ソーシャルメディアと認知力の意外な関係

目次

✨ 「スクロール」が脳に与える影響

休み時間や放課後、スマートフォンを手にした子どもたちが、当たり前のように開くSNS。

友だちとのやりとりや動画の視聴、ちょっとした暇つぶしまで、ソーシャルメディアは今や彼らの日常に欠かせない存在です。

けれど気になるのは、その「何気ない習慣」が、成長途中の脳にどんな影響を与えているのかということ。

本人も周囲も気づかないうちに、ほんの少しずつ、でも確実に、脳の働きに変化が起きていたとしたら──それは見過ごせない問題です。

そんな疑問に向き合ったのが、今回紹介するアメリカの大規模な追跡研究。研究では、9歳から13歳までの子どもたちのSNS使用の変化を3年間にわたって記録しながら、記憶力や言葉の理解、注意力といった「認知機能」がどのように変わっていくかを調べました。

中医学では、こうした成長期は「腎(じん)」のエネルギーが育まれていく重要な時期にあたります。「腎」は脳や記憶、骨の発育にも関わるとされ、外からの刺激が過度に加わることで、その働きが乱れる可能性もあると考えられています。

画面越しに絶え間なく流れてくる情報の波。

それが子どもたちの脳にどんな影響を与えているのか──研究からは、子どもたちの将来を考える上で大切なヒントが見えてきました。

では、続きを見ていきましょう📱


🧪 脳の変化を追いかける

この研究では、思春期にさしかかる子どもたちのソーシャルメディアの使い方と、その間に起こる認知機能の変化との関係を明らかにしようとしています。

対象となったのは、アメリカ全土から参加した約6,500人の子どもたち。

研究チームは、子どもたちのSNSの使い方に着目して、それぞれの「使い方のパターン」を3つのグループに分類しています。

ひとつは、ほとんど使わずに過ごしたしたグループ。
もうひとつは、もともと使う頻度が少なかったけれど年齢とともに少しずつ増えていったグループ。
そして最後は、最初からSNSの使用が多く、その後さらに使用量が増えたグループです。

それぞれのグループで、脳の働きにどのような違いが見られたのかを調べるために、記憶や語彙、注意力などを測定する標準的なテストが行われました。

これらのテストは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が開発したもので、学力や日常生活にも関わる基本的な脳の働きを評価する内容になっています。


📉 見えてきたSNS利用と認知力の差

研究の結果、SNSをどれくらい使っていたかによって、子どもたちの「考える力」や「覚える力」に差が出ていることがわかりました。

ほとんどSNSを使っていなかった子どもたちに比べて、SNSの使用時間が増えていったグループでは、記憶力や読解力、語彙の理解など、いくつかのテストでスコアが下がる傾向が見られました。

言葉を読むテストや、順番に記憶する課題、語彙を理解する検査などで差が出ており、もともとSNSの利用時間が長く、さらに増えたグループで特にはっきり出ていました。

すべての子どもに大きな影響が出ていたわけではありませんが、こうした認知機能は学校の勉強や日常生活の中で大切な力なので、少しの変化でも積み重なれば大きな影響が出る可能性があります。

この結果から研究チームは「思春期初期の敏感な脳にとっては少しの使用でも何らかの影響があるかもしれない」と指摘しています。

まだ発達の途中にある脳は、外からの刺激に対して繊細であることが、データからも読み取れます。


🌱 中医学で見る、成長期のSNSと「腎」の関係

中医学では、思春期は「腎(じん)」の力が育っていく大切な時期とされます。

この「腎」は、生命エネルギーの土台とされ、脳の発達や記憶力、骨の成長にも関わると考えられています。

今回の研究は、そうした時期にある子どもたちが、日々どれだけ情報に触れているかによって、脳の働きに違いが見られるかもしれない──という点について述べたものです。

けれど、ここで重要なのは、「SNSが悪い」という単純な話ではないということです。

中医学では、刺激と休息のバランスが心身の安定に欠かせないと考えられています。

SNSを完全にやめるのではなく、使う時間や場面を意識しながら、触れることや、静かな時間を持つことで、体と心のめぐりを整えていく──そうした小さな積み重ねが、「腎」の力を養い、成長をしっかり支えてくれるとされています。

少し疲れていると感じた日は、ほんの数分でもスマホを置いて、深呼吸をしたり、目を閉じて静かに過ごしてみる。

そんな時間が、子どもたちの脳にも、心にも、きっといい影響をもたらしてくれます。

何かを制限するのではなく、整えていく──中医学の知恵は、そうした暮らし方のヒントを教えてくれます。


💡 子どもたちの脳に、ちょうどいいリズムを

今回の研究は、SNSの使い方が、子どもたちの「考える力」や「覚える力」とどう関わっているのかを、科学的に追いかけた貴重な報告でした。

SNSそのものを否定するのではなく、どのように使い、どんな環境で過ごしているか──そこに注目することの大切さを教えてくれます。

日々の生活の中で、スマートフォンやSNSはもはや欠かせないもの──けれど、脳も心もまだ育ち途中の時期だからこそ、刺激と休息のバランスを整えていくことが、これからますます大切になっていきます。

たとえば、画面を見る時間を少し区切ってみる。あるいは、夕方以降は静かな時間を意識的に作ってみる。

そうした「ちょっとした工夫」が、子どもたちの成長を穏やかに支えてくれます。

SNSとどう付き合っていくかは、これからの子どもたちが健やかに育つためのひとつの鍵になるかもしれません。

今、目の前にいる子どもたちの「未来の脳」のために、私たちができることを、少しずつ考えていけたらいいですね。

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