摂食障害(拒食症、神経やせ症)と漢方・心理療法について

こんにちは、相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。

 

漢方・心理相談で増えてきているのが「摂食障害」です。

 

摂食障害は、体重や体型への強いこだわりから食事量を極端に制限したり、意図的な嘔吐などの行動がみられ近年増加しています。

摂食障害は「拒食症」と言われる「神経性やせ症」と「過食症」と言われる「神経性過食症」「過食性障害」に分類されます。摂食障害は心理的問題が背景にあるため、食行動の問題だけでなく心の問題にも目を向けることが重要です。

摂食障害は90〜95%が女性で、10代半ばに最もみられますが、20代初期にも5%程度にみられます。

 

今回は近年相談で増えている「神経性やせ症」についてです。

 

神経性やせ症(拒食症)について

神経性やせ症(拒食症)は、摂食障害の一種で、自分の体型や体重に対する過度な不安から、食事制限や過度な運動などを行って極端に痩せる病気です。神経性やせ症(拒食症)では、必要なカロリーを制限するため、健康を維持できる体重よりも低くなりますが、体重増加に対する強い恐怖感があり、自分の体重や体型について健康を維持するために必要な認識が不足していたり、誤った認知のため体重が増やせなくなります。自然に治ることはほとんどなく、関わり方を周囲が身につけてサポートし続けることが必要となります。

健康を維持するのが難しい深刻な状況であってもその認識が薄いためなかなか「治療」に辿り着けないことが多いです。

神経性やせ症(拒食症)は、「制限型(AN-R)」と「過食・排出型(AN-BP)」に分けられます。

「制限型」は、嘔吐したり薬を使ったりするなどの「過食/排出行動」をせず、極端なダイエット(食事をしない、過剰な運動など)によるもので、「過食・排出型」は、過食や排出行動を繰り返すという特徴があります。

健康を維持するために必要な体重を維持することをこばみ、体重増加にとても強い恐怖感を持ちます。その恐怖感はとても強く争いきれるものではありません。

体重が増えないようにるために、食べる量を減らそうとする一方、その反動で過食をしたり、過食後は意図的な嘔吐をしたり、過剰な運動や不適切な薬剤の使用もみられます。

これらの行動は、隠れて行われることが多く、家族でも気づかないこともあります。

一方で気づく変化もあります。

見た目ですぐに気づける激しい体重変動、不適切な薬剤の使用による下痢や腹部のけいれん、唾液腺の腫れ、指を使って嘔吐するときに歯に指が当たってできる傷あと(吐きだこ)、胃酸による歯のエナメル質の溶解などです。

 

摂食障害、拒食症、神経性やせ症、はきだこ<相模原 漢方 鍼灸 接骨 タナココ>

長期間にわたり指を使って嘔吐していると、何度も歯があたる部位に“吐きダコ”ができることがあります

 

神経性やせ症(拒食症)では、大幅な体重減少は、重度の栄養不良や生命を脅かす問題につながり、例えば電解質(ナトリウム、カリウム、塩素イオンなど)などに異常が起こると重篤な不整脈を起こすことがあります。

そのほか様々な身体症状が見られ、死亡率は6〜20%とされ、他の精神疾患よりも高いです。

体重が標準体重の75%以下になると子どもでは発育への影響もみられるようになります。標準体重の50%以下になると半数以上に低血糖による意識障害がみられます。そのため入院治療が必要になることもあります。

 

原因・要因について

神経性やせ症(拒食症)は、思春期の女子の約0.5%〜1%にみられ、女性は男性の10〜20倍多くみられます。特定の要因で発症するのではなく、生物学的・心理学的・社会要因が複雑に相互に関連しあって発症すると考えられています。

生物学的な要因には、遺伝や内分泌学的な異常が、心理学的な要因には、誤った知識や認知の歪み、自尊心の低さから自己の価値を見出すために食事を制限し体重を減らそうとしたり、完璧主義、強迫的な性格などが影響を与えることもあります。社会的要因としては、飽食の時代における相反する美容観(やせ願望、肥満蔑視の思想など)や女性の社会進出などの影響があげられています。

また対人関係や家族関係に問題を抱えている場合も多いためこれらの要因もあります。

 

治療について

神経性やせ症の根本的な改善をもたらす薬物療法はありませんが、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)などの抗うつ剤は症状軽減に役立つといわれています。またオランザピンという薬の適応症が併存する場合は、オランザピンにより強迫性を低下させたり、オランザピンの服用でみられる「体重増加」の副作用が治療の助けになる場合があります。

症状軽減と心理的援助の両方が必要だが、症状が重症で生活が破綻しているような場合は、症状コントロールを行ってから心理面の援助を行う。発症初期の介入が有効で、家族療法などの心理療法は発症3年未満では有効であるとの報告もありますが、長期化した「SEED」と呼ばれる「重症遷延性摂食障害」では治療がうまくいかないことが多いです。BMIが15未満の極度の「やせ」の状態では栄養療法が最優先となりますが、体重が回復傾向にある場合、認知行動療法が役立つことがあります。

摂食障害では特有の考え方や行動の習慣があり、それが摂食障害から抜け出せなくなっている要因の1つであるため、心理学的アプローチで修正を試みることがあり、近年は、認知行動療法を用いた摂食障害へのアプローチが取り入れられるようになってきています。専門の施設が少なくこれからの広がりが期待されています。

 

子どもの神経性やせ症について

子どもの神経性やせ症は、ストレスがきっかけで発症することがあります。

家族内でのしわ寄せや葛藤だったり、学業・習い事などの負担だったり、人間関係や進学でのつまづきなどです。しかし、これらは誰にでも起こることで、このこと自体が問題というわけではなく、これらのストレスを乗り越える際になんらかのきっかけで始めたダイエットが思いのほかうまく行ったり、過労、体調不良で意図せずに痩せてしまったりすることで、「困難な状況」を乗り越えることと「やせること」の結びつきが強くなってしまい、対処が難しい場面やストレスが強くなると「痩せること」で回避してしまうようになります。

このような状況では、自分自身の状態を「問題」として認識していないため、受診を促しても拒否されてしまいます。そのうち、痩せることへのこだわりが強くなったり、痩せすぎると思考、集中、判断力の低下が起こったり不調も増えてきます。

子どものころは、困難と感じる場面やストレスに直面した時に、コーピングスキル(ストレスを適切に処理する能力)が未熟な場合、小さなストレスであっても本人にとっては大きな衝撃と感じてしまい、症状を悪化させてしまいます。家庭を回復の場にするためには、どんな気持ちであっても受け止めてくれる安心できる場であることが必要です。

また、食事や体重のコントロールについては、保護者は基本的には無力です。食事や体重について指摘したり、食事を監視したりすると家庭が安心できる場にはならなくなります。問題に目を向けられるように、例えば身体的な状態の変化、たとえば「肌荒れ」「抜け毛が増えた」などをきっかけにして受診をすすめたり、また「生理が止まった」などの変化は受診の契機になりやすいので、焦らずに無理強いせずに受診を促していきます。

このほか「子どもを育てること」「家族の関わり方」「家族が疲れないため」に「しなければならないこと」「してはいけないことに」気をつけながらサポートしつづけることが必要になります。

 

神経性やせ症と漢方・心理サポート

摂食障害、特に拒食症(神経性やせ症)については対応できる施設が近くになかったり、西洋薬を使わずになんとかしたいと希望されてご相談に来られる方が増えています。また「拒食症みたいだが、病院に行きたがらないのでなんとかして欲しい」というご相談もあります。

神経性やせ症では、痩せていけば痩せていくほど、困った心理や行動が増えて「食」に振り回され、対処できない問題が起こるたびに「痩せること」に逃避して、そのこと自体が回復を邪魔してしまう悪循環に陥ることがあります。これを「飢餓症候群」といいます。

このような状態になってしまうと治療が困難になってしまいますので、早い段階での対処がとても重要です。

漢方で体のケアを行いながら、心理学的アプローチでケアをする方法は効果的ではありますが、摂食障害、特に神経性やせ症(拒食症)のケアは遅れれば遅れるほど難しくなり、年単位で時間もかかるため相談のタイミングは逃さないようにしてください。

体重の目安としては、たとえば160cmで45kgを下回り始めたら標準体重の85%程度となり注意が必要です。40kgを切るような場合は標準体重の75%となり緊急性が高く、漢方や心理サポート、家族の関わりだけでなんとかできる状態ではなくなります。

本人や周囲や家族が疲弊してしまう前にまずは相談することが大切です。

 

女性に多い「神経性やせ症」ですが、男性でもなることがあります。女性よりも気付きにくいこともありますので、男性だから大丈夫というわけではありませんので、変化に気づき早い対応が必要です。

 

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