「子どもの頃にたくさん風邪を引けば強くなる」という神話はなぜ広まったか

目次

🧸 家庭の中で、何が起きているのか

「子どもが保育園に通い始める頃になるとよく風邪を引くようになるけれど、それは免疫が鍛えられている証拠。今は大変だけど風邪も引かなくなる」──子育ての現場では、長く語られてきた言葉です。

頻繁な発熱や鼻水も、「今だけのこと」「通過点」と説明されることが少なくありません。そう聞くと、どこか「仕方がない」と納得してしまう感覚もあります。

ただ、この話がどこまで事実なのかを、日常生活の中で確かめる機会はほとんどありません。

「風邪をたくさん引けば、免疫は強くなるのか」という問いに対して、はっきりと答えを示したデータは意外なほど知られていません。

今回紹介する研究は、家庭という身近な場所で1年かけて観察し、この問いにデータで確かめようとしました。

どのような研究だったのか──続きを見ていきましょう。


🧪 どんな研究?

この研究が特徴的なのは、調査の場所と方法です。

対象になったのは、ユタ州に住む26世帯・108人の家族です。年齢は生後まもない乳児から50代までと幅広く、子どもがいる家庭も、いない家庭も含まれています。

調査期間は1年間。家族全員が、症状の有無にかかわらず、毎週同じ曜日に二つのことを行いました。

一つは、その1週間の体調を記録すること。発熱、鼻水、咳などがあったか、もう一つは、鼻の入り口から綿棒で検体を採り、ウイルスの有無を検査することです。

検査には、複数の呼吸器ウイルスを同時に調べられるPCR検査が使われました。インフルエンザ、RSウイルス、ライノウイルス、ボカウイルス、いくつかのコロナウイルスなど、日常的に「風邪」と呼ばれる原因の多くが含まれています。

重要なのは、「具合が悪いから検査する」のではない点です。

元気な時も、風邪気味の時も、条件は同じ。

これにより、「症状が出た時」だけではなく、日常の中でウイルスがどう存在しているかを確かめられる設計になっています。

集まったデータは「人×週」で数え、解析に使えたのは4166人週です。これが、後に「神話」と現実のズレを確かめる土台になりました。


📊 どんな結果だった?

この研究でまず分かったのは、「風邪の症状」と、「ウイルスが見つかること」が、必ずしも一致していなかったという点です。

1年間、家族全員を毎週調べると、熱や鼻水などの症状があった週と、ウイルスが確認された週は、どちらも全体の約4分の1ほどでした。ただし、ウイルスが見つかっても、実際に症状が現れたのは半分程度にとどまっています。

小さな子どもでは、ウイルスが見つかる機会は確かに多くなります。けれども、そのたびに体調を崩していたわけではありません。検査ではウイルスが確認されても、普段どおり元気に過ごしている時が何度もありました。

そして、家庭の子どもの数が増えるほど、家の中でウイルスが見つかる週が増えていきました。

例えば、子どもが6人いる家庭では、1年のうち約87%の週で、家の中の誰かからウイルスが検出されていました。

ただし、ここで重要なのは、この87%が「風邪で寝込んでいた」というわけではありませんでした。

つまり、家庭の中では、症状としてはあらわれない形でウイルスとの接触が、日常的に起きているということです。

「風邪を引いた(症状がある)回数」だけを見ていると、体が実際にどのような環境に置かれているかという実情は見えにくくなります。


🤔 つまりはどういうこと?

「小さい頃にたくさん風邪を引くと、免疫が鍛えられて強くなる。」──確かに、感染をきっかけに免疫が働くことはあり、この考え方は分かりやすく感じられます。

ただ、医学的に見ると、この説明は少し単純化しすぎています

この研究では、風邪の症状が出ていない時にも、ウイルスが体内に入り込んでいることが確認されました。つまり、体は「風邪を引いたとき」だけウイルスに感染しているわけではありません。

「風邪を引くと強くなる」という考え方であれば、症状が出た回数が、そのまま免疫の経験値となりますが、しかし実際には、症状が出ていない時でも、ウイルスとの接触は繰り返し起きていました。

この研究では「風邪をひいた回数」と「体がどれだけウイルスに触れてきたか」は一致しないという事実を示しています。

そして「小さい頃にたくさん風邪をひいたから免疫が鍛えられる」という「神話」は「事実」とは少し異なることも示しています。


🌱 中医学の視点では

中医学では、病気を外から入ってくる「邪気」と、それに対応する体の力である「正気」のバランスで捉えます。邪気が入ったからといって、必ず症状が出るとは考えません。

今回の研究で見られた、ウイルスは検出されているのに症状が出ていない状態は、中医学的には、邪気があっても、正気が保たれ、体がうまく対処できている状態と考えられます。

ここで重要なのは、中医学では、邪気にたくさん触れれば触れるほど、正気が強くなるとは考えない点です。調整が追いつかない刺激が続けば、正気は消耗し、邪気による症状が出やすくなります。

そのため、「風邪をひくと強くなる」という話は、正気が鍛えられたというより、何とかバランスを保ってきた結果であって、邪気が正気を鍛えることではありません。

この研究は、症状がなくても、正気と邪気のせめぎ合いは日常的に起きていることを示しています。

だからこそ大切なのは、風邪をひくことで強くなることではなく、邪気が入っても、正気を消耗させすぎず、立て直せる状態を保つこと。

中医学の視点から見ると、そこに本質があります。


📝 「鍛える」より「整えていく」

この研究が伝えているのは、「たくさん風邪を引けば、鍛えられる」という話ではありませんでした。

家庭の中では、症状が出る前、あるいは気づかないまま、体は日常的にウイルスと向き合い、調整を続けていました。風邪を引く経験が、そのまま「次に風邪を引かないための訓練」になっていたわけではないのです。

医学的に見ても、中医学の視点で見ても、体は「鍛えられるもの」というより、「整え直しながら保たれているもの」と考える方が、実際の姿に近いと言えます。

だからこそ大切なのは、風邪を引くことに意味を持たせすぎることではなく、日々の睡眠、食事、休息といった、体が立て直すための土台を崩さないことです。

「風邪を引くと強くなる」という「神話」が、少し立ち止まって考え直されるようになったのは、この研究が、体の現実を具体的に示したからでしょう。

強くなることを急がなくても、体はすでに毎日の中で必要な調整を続けています。

その事実を知っておくこと自体が、子どもにとっても、大人にとっても、余計な不安を減らしてくれるのだと思います。

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