「昼寝」と「血圧」の意外な関係

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🩺 静かな昼下がりに潜む意外なリスク

昼食後の少しの「昼寝」は、頭がすっきりして午後の集中力を取り戻す手助けになります。

けれど、その「昼寝の回数」が多くなると、体の中では少し違った変化が起きているのかもしれません──そんなことを調べた研究があります。

イギリスで行われた大規模な追跡研究では、何万人もの生活データと遺伝情報を組み合わせ、昼寝の習慣と血圧、さらには脳卒中のリスクとの関係を詳しく検討しました。

そして、これまで曖昧だった「昼寝と健康の関係」に、ある傾向が見えてきたのです。

中医学では、昼寝は「気(エネルギー)」と「陰陽(体のバランス)」を整える大切な時間とされています。

しかし、昼寝を「したい」と頻繁に感じる場合、それは内側にトラブルが生じていることを伝える「サイン」かもしれません。

穏やかな昼下がりの眠りが、健康に役立つ「養生」なのか、それとも何かを知らせる「サイン」なのか──その答えを探る興味深い研究です。

では、続きを見ていきましょう。


📊 35万人の「昼寝習慣」を10年以上追跡

これまで「昼寝」は健康に良いというイメージが強く、心臓や脳への負担を和らげるとも言われてきました。

一方で、「昼寝をよくする人ほど高血圧や脳卒中が多い」という報告もあり、結果は研究ごとに食い違っていました。

昼寝の時間帯や長さ、回数の違いが影響しているのか、それとも昼寝を必要とする「体の状態」がすでに何かのサインなのか──ここが長年の議論になっていたのです。

そこでイギリスの研究チームは、昼寝の「頻度」に焦点を当て、より正確に健康との関係を確かめようとしました。

研究チームは「UKバイオバンク」という大規模な健康データを使い、高血圧や脳卒中の既往がない約35万人を対象に、平均10年ほど追跡しました。

年齢、生活習慣、睡眠の質など多くの要因を調整した上で、昼寝を「ほとんどしない」「ときどきする」「よくする」の3群に分けて解析。

さらに、単なる生活習慣の違いにとどまらず、遺伝的な影響まで考慮するため、「メンデルランダム化」という方法を用いて因果関係を探りました。

つまりこの研究は、「昼寝が多い人は健康リスクが高いのか、それとも昼寝を必要とする体の状態が原因なのか」という、これまで曖昧だった関係を丁寧に確かめたものだったのです。


📈 昼寝の頻度と血圧・脳卒中リスクの関係

追跡の結果、昼寝を「よくする」と答えた人たちは、「ほとんどしない」人に比べて高血圧や脳卒中を発症する割合がやや高い傾向にありました。

この傾向は、年齢や性別、喫煙、飲酒、睡眠の長さなどを考慮しても変わりませんでした。

とくに中年世代(おおむね60歳未満)では、昼寝を頻繁に取る人のほうが高血圧の発症が目立ち、加齢による影響よりも生活リズムの乱れや代謝の変化が関係している可能性が示されました。

一方で、高齢層ではこの差がやや小さく、昼寝が体の回復に働く側面も否定できません。

また、昼寝の習慣と脳卒中の中でも「虚血性脳卒中(血流が途絶えるタイプ)」との関連も見られました。頻繁に昼寝をする人では、このタイプの脳卒中が少し多い傾向にあったのです。

ただし、昼寝の「長さ」や「時間帯」は調べられておらず、その点が今後の課題として挙げられています。


🧬 遺伝子を使って確かめた「昼寝」と「血圧」の関係

観察研究だけでは、「昼寝が多い人に高血圧が多い」という結果が出ても、それが「原因」なのか「結果」なのかを区別するのは難しいものです。

そこで研究チームは、「メンデルランダム化」という手法を用いました。
これは、人が生まれながらに持つ遺伝子の違いを「自然の実験」として利用し、ある習慣や特徴が病気に影響を与えているかを間接的に確かめる方法です。

昼寝の頻度に関連する遺伝子を手がかりに解析を行ったところ、昼寝をしやすい体質をもつ人は、そうでない人に比べて高血圧のリスクがやや高い傾向を示しました。

また、虚血性脳卒中との関連も一部で支持されており、昼寝の頻度と循環器疾患のあいだに「因果的なつながり」がある可能性が浮かび上がりました。

この結果は、昼寝そのものが直接の原因というよりも、昼寝を頻繁に必要とするような体の状態──たとえば自律神経の乱れや睡眠の質の低下など──が血圧上昇につながる可能性を示唆しています。

遺伝的傾向まで踏み込んで確かめた点が、この研究の特徴でした。


💤 どんな意味があるのか──研究の読み解き方

この結果を「昼寝は健康に悪い」とすぐに結論づけてしまうのは適切ではありません。

昼寝の多さが示しているのは、むしろ「体が休息を必要としている状態」そのものかもしれません。

たとえば夜の睡眠が浅く、日中に強い眠気が出ている場合や、慢性的な疲労やストレス、ホルモンバランスの乱れなど、背景に別の健康課題が隠れている可能性があります。

また、昼寝の「取り方」も重要です。

短時間(20分ほど)の仮眠は集中力や心拍の安定に良い影響を与える一方で、長時間の昼寝や不規則な昼寝は、夜の睡眠リズムを乱しやすいことが知られています。

今回の研究では昼寝の「時間」は評価されていないため、今後はその点も含めた検討が必要とされています。

つまりこの研究は、「昼寝をしない方が良い」という話ではなく、「昼寝が必要になる体のサインに耳を傾けよう」という視点を示したものといえます。

日中の強い眠気は、心身が発している小さな警告のひとつなのかもしれません。


🌿 中医学でみる「昼寝と気のめぐり」

中医学では、昼寝は「気(き)」や「血(けつ)」の流れを整え、心身の疲れを癒やす大切な養生法のひとつとされています。

ただし、頻繁に昼寝をしたくなるということは、体が本来のリズムを保てず、何らかの不調を内に抱えている可能性があります。

たとえば、気の巡りが滞る「気滞(きたい)」や、体内の余分な水分や老廃物がたまる「痰湿(たんしつ)」の状態では、体が重く感じたり、だるさや眠気が出やすくなったりします。

つまり、昼寝を「したい」と頻繁に感じるのは、そのような状態が背景にある可能性があるということです。

これは、今回の研究が示した「昼寝が多い人に高血圧や脳卒中がやや多い」という結果とも通じる部分があります。

昼寝そのものが悪いのではなく、「昼寝を必要とするような体の状態」に目を向けることが重要だと、中医学も教えているのです。

短時間の昼寝で心身を整えることは良い養生になりますが、頻繁な強い眠気が続くときは、体が小さなSOSを出しているサインかもしれません。


✉️ 「眠気」が伝える、体からのメッセージ

今回の研究が示したのは、「昼寝が悪い」という話ではありません。

むしろ、昼寝を頻繁に取りたくなる体の背景には、睡眠の質の低下やストレス、自律神経の乱れなど、日々の生活の中で見逃しがちなサインが隠れている可能性を教えてくれるものです。

中医学でいえば、それは「気のめぐり」や「陰陽のバランス」が少し崩れた「未病」の状態。昼寝を「したくなる」こと自体が、体の内側からのメッセージなのです。

もし最近、昼寝が増えたと感じるなら、それは「疲れが溜まっている証拠」と同時に、「生活を整えるタイミング」を知らせているのかもしれません。

昼寝を上手に取り入れ、必要なときにしっかり休むこと。

それが、自分の体と向き合い、心身のバランスを保つための第一歩になります。

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