「握る力」が語る、見えないからだのバランス

目次

✨ 握力の左右差に、気づいていますか?

ふだん何気なく使っている「手」の力。

握力には、筋力だけでなく体の使い方や神経の働きが反映されます。そんな握力に左右差があったとき、そこには単なる生活の癖だけではない、身体の状態の違いが隠れているかもしれません。

今回紹介する研究では、日本の中高年約3,400人を対象に、握力の左右差と健康との関係が20年近くにわたって調べられました。データは、国立長寿医療研究センターによる長期の調査から得られたもの。参加者の暮らしや身体の変化が、細かく記録されています。

中医学では、左右の不均衡は「気血のめぐり」や「肝」の働きの変化と関係すると考えます。現代医学と中医学の視点をあわせて見ることで、からだの変化をより立体的に捉えることができそうです。

では、研究の内容と中医学的なつながりについて詳しく見ていきましょう!


🧪 どうやって調べたの?

この研究では、国立長寿医療研究センターが行っている「NILS-LSA(老化縦断研究)」のデータを使っています。

40歳以上の地域に住む人たちを対象に、20年近くのあいだ追跡調査を行った、大規模で信頼性の高い研究です。

対象となった約3,400人の参加者について、年齢、病気の有無、体型、日々の運動習慣、睡眠、喫煙など、さまざまな情報が細かく記録されていました。脳卒中の経験がある人や、調査から2年以内に亡くなった人などは除外され、結果の信頼性を高める工夫もされています。

握力は、左右それぞれ2回ずつ測って、いちばん強かった数値を採用。そのうえで、強い方の手の数値を弱い方の手の数値で割って、どのくらい差があるかを比率で出しました。この比率をもとに、参加者を「ほぼ差がない人」「少し差がある人」「はっきり差がある人」の3つに分けました。

また、握力の強さそのものだけでなく、その「左右のバランス」が健康にどう関係しているかを調べるため、年齢や生活習慣など、他の影響も同時に考慮したうえで解析されています。


📈 握力の「差」が見通す未来

どんな人がどれくらいの握力を持っているのか、そして左右に差があるのか──それらを丁寧に測ったうえで、長年にわたって健康状態を追いかけた結果、見えてきたものがありました。

握力に左右差がある人は、差が小さい人に比べて、調査期間中に亡くなった割合が高くなる傾向が見られました。特に、片方の手の握力がもう片方よりもはっきり弱い人では、その傾向がより明確でした。

男性では左右差が大きいほど亡くなった人の割合も高くなり、この差は統計的にもはっきりと認められました。女性でも同じ傾向は見られましたが、はっきりした差が出たのは、左右差を2段階で分けて比べたときだけでした。

さらに、握力そのものが弱い人もまた、亡くなる割合が高くなるという結果が出ていました。「握力の強さ」と「握力のバランス」は、それぞれ違う形で体の状態をあらわしていることが示されたのです。


💡 「バランスの崩れ」が伝えていたこと

握力は、普段の健康診断などでも測ることがある身近な指標です。

ただし、多くの場合は「握る力の強さ」にだけ注目されます。でも今回の研究では、その「左右のバランス」にも注目することで、見え方が大きく変わってくることが示されました。

片方の手が弱くても、もう一方が強ければ平均値は保たれます。そのため、表面的には問題がないように見えるかもしれません。けれども、体の中ではすでにバランスが崩れはじめている可能性があります。

今回の結果は、そうした左右差がある人ほど健康リスクが高まる傾向を示していました。

男性で特にその傾向がはっきりしていたのは、筋力や神経機能の年齢による変化が影響しているかもしれません。女性では結果にややばらつきがありましたが、それでも左右差のある人では、死亡リスクが高まる傾向が認められました。

こうしたことから、握力を見るときには「どちらかが極端に弱くないか」という視点も加えることで、体の状態をより正確に捉えられるようになるかもしれません。


🌿 握力の「左右差」、中医学ではどう見る?

中医学には、「陰」と「陽」というからだのバランスをとらえる考え方があります。

体のはたらきはこの2つの調和によって成り立っていて、それは左右の関係にもあてはまるとされます。古くから「左は陽、右は陰」と考えられることがあり、体の状態を左右の違いから読み取ることもあります。

例えば、左手のほうが明らかに強ければ、陽へバランスが傾いているかもしれませんし、逆に右手にばかり力が入る場合は、陰へ傾いている、もしくは陽の機能が落ちている可能性も考えられます。

とはいえ、中医学では握力の左右差だけで体の状態を判断することはありません。脈や舌、顔色、話し方など、さまざまな要素を組み合わせながら、からだ全体のバランスを見ていくのが基本です。

今回の研究で明らかになった「握力の左右差」と健康との関係は、ふだん見過ごされがちな体のバランスに目を向けるきっかけになります。

中医学にも、左右の偏りを気や血のめぐり、機能のアンバランスとして捉える視点があります。もちろん、手の力だけで判断することはありませんが、こうした研究結果は、からだ全体の調和を見るヒントとして興味深いものです。

左右差が見られるとき、それは体の中で何かが少し傾き始めているサインかもしれません。日々の使い方を見直すきっかけとして、ささやかな変化に気づく力も大切にしていきたいところです。


🤝 握力で見る「整う」

今回の研究は、「握力の左右差」という一見ささいにも思える違いが、長期にわたる健康の行方と関わっているかもしれない、ということを明らかにしました。

筋力そのものだけでなく、からだの中のバランスが崩れているサインとして、左右差に注目する視点は、今後の予防医学や生活習慣の見直しにおいても大きな意味を持ちそうです。

筋肉の強さそのものだけでなく、「どちらかに偏っていないか?」という視点が加わることで、これまで見逃されてきた体の状態にも目が届くようになります。

中医学でも「陰と陽のバランス」を大切にしてきたように、左右の使い方の癖や体の感覚の違いを観察することは、日々のからだのケアにおいても大切になります。

からだの声は、初めは決して大きく叫んだりはしません。

でも、毎日のちょっとした「違い」や「偏り」に目を向けることが、これからの健康を守る一歩になります。

握力の左右差──それは、思っている以上に、からだの内側を静かに語ってくれているのかもしれません。

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