叫べば強くなる!?〜「孫悟空」の雄叫びの秘密に迫る〜

タナココ

意外と知らない「言葉と身体」の深い関係とは?

〜罵倒語が運動を変える最新研究〜

私たちが思わず口にする「罵倒語」。あまり褒められた言葉づかいではありませんが、最新の心理学研究では、そんな言葉が意外にも「体の力」を引き出す可能性があることが報告されています。

今回紹介する論文は、「罵倒が身体能力に与える影響」というユニークなテーマに真正面から取り組んだ研究です。

ちょっと笑ってしまうような内容かもしれませんが、その裏にはしっかりとした生理学的、心理学的、そして中医学的な背景が潜んでいます。

この研究を一緒に紐解きながら、「なぜ言葉が力になるのか?」を探っていきます。


目次

罵倒がパフォーマンスを引き出す?その現象

研究は、特定の罵倒語を使うことで運動中のパフォーマンスが向上するという驚きの結果を示していました。

たとえば、
握力テストでは平均8〜9% ⤴️
プランクでは12% ⤴️
壁立ち保持時間ではなんと22%も⤴️
という報告がなされています。

ここでのポイントは、「ただ叫ぶ」だけでなく、「意味を持った言葉=罵倒語」を使ったときに効果が現れている点です。

単に「中性語」(例:「木」や「水」など)、つまり感情がこもらない普通の言葉では、こうした結果は見られませんでした。

言葉を変えるだけで、こんなにも力が出るとは驚きですが、科学的にはそれを支える理由がいくつかあるのです。


交感神経を刺激? 身体が戦闘モードに

また、罵倒語を発すると、体が「戦う準備」を始めるような状態になることが分かってきました。これは、自律神経の中でも「交感神経」が活性化するためです。

交感神経は、緊張やストレスを感じたときに働く神経で、心拍数を上げたり、血流を増やしたりして、体を素早く動かせるように準備します。

実際の研究では、罵倒語を言ったときに皮膚の電気的な反応が高まり、体が興奮状態に入っていることが確認されました。これは、いわば「体が目を覚ました」ような状態です。

ただし、すべての指標が変わるわけではなく、心拍数や血圧などは大きく変わらなかったというデータもあります。そのため、罵倒の効果は交感神経だけでは説明しきれず、他の要素も関係していることが考えられます。


心理的な「解放感」が力を引き出す

怒りをこらえていた時に大きな声を出すとスッキリした経験があると思います。

罵倒語を使うと、心の中にたまった感情が一気に外に出て、気持ちが軽くなることがあります。これが「心理的な解放感」です。

研究では、罵倒語を使うことで感情の高まりや、ちょっとしたユーモアの感覚、さらには自信や集中力が強まることが報告されています。

脳の中では、感情のコントロールに関わる「扁桃体(へんとうたい)」という部分が活性化し、体を動かすためのモチベーションにもつながっていると考えられています。

音楽を聴いたり、大きな声を出したりすると気分が高まるのと同じように、罵倒語も「心に気合いを入れるスイッチ」になっているのかもしれません。

あまりよいスイッチの入れ方ではありませんが…


痛みを忘れさせる? 「罵倒」が持つ鎮痛効果

運動中、体が「痛い」「キツい」と感じた瞬間に、口から自然と出るのが罵倒語ということもあります。このとき、実は体の中では「痛みを感じにくくする仕組み」が働いている可能性があるようです。

これを「罵倒による鎮痛効果」といい、過去の実験でも繰り返し確認されています。たとえば、冷たい水に手を入れるテストで、罵倒語を言いながらの方が長く耐えられたというデータがあります。

罵倒語を使うことで、脳が痛みの信号をやわらげる働きを強めるのではないかと考えられており、これは脳内の「エンドルフィン」という天然の鎮痛物質の分泌に関係しているかもしれません。

つまり、「痛みをなくす」のではなく、「痛みを我慢しやすくする」ことで、より強く、より長く体を動かせるようになるというわけです。


使いすぎ注意? 罵倒の「慣れ」の罠

罵倒語にこれだけの効果があると聞くと、「それなら毎日使えばいいのでは?」と思うかもしれません。ですが、そこには落とし穴があります。実は、罵倒語を頻繁に使っている人ほど、効果が小さくなる傾向があるのです。

この現象は「慣れ」と呼ばれ、同じ刺激を何度も受けると、脳や体がその刺激に「反応しにくくなる」ことを意味します。例えば、毎朝同じアラーム音を聞いていると、だんだんその音に驚かなくなるのと同じです。

研究では、罵倒語をよく使う人ほど、痛みに対する耐性や力の出方にあまり変化が見られなかったと報告されています。そのため、「ここぞ!」という場面での使用にとどめておくことが、罵倒語のパワーを最大限に活かすコツかもしれません。


中医学で読み解く──気の巡りと「肝」の役割

中医学では、「感情」と「臓腑(ぞうふ)」の働きが密接に結びついています。特に、怒りやストレスといった感情は「肝(かん)」という臓腑と深い関係があります。

「肝」は体内の「気(き)」をスムーズに巡らせる役割を持っていますが、怒りや抑圧された感情によって気の流れが滞ると、「気滞(きたい)」と呼ばれる不調が起こるとされています。

罵倒語を発するという行為は、抑え込まれた感情を一気に外に吐き出す「発散」の働きを持ちます。中医学的にはこれを「疏肝解鬱」、つまり肝の滞った気の流れを解きほぐす作用と捉えます。

言葉を発することで、気が動き、精神的な緊張が緩和されると同時に、身体のエネルギーも引き出されやすくなるという考え方です。

また罵倒語によって心のモヤモヤが晴れると、「神(こころの状態)」が安定し、「気」との連携が取れ、結果として体が本来の力を発揮できるようになるという理屈にもつながります。


言葉の力を科学と伝統で見つめ直す

今回の研究は、普段はネガティブなイメージを持たれがちな「罵倒語」が、意外にも身体能力を引き出す可能性を秘めていることを示してくれました。

科学的には、自律神経や心理的解放、痛みの知覚といった多角的な視点からその仕組みが明らかになってきています。

さらに中医学の視点では、「肝」の働きを通じた「気の巡り」や「情志の発散」が、こうした現象と見事に重なります。言葉が心を動かし、その心が身体を活性化するという考え方は、古くから伝わる知恵とも調和するものです。

もちろん、罵倒語を常用することは社会的に好ましくありませんし、誤解を招くこともあります。しかし、声に出すこと、感情を適切に発散することの大切さを再認識する機会として、今回の研究はとても興味深い示唆を与えてくれます。

「口にする言葉が、あなたの力を変えるかもしれない」。

そんな視点で、自分の感情や表現と向き合ってみるのも、新しい心身ケアのヒントになるかもしれません。

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