🫧 「なんとなくつらい」
つらいのに、何がつらいのか自分でもよくわからない。
言葉にしようとしても、「なんとなく苦しい」としか言えず、それ以上うまく説明できないことがあります。
自分の中で起きている感情を見分けたり、言葉にしたりするのが難しい──心理学では、こうした傾向を「アレキシサイミア」と呼びます。
たとえば、気分が重いことには気づいていても、それが怒りなのか、悲しさなのか、疲れなのかまでは、はっきりしないことがあります。
休んだ方がよいのか、誰かに話した方がよいのか、いったんその場を離れた方がよいのか。自分に合う対処も選びにくくなることがあります。苦しさはあるのに、どうしたら少し楽になれるのかが見つからない。そんな状態です。
今回紹介する研究は、感情を把握しにくいことと、不安や落ち込み、ストレスとのつながりに、この「感情への対処の難しさ」がどのくらい関わっているのかを調べたものです。
中医学では、気持ちの状態を知るとき、言葉だけでなく、眠りが浅い、胸がつかえる、体に力が入るといった変化も手がかりにします。気持ちがはっきりしないときにも、体に表れている様子から、どこに無理がかかっているのかを見ていく視点があります。
続いて、このつながりを研究者たちがどのような方法で確かめたのかを見ていきます。
🧪 どんな研究?
研究に参加したのは、アメリカで暮らす18歳から85歳までの成人661人です。そのうちおよそ3割は、これまでにうつ病や不安症などの診断を受けたことがある人でした。
参加者には、いくつかの質問票に答えてもらいました。調べたのは、主に次の三つです。
・自分の感情を、どのくらい見分けて言葉にできるか
・気持ちが乱れたとき、どのくらいうまく対処できるか
・最近一週間に、不安や落ち込み、ストレスをどの程度感じていたか
研究者たちが調べたのは、自分の感情を把握しにくい人ほど不安や落ち込みを抱えやすいのは、つらいときの対処が見つかりにくいことと関係しているのか、という点です。
結果が質問票の作り方に左右されていないか、別の質問票や分析方法でも確かめました。
📊 どんな結果?
自分の感情を把握しにくい人ほど、気持ちへの対処にも難しさを感じ、不安や落ち込み、ストレスが強い傾向が見られました。
つらいときに、休んだ方がよいのか、誰かに話した方がよいのか、その場から離れた方がよいのかがわからない。そうした「対処の見つけにくさ」が、心の不調と深く結びついていたのです。
つまり、自分の気持ちをうまく説明できないことだけでなく、その気持ちをどう扱えばよいのかわからないことも、心の不調と関係していたのです。
ただ、気持ちがわからないときに、その場で自分に合う対処を選ぶのは簡単ではありません。だからこそ「考えがまとまらないときは返事を保留する」「体に力が入っていたら少し席を外す」など、迷ったときに使う方法を前もって決めておく。
気持ちを理解してから対処するのではなく、まず負担を減らし、落ち着いてから自分の状態を振り返る。そんな順番があってもよいのだと思います。
🌱 中医学の視点では?
中医学では、感情の状態と体の変化を切り離して考えません。
眠りが浅い。胸や喉がつかえる。食欲が落ちる。体に力が入りやすい。気持ちがうまく言葉にならないときにも、体に表れている変化が、今の状態を知る手がかりになります。
そんなときは「私は何を感じているのか」と急いで答えを出すより、まず体への負担を減らします。
少し静かな場所へ移る。息をゆっくり吐く。軽く体を動かす。食事や睡眠が乱れていないかを振り返る。
中医学では、こうした体の変化も見ながら、その人にどのような偏りが起きているのかを考え、その時々の状態に合わせて整え方を探していきます。
気持ちが言葉になるのを待たず、まず体の負担を減らす──落ち着いてから、自分の状態を振り返る。中医学の養生には、そんな整え方もあります。
☕ 気持ちがわからない日にも、できることはある
気持ちがわからないときに、その場で自分に合う方法を選ぶのは簡単ではありません。
だからこそ、考えがまとまらないときは返事を急がない。少し席を外す。眠れていない日は、予定をひとつ減らす。
迷ったときに使う方法を、普段からいくつか持っておくことが助けになります。
感情の名前がわからなくても、できることまでなくなるわけではありません。
気持ちがわからない日は、答えを探すより、まず負担をひとつ減らす。自分が何を感じていたのかは、落ち着いてから見えてくることがあります。
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