「9歳」が幸せのピーク?──年齢とともに変わる「こころの景色」

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🙋「あなたは今、幸せですか?」

人生に悩みを抱える6人の大人が、9歳の子どもたちが主役となる「王国」で童心に返りながら過ごす──そんな2泊3日の社会実験番組がありました。

この企画では「9歳が幸せのピーク(*番組表現)」とされる研究論文をヒントに、大人の「幸福感」をあらためて問い直す試みが行われていました。

今回は、その研究について、中医学の視点も少し交えながら読み解いてみたいと思います。


😊 幸福は年齢でどう変わるのか

年齢を重ねるにつれて、自分の「気分」や「満足感」が少しずつ変わっていきます。

以前より落ち着いたり、逆に繊細さが増したりと、その変化は人によっても時期によっても異なります。

では、この「変化」には何かしらの共通した傾向があるのでしょうか。

今回の研究では、その疑問に長い年月をかけて集められた膨大なデータを用いて答えを出そうとしました。

しかも、こころの変化を「年齢」という軸で追っていくと、医学や心理学だけでなく、中医学の視点とも重なって見えてきます。

たとえば、中医学では、成長期には気が動きやすく、高齢期には腎の働きがゆるやかになると考えられており、これらが感情のゆれ方に影響するとされています。

研究そのものは西洋医学的なアプローチですが、年齢とこころの関係を読むという点では、どこか通じるものがあります。

この研究を読み進めると、人生の中で「こころの傾き方」がどのように変化していくのか、その輪郭が少しずつ見えてきます。

どの時期にどんな動きがあるのか──続きを見ていきましょう。


🧪 この研究が何をどのように解析したか

この論文では、人生の中で「主観的幸福」がどのように変わるのかを調べるために、世界中で行われた縦断研究をまとめています。

対象となったのは 443のサンプルと46万0902人のデータ という大規模なもので、9歳から96歳までの幅広い年代を含んでいます。

研究では、「生活満足度」「ポジティブ感情」「ネガティブ感情」という3つの側面について、年齢層ごとに「変化量」がどれくらいになるのかを統計的に整理し、「こころの傾き方」を丁寧に描き出しています。

分析方法には、複数の研究結果を統合するメタ分析の手法が使われており、国・性別・測定方法などが違っても、全体としてどのような傾向があるのかを読み解けるよう工夫されています。


📉 子ども〜青年期の特徴

子どもから青年期にかけては、主観的幸福の変化がはっきりと現れる時期です。

生活満足度は 9〜16歳で低下 することが示されており、思春期の入り口で気持ちが揺れやすい様子が読み取れます。

ポジティブ感情も、この年代ではゆるやかに下がる方向にあり、日々の明るさが少し不安定になる傾向があります。

一方でネガティブ感情は、9〜12歳で一度下がったあと、22歳ごろまで上昇 する動きが示されており、感情の波が大きくなりやすい時期といえます。

気持ちが動きやすい年齢であることが、データにも反映されています。


📈 成人期の特徴

成人期に入ると、こころの変化は徐々に落ち着いていきます。

生活満足度は 16歳以降ゆるやかに上昇し、70歳頃まで緩やかな改善が続く とされ、日常への受け止め方が安定していく様子がわかります。

ポジティブ感情は年齢とともに下がる傾向が続きますが、青年期ほどの大きな変化ではありません。

ネガティブ感情は 22歳〜60歳で大きく低下 しており、マイナス方向の感情が成人期の中盤でかなり落ち着くことが示されています。

全体として、生活経験の積み重ねが気持ちの安定につながりやすい年代です。


📊 高齢期の特徴

高齢期に差しかかると、主観的幸福の動きが再び変わり始めます。

生活満足度は 70歳以降で低下に転じるとされ、長く続いた上向きの流れがここで切り替わります。

ポジティブ感情は、高齢期に入っても年齢とともに下がる傾向が続くとされています。

一方でネガティブ感情は 60歳以降で再び上昇し、気分の落ち込みや不安感が増えやすくなることが示されています。

生活環境や健康状態の変化が重なる時期でもあり、こころの動きにも影響が表れやすい段階といえます。


🌱 中医学の視点で「幸福」を考える

これまでの結果をまとめてみると、主観的幸福の変化には、年齢ごとに異なる特徴があることがわかります。研究では、生活満足度・ポジティブ感情・ネガティブ感情が、それぞれ異なるかたちで年齢と関わっていることが示されており、こころの動き方が一方向に進むわけではないことが確認できます。

医学的な観点では、思春期にはホルモン変化や生活環境の広がりが大きな影響を与え、中年期には生活のリズムや役割の安定が感情の落ち着きにつながりやすくなります。高齢期では、身体機能や社会的なつながりの変化に伴い、気分の揺れが出やすくなることがあります。

中医学の視点から見ると、この流れには興味深い重なりがあります。

成長期は「肝」の働きが活発になりやすく、感情の動きが大きくなると考えられています。成人期は「脾」や「気」の安定が得られやすい時期とされ、感情の落ち着きとも整合します。高齢期は「腎」の働きがゆるやかになるとされる年代で、気力や感情の変動が出やすくなると説明されます。

科学と中医学の、両者の視点が自然に重なる部分があります。

この研究は年齢と幸福感の関係を丁寧に描き出していますが、人生のどの時期にどのような心の変化が訪れやすいのか、そしてどのようなケアが必要なのかを理解する手がかりになります。


🎁 9歳がピークじゃない──幸福は一生かけて形を変える

人生100年時代──番組が言う「9歳が幸せのピーク」は、その後の「91年」が味のしないガムを噛み続けるような時間になるという話ではなく、「幸せの質が年齢とともに変わっていく」という、もっと立体的な物語の入口にすぎません。

私たちの幸福度は、研究で示された数字やグラフだけで決めつけられるものではありません。

「今の自分をどう意味づけるか」「どんな関係性を持てているか」「どんな役割に手応えを感じているか」──こうした「文脈」によって揺れ動きます。

若い頃の「ワクワク」や「勢い」は年齢とともに形を変えていきますが、その代わりに、納得感、安心感、深いつながり、自分との折り合いのつけ方といった別の幸福の要素が少しずつ育っていきます。

9歳の頃のように無邪気さは少なくなっても、50代、60代、70代でしか得られない「穏やかな幸福」や「熟成した幸福」があります。

そして中医学の視点では、成長期には肝が動きやすく、壮年期には脾が安定し、高齢期には腎がゆるやかになるとされ、こういった体の変化とともに、こころが感じ取る世界も自然に移ろっていくという考えがあります。

この研究が示すのは、人生のどこかに一度だけ「幸福のピーク」があるのではなく、「心」は年齢とともに変化し続けることを教えてくれます。

この「変化の波」を知っていれば、必要以上に不安にならずに、自分の今のステージに合った幸福を見つけていくことができます。そして、その変化そのものが、その人らしい幸福のかたちを育てていくのだと思います。

だからこそ、幸福を「ピーク」という一度きりの頂点で捉えるのではなく、今の自分がどんな幸福を育てられる「ステージ」にいるのか──その視点を持つほうがずっと現実的で、人生はしなやかなものになります。

私たちの幸福は、年齢とともに減っていくものではなく、かたちを変えながら続いていくもの──どうか、これからもあなただけの「幸せの物語」を紡いでいけますように…。

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