🥬 「食べる順番」が、立ち直れる心の土台を作る
食事のとき、野菜から食べると体にいい──「ベジファースト」の習慣を取り入れている人も増えてきました。でも、その習慣が体だけでなく、子どもの心の育ち方とも関わっているかもしれないとしたら?
毎日の食卓で繰り返される些細な習慣の中に、目に見えない「心の力」を育むヒントが隠されていることが、長期にわたる調査で浮かび上がってきました。
中医学でも、食べ物を受け入れる「脾胃(≒胃腸)」を整えることは、心身のエネルギーを保つための大切な養生のひとつ。
栄養バランスのその先にある、食習慣と心のあり方の不思議なつながりについて、最新の研究が導き出した答えを見ていきたいと思います。
🧪 どんな研究?
今回の研究は、東京・足立区内の小学生約2,600人が対象です。
1年生から6年生までの6年間、毎年「食事のとき、野菜を最初に食べているか」を記録し続け、その習慣がどう変化したかをもとに、子どもたちを4つのグループに分類しました。
「ずっと野菜から食べていた」「途中から食べるようになった」「途中でやめた」「ほとんど食べない」の4つです。
そして6年生になったとき、「心の力」である、困難にぶつかっても立ち直れる力(レジリエンス)と、自分を肯定する力(自己肯定感)がどう育っているかを測定しました。
評価にあたっては、保護者による客観的な視点と、子ども本人による主観的な視点の両方を用いています。
家庭の経済状況やもともとの性格など、結果を左右しうる他の要因を統計的に除外することで、食べる順番と心の育ち方の関連を分析しています。
📊 どんな結果?
6年間にわたる追跡調査の結果、はっきりとした傾向が見えてきました。
もっとも「心の力」が高かったのは、1年生から6年生まで「ずっと野菜から食べていた」グループです。このグループでは、困難にぶつかっても立ち直れる力(レジリエンス)と、自分を肯定する力(自己肯定感)の両方において、野菜から食べる習慣がない子どもたちと比べて、それぞれ個別に有意な差が確認されました。
注目すべきは、この差が「継続していたグループ」にだけ現れた点です。途中から始めたグループや、途中でやめたグループには、統計的に意味のある差は確認されませんでした。
この差は、一見すると小さな変化に見えるかもしれません。でも6年という時間をかけて積み上げられたものだと考えると、毎日の食卓で繰り返されるその小さな習慣の大切さを感じます。
🌱 中医学の視点では?
中医学では、胃腸にあたる「脾胃」は食べ物を消化するだけでなく、体と心のエネルギーを生み出す場所と捉えられています。
脾胃の働きが乱れると思い悩みやすくなったり気力が落ちたりすることがあると考えられており、食べ方を整えることで脾胃への負荷を減らし、気持ちの安定につながるという考え方は、研究チームが示した仮説と方向性が重なります。
そしてもうひとつ。
今回の研究で「6年間の継続」が鍵となった事実は、中医学が大切にする「養生」の考え方そのものです。養生とは、一度きりの特別なケアではなく、毎日の当たり前を積み重ねること。
特別なことをしなくても、日々の小さな行いを続けることが心身を整える土台になる──毎日の暮らしの中に、そんな小さくて確かな養生の入り口があることを、この研究結果は改めて気づかせてくれました。
🌿 今日の食卓から、始められること
「野菜から食べる」という習慣は、特別な道具も、お金も、時間も必要としません。今夜の食卓から、すぐに始められることです。
6年間という長い時間をかけて積み上げられた小さな習慣が、子どもの心の育ち方と関わっているかもしれないという事実は、日々の食卓を少し違う目で見せてくれます。
何を食べるかだけでなく、どう食べるか。その小さな意識が、体だけでなく心にも届いているとしたら──それは、子どもにとっても、大人にとっても、毎日の食事がもう少し豊かになるような──今回の研究はそう気づかせてくれる研究でした。
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