生姜は関節を守れるか

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🌱 生姜が医学の舞台へ

ショウガといえば、寒い日に体を温める食材としてなじみ深い存在です。ですが、その働きは料理だけにとどまりません。古くから中医学では「体を温め、血の巡りを良くし、冷えによる痛みをやわらげる」力があるとされ、実際にさまざまな症状に使われてきました。

今回ご紹介するのは、そんなショウガの力を科学的に確かめた最新の臨床研究です。

しかも使ったのは、たった125mgの高濃度ショウガ抽出物。粉末のショウガにすると、ほんのひとつまみ程度。それでも体の中では、気になる変化が起こっていました。

この研究結果は、中医学で語られてきたショウガの働きと驚くほど重なっています。

伝統の知恵が、現代のデータで裏づけられつつあるのです。

では、その変化とはどんなものだったのか──

続きを読めば見えてきます 📖


🦵 研究のきっかけ──副作用の少ない痛み対策を求めて

関節や筋肉の痛みは、変形性関節症や運動後の炎症など、さまざまな背景で起こります。一般的な対処法としては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が広く使われていますが、これらは長期使用で胃腸障害、腎機能や肝機能の悪化、さらには心血管イベントのリスク上昇などが問題になります。

そこで研究者たちが目を向けたのが、生姜(Zingiber officinale)に含まれる有効成分です。

特に「ジンゲロール」「ショウガオール」「パラドール」などには、炎症を抑える作用や、痛みの感覚を伝える受容体の働きを弱める作用が知られています。

ただし、生姜の粉末や刻みでは有効成分の含有率は1〜2%程度で、臨床的に効果が期待できるジンゲロール量(10〜30mg/日)を得るには1〜3gの摂取が必要です。

日常的に続けるには量が多く、摂取のしやすさが課題でした。

そこで本研究では、特殊な方法でジンゲロール濃度を10%まで高めた高濃度ジンジャーエキスを使用。

少量でも有効成分を確保できる形で、痛みや炎症に対する効果を検証することになりました。


📋 どんな方法で調べたのか──8週間の二重盲検ランダム化試験

研究の対象は、40〜75歳で軽度から中等度の関節または筋肉の痛みがあり、血液中の炎症マーカーが高め、または医師から変形性関節症の診断を受けた30人(男女各15名)です。

参加者は年齢・性別・体重などをそろえてジンジャー群プラセボ群に無作為に分けられました。

  • ジンジャー群:高濃度ジンジャーエキス125mg(ジンゲロール12.5mg含有)を毎朝1回、58日間摂取
  • プラセボ群:見た目や味をそろえたカプセルを同じ条件で摂取

試験は二重盲検法で行われ、参加者も研究スタッフもどちらを摂取しているか分からない状態を維持しました。

評価項目は以下の通りです。

  • 主な項目:痛み・こわばり・日常動作の能力、炎症マーカー
  • そのほかの項目:関節の動く範囲・柔軟性、生活の質、鎮痛薬の使用状況、血液検査による健康指標、安全性、副作用

また、各評価日の前に参加者は「自分の体重の30%に相当するダンベルを両手に持ってスクワット(椅子の高さまで)10回×3セット」を実施し、軽度の筋肉ダメージを与えました。

その48時間後に痛みや炎症マーカーの変化を測定し、回復への影響を観察しました。


💡 結果は?──痛みやこわばりがやや軽減

8週間の介入後、ジンジャー群では痛み・こわばり・日常動作のしやすさに改善が見られました。特に、夜間の痛み、階段の上り下りでの不快感、椅子に長く座った後の立ち上がりなどが軽くなる傾向がありました。

膝・股関節の痛みやこわばり、機能障害の評価では、ジンジャー群は痛み・こわばり・機能スコアすべてがベースラインより低下しました。

変化は「夜中に痛みで目覚める回数が減る」「歩き始めがスムーズになる」といった日常感覚に近いものでした。プラセボ群にも軽度の改善は見られましたが、ジンジャー群の改善幅がやや大きい傾向でした。

太ももへの圧迫痛テストでは、ジンジャー群は特に太ももの内側の痛みのスコアが低下傾向を示しました。

さらに、試験期間中に市販鎮痛薬を使った人の割合は、ジンジャー群46.7%に対し、プラセボ群73.3%と少なくなっており、「薬に頼る頻度」が下がる可能性が示唆されました(ただし統計的な有意差はありませんでした)。


🔬 炎症マーカーの変化──体の中の炎症の「火種」を静める働き

血液検査の結果、ジンジャー郡では、体の中で炎症を起こす物質がいくつか減っていました。特に、

  • IL-1β:炎症のスイッチを入れる物質
  • TNF-α:炎症を一気に広げる物質
  • IL-5:免疫細胞を活性化する物質
  • CRP:炎症があるときに増えるたんぱく質

これらが減少傾向を示し、「体の中での炎症」が少し落ち着いたような状態になっていました。

一方で、一部の免疫に関連する物質は運動の後に上昇していましたが、これは体が自分を守るために一時的に防御体制を強めた反応と考えられます。

つまり、「生姜」は単に炎症を鎮めるだけでなく、必要なときには体の防御力を高める「バランス調整役」のような働きをしている可能性があります。

この結果は、「生姜」に含まれるジンゲロールショウガオールが、炎症の原因物質の作られ方や、痛みを伝える神経の働きを和らげる作用を持つという、これまでの科学的な知見とも一致しています。


🛡 安全性と副作用──短期的には問題なし!

8週間の摂取期間中、血液検査・血圧・心拍数などの健康指標に大きな異常は見られませんでした。腎機能、肝機能、電解質バランスも正常範囲内で推移しており、短期的には安全性が確認されました。

副作用として報告されたのは、頭痛・動悸・緊張感などですが、発生頻度は低く(週1〜2回程度)、症状も軽度でした。大半は一部の参加者に限定され、摂取中止を必要とするほどではありませんでした。

また、ジンジャー群では市販鎮痛薬の使用頻度が低い傾向が見られ、薬に頼らず過ごせる日がやや増えていたことも安全面から見れば好ましい結果といえます。


🌿 中医学から見た生姜の力──温め、巡らせ、痛みを和らげる

中医学では、生姜(新鮮な根茎)は「辛味」「微温」の性質を持ち、主な効能は解表散寒(外から入った冷えを散らす)、温中止嘔(胃を温め吐き気を抑える)、温肺止咳(肺を温め咳を止める)、解毒(毒を中和する)とされています。

今回の研究で見られた痛みやこわばりの軽減、炎症マーカーの低下は、この中医学的な作用とよく重なります。

冷えによる関節の不調や、運動後の回復が遅いといった状態に、生姜が持つ「温めて巡らせる力」がプラスに働いた可能性があります。

特に、高濃度に抽出されたジンゲロールやショウガオールは、中医学でいう「邪を追い払い、正気(体の守る力)を高める」働きにも通じると考えられます。

現代科学の分析と古くからの理論が、今回の結果でつながりました。


🖋 生姜がもたらす、少し軽やかな明日

生姜の力で、関節や筋肉のこわばりが和らぎ、動き出しが少し楽になる──そんな「生姜の魅力」がこの研究から見えてきました。

ほんの少しの変化でも、階段を上る足取りや、朝の立ち上がりの軽さは日々の気分を変えてくれます。

薬に頼る日が減り、安心して体を動かせる時間が増えることは、心にも余裕をもたらします。

台所で香る生姜の香りが、体をゆっくりと整え、巡りを良くし、冷えを追い払う。そんな日常が積み重なれば、数年後のあなたの関節は、今よりもっと自由で、軽やかかもしれません。

生姜を食卓やお茶に取り入れることは、小さくても確かな、自分の未来への投資です。

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