削られていくのは、成績か、それとも眠りか

目次

👪 親の期待が子どもの睡眠を奪う!?


日本の子どもは、世界的に見ても睡眠時間が短い傾向があります。

OECDの調査でも、アジア圏の子どもたちは、推奨される睡眠時間に届いていないことが報告されています。

ただ、その理由は「ゲームやスマホのせい」と言い切れるほど単純ではありません。東アジアでは、電子メディア以上に、「勉強」「塾」といった教育環境が睡眠に強く影響している可能性が指摘されています。

中医学では、成長期の睡眠は「気」や「血」をしっかり養い、心と体を発育させる大切な時間です。

学び自体は有意義ですが、頑張りすぎる生活が積み重なると、「気」や「血」を消耗しすぎて、眠りのリズムが崩れやすくなると考えられます。その結果、発育の面でも負担が大きくなる可能性があります。

今回紹介する研究は、「親の教育願望」「塾通い」「子どもの睡眠」のつながりを、日本全国のデータで丁寧に分析したものです。

学年や地域によって見え方が変わるところが興味深く、中医学の視点から見ても考えさせられる内容が多く含まれています。

それでは、続きを見ていきましょう。


📘 どんな研究?

この研究では、「親がどれくらい高い学歴を望んでいるか」と「子どもの平日の睡眠時間」がどう関わっているのかを調べています。

さらに、そのつながりの途中にある「塾通い」が、どれほど影響しているのかも確かめています。

分析に使われたのは、日本全国の小中学生を対象にしたJLSCPという大規模調査で、今回は小学5年生から中学3年生までの4,839人が対象です。

研究では

  • 親はどのくらい進学を望んでいるのか
  • 塾に行っているのか
  • 実際にどれくらい寝ているのか

という3つの情報をもとに、子どもの生活リズムのどの点が「教育的な影響」とつながっているのかを細かく調べました。

「普段何気ない起きている家庭の習慣」がデータとして形になることで、睡眠との関係がわかりやすくなります。


😴 子どもたちはどれくらい寝ていた?

この調査では、小学5年生から中学3年生までの子どもたちが、平日にどれくらい寝ているかを記録しています。

結果は

  • 小学生は 平均8.3時間
  • 中学生は 平均7.4時間

という睡眠時間でした。

アメリカ睡眠医学会がすすめている睡眠時間は、小学生で9〜12時間、中学生で8〜10時間なので、この結果を見る限り、推奨より少し短めの睡眠になっていることがわかります。

睡眠が短い理由はひとつではありませんが、この研究では「教育とのつながり」に注目して調べています。


🎓 親の「進学してほしい気持ち」で「睡眠」はどう変わる?

研究では、親がどれくらい高い学歴を望んでいるかと、子どもの睡眠時間の関係も詳しく調べています。

結果は

  • 小学生では大きな差はなし
  • 中学生では、親の教育願望が高いほど睡眠が短くなる

という傾向がみられました。

中学生の場合、その差は「1日約 8 分」。

小さく見えても、1週間・1ヶ月・1年と続くと無視できない差になります。

中学生は高校進学を意識し始める時期なので、親の「もう少し頑張ってほしい」という気持ちが、生活リズムに反映されやすくなるのかもしれません。


🏫 「塾通い」で睡眠はどう変わる?

研究では、塾に通っているかどうかによって、子どもの睡眠がどれくらい変わるのかも調べています。塾に通っている子どもは、通っていない子どもより睡眠が少し短めでした。

結果は

  • 小学生は「1日約 7 分」
  • 中学生は「1日約 13 分」

という差が見られました。

特に中学生では、部活や宿題も増えるため、遅い時間まで活動が続きやすく、睡眠が削られやすい環境になってしまうことも考えられます。

さらに研究では、「親の教育願望 → 塾通い → 睡眠の影響」という流れが、どれくらいの割合で起きているかも調べられています。

ここから先の結果が、この研究の「山場」です。


🔗 親の願い → 塾 → 睡眠

中学生では、親が「大学まで進んでほしい」と思っているほど、「塾通い」する子どもが増える傾向がありました。そして、この「塾に行くこと」が、睡眠時間を少し短くする一因になっていたこともわかりました。

数字にすると、

  • 親の願望が高いと 睡眠が約8分短くなる
  • そのうち 2〜3分ぶんは塾通いが影響

つまり親の期待が強い → 塾に行く → 少しだけ睡眠が短くなる

という「つながり」が確認されたということです。

研究ではさらに「都会と地方でこの流れがどう変わるか」も調べています。


🏙️ 都会と地方の違い

同じ中学生でも、「どこに住んでいるか」で、親の教育願望・塾・睡眠のつながり方が少し変わっていました。

✔ 大都市圏

  • 親の教育願望が高くても、塾通いや睡眠への明確な影響は見られなかった

✔ 地方

  • 親の教育願望が高いと、塾に通う割合が増え、その影響が睡眠にも反映される傾向があった。

地方では、「親の期待 → 塾 → 睡眠」のつながりが都会よりハッキリしていました。その理由として研究者は、地方では大学進学を強く望む家庭の割合が都会より低めで、だからこそ 「望む家庭はより塾へ行かせる」という行動が強く出やすいのではないかと考えています。

つまり、都会では教育機会が広く整っていて差が見えにくく、地方では「望む度合いの差」が行動に反映されやすい、という構図があるということです。


🌱 中医学から見る「学び」と「眠り」

ここまで見てきたように、親の教育願望や塾通いは、子どもの睡眠に少しずつ影響していました。

この流れを中医学の視点で眺めると、また別の理解が生まれます。

中医学では、成長期の睡眠は「気」や「血」をしっかり養い、からだと心を育てる大切な時間と考えます。昼に使った力や脳の疲れは、夜の睡眠によって回復・解消します。この積み重ねが、子どものからだの成長や心の発達を支えています。

✔  勉強は大切──でも、睡眠を削らない

集中する時間が長くなるほど、「気」や「血」は消耗します。さらに夜遅くまで塾や宿題が続くと、休む時間が短くなり、からだが十分に回復できなくなります。

その結果

  • 寝つきにくい
  • 眠っても疲れが取れにくい
  • 翌日の集中が落ちやすい

といった状態になりやすくなると中医学では考えます。

今回の研究で見られた「数分〜十数分の睡眠の差」も、毎日積み重なると無視できません。睡眠が削られるほど、「気」や「血」消耗し、回復しにくくなり、結果的に「学ぶ力」そのものが弱まりやすくなります。

研究が示した内容に中医学の考え方を重ねると、教育環境が子どもの睡眠に与える影響がより理解できます。


🌟 この研究が教えてくれること

今回の研究では、親がどの程度の進学を望んでいるかという気持ちが、子どもの睡眠時間と関わっていることが示されました。

親の期待が高いほど、子どもの睡眠は少し短くなる傾向があり、その流れの一部には塾に通うことが関わっていました。

特に、都市部では目立たなかった関係が、地方ではよりはっきり見られた点が特徴です。

研究では、こうした結果をふまえ、子どもの睡眠時間をかくをするためには、従来の「生活習慣を整える」「スクリーンタイムを控える」といった対策だけでは十分ではなく、親の進学への期待そのものが子どもの睡眠に影響する可能性を知っておくことの大切さが示されています。

また、子どもが日常的に関わる場所として、塾がどのように学習と生活のバランスに影響するのかその役割をあらためて考える必要がある、という視点も提示されています。

教育への思いが、子どもの成長を応援するものであることに変わりはありません。

ただ、その思いが睡眠に影響しうることを理解しておくことで、学びと休息のバランスをより取りやすくなり、子どもが健やかに成長できる環境づくりにつながっていきます。

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