味覚障害の漢方治療

相模原タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院です。

 

コロナ禍の影響もあり、味覚障害の相談が増えました。


日常的に味覚についての相談は少なくありません。味覚の変化について悩んでいる方は高齢の方に比較的多く、これは加齢により味を感じる細胞の減少、唾液量の減少、口腔内環境の悪化などが主な原因と考えられています。

 

舌の構造

味は主に舌で感じますが、それは味蕾(みらい)という味を感じるセンサーの働きによります。味蕾は舌の表面にある突起物(舌乳頭)の中にあります。

舌の粘膜には4つの舌乳頭があります。

 

味覚障害(相模原 タナココ漢方薬局・鍼灸接骨院)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

この中で糸状乳頭以外の舌乳頭(茸状乳頭、有郭乳頭、葉状乳頭)に味蕾があり、特に有郭乳頭に多く、次に葉状乳頭に多いです。茸状乳頭には少しあります。全部で9,000個ほどあると言われています。

味蕾は短い周期で新しく生まれ変わりますが、年とともに数が減ったり、細胞の生まれ変わりに必要な亜鉛が不足したり、何かの原因で神経が障害されたりすると味覚障害が起こります。

味蕾が感じることができる基本的な味の種類は、甘味、塩味、酸味、苦味の4種類(うま味を加えると5種類)とされています。

中医学の味覚の捉え方には「五味」があり、酸・苦・甘・辛・鹹に分類されます。
これは単に味覚上の分類だけではなく、五味と人体の五臓(肝・心・脾・肺・腎)と五腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱)はそれぞれに対応すると考えられているため、その関係性を利用し治療の参考にします。

 

味覚障害の原因

味覚障害には加齢によるもの以外にいくつか原因があります。

亜鉛欠乏によるもの、薬剤性のもの、心因性のもの、他の疾患が原因(悪性腫瘍、糖尿病、甲状腺の病気、)として見られるものなどです。そして特発性=原因不明があります。

また、病気ではありませんが、妊娠により味覚の変化が見られることもあります。

 

味覚障害の治療

原因のわかっているものについては西洋医学的治療がはじめに選択されることがありますが、味覚障害の確実な治療法は確立されていません。

中医学での治療については特発性や心因性の場合で主に試されることがありますが、西洋医学的な治療でうまくいかない場合にも試されることが多いです。

 

中医学的な治療は例えば自発性異常味覚(口の中に何も入っていないのに味を感じる味覚障害)では苦味を感じることが多いのですが、その場合、小柴胡湯、黄連解毒湯などが用いられます。酸味を感じる場合は、竜胆瀉肝湯、半夏瀉心湯、柴胡清肝湯など、甘みを感じる場合は、茵蔯蒿湯、茵蔯五苓散など、塩辛い場合は六味丸や八味地黄丸などが使われることがあります。風邪を引いた後に味を感じないという場合は補中益気湯が用いられることがあります。

味覚障害は短期間に改善することは少ないため漢方も一定期間服用することになります。その際は、さらに体質によって組み合わせを変えたり、しながら選んでいきます。

また、新型コロナウイルス感染後に見られる味覚障害については、ウイルスが味蕾や神経を障害することに加え、嗅覚障害による風味障害が考えられており、この場合、当帰芍薬散、加味帰脾湯が試されています。

 

味覚障害の方は意外に多く原因もさまざまです。確立された治療法もなく、自分ではなんともしにくい症状です。

西洋医学での治療が難しい味覚障害の方に対して、一人ひとりに合わせた調節をした処方で対応しています。根気よく続けていただく必要がありますが、次第に改善していくことが多いです。

食事が美味しくない・・・、いつも口の中に何かしらの「味」があってストレスが溜まる・・・など悩まれている方は、一度漢方を試して見てください。

 

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