😴 寝ないと感情が暴れだす? ― 睡眠と脳の意外な関係
「なんだか今日はイライラする」
そんな日が続いたとき、まず何を思い浮かべるでしょうか。
仕事のストレス、人間関係、それとも天気?
けれど、見落とされがちな要因がひとつあります。それが「睡眠」です。
最近の研究では、睡眠不足が感情の乱れを引き起こす脳の変化が明確に確認されています。具体的には、感情を調整する脳回路に「ズレ」が生じていることがわかりました。
実は中医学でも、「眠れないと心が乱れる」と古くから考えられてきました。「肝(かん)」や「心神(しんしん)」といった働きが、睡眠によって整えられているという考え方です。
なぜ、眠れないだけで心が不安定になるのか。
その背景にある脳のしくみを、最新の研究と中医学の視点から読み解いていきます。
🧪 「35時間起きっぱなし」──脳に何が起きた?
研究では、健康な若い大人を2つのグループに分けました。
ひとつはふだん通りに眠ったグループ、もうひとつは約35時間ずっと起き続けたグループです。
どちらのグループにも、いろいろな画像を見てもらいながら、脳の反応をfMRIという装置で調べました。
中には見るだけで少し嫌な気持ちになるような写真も含まれていました。
この検査では、とくに「扁桃体(へんとうたい)」と「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という脳の場所に注目しています。
「扁桃体」は、感情が動くときにすばやく反応するところ。「前頭前野」は、その感情を落ち着かせたりコントロールしたりする場所です。
「眠った脳」と「眠らない脳」で、この2つの場所がどう反応するのかをみるのが今回の研究の大きなポイントです。
📈 感情のブレーキが効かない?──睡眠不足で扁桃体が暴走
普段の脳なら、嫌な画像を見ても「気にしないようにしよう」と受け流せます。
ところが、35時間眠らずに起き続けた脳では、その切り替えが難しくなっていました。
ここで大きく変化していたのが「扁桃体」と呼ばれる部分です。
扁桃体は、怒りや恐怖、驚きなどの強い感情にすばやく反応する、いわば「感情のスイッチ」のような役割を担っています。
研究の結果、睡眠不足のグループではこの扁桃体が約60%も強く反応していることが確認されました。
しかも、刺激が強くなる(=嫌な写真になっていく)ほど、その差が大きくなっていたのです。
このことから、普段なら気にしない程度の出来事でも、眠れていないと「妙にカチンとくる」「心がざわつく」といった状態に陥りやすいことがわかります。
💔 冷静さとの接続が弱まる ― 前頭前野との連携が低下
扁桃体が強く反応していた一方で、普段はその反応を落ち着かせてくれる「前頭前野」とのつながりが、うまく働いていませんでした。
「前頭前野」は、感情を冷静にコントロールする役目を持っています。いつもなら、扁桃体が「カッとなる」ような反応を起こしても、前頭前野がブレーキをかけて、「まあまあ落ち着いて」となだめてくれるのです。
ところが睡眠不足の状態では、この「前頭前野」と「扁桃体」のあいだの連携がはっきりと弱まっていたことが、脳の検査でわかりました。脳の中で、本来スムーズに行われるはずのやりとりが滞っていた、というわけです。
そしてさらに、「別のつながり」が強くなっていることも見つかりました。「扁桃体」は「前頭前野」との関係が弱まる一方で、「自律神経」をコントロールする「脳幹」と、より強く結びついていたのです。
これによって、感情が理性的な判断から外れ、心と体がダイレクトにつながりやすくなっている状態だと考えられます。
たとえば、ちょっとしたことに過剰に反応してしまったり、怒りや不安がすぐに体の症状(動悸や息苦しさなど)として現れたりと、感情が暴れやすくなるのです。
🛋 寝不足がメンタルに響く──心の不調と脳のつながり
ここまで見てきた脳の変化は、普段の生活や心の健康にも深く関係しています。
今回の研究で分かったように、「扁桃体が過剰に反応する」「前頭前野との連携が弱くなる」という脳の状態は、うつ病や不安、双極性障害など、気分が不安定になりやすい病気でもよく見られる特徴です。
そして、そうした不調の背景には、睡眠不足がかかわっている可能性があるのです。
例えば、夜勤やシフト勤務、育児などで十分に眠れない日が続くと、知らないうちに感情のコントロールが難しくなることがあります。
ちょっとしたことでイライラしたり、気分が沈みやすくなったりするのは、性格のせいではなく、脳の中で実際に起きている変化によるものかもしれません。
つまり、「寝不足で怒りっぽくなる」は、ただの気分や気のせいではなく、脳の仕組みがうまく働かなくなっているサインとも考えられるのです。
だからこそ、睡眠を整えることは、心の調子を整えるためにもとても大切。
しっかり眠ることで、脳のネットワークも整い、感情も安定しやすくなります。
🌿 五臓のバランスと心の安定──中医学が見てきた「眠りと感情」
中医学では、感情と内臓の働きは深く結びついているとされています。
なかでも「肝(かん)」は、怒りやストレスなどの感情を調整する役割を担い、「心神(しんしん)」は精神の安定や思考の明晰さに関わるとされます。
この肝の働きを支えているのが「血(けつ)」です。
夜にしっかり眠ることで「血」が養われ、「肝」や「心神」のバランスも整い、感情が安定しやすくなる──これが中医学の基本的な考え方です。
しかし、睡眠が不足すると「血」が十分に補えず、「肝」のコントロール力も弱まります。
その結果、抑えきれなくなった肝の「陽」が上にのぼり、「肝陽上亢(かんようじょうこう)」と呼ばれる状態に傾きやすくなります。
この状態では、イライラや怒りっぽさ、落ち着きのなさが出てきやすくなります。
まさに、今回の研究で確認された「睡眠不足による感情の高ぶり」と重なるものです。
現代の脳科学は、「扁桃体」の反応が強まり、「前頭前野」との連携が弱まるという脳の変化を捉えました。
異なる言葉と視点でありながら、どちらの見方も「眠りが心を整える」ことの大切さを、違う角度から示しているように思えます。
🧭 感情を整えるカギは「眠り」──脳と心を守るためにできること
今回の研究にはいくつかの限界があります。
刺激が画像に限定されていたこと、被験者が健康な若年層に限られていたこと、そしてスキャンが夕方に行われたため、体内時計の影響が完全には除けない点などです。
それでも、「睡眠が感情にどう影響するのか」を脳の変化として可視化できた意義は、決して小さくありません。
日々のなかで、なんとなく気分が落ち着かない、イライラしやすい──そんなときこそ、「気のせい」と片づける前に、まず見直したいのが「眠り」です。
スマートフォンを早めに手放す、寝る前のカフェインを控える、同じ時間に布団に入る──
どれもシンプルな習慣ですが、脳と心の働きにとっては、確かな支えになります。
感情がゆらぐとき、それは脳が休息を求めているサインかもしれません。
「脳を守ることは、感情を守ること。」
その一歩は、ほんの少し早く布団に入ることから始められます。
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