世界中のランナーの走行データから見えてきた「走り過ぎ」のライン

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🏃‍♀️ 知らないうちに一歩踏み越える瞬間

ランニングの帰り道、汗が引いていく感じや、頭が少しクリアになる感覚は、とても心地よいものです。

その一方で、調子が出てきたときほど「もう少し走れそう」という気持ちに背中を押されて、いつもより距離をぐっと伸ばしたくなることがあります。

こうした「もうちょっと」の積み重ねが、どのあたりから「ケガ」のリスクに変わっていくのか──世界中のランナーから集めた走行データと、18か月にわたるケガの記録を組み合わせて、その境目を確かめようとしたのが今回紹介する研究です。

ランニングを中医学の言葉で眺めると、「気(エネルギー)」と「血(栄養)」を巡らせ、筋や骨を養う、とても良い刺激になります。

その一方で、急に距離を伸ばしたり、体の回復が追いつかない状態で走り続けることは、「労倦(ろうけん)」といって、気血をじわじわと消耗させる負担として捉えられてきました。

今回の研究は、西洋医学の枠組みの中で、この「負担のかかる走り方」がどんな特徴を持っているのかを、5205人分の客観的な走行距離データと、18か月にわたるケガの記録から数字として浮かび上がらせようとしたものです。

「健康」のために走ろうとしたその「一歩」が、「ケガ」につながる「一歩」にならないようにするために──では、続きを見ていきましょう 🏃


📊 どんな研究?

この研究では、「5205人のランナー」のデータが使われています。

ランナーには腕時計型デバイスをつけて走ってもらい、1回ごとの走行距離が自動で記録されました。

研究期間は最長18か月(約1年半)です。そのあいだに記録されたランニングは、約59万回にのぼります。普段のトレーニングにかなり近い「リアルな走り方」のデータが集まっていると言えます。

ランナーには、週に1回、オンラインの質問票にも答えてもらいました。

「この1週間で、ランニングが原因だと思うケガや痛みはあったか」「体のどの部分か」「転倒などの事故によるものか、使いすぎによるものか」といった内容です。

こうして、「どのような走り方をしたあとに、どのようなケガの申告があったのか」を、走行距離のデータと並べて見られるようにし、「走り方」と「ケガの起こりやすさ」との関係を統計的に調べました。


🧪 研究チームが注目した「走り方」

この研究でいちばん大事なポイントは、「週に何キロ走ったか」よりも、「ある1回のランニングで、いつもよりどれくらい距離を伸ばしたか」を見ているところです。

研究チームは、直近30日間(約1か月)の中で「一番長く走った距離」を基準にして、その日走った距離がどれくらい上乗せされたかを計算しました。

たとえば、ここ1か月で一番長く走った日が「8km」だった人が、その日に「12km」走ったとします。

12km ÷ 8km = 1.5なので、「いつもの最長より50%距離を増やした走り方」という意味になります。

研究では、この増え方をおおまかに「ほとんど増えていない」「少し増やした」「けっこう増やした」「ほぼ倍以上に増やした」といった段階に分けて、「どのあたりからケガの報告が増えやすいのか」を見ていきました。


📉 結果は?

研究チームがまず見たのは、「ふだんと同じくらいの距離で走ったとき」と「距離を増やしたとき」とで、ケガの出やすさがどう違うか、という点です。

直近1か月の中で一番長く走った距離と、その10%以内の増加までを「基準」として、それより距離を増やしたグループと比べました。

その結果、「いつもの最長より10%を超えて距離を増やした1回のランニング」のあとでは、足や膝などの「使いすぎタイプのケガ」が報告される割合が、基準と比べておおよそ1.5倍前後に増えていました。さらに、一度に走る距離をほぼ2倍近くまで増やしたグループでは、その多さが2倍以上になっていました。

つまり、「1回のランニングで、いつもの距離から10%をだいぶ超えて増やした日ほど、そのあとに「使いすぎタイプのケガ」の報告が多くなる傾向が、データとしてはっきり示されていた、ということになります。


💨 中医学から見た「走りすぎ」

中医学では、ランニングのような持続する運動は、本来「気(エネルギー)」と「血(栄養)」をめぐらせて、筋や骨の状態を整える良い刺激と考えます。

一方で、体の準備ができていないのに「いつもより長く走る」「いきなり距離を増やす」といった走り方は、「労倦(ろうけん)」といって、気血を一度に消耗させる負担としてとらえられてきました。

「腎は骨を主り、肝は筋を主る」という中医学の考えでは、「走りすぎ」は腎(骨や成長・回復を支えるはたらき)と肝(筋肉のしなやかさや血のめぐりを支えるはたらき)に負担が集まりやすと考えます。

今回の研究で注目された「いつもの距離より、長く走った1回のランニング」は、中医学のイメージで言えば、この「労倦」にあたります。

体の回復や適応が追いつく前に、負担だけが先に大きくなり、筋や腱、関節まわりに「疲れが抜けきらない状態」がたまりやすくなるという状態になります。


📝 日常のランニングでどう生かすか

この研究では「走りすぎは良くない」という当たり前の話から一歩踏み込んで、「どんな増やし方が、体にとって負担になりやすいのか」を調べました。

そして見えてきたのは、「ランニングは、距離の増やし方を工夫すれば、長く楽しめる」つまり「どれだけ走ったか」よりも、「どう増やしたか」がカギになっていたということです。

これは、中医学でいう「労倦(ろうけん)」──体の回復が追いつかないうちに負担を重ねる状態──ともよく重なります。

走ること自体は、気や血の巡りを良くし、心身を整える力がありますが、その「良さ」を活かすには、体が対応できる範囲の増やし方を選ぶことが大事だと、古くからの知恵を確認させてくれる結果と言えます。

その日の体調に合わせて距離やペースを少しずつ調整していくことで、体をいたわりながら走り続けられる──そうした小さな調整の積み重ねが、「無理なく続けられるランニング習慣」を支える力になっていきます。

体への負担を抑え、ケガを予防しながらながら、ランニングを長く楽しんでいきましょう。

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