睡眠と「サクセスフル・エイジング」

「サクセスフル・エイジング」とは、「成功した加齢」、「幸福な老い」などとも言われますが、加齢に伴う変化にうまく適応して、健康で実りの多い人生を送ることを意味する言葉です

昨年発表された日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.14歳です

これは前年と比較して男性が0.04年、女性が0.05年伸びています
1983年と比較すると、男性が6.89年、女性が7.36年延びています

「人生100年時代」と言われていますが、そのうちの約30年は「高齢期」です

「高齢期」… 長いですね…

「サクセスフル・エイジング」を達成する上で、人生の約1/3を占める「高齢期」をどう生きるかはとても重要ですが、「高齢期」は変化が大きい時期でもあるため、その変化に合わせて「ニーズ」を満たしていくことが必要です

「高齢期」に訪れる変化は、「自立度の変化」と密接に関係し、「３つのステージ」があると言われています

・比較的高い自立度が保たれている、ステージ１
・自立度がやや低下し、困り事や不便なことが増えて、誰かの手を借りることが増えてくるステージ２
・自立度が大きく低下し、積極的な医療や介護が必要なステージ３

それぞれのステージには「ニーズ」があり

ステージ１では、「社会との繋がりやその中での活動を続くけること」
ステージ２では、「できるだけ他人の力を借りずに生活すること」
ステージ３では「住み慣れた土地、自宅で生活を続けること」

などが大きなニーズとして確認され、そのニーズを満たしながら生きていくことが「サクセスフル・エイジング」に繋がるのではないかという考えがあります

今回の報告は、主要な慢性疾患に罹患せず、良好な身体機能、認知機能、精神的健康を維持し、積極的に社会参加しながら長生きするという「サクセスフル・エイジング」を実現するためには何が重要なのかを「睡眠」との関係を調べることで、その一端を解明するための内容と言えると思います

報告によれば１日６時間未満の睡眠は、７時間睡眠に比べて「サクセスフル・エイジング」を達成する確率が48％低いこと、また、８時間睡眠や９時間以上の睡眠は、統計的に有意ではないものの、「サクセスフル・エイジング」を達成する確率は低かったとしています

「睡眠時間」と「サクセスフル・エイジング」をつなげる生物学的メカニズムは複雑ですが、慢性的な睡眠不足は「睡眠負債」の蓄積につながる可能性があり、これは加齢に伴う慢性疾患の重症度に関連しているという研究報告もあります

慢性的な睡眠不足は「視床下部-下垂体-副腎系（HPA系）」といわれる、ストレスや代謝、免疫など、多くの体内活動の調節に関わる神経内分泌系のコントロールシステムを活性化し、コルチゾール（ストレスホルモン）の分泌を増加させ、体に有害な免疫学的および代謝的変化を引き起こすことが知られています

また、睡眠不足は海馬容積の減少と視床のβアミロイドレベルの上昇に関連することも知られており、潜在的にうつ病や認知障害につながる可能性があります

このほか睡眠不足は「サクセスフル・エイジング」に関連する重要な根本的要因であるサルコペニアとも関連している可能性があることを示唆する報告もあります

これらのことからも適切な睡眠時間を維持することは「サクセスフル・エイジング」に大きな影響を与える要素であることは明らかです

「年齢を重ねると眠れなくなるのは仕方がない」

確かに、加齢とともに睡眠にも変化が現れます

早寝早起きになったり、深い眠りのノンレム睡眠の時間が減り、浅いレム睡眠の時間が増えることで中途覚醒もしやすくなります

ですが、だからと言って「仕方がない」と済ませて「人生100年時代の約30年」を睡眠不足のまま過ごすのはあまりにも長すぎます

年をとっても、睡眠薬に頼らない自然な眠り、時々途中で起きることがあっても基本的には朝までぐっすり…

そんな「睡眠」を目指していきましょう

睡眠のトラブルには「漢方」がよく効きます

複数の漢方の効果を分析した研究報告がありますが、その報告によれば「漢方薬は単独または通常のケアや治療法との併用することで、不眠症に対して有効である」と述べています

睡眠のトラブルで漢方を使うときに気をつけてほしいのは、体調や体質、トラブルの状態を考慮せずに漢方をしてしまうこと

漢方薬は植物や動物、鉱物などの生薬、自然由来の成分を用いて、中医学の理論に基づき体内のバランスを整えることを目的としていますので、専門家によるカウンセリングを受けた上で服用することが重要です

また、漢方での治療は、睡眠薬のように強制的に眠らせるものではなく、自然な睡眠を妨げる心身のアンバランスを解消していくため、睡眠のトラブル以外の体の不調も改善していくことができるのも特徴です

「サクセスフル・エイジング」を目指して、「睡眠」を整えていきましょう