母乳には「時間」が流れている

目次

🕰️ 母乳の中で何が起きているのか

私たちの体は、朝になると自然に目が覚め、夜には静かに眠りへと向かいます。

この当たり前のようなリズムは、体の中にある「時計」によって調整されています。けれど、赤ちゃんにはまだその時計が整っていません。そんな未完成な存在が、どうやって昼と夜を学んでいくのか──その鍵を握っているのが、実は「母乳」かもしれないのです。

母乳には、赤ちゃんを育てる栄養だけでなく、ホルモンや免疫因子、そして微生物たちが含まれています。そして近年、「それらの成分が、時間帯によって変化しているかもしれない」という興味深い視点が、少しずつ研究で明らかになりつつあります。

今回紹介するのは、そんな「母乳の中の時間の流れ」を照らし出した、ある先進的な研究です。

何気ない日常の中にある授乳という営みを、「時間」という視点で見つめ直すことで、私たちは母と子のつながりの奥深さをあらためて知ることになるかもしれません。

そしてこの「時間」と「母乳」の関係は、中医学の視点からも非常に興味深いものです。

中医学には「子午流注(しごるちゅう)」という概念があり、気血が24時間をかけて臓腑をめぐるとされています。たとえば深夜は「肝」や「腎」が活性化し、修復や成長が促される時間。もし母乳にもそのリズムが宿っているとしたら──。

それはきっと、赤ちゃんの体にそっと寄り添いながら、一日のリズムを教えてくれる「時間」なのかもしれません。

とても興味深い研究です。

では、続きをみていきましょう!


🔬 母乳の中の「時間」を読む研究

この研究は、日々の母乳の中に「時間のサイン」が刻まれているのではないか──そんな問いから始まっています。

そこで研究チームは、授乳中の母親たちから、朝・昼・夕・深夜の4つの時間帯に分けて母乳を搾ってもらい、それぞれの成分を分析しました。

調べたのは、睡眠や覚醒に関わるホルモン、赤ちゃんを守る免疫因子、そしてミルクの中にひっそりと息づく微生物たち。

さらに、ただ「平均値」を出すだけでなく、赤ちゃんの月齢や性別、お母さんの体型によって、母乳のリズムがどう変わるのかも細かく検証されています。

母乳を「時間」という視点でとらえ直すことで、そこにどんなリズムが流れているのか。その全体像を描こうとする、静かで緻密な試みです。


🌙 夜と朝で、母乳が「表情」を変える

母乳は、いつ飲んでも同じ──そんなイメージをくつがえすような変化が、ホルモンの中に現れていました。

まず、「眠りのホルモン」として知られる「メラトニン」。

これが母乳の中では、深夜にぐんと増えているのです。昼間には少なくなるこの成分が、夜になると自然に現れるということは、赤ちゃんの体にも「今は眠る時間だよ」と伝えているのかもしれません。

一方、朝になると「目覚め」をうながすコルチゾールの濃度が上昇します。

これは大人の体内時計と同じような動きで、母乳を通じて「朝」のスイッチが入ります。

さらに、感染防御を担う「IgA」や「ラクトフェリン」などの免疫成分については、「時間帯」だけではなく、「赤ちゃんの月齢」や「お母さんの体型」によって変化があることも示唆されました。生まれて間もない赤ちゃんに与えられる母乳には、特にこれらの成分が豊富に含まれていましたす。

時間ごとに変化するこれらの成分の「表情」は、赤ちゃんのリズムを整えるために、自然が与えた優しい仕組みなのかもしれません。


🦠 母乳の中で入れ替わる「目に見えない住人たち」

母乳の中には、ホルモンや免疫成分だけでなく、たくさんの細菌たちも暮らしています。そして興味深いことに、彼らもまた、時間によってその顔ぶれを変えていたのです。

たとえば夜の母乳には、肌や粘膜など、人の身体に由来する「皮膚由来の細菌」が多く見られました。一方で昼間の母乳には、水や空気など、周囲の「環境由来の細菌」が多く含まれていたのです。

まるで、母乳の中で細菌たちが時間に合わせて、静かに役目を交代しているようでした。

さらにこの研究では、どの菌がいるかだけでなく、菌同士の関係性にも注目されています。

その結果、時間帯によって「主役」になる菌が入れ替わっている様子も見えてきました。深夜に中心となる菌、朝に現れる菌、昼に活発になる菌──その構成は、まさに時間の流れとともに移り変わっていたのです。

こうした変化は、赤ちゃんの腸内環境や免疫の発達に、何らかの影響を与えていると考えられます。

母乳の中では、目には見えないけれど、時間のリズムにあわせて動き出す、小さな世界が広がっていたのです。


☘️ リズムとつながる母乳の力

中医学では、母乳は「気血(きけつ)」が変化したものとされ、母体の健やかな気血が、豊かな母乳を生み出すと考えられています。

そしてこの「気血」は、単に体内を巡るだけでなく、「時間」によっても影響を受けます。

中医学には「子午流注(しごるちゅう)」という概念があり、気血は24時間の周期の中で、一定のリズムに沿って臓腑をめぐるとされています。

たとえば深夜は、「肝」や「腎」が活性化し、体の修復や成長が促される時間。

もしこの時間帯に、母乳の中に眠りを助ける成分が多く含まれているとすれば、それは中医学のリズムとぴたりと重なります。

現代科学が明らかにした、母乳中のホルモンや細菌の「時間帯による変化」は、まさにこの「時間の巡り」という中医学の知恵と響き合うもの。

つまり、最新の研究で見えてきた母乳の変化は、古くから中医学が大切にしてきたリズムの存在を、別の角度から裏づけているともいえるのです。

赤ちゃんが受け取る一杯の母乳には、母の気血とともに、「時を伝える力」もまた宿っているのかもしれません。


💡 授乳はリズムを作るための処方箋

母乳は、赤ちゃんの命を育むために欠かせないもの──けれど、それは単なる「栄養」ではありません。

この研究が教えてくれたのは、母乳の中には、「時間」が流れているということでした。

夜には眠りを促す成分が増え、朝には目覚めをうながすホルモンが現れる──さらには、時間帯によって、母乳の中の細菌たちまでもが入れ替わっていたのです。

そんな母乳の変化は、子どもへの「時間を学んでもらう処方箋」のようです。

そこには、科学が見つけたリズムと、中医学が古くから説いてきた「時間と調和」の智慧が重なり合って見えてきます。

育児という日々の営みの中に、こんなにも奥深い「生理と時間の調和」が隠れていたことに驚かされます。

日々の育児は忙しく、ときに手探りです。

けれど、母乳に時間をつたえるメッセージが宿っていると知ることで、いつもの授乳が、ほんの少し違って見えてきます。

授乳のタイミングや搾乳の扱い方、母親の心と体の状態──そのひとつひとつが、赤ちゃんの体内時計や免疫バランスに静かに影響を与えているのだとすれば、「いつ、どのように与えるか」という視点にも、もっと目を向けていく必要があるのかもしれません。

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