科学が挑んだ「ツボ」の力

前兆のない片頭痛を防ぐために、手技鍼と偽鍼を比べた臨床試験の真実

目次

🤕 静かに続く「頭の痛み」との闘い

片頭痛はとても厄介です。

こめかみのあたりがズキズキと痛み、光や音に敏感になり、日常生活に支障が出ることもしばしばあります。

薬を使っても効果が続かない、あるいは副作用がつらい──そんな悩みを抱える人は少なくありません。

そこで注目されているのが「鍼(はり)」です。

痛みを和らげるだけでなく、再発を防ぐ「予防法」としても期待が高まっています。

ただし、長年の課題がひとつあります。

鍼の効果は本当に「鍼そのもの」によるものなのか、それとも「鍼を受けた」という安心感や期待感が生み出す「思い込みの効果」なのか──この境界を科学的に確かめることは、意外にも難しいのです。

今回の研究は、その疑問に真正面から挑んだものです。

本物の「鍼」と、皮膚を刺さない見た目だけの鍼(偽鍼)を比較し、さらに鍼を行わない通常ケアとも比べるという、緻密な設計で行われました。

しかも、参加者にはどちらの鍼を受けているのか知らされていません。
「気のせい」や「思い込み」をできるだけ排除して、純粋に鍼の力を見極めようとした研究です。

興味深いのは、この研究で使われたツボが、すべて中医学の理論に基づいて選ばれていることです。

古来の知恵と現代医学の検証が交わるこの試み──その結果に、片頭痛治療の新しい可能性が見え始めています。

では続きを見ていきましょう🪡


🪡 本物の鍼と「見せかけの鍼」をどう比べたのか

この研究は、中国の7つの病院で行われました。

対象となったのは、前兆のない片頭痛に悩む150人。薬を使っても効果が不十分な人や、薬の副作用が気になる人たちが参加しています。

参加者は3つのグループに分けられました。

ひとつ目は、実際にツボに鍼を刺して刺激を与える「手技鍼」のグループ。
ふたつ目は、皮膚を刺さずに「刺しているように見せるだけ」の「偽鍼」グループ。

そして三つ目は、鍼を受けずに普段の生活指導と必要な時の鎮痛薬だけで過ごす「通常ケア」グループです。

治療は8週間にわたり、1回30分の施術を20回行いました。

鍼を受ける人も、結果を評価する人も、どの鍼が本物かを知らないように設計されており、思い込みによる影響を極力減らす工夫がされています。

このようにして、「鍼そのものにどれだけの力があるのか」を公平に検証できる環境を整えました。

ツボの選定も重要なポイントです。

研究で使われた合谷、太衝、風池、太陽などは、頭痛やストレスに関係する気の流れを整える代表的な経穴です。

中医学では、これらを組み合わせることで、頭部の「上にのぼった気」を鎮め、全身のバランスを回復させることを目的とします。

現代医学と中医学の両方の視点を組み合わせた設計だからこそ、結果に説得力があるのです。


📊 鍼の力は「気のせい」を超えられたのか

研究が終わったとき、参加者の多くが20回の治療をやりきっていました。

そして結果は、研究者たちの予想を上回るものでした。

本物の鍼を受けた人たちは、頭痛の「回数」と「痛みのある日数」がどちらも減りました。

しかも、その効果は治療を終えてしばらく経っても続いていたのです。

一方で、偽の鍼を受けた人にもある程度の改善が見られましたが、その変化は本物の鍼には及びませんでした。

通常ケアだけの人たちでは、目立った改善は見られませんでした。

注目すべきは、この試験では「誰が本物の鍼を受けているか」を患者も評価者も知らなかったという点です。

つまり、「鍼を受けている」という思い込みだけで結果が変わったわけではなく、実際に体に作用する「何か」がある可能性を示したといえます。

また、副作用のような問題はほとんど報告されず、鍼治療の安全性が確認されています。

軽い痛みや出血などの一時的な反応はありましたが、深刻なトラブルは一件もありませんでした。

この結果を、研究チームは「手技鍼が片頭痛の予防に有効である可能性を示した」とまとめています。

数字にすれば小さな差かもしれませんが、日常生活の中では「痛みのない日が少しでも増える」ことが大きな意味を持ちます。


💡 これからの片頭痛ケアに向けて

今回の研究は、「鍼は片頭痛の予防にも効果があるのか?」という長年の疑問に、科学的な形で答えようとしたものでした。

結果として、鍼を実際に受けた人たちの多くが、痛みの回数や強さが減るという変化を経験しました。

しかもその効果は、治療が終わったあともしばらく続いていました。

もちろん、この研究にも限界があります。

治療期間は8週間と比較的短く、長期的な効果まではまだ分かっていません。また、薬物療法との併用や、慢性的な片頭痛への効果も今後の課題です。

それでも、「薬以外にも自分に合った方法があるかもしれない」という希望を持てることは、患者さんにとって大きな意味があります。

中医学の視点から見れば、鍼は単に痛みを止める手段ではなく、体全体のバランスを整える方法です。

頭の痛みをきっかけに、心身の気の流れを見直すことができるのも、鍼治療の特徴です。

現代医学の治療と中医学の知恵が手を取り合うことで、片頭痛ケアの選択肢はさらに広がっていくでしょう。

痛みを「鍼」でコントロールする──この研究は、そんな新しい方向を静かに示しています。

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