下していたと報告されています。体格がスリムで、血液中の脂質も低めだったことが影響していると考えられています。
一方で、脳卒中に関しては逆の結果が出ています。菜食主義者の中で、特に出血性の脳卒中がやや多く見られました。しかもこの傾向は、年齢や生活習慣などを統計的に調整しても残っており、偶然とは言いにくいパターンだったようです。
つまり、菜食は心臓にとってはプラスに働く一方で、脳の血管には別の注意が必要かもしれない──という、健康の「明」と「陰」の両面が見えてきたのです。
⚖️ 結果をどう読むか──食の選び方は、バランスも大切
研究チームは、こうした結果を「食事の全体バランスの影響」として受け止めています。
菜食主義によってビタミンB12や長鎖n-3系脂肪酸などが不足すると、血管がもろくなる可能性があります。また、コレステロール値が極端に下がることも、出血性脳卒中に関係するかもしれません。ただし、これは観察研究であり、直接的な原因までは特定されていません。
研究には限界もあります。
食事内容は自己申告であり、日々の変化までは完全に捉えきれていません。薬の使用や長年の生活習慣も、すべてを追えているわけではありません。ただ、それでも対象人数の多さと長期の追跡、丁寧な分析から、この研究の結果には大きな意味があります。
🌿 中医学から見た「食と病」──体質との調和を考える視点
中医学の考え方では、食事は「栄養を摂る行為」にとどまらず、体のバランスを整える手段とされます。今回の結果も、その視点から見ると納得できる部分があります。
たとえば、心臓病のリスクが低かった菜食や魚食の人たちは、中医学でいう「痰湿」がたまりにくい体質と考えられます。痰湿とは、余分な脂や水分が巡りを妨げる状態で、肉や油を控える食事はそれを抑える助けになるとされます。
一方、出血性脳卒中の増加傾向が見られた菜食主義者には、「血虚(けっきょ)」や「陰虚(いんきょ)」の傾向が関係するかもしれません。これらは、血や潤いが足りない状態を指し、動物性食品を極端に避けることで生じやすくなります。
中医学では、食材にもそれぞれに性質があり、それらを体質や季節に応じて選ぶことが大切だとされています。どれだけ健康的に思える食事でも、体質との調和がとれていなければ、思わぬ不調につながることもある──中医学では、そんな見方が大切にされています。
🍽️ 食事は「選び方」ではなく「整え方」かもしれない
今回の研究から見えてきたのは、食事が私たちの健康に与える影響は一面的ではなく、良い面と注意すべき面の両方があるということでした。
何を食べるかで心臓や血管の状態が変わりうる一方で、その効果は体質や栄養のバランスによっても左右されます。
つまり、「体にいい食事」を探すのではなく、「今の自分に合った整え方」を考えること。それが、長く健康を保つうえで大切な視点かもしれません。
食べものは毎日の選択であり、その積み重ねが体をつくります。大きな変化はなくても、小さな見直しから始めてみる。そうした積み重ねが、未来の健康を支えてくれるのではないでしょうか。
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