🚶 「日常の環境」と「体の巡り」
人が暮らす街ごとに、生活の形があります。
買い物や外出を歩いて済ませやすい街もあれば、日々の移動を車に頼らざるを得ない場所もあります。
こうした「歩いて移動しやすい生活環境」が、時間の経過とともに健康へどのような影響をもたらすのか──その影響を丁寧に追いかけた研究があります。
対象は、アメリカ各地で暮らす中年期以降の人々。
日常生活のなかで「歩いて移動しやすい生活環境」が、「血圧の変化」にどのように影響するのかを調べました。
中医学では、普段から体を動かすことが「気」と「血」の巡りを整え、からだ全体の働きを支えると考えられています。
中医学の視点と研究の結果の交わりにも触れながらこの研究を読み解いてみたいと思います。
日々の環境と健康の関係について、続きを見ていきましょう。
📘 どんな研究?
この研究は、アメリカ全土に住む45歳以上の人々を長期間追跡した「REGARDS(リガーズ)研究」のデータをもとに行われています。
最初の調査は2003〜2007年に実施され、研究スタッフがそれぞれの自宅を訪ね、血圧の測定や生活習慣の聞き取りを行いました。
その後、約10年をおいて2013〜2017年に再び同じ方法で血圧を測定し、最初の調査時には正常だった人の中で「途中で血圧が高くなったかどうか」を判断しています。
また、参加者が暮らす地域については「歩いて移動しやすいか」を示す「ウォークスコア」を用いて評価しました。
「ウォークスコア」とは、周囲に店や施設がどれくらいあるかといった情報をもとに算出される指標で、数字が高いほど徒歩で生活しやすい環境になります。
つまりこの研究は、
・どれくらい歩いて移動しやすい地域に住んでいるか
・その後の血圧にどんな変化があったか
この2つを組み合わせて、日常の環境が健康にどのようにつながるかを丁寧に確かめた研究です。
📊 この研究でわかったこと
この研究では、最初の調査で高血圧ではなかった人たちの中から、約7,000人が10年後の再調査まで追跡されました。
そのうち、およそ3人に1人以上が、10年の間に高血圧になっていたことが明らかになっています。
そして、住んでいる地域の「ウォークスコア」との関係を調べたところ、歩いて移動しやすい地域に住む人ほど、高血圧になる人が少ない という傾向が見られました。
研究チームは、年齢や性別、人種、収入、運動習慣、体型など、血圧に影響しうる要因を細かく調整しています。その上で、「歩きやすい地域に住んでいる人は、高血圧になるリスクが低い」という結果が示されています。
また、この傾向は人種や住んでいる地域の特徴が異なっていても、大きく影響することはありませんでした。
🔬 研究結果の読み解き方
歩いて移動しやすい地域に住む人で高血圧が少なかった背景には、日常の「ちょっとした移動」が身体活動につながりやすいという点があります。
買い物や用事を徒歩で済ませられる環境では、意識しなくても体を動かす回数が自然に増えます。これは血管のしなやかさを保ち、体脂肪の蓄積を抑える助けになります。
その結果、生活のリズムが整い、ストレスが溜まりにくい状態につながる可能性があります。
血圧はストレスの影響を受けやすいため、こうした要素が間接的に関わっていることも考えられます。
今回の研究は「なぜ歩いて移動しやすい地域で高血圧が少なかったのか」を特定したわけではありませんが、歩きやすい環境が長い時間をかけて体に影響する可能性を示してくれました。
🌱 中医学の視点から見ると?
中医学では、からだの状態を「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」のバランスでみる視点があります。
とくに「気」と「血」は、体の隅々まで栄養や温かさを運ぶもので、その流れが滞ると体調が乱れやすくなると考えられています。
ゆるやかな運動は、この巡りを整える大切な要素です。
歩くという動きは、呼吸を深め、血の流れを促し、余分な熱や重だるさをため込まない方向へ導いてくれます。いわゆる「巡りが整う」状態です。
歩いて移動しやすい地域に住むことは、日常の中で自然に体を動かすきっかけが増え、気と血を巡らせる助けになります。
今回の研究結果を中医学の視点で眺めてみると、日常の動きが体のバランスを支えるという考え方と重なる部分が見えてきます。
生活環境そのものが、からだの巡りを左右する要素になりうるという視点です。
🪴 生活の場が持つ、もうひとつの役割
歩いて移動しやすい環境が、暮らしのリズムや体の巡りにどのように働くのか──今回の研究は、その関係を丁寧に示してくれました。
日々の行動だけでなく、住んでいる地域そのものが、時間をかけて体の状態に影響を与える可能性があることが、数字に表れています。
医学の視点では、日常の小さな動きが血管や体重に作用し、中医学の視点では、その積み重ねが気と血の巡りを穏やかに支えると考えられます。
立場は違っても、どちらも「動くことが体を整えていく」という点で重なっています。
そして、この研究が教えてくれたのは、特別なことをしなくても、「ちょっとした移動」が健康づくりに役立つということ、生活の場を少し整えるだけでも、体の変化につなげていけるということです。
今の生活の中にある小さな選択が、未来の自分の体を支える可能性を持っています。
今回の研究は、そのことに気づかせてくれる内容でした。
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